この記事の概要

  • 不動産の査定には「AI査定」「簡易査定」「訪問査定」の3つがある
  • 査定額の決め方は「取引事例比較法」「原価法」「収益還元法」の3つの方法がある
  • 査定時に必要な書類は「登記事項証明書」「登記済証」「土地の測量図」などがある

不動産の売却は経験することの少ないケースであるため、どれくらいで売れるのか、高く売れるのかと不安になる方もいることでしょう。

本記事では、不動産査定とはなにか、査定方法や流れ、注意点などを解説します。

不動産の売却がはじめての方でも不動産査定についてしっかりと理解すれば、はじめての不動産売却でも安心できるでしょう。

不動産査定は売却へのスタートライン

不動産査定は売却へのスタートである事のイメージ

不動産査定とは、不動産の売り出し価格を決める大切なプロセスです。

「いくらくらいなら売却できるのか」という疑問を解決し、「売却できる価格の目安」がわかります。

買い替えを希望する方にとっては、つぎに購入する不動産の予算が把握できるメリットもあるでしょう。

しかし、不動産査定はあくまで売り出し価格の目安となるため、実際の成約価格とは異なります。

公益財団法人東日本不動産流通機構が発表した「首都圏 中古戸建住宅価格の推移」をご覧ください。

公益財団法人東日本不動産流通機構が発表した首都圏 中古戸建住宅価格の推移 売り出し価格である新規登録価格と成約価格では、平均して500〜600万円ほどの差がある。


引用:公益財団法人東日本不動産流通機構「月例速報 Maeket Watch サマリーレポート  2023 年 8 月度

売り出し価格である新規登録価格と成約価格では、平均して500〜600万円ほどの差があります。

したがって、実際に売却できる価格と査定額が異なる可能性が高いことをあらかじめ把握する必要があるでしょう。

依頼する不動産会社によっても査定額は異なります。

不動産査定は無料でおこなえるため、複数の不動産会社から見積りをとり、依頼先を決めることをおすすめします。

不動産の査定方法は3パターン

不動産査定方法のイメージ

不動産会社がおこなう査定方法は次の3パターンです。

  1. AI査定
  2. 簡易査定
  3. 訪問査定

それぞれに査定額の精度が異なるため、状況に応じて査定方法を選びましょう。

①AI査定

AI査定とは、インターネット上で気軽に不動産査定ができる不動産シミュレーターです。

売却予定の不動産がある住所や築年数、床面積などの情報を入れると、AI(人工知能)が不動産の査定をおこないます。

過去の成約データをもとに査定価格を導き出すため、査定価格の精度は低いと言えます。

しかし、売却を考えはじめた方がおおよその売却価格を知るためには、簡易的に把握できるAI査定が最適な方法と言えるでしょう。

②簡易査定(机上査定)

簡易査定(机上査定)とは、物件情報や過去の取引実績、市場動向などをもとに不動産会社が査定する不動産査定です。

電話やメールなどで得た物件の基本情報にもとづいて不動産会社の担当者が査定するため、実際に足を運ばなくても不動産の価値がおおよそ把握できます。

依頼する不動産会社によって結果が出るまでの期間は異なり、最短で即日、長いと数日ほどかかるでしょう。

不動産そのものを見て査定していないため、訪問審査よりは精度が下がります。

売却までに時間のある方や、査定価格によって売却を決めたい方などに向いていると言えるでしょう。

③訪問査定

訪問査定とは、不動産会社が現地訪問して不動産の外観や内観、立地条件、周辺環境などを総合的に判断して査定する方法です。

不動産価格を決めるうえでの高精度な査定と言えます。

訪問審査後に結果が出るまでは、1〜2週間ほどかかるとみておきましょう。

不動産会社の営業担当者との関わり合いが密にできるため、信頼できる不動産会社かどうかの見極めも可能です。

早く売りたいのか、時間がかかったとしてもなるべく高く売りたいのかなどでも売却価格は変わります。

訪問査定では売主の状況に応じた柔軟な相談ができるため、売却が決定している方に向いています。

不動産の査定額の決め方

不動産査定額の決め方のイメージ

不動産の査定額の決め方は次の通りです。

  • 取引事例比較法
  • 原価法
  • 収益還元法

対象となる不動産によって、上記の3つの方法で査定額を決めています。

ここからは、それぞれどのような査定内容なのかを解説します。

取引事例比較法(マンション・土地向き)

取引事例比較法では、過去の売却事例から査定額を算出します。

土地の売却時の計算式は次の通りです。

土地の価格=「平均坪単価(成約事例) × 専有面積(売却物件)」

たとえば、成約事例が㎡あたり50万円、売却する土地の面積が50㎡だった場合、計算式は次の通りです。

50万円 × 50㎡=2,500万円

算出結果をもとに、方角や日照条件、高低差などを加味して精度をあげた査定額を導き出します。

市場動向と類似性のある不動産の売却データから査定額を算出するため、マンションや土地の売却時に用いられることが一般的です。

>> メリットとデメリットを把握しておこう!取引事例比較法とは

原価法(一戸建て向き)

原価法では、不動産をもう一度建てた場合にどれくらいの費用がかかるのかを築年数を加味して算出します。

算出式は次の通りです。

不動産価格=「再調達単価 × 延床面積 ÷ 耐用年数 × 残存年数(耐用年数-築年数)」

再調達価格とは、今ある建物を壊して再度建て直すときにかかる費用の目安です。

また、残耐用年数(耐用年数−築年数) × 耐用年数で求められる減価修正率は、建物の設備における劣化分を差し引くことを意味します。

ちなみに木造住宅の耐用年数は33年です。

築12年の延床面積が100㎡の木造住宅で、再調達原価が20万円、減価修正率が60%の場合の計算式は次の通りです。

20万円 × 100㎡ × (33ー12) ÷ 33=約1,272万円

耐用年数である33年を超過している不動産の場合、査定額は0円となります。

>> 原価法の計算式の重要なポイント!再調達原価とは

収益還元法(投資用不動産向き)

収益還元法とは、不動産の将来的な利益から査定額を算出する方法であり、次の2パターンあります。

  • 直接還元法:1年間の利益と周辺の不動産の収益性から算出
  • DCF法:将来的に予想される利益と売却価格から算出

直接還元法の算出式は次の通りです。

不動産価格= 「1年間の純収益 ÷ 還元利回り」

還元利回りは、賃貸用の住宅であれば一般的に5〜8%ほどです。

たとえば、毎月15万円の家賃収入があり維持管理で年間30万円の経費がかかる、還元利回り7%の不動産で算出すると、査定額は次の通りです。

(15万円 × 12ヶ月ー30万円) ÷ 7%=約2,142万円

一方、DCF法については、空室などで家賃収入が得られないリスクを想定した算出方法です。

専門的な算出方法になるため、査定を依頼する不動産会社に算出してもらうことをおすすめします。

>> 利回り「○%」って?不動産投資の基礎知識「収益還元法」

不動産査定の流れ

不動産査定の流れのイメージ

実際に不動産査定をおこなう際の流れを解説します。

  1. 不動産会社に査定を依頼する
  2. 査定日時の打ち合わせ
  3. 査定に必要な書類を揃える
  4. 現地調査の立ち合い
  5. 査定結果の確認

まずは、不動産会社に査定の依頼をします。

不動産の査定時は基本的に立ち合いを求められるため、不動産会社とのスケジュールを調整しましょう。

現場の調査では、査定の実施のほか、どれくらいの価格でいつまでに売却したいのかなどの要望も伝えることも大切です。

査定結果が出たら「なぜこの査定額なのか」を聞き、査定額が妥当なのかを判断すると、不動産の売却を安心して任せられる業者かどうかの判断もしやすいでしょう。

不動産査定時の必要書類

不動産査定時の必要書類のイメージ

不動産査定時に必須な書類と、あるとよい書類は次の通りです。

必要な書類
  • 登記事項証明書(登記簿謄本)
  • 登記済証(権利証)または登記識別情報
  • 土地の測量図や建物の図面
  • 公図
     
あるとよい書類
  • 売買契約書
  • 建築確認済証または検査済証
  • 建築設計図書または工事記録書
  • 境界確認所
  • 住宅性能評価書
  • 耐震診断報告書
    インスペクションの結果報告書
    瑕疵担保保険の付保証明書
    リフォームの契約書
     


必須な書類は、住宅の査定額を正確に見積もるために必要です。

あるとよい書類は、提出することで査定の精度が高くなり、査定額が高くなるケースもあります。

不動産会社によっても必要書類が異なるため、査定の依頼時に確認するとスムーズに査定を進められるでしょう。

不動産査定時にチェックされる3つのポイント

不動産査定時にチェックされるポイントのイメージ

不動産の査定時に不動産業者がチェックするポイントは次の通りです。

  1. 依頼者へのヒアリング
  2. 現地での調査
  3. 現地での調査(周辺状況)

それぞれの項目の詳しい内容を解説します。

①依頼者へのヒアリング

依頼者へのヒアリングでチェックされるポイントは次の通りです。

  • 売却理由
  • 築年数や建物の構造
  • 住宅ローンの残債
  • 瑕疵や不具合箇所の有無

売却理由によっては売却の戦略が異なります。

買い替えの場合、特約として引渡しまでの期間に猶予がもらえることもあるため、査定時に伝えておくとよいでしょう。

築年数は、査定額を決めるうえでの大きなポイントです。

木造戸建ての場合、築10年が経過すると建物の価値は半分ほどになり、築30年を経過すると建物自体の価値はほとんどなくなるためです。

住宅の売却時には、住宅ローンをすべて返す必要があります。

残債がある場合、手持ちの資金がいくらなのか、どうやって返済するのかなどを相談する必要があります。

そのほか、売却後のトラブルを防止するため、雨漏りや設備不良などの不動産の瑕疵(欠陥)や不具合がある場合は包み隠さずに伝えましょう。


②現地での調査(敷地内)

住宅のある敷地内で現地調査する際に、不動産会社が確認するポイントは次の通りです。

  • 土地や立地条件
  • 建物の外装
  • 住宅設備や内装

建築基準法では、道路に2m以上接していないと接道義務を果たしていないとされ、再建築不可となります。

すると、査定額が低くなるほか売却方法が限られる可能性があるため、査定時には必ず確認します。

土地の形状や広さのほかにも、高低差があるかどうか、日照に問題はないかなども調査することが多いです。

住宅内では、内装や水回りの設備などの劣化の程度も確認します。

太陽光発電などが設置してある住宅では付加価値が付き、査定額が高くなる傾向が高いです。

>> 建築基準法の接道が丸わかり!条件と満たさない場合の対処法

③現地での調査(周辺状況)

不動産の査定では、周辺環境の調査も重要なポイントです。

  • 工場や風俗店などの有無
  • 騒音の有無
  • ゴミ置場の管理状況

住みやすい環境かどうかは周辺環境によっても大きく変わります。

風紀の乱れていない静かな住宅街なのかどうかを、周辺に工場や風俗店の有無などで確認します。

そのほか、スーパーや病院などの施設や学校があるかどうかも重要なポイントです。

ゴミ置場の管理状況を把握すると、自治体が機能しているかどうかを把握できます。

人が住みやすい環境であるほど、査定額は高くなると言えるでしょう。

不動産査定時の注意点3選

不動産査定時の注意点のイメージ

不動産の査定時に注意したいポイントは次の通りです。

  1. 売却のタイミングを決めておく
  2. 周辺相場と比較する
  3. 設備の不具合や瑕疵がないか確認する

あらかじめ確認しておくと査定から売却までスムーズにおこなえるため、注意したいポイントを把握しておきましょう。

①売却のタイミングを決めておく

住み替えなどの引越しを伴う不動産の売却の場合、売却のタイミングを決めておく必要があります。

戸建ての売却を開始してから買主が現れるまでには、3〜11ヶ月かかるのが一般的です。

また、買主との売買契約が締結してから引渡しが完了するまでは、1〜2ヶ月ほどかかります。

したがって、売却開始から引渡しまでに1年以上かかる場合があることをも加味し、スケジュール調整をする必要があると言えるでしょう。

売却時には不動産会社に「いつまでに売却したいのか」を伝えて、売却価格や売却方法をプランニングしてもらうことをおすすめします。

②周辺相場と比較する

不動産の査定価格は依頼する不動産会社によって異なるため、周辺の売却物件との相場を比較する必要があります。

売却価格が高すぎると買主が現れにくくなり、安すぎると早期に売れる可能性は高くなりますが、売却益が少なく損をしてしまう可能性があります。

立地や土地の広さ、住宅の床面積などが似ている条件の住宅を物件情報サイトで探し、売却価格を比較して適正な価格であるかを見極めることが重要です。

③設備の不具合や瑕疵がないか確認する

売却する不動産にある不具合や瑕疵(欠陥)を報告しないまま売買契約をおこなうと、契約不適合責任を問われる可能性があります。

たとえば、雨漏りがあるのを知りながらもその旨を隠して売却し、引渡し後に買主とのトラブルに発展した場合は、損害を負担するケースも出てくるでしょう。

不動産に設備不良などがあると、査定価格の下がる心配が出てきます。

しかし、売却後のトラブルを避けるためにも、契約内容との相違が生じないように設備を確認し、査定時には必ず不動産会社に告知しましょう。

>> 不動産売却における契約不適合責任とは?瑕疵担保責任との違いを解説

不動産売却を成功させる2つのコツ

不動産売却を成功させるコツのイメージ

不動産売却を成功させるためのコツは次の通りです。

  1. 売却までのスケジュールに余裕をもつ
  2. 信頼できる不動産会社に依頼する

トラブルや不安感なく進めるためにも、それぞれを確認しておきましょう。

①売却までのスケジュールに余裕をもつ

立地条件や築年数などの不動産の状況によっては、売却までに1年以上かかることもあります。

売却までに時間がかかると売却価格を下げなければいけないケースも出てくるため、希望の売却価格がある場合は、ゆっくりとしたスケジュール管理が重要です。

また、土地や戸建てを売却する場合、隣りの土地との境界線が曖昧であると、確定測量をおこなってからでないと売却が進められません。

確定測量には3〜4ヶ月かかるため、長期的なスケジュールを立てる必要があると言えるでしょう。

②信頼できる不動産会社に依頼する

信頼できる不動産会社であるかどうかを判断するポイントは次の通りです。

  • 売却実績や知識が豊富か
  • 相談しやすい営業担当者か

売却実績が豊富な不動産会社の場合、売却戦略の得意なことが多いでしょう。

希望の売却価格、売却期間で買主が見つかりやすいと言えます。

疑問点や不安点に寄り添った対応をしてくれる営業担当者かも重要です。

不動産売却は大きなお金が動くため、精神的にも疲れてしまうケースもあるでしょう。

相談しやすい真摯な対応をしてくれるかどうかも不動産売却を成功させるコツです。

まとめ

この内容のまとめのイメージ

不動産査定は、売却時の売り出し価格を決める大切なスタートラインです。

査定時には、物件の築年数や外観、内装、設備などの状況のほか、土地や立地、周辺状況などのさまざまなポイントから査定額を算出します。

査定価格が高ければよいわけではありません。

周辺相場と相違ない査定額であるかどうか、売却のタイミングも計画しながら、スムーズに売却するとよいでしょう。

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