この記事の概要

  • 家を売却するには、「仲介」「買取」「個人売買」の3つの方法がある
  • 家を売却する際は「査定時」と「売却時」で必要な書類がそれぞれある
  • 家を売却しやすいのは「2~3月の成約に間に合わせる」「築20年以内に売る」の2つのタイミングがある

住み替えなどで家を売却したいけれど、なにからはじめどのように計画を立てればよいのか、戸惑うこと方もいることでしょう。

本記事では、家の売却方法や流れ、注意点、早期に高く売るコツなどを解説します。

売却時によくある疑問点についてもまとめていますので、スムーズに売却をはじめるためにもぜひご覧ください。

家を売却する3つの方法

家を売却する方法のイメージ

家を売却する際は3つの方法があり、それぞれの特徴は次の通りです。

売却方法 メリット デメリット
仲介
  • 高く売れやすい
  • 専門知識が不要
  • 売却までに時間がかかる恐れ
買取
  • 短期間で売却できる
  • 売却価格が2~3割安くなる恐れ
個人売買
  • 自身で買い手を探せる
  • 専門知識が必要

ここからは、家の売却方法を詳しく解説します。

①仲介

仲介とは、不動産会社に依頼し、買主を見つけるために広告などで販売活動をしてもらう方法です。

周辺相場と同じくらいの売却価格で売れることが多いため、少しでも高く家を売りたい方におすすめです。

不動産に詳しくない方でも、安心してプロに売却を任せられるでしょう。

一方、買取や個人売買に比べて売却するまでに時間がかかる傾向にあります。

「売却期間が長くなっても構わないから、高く売りたい」など、スケジュールに余裕がある方におすすめです。

②買取

買取とは、不動産会社に家を直接買い取ってもらう売却方法です。

不動産会社が購入者になるため、買主を見つけるための活動や購入希望者とのやり取りも必要ありません。

短期間で売却できる点が大きなメリットです。

しかし、売却価格が低くなる傾向があります。

不動産会社が購入した家は、リフォームなどをしてから再販することが多いためです。

リフォーム費用などが売却価格から引かれることから、仲介の相場と比べて2〜3割安い買取価格になるでしょう。

「売却価格は安くなってもいいから、早く売りたい」という方におすすめです。

③個人売買

個人売買とは、自分自身で家の買い手を探す方法です。

不動産会社に依頼することなく売却活動から書類作成、手続きも自身でおこなう必要があるため、不動産売却の知識がある方でないと難しいでしょう。

しかし、専門知識がある方ならすべてを把握しながら、納得して家の売却ができるメリットがあります。

家を売却するときの流れを6つの手順で解説

家を売却するときの流れのイメージ

家を売却するときの流れは、次以下の通りです。

  1. 査定依頼
  2. 不動産会社との媒介契約
  3. 販売活動
  4. 買主との売買契約
  5. 決済・引き渡し
  6. 確定申告

家の売却額を決めるための査定を不動産会社に依頼してから、売却活動がはじまります。

複数の不動産会社から見積もりを取り、相場観や相談のしやすさなどから依頼先を決めましょう。

購入希望者の内覧時の対応は、すべて不動産会社がおこないます。

売買契約では、売主・買主・不動産会社の担当者の3者が立ち合い、売買代金の残金を受け取り、清算後に引き渡しがされます。

家を売却した際に譲渡所得があれば、確定申告をしなくてはいけません。

家を売却した翌年の2月16日〜3月15日までに、忘れずに確定申告をおこないましょう。

家を売却するときに必要な書類

家の売却に必要な書類のイメージ

家の査定時と売却時で必要な書類は、次の通りです。

タイミング 必要の書類 あるとよい書類
査定時
  • 登記事項証明書(登記簿謄本)
  • 登記済証(権利証)または登記識別情報
  • 土地の測量図や建物の図面
  • 公図
  • 売買契約書
  • 建築確認済証または検査済証
  • 建築設計図書または工事記録書
  • 境界確認所
  • 住宅性能評価書
  • 耐震診断報告書
  • インスペクションの結果報告書
  • 瑕疵担保保険の付保証明書
  • リフォームの契約書
売却時
  • 固定資産税納税通知書
  • 運転免許証などの本人確認書類
  • 実印
  • 印鑑証明書
  • 検査済証

査定時にあるとよい書類は、査定額の精度が増す可能性があります。

家の売却を依頼する不動産会社によっても必要書類の異なるケースがあるため、事前に確認しておきましょう。

家の売却にかかる費用の目安

家の売却にかかる費用のイメージ

家の売却時はお金が入るだけではなく、諸費用として出ていくお金もあります。

売却にかかる諸費用は次の通りです。

諸費用 費用や控除額の目安
不動産会社への「仲介手数料」 最大で売却価格の5.5%まで
「土地境界確定測量」にかかる
土地家屋調査士への報酬
35~80万円
ハウスクリーニングの費用 3~20万円
売買契約書にかかる「印紙税」 1,000~6万円
司法書士へ支払う抵当権抹消にかかる
「登録免許税」
1~6万円
売却益にかかる「譲渡所得税」 最大で3,000万円控除

売却予定の家が実際にどのくらいの費用が必要なのか知りたいときは、査定の依頼時に不動産会社に確認しましょう。

家を売却しやすい2つのタイミング

家を売却しやすいタイミングのイメージ

家を売却しやすい2つのタイミングは以下の通りです。

  • 2~3月の成約に間に合わせる
  • 築20年以内に売る

売却時期を考えて売ると、買主が早く見つかる可能性が高くなります。

それぞれを詳しく解説します。

①2~3月の成約に間に合わせる

例年、2〜3月は不動産の売却市場が活発化しているため、販売価格が下がりにくい傾向があります。

公益財団法人不動産流通推進センターでは、2020年8月から2025年8月までの既存戸建住宅の物件動向をデータ化しています。

既存戸建住宅の物件動向データ 8月と12〜1月の間は住宅価格が下がり、2月から上昇している。

出典:公益財団法人不動産流通推進センター「指定流通機構の物件動向」

上記のグラフから、8月と12〜1月の間は住宅価格が下がり、2月から上昇していることがわかります。

家の売却を予定している場合は、上記のタイミングにあわせて早めの売却準備が必要と言えるでしょう。

②築20年以内に売る

年月の経過とともに家は売れにくくなっていきます。

家の構造にもよりますが、木造住宅の場合は一般的に、築20年を超えると建物の価値がなくなると考えたほうがよいでしょう。

以下の表にあるように、東日本不動産流通機構による築年数をもとにした調査結果を確認しても、築20年を超える中古戸建住宅は価値が低下しています。

築年数の経った空き家を所有しており、将来的に売却が決定している場合は、売却に向けて早めの行動がおすすめです。

東日本不動産流通機構による築年数をもとにした調査結果。築20年を超える中古戸建住宅は価値が低下している。

出典:REINS TOWER「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2023年)」

家の売却をおすすめできないタイミング

家の売却をおすすめしないタイミングのイメージ

家の売却におすすめしないタイミングは以下の通りです。

  • 市場相場が値下がっているとき
  • 税制優遇措置が適用されないとき

上記のタイミングに当てはまると損をする恐れもあるため、確認しておきましょう。

①市場相場が値下がっているとき

市場相場には活性化するタイミングと値下がりするタイミングがあります。

値が下がっているときや、今後の値下がりが予想される時期に売り出してしまうと、安く売却しなくてはならない恐れがあります。

一方、今後開発が予定されているエリアの不動産を売却する場合、今後市場相場が上昇する
ことが予想されます。

中古住宅の市場動向をみながら不動産会社と相談して、売却時期を決めるとよいでしょう。

②税制優遇措置が適用されないとき

譲渡所得や特別控除などの税金の優遇措置は、タイミングによって節税効果が異なります。

家の売却時に利益が出ると、「譲渡所得」として次の通りに税金がかかります。

所得区分 不動産の所有期間 所得税 住民税
長期譲渡所得 5年以上 15% 5%
短期譲渡所得 5年以下 30% 9%

売却時に家の所有期間が5年以上であるほうが、節税効果があると言えるでしょう。

また、所有期間に関係なくても、要件によっては譲渡所得から最高で3,000万円の控除が適用できる「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」もあります。

居住したことのある家の場合は、住まなくなってから3年経過した年の12月31日までに売る必要があるため、特別控除を活用する際には売却のタイミングに気を付けましょう。

売却前の注意点

売却前の注意点のイメージ

家の売却を後悔しないために知っておきたい、売却前の注意点は2つあります。

①売却スタイルにあった媒介契約を選択する

不動産会社との媒介契約には3種類あり、売却の目的や売却する物件にあわせて選択する必要があります。

主な特徴は次の通りです。

契約の種類 不動産会社との
複数契約
売却活動の報告 買主との直接売買
一般媒介契約 可能 任意 可能
専任媒介契約 不可 月に2回以上 可能
専属専任媒介契約 不可 月に4回以上 不可

一般媒介契約がもっとも自由度の高い媒介契約ですが、物件の情報をまとめたり管理したりする必要があります。

状況に応じた媒介契約を結ぶのがおすすめです。

>> どれがいい?3種類の媒介契約をプロが徹底解説

②リフォームする際は不動産会社に相談する

家の売却時にリフォームしたほうが高く売れるからといって、自己判断でのリフォームはやめておきましょう。

購入希望者のなかには、できるだけ安く買いたい方もいるためです。

リフォームするかどうかの判断は不動産会社に相談してからが得策です。

販売活動中の注意点

販売活動中の注意点のイメージ

家の売却を後悔しないために知っておきたい、販売活動中の注意点は2つあります。

①売買契約書を隅々まで確認する

売買契約書には、売却価格や買主とのやり取りで取り決められた内容について、すべてが記載されています。

内覧時に買主との間で口頭の約束をおこなったとしても、契約書上に記載されていないと意味がありません。

取り決めのすべてが売買契約書に記載してあるかを、隅々まで確認しましょう。

②瑕疵があれば伝える

家の欠陥や不具合を意味する瑕疵(かし)を隠したまま売却すると、「契約不適合責任」となり損害賠償を請求される恐れがあります。

破損個所の修理の請求ばかりか契約解除に発展する事態にもなりかねないため、売却前に必ず不動産会社に伝えましょう。

【家の売却】早期に高く売る4つのコツ

早期に高く家を売るコツのイメージ

家を早めに高く売りたい方が知っておきたい4つのコツは、以下の通りです。

  • 周辺の売却相場を知る
  • 実績のある不動産会社に依頼する
  • 査定内覧時は家を綺麗にする
  • 売却価格にこだわりすぎない

それぞれを詳しく解説します。

①周辺の売却相場を知る

家の売却時には、周辺相場について調べると適正価格で早く売れる可能性が高くなります。
家は販売価格が高すぎると売却までに時間がかかり、安すぎると早期に売却する傾向は高いですが、損をしてしまう恐れもあります。

理由は、売り出し価格で成約が成立するわけではないためです。

購入希望者との売却価格の交渉時にも役立つため、周辺の売却相場をあらかじめ確認しましょう。

②実績のある不動産会社に依頼する

早期に売却するためには、実績のある不動産会社に依頼することが肝心です。

物件に合った最適なプランで売却活動がおこなわれるため、早く買主が見つかる可能性が高いでしょう。

また、営業担当者とのコミュニケーションがスムーズにとれるかどうかを査定時に確認しておくと、今後の打ち合わせ時に安心です。

③査定内覧時は家を綺麗にする

家の査定や内覧時に家の印象をよくすると、売却の成功率がアップします。

室内だけでなく、庭やアプローチなども掃除して好感度をあげましょう。

自分でやる時間のない方は、ハウスクリーニングを利用する手もあります。

早期に売却するためには、家を綺麗な状態にしておきましょう。

④売却価格にこだわりすぎない

仲介での売却時には、購入希望者との価格調整を予定し、売り出し価格を高めに設定しておきます。

早く売却したいときは、買取も検討するとよいでしょう。

買取は不動産会社に直接買い取ってもらうため、スピーディーに売却可能です。

しかし、一般的な仲介の場合より、2〜3割ほど価格が低くなるデメリットもあります。

状況に応じた価格設定が重要と言えるでしょう。

家の売却時によくある疑問

家の売却でよくある質問のイメージ

家を売却する方それぞれに理由があります。

それぞれのシチュエーションに沿った疑問点を解説します。

>> 住宅ローンが払えないときはどうする?原因や対処法などを解説

①住宅ローンを返済中でも売却できるのか

住宅ローンの残債がある場合、家は売却できません。

しかし、住宅ローン返済中でも売却できる方法はあります。

以下の①~⑤の売却方法別にメリット・デメリットを解説します。

売却方法 メリット デメリット
①預金などで完済する すぐに売り出せる 手持ちのお金がないと実行できない
 ②不動産会社に仲介してもらう 売却時の利益で住宅ローンを返済できる 住宅ローンの返済に充てるために、売却価格を高く設定する必要がある

早期に売りにくい
③住み替えローンを活用する
(新たに家を購入するケース)
住宅ローンの残債とあわせて新たに住宅ローンを組める 売却日と購入決済日を同日にする必要がある

成約価格を下げなければいけない恐れ
④つなぎ融資を活用する(新たに家を購入するケース) 1年ほどの短期型の融資を受けられる 借入期間後は一括で返済する必要がある
⑤任意売却する(離婚するケース) 金融機関と相談した価格で売却できる 売却後も住宅ローンを支払う必要があり、今後の借入れが難しくなる恐れもある

状況に応じた最適な住宅ローンの返済方法について、不動産会社の営業担当者に相談するとよいでしょう。

>> 任意売却とは?進め方やメリット・デメリット、不動産会社選びのコツを解説

②築年数が経過した家でも売却できるのか

築年数が経過した家の場合、再建築不可(現在の建築基準法で建てられていない建物)ではないかをまず確認する必要があります。

再建築不可の場合、新たに家を建てられない恐れや、建てられる家に規制がかかり思うように売却できない恐れがあるためです。

また、建築後20年以上経過した建物を「古家(ふるや)」といい、現状での売却は難しいと考えるのが一般的です。

通常の売却方法では買主が見つかりにくいため、以下で対応します。

  1.  更地にしてから売却する
  2. 古家付き(ふるやつき)の土地として売却する
  3. リフォームをして綺麗にしてから売却する
  4. 不動産会社に買取をしてもらう

どのような売却方法にするのがよいかは、家の状態などで異なります。

>> 古家つきの土地は更地にして売却すべき?解体費用や税金について解説

③相続した家はどうやって売却するのか

相続した家の場合、所有者を売却する方の名義にするための「相続登記」をしないと売却できません。

家の売却の際には、土地と建物それぞれに相続登記が必要です。

不動産の所有者を変更したあとに売却をすすめましょう。

④遠方にある空き家を売却するためにはどうすればよいのか

遠方にある空き家の場合でも基本的に、査定時には立会いが必要です。

また、内覧や引き渡しまでの期間は人の手が入らないため、家の管理を怠らないようにしましょう。
遠方で定期的な管理ができない場合は、専門業者に売却までの間、管理を依頼するのもおすすめです。
ローン実行日に現地に行けないケースでは、委任状を作成し、代理人に任せることも可能です。

>> 空き家の売却方法とかかる費用・税金について徹底解説

まとめ

家を売却するのは3つの方法があるイメージ

家を売却するときは、仲介、買取、個人売買の3つの方法があります。

売却価格や売却までの期間などによってどのような売却スタイルにするのかを検討します。

実績のある不動産会社に依頼し、売却価格にこだわりすぎないなどコツを抑えれば、家を早期に高く売却できる可能性が高くなるでしょう。