マンションを売却する場合、売却時期をいつにするかによって売却の成否が決まるといわれることがあります。需要がなければ売却は難しくなりますし、売却時期によって税負担が変わることもあります。そこで、どんな時期にマンションを売却すると有利なのかについてお伝えします。  

マンション売却時期は不動産の需要時期に合わせて考えよう

不動産売却の特徴は、売却までの時間が長くなる可能性があることです。自動車や株式であれば売却を決めたその日に売買契約を成立させるのは、それほど難しいことではありません。

しかし、不動産の売却においては、数カ月売れないことは珍しくなく、なかには数年かけても買手が現れないというケースもあります。土地や一軒家よりはマンションの方が少しだけ流動性は高く、売却までにかかる時間が短縮される可能性はありますがそれでも数カ月程度待つ覚悟は必要でしょう。

ただし、その時期をできる限り短くすることは可能です。その方法とは、需要が旺盛な時期に売却することです。

市場に買手がいなければいくら価格を下げても売れませんが、市場に数多くの買手がいる時期に売却すれば、有利な価格で素早く売却を決めることにつながります。一般的には、人事異動や入学などに伴う引っ越しが多くなる時期は3月~4月と9月~10月だといわれています。

引っ越しの少し前には転居先を決めることになるでしょうから、マンション需要が高まる時期は引っ越しが多い時期の少し前と考えるとよいでしょう。2月~3月・8月下旬から9月といった需要が高まる時期を考慮してマンション売却時期を決めましょう。  

消費税アップは仲介手数料アップに直結!増税時期は要チェック

マンションを売却する場合に考慮しておきたいこととしては消費税の増税もあげられます。消費税は2014年に5%から8%にアップしました。その後、延期などがありましたがさらに10%まで増税することが法律で決まっています。

消費税アップに悩む女性

不動産会社などが保有しているマンションを購入する場合、建物部分については消費税が課税されることになっています。そのため、消費税の増税があればマンション価格は増税分アップすることになります。個人が居住用のマンションを売却する場合、消費税納税義務者に該当するケースはほとんどないと考えられますので、消費税増税による直接的な影響はほとんどないでしょう。

しかし、増税前の駆け込み需要の発生が想定されますので売却時期を決めるという点で間接的な影響を受けます。また、仲介手数料も消費税の課税対象である役務提供に該当しますので、消費税の増税があれば仲介手数料も高くなることにつながります。売却時にも仲介手数料は発生しますので、増税後は負担が増えることになります。

そう考えると、消費税が10%に上がる前の駆け込み需要に合わせてマンションを売りに出せば、需要も見込め売りやすくなり、仲介手数料も増税前の金額で済みますので一石二鳥と言えるでしょう。

金利はどうなっている?住宅ローン金利の動向

マンションの売却時期を検討する場合は、金利動向にも目を向ける必要があります。その理由は、住宅ローンの金利が下がると住宅購入の需要が高まり、中古のマンションも売りやすくなるからです。

家計収入が伸びて住宅取得の需要が高まっているにもかかわらず、まだ低金利状態という景気回復初期がマンションを売り出す時期として適していると考えられます。

住宅ローンの金利は市場の金利に連動しています。固定金利は長期国債金利、変動金利は短期プライプレートと深い関係があり、市場の金利が上がれば住宅ローンの金利も上がり、市場金利が下がれば住宅ローン金利も下がります。市場金利は、リーマンショック後の日本銀行による金融緩和政策などの影響で下がり続けてきましたが、マイナス金利政策の導入後は下げ止まる傾向もみられるようになっています。

住宅ローンの金利は、優遇金利や期間限定キャンペーンなどがあるため単純な比較は難しいですがキャンペーンなどを除いた標準的な金利としては、変動金利が0.5%前後、35年固定金利は1.2%前後という金融機関が多いようです。

所有期間によって変わる譲渡所得の税率

マンションを売却する時期を検討する場合は、所有期間にも気をつける必要があります。その理由は、所有期間が短いほど売却益にかかる税金が高くなる可能性があるからです。

マンションを売却したことによって発生した売却益は、所得税法上、不動産の譲渡所得として課税の対象となります。分離課税とされていますので、ほかの所得とは関係なく不動産の売却益に一定の税率を乗じて税額を確定することになります。問題は、その税率が所有期間によって3段階に分かれていることです。

一番税率が高くなるケースは、所有期間が売却をした年の1月1日時点で5年以下である場合です。売却益に対する税率は、所得税30%、復興特別所得税0.63%、住民税9%で合計約40%もの税負担になります。

2段階目は売却年の1月1日時点で5年超10年以下の場合です。税率は所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%で約20%となります。さらに3段階目は特例税率です。居住用不動産向け軽減税率の特例を適用できるのは所有期間が10年超の場合で、税率は所得税10%、復興特別所得税0.21%、住民税4%で合計約14%です。

適用税率が下がる前後で売却を検討している場合は、税率が下がる時期まで保有を継続し、その後売却するのも選択肢のひとつでしょう。注意すべき点は、所有期間を判断する場合に実質的な保有期間ではなく、売却年の1月1日時点での所有期間でカウントすることになっている点です。実質的な保有期間よりも短くなりますので勘違いしないように気をつけましょう。  

時期よりも大切なことは?マンション売却を成功させるために

マンションの売却を検討する場合、どの時期に売り出すかは重要な要素であることは間違いありません。しかし、売却時期ばかり考えているとマンションの売却自体に失敗してしまう可能性がありますので注意が必要です。

抵当権の抹消など権利関係を整理していないためトラブルが生じたり、売買契約書におかしい点があるなど手続きの問題で売却できなかったりするケースもありますので、まずやるべき手続きはしっかり行いましょう。

次に、信頼できる仲介業者を見つけることも大切です。 

信頼できる仲介業者

不動産業者がしっかり仲介活動をしてくれなければ売れるものも売れなくなってしまいます。マンションの買い換えをする場合は、両方同じ業者に依頼することも有効だといわれています。また、業者の免許番号の数が大きければ問題なく更新された回数が多いことを示していますので参考にするとよいでしょう。

仲介業者によっては、個人よりも法人向けの仲介を得意としているところもあれば、個人を中心に仲介しているところもあります。個人のマンション売却の仲介経験が豊富な業者を選ぶことも大切でしょう。

そして、最も重要なポイントは売却価格の設定です。

いくら需要が旺盛な時期に売り出しても相場とかけ離れている価格では売却は成功しません。近隣の相場に詳しい業者の意見なども参考にしながら、適切な売却価格を設定してマンション売却を成功させましょう。

まとめ

マンションを売却するにあたっては、人事異動や入学などによる引越しが多い時期の少し前に売り出すと需要が多く売りやすいでしょう。また、消費税の増税前の駆け込み需要に合わせて売却したり、所得税などの税率が低くなるまで保有してから売却したりといった工夫も大切です。

しかし、売却時期だけに気を使ってもマンション売却を成功させることは難しいでしょう。売却時期をしっかり検討したうえで、やるべき手続き、適正な売却価格の設定、信頼できる仲介業者への依頼といったことを確実に行うことがマンション売却成功につながります。