この記事の概要
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マンションを売却するときには多くの手続きがあり、流れに沿って進めていかなければいけません。
また、マンション売却時には費用がかかるため、費用の内訳と金額を理解するのも非常に大切です。
本記事ではマンション売却時の流れや注意点、費用について詳しく解説していきますので、マンションの売却を検討している方は記事を最後までご覧ください。
この記事の目次
マンションを売却するときの流れ
マンションを売却するときには、さまざまな手順があります。
マンションの売却するときの流れは、次のとおりです。
- マンションの査定をする前の準備
- 不動産仲介会社の査定を受ける
- 不動産仲介会社と媒介契約を締結する
- マンションを売り出して買い手を探す
- 買い手と売買契約の条件を調整する
- 売買契約を締結する
- マンションの引き渡しを行う
- 確定申告を行う
- 住民税を納税する
マンションの売却を終えるまでに、9つのステップが必要です。
各ステップには注意点や、やっておかなければならないことなど知っておくべきことが多くあります。
マンション売却をスムーズに進めるために、売却の流れや注意すべき点などを理解しておきましょう。
マンション売却にかかる7つの費用
マンションを売却するときには、7つの費用がかかります。
マンションの売却金額や、売却する人の状況によって金額が変わったり、支払わなければいけないのかが変わってきます。
費用の内容を知らないと、売却後に「思ったよりもお金が残らなかった」となってしまうため、どのような費用がかかるのか理解しておきましょう。
仲介手数料
仲介手数料は、不動産仲介会社に支払う報酬です。
仲介手数料の金額は売買代金の額により、次のように変動します。
仲介手数料の計算式 | 計算式の利用条件 |
仲介手数料 = 売買金額 × 3% + 6万円 | 売買金額が400万円を超える場合 |
仲介手数料 = 売買金額 × 4% + 2万円 | 売買金額が200万円を超え400万円以下の場合 |
仲介手数料 = 売買金額 × 5% | 売買金額が200万円以下の場合 |
たとえば、マンションを3,000万円で売買した場合の仲介手数料は、次のように計算します。
3,000万円 × 3% + 6万円 = 96万円(仲介手数料・消費税抜き)
仲介手数料は売却費用の中でも大きな金額になるため、金額の計算方法を理解して計算できるようにしておきましょう。
印紙代(印紙税)
印紙代(印紙税)とは、印紙税法に定める課税文書を作成するときに課税される税金です。
印紙税は税額に相当する収入印紙を課税文書に貼付・割印して納税します。
不動産売却時に作成する課税文書の代表例は、不動産売買契約書です。
印紙税は売買金額により、次の表の税額が課税されます。
売買金額 | 印紙税額 |
1万円未満 | 非課税 |
1万円以上10万円以下 | 200円 |
10万円を超え50万円以下 | 200円 |
50万円を超え100万円以下 | 500円 |
100万円を超え500万円以下 | 1,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 5,000円 |
1,000万円を超え5,000万円以下 | 1万円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 3万円 |
1億円を超え5億円以下 | 6万円 |
5億円を超え10億円以下 | 16万円 |
1億円を超え50億円以下 | 32万円 |
50億円超え | 48万円 |
出典:国税庁「印紙税額」
上記の印紙税額は、2024年3月31日までに作成された不動産売買契約書に該当する税額です。
もしマンションを3,000万円で売買するのであれば、不動産売買契約書に1万円分の収入印紙を貼付・割印して納税します。
登録免許税
登録免許税とは、法務局に登記を申請するときに課税される税金です。
マンションを売却する際には、抵当権抹消登記を行うタイミングで課税されます。
抵当権抹消登記に課税される登録免許税は、抵当権を1件抹消するごとに1,000円かかります。
たとえば、マンションの敷地に1件、専有部分に1件設定した抵当権を抹消する場合の登録免許税は次のとおりです。
1,000円 × 2件 = 2,000円(登録免許税)
抵当権抹消登記は、基本的に司法書士に代行を依頼するため、登録免許税に司法書士への報酬が上乗せされます。
司法書士への報酬
司法書士への報酬は、登記の代行をお願いしたときと売渡証書の作成時に支払わなければいけません。
マンション売却時に必要な登記の代行としては、抵当権抹消登記申請が該当します。
依頼する司法書士によって報酬は異なりますが、抵当権抹消登記申請時にはおおよそ1万5,000円ほどかかります。
抵当権の抹消件数が多くなると費用が増加するケースもあるため、目安として考えておきましょう。
また、売渡証書とはマンションの引き渡しのときに作成しなければいけない所有権移転登記申請に必要な書類です。
売渡証書の作成には、おおよそ1万5,000円かかります。
譲渡所得税(復興特別所得税・住民税含む)
譲渡所得税(復興特別所得税・住民税含む)は、マンション売却時に譲渡所得が発生した場合に課税される税金です。
譲渡所得が発生したかどうかは、次の計算式を使って算出します。
譲渡所得 = 譲渡金額 -(取得費 + 譲渡費用)- 特別控除 |
※上記は敷地の譲渡所得税の計算方法で、建物の場合は減価償却の計算も必要です。
譲渡所得税(復興特別所得税・住民税含む)は、譲渡所得に税率を乗じて算出します。
譲渡所得税は高額になるケースもあるため、不動産仲介会社や税理士に譲渡所得税が課税されるのか必ず確認しておきましょう。
関連記事:不動産売却でかかる譲渡所得税とは?計算方法や税率まで解説!
消費税
消費税とは、日本国内で物品やサービスを消費するときに課税される税金です。
マンション売却時には、仲介手数料や司法書士への報酬などに消費税が課税されます。
マンション売却時に課税される消費税は10%です。
たとえば、仲介手数料が100万円(税抜き)だった場合の消費税は、次のとおりです。
100万円 × 10% = 10万円(消費税)
つまり、上記の仲介手数料の税込み金額は、110万円となります。
引っ越し費用や解体費用などそのほかの費用
マンション売却時には、人によって次の費用もかかります。
- 引っ越し代金
- ハウスクリーニング代金
- 住宅ローン一括返済費用 など
引っ越し代金は引っ越しする時期や荷物の量、荷物を運ぶ距離によって異なります。
繁忙期と閑散期の費用の差は激しいため、費用がいくらになるのかは引っ越し業者に確認しましょう。
また、売買契約でハウスクリーニングを売主が実施すると取り決めした場合、ハウスクリーニング代金がかかります。
ハウスクリーニングは使用する薬剤の種類、清掃の範囲で費用が大きく変動します。
代金は見積もりを数社から取得し、比較して決めましょう。
そして、売却代金で住宅ローンを一括返済する場合、金融機関によっては返済のための費用がかかります。
費用は金融機関によって異なるため、あらかじめ確認しておく必要があります。
【時系列別】マンションを売却するときの注意点
マンション売却時には多くの手続きがあり、それぞれに注意すべき点があります。
ここからは、売却前・売却中・売却後の3つの時系列に分けて、注意点を解説していきます。
マンション売却前の注意点
マンション売却前に注意すべき点は、次のとおりです。
- 不動産相場を自分で調べておく
- 売却に必要な書類を準備しておく
- 媒介契約の内容を知っておく
不動産仲介会社の査定を受ける前には、不動産相場を自分自身で調べておきましょう。
不動産相場を調べておかないと、不動産仲介会社から提示された査定額が正しいか判断できません。
自分で不動産相場を調べるときには、国土交通省の指定する機関が運営しているインターネットサイトの「レインズマーケットインフォメーション」を利用するとよいでしょう。
レインズマーケットインフォメーションでは、過去の成約事例が調査でき、価格の推移をグラフ化して確認できます。
所有しているマンションに似た成約事例を検索して確認すれば、不動産相場の目安がわかります。
また、マンションを売却するときには書類を準備しておかなければいけないため、どのような書類が必要か確認しておきましょう。
マンション売却時に必要な書類は、次のとおりです。
書類名など | 内容 |
身分証明書 | 本人確認に必要 |
登記済書(登記識別情報・権利証) | 所有権移転登記時に必要・内容の確認に使用 |
固定資産税納税通知書 | 税額確認に必要 |
ローン残高証明書 | マンションの売出価格を決めるときの参考資料 |
建築確認済証・検査済証 | マンションの売出価格を決めるときの参考資料 |
建築設計図書・工事記録書など |
マンションの売出価格を決めるときの参考資料 |
管理規約・使用細則など | マンションの管理内容や使用ルールの確認のために必要 |
マンション維持費がわかる書類 | 不動産売買契約書に記載しなければいけない事項 |
購入時の契約書・重要事項説明書など | 参考資料として開示・提出 |
パンフレットおよび広告資料 | 参考資料として開示・提出 |
表に記載されている書類を紛失していたとしてもマンションを売りに出すのは可能です。
無くしてしまった場合は、無くしたことを不動産仲介会社に伝えておきましょう。
そして、マンションを売却するときには、不動産仲介会社と媒介契約を締結しなければいけません。
媒介契約には3種類の契約方式があり、次の表のようにそれぞれに違いがあります。
専属専任媒介契約 | 専任媒介契約 | 一般媒介契約 | |
有効期間 | 3ヶ月 | 3ヶ月 | 機関の定めなし |
依頼可能な数 | 1社のみ | 1社のみ | 複数社可能 |
依頼主への報告義務 | 1週間に1回以上 | 2週間に1回以上 | なし |
レインズへの登録義務 | 5営業日以内 (媒介契約締結から) |
7営業日以内 |
なし |
自己発見取引 | 不可 | 可 | 可 |
表のように契約内容が異なるため、どの媒介契約が自分にあっているのか調べておかなければいけません。
媒介契約については詳しく別の記事で解説していますので、下記の記事を参考にしてください。
マンション売却中の注意点
マンションを売り出している最中にも、注意すべき点があります。
マンション売却中の注意点は、次のとおりです。
- 内覧時の対応をきちんと行う
- 買主からの交渉に二つ返事をしない
- 契約内容を理解してからサインする
マンションが早期売却できるかどうかは内覧時の対応に影響されるため、きちんと内覧に対応しましょう。
内覧時の対応とは、内覧前に室内を清掃・整理整頓する、買い手が室内を見ているときの邪魔はしない、住人しか分からない情報を提供するなどです。
買い手は内覧の結果、購入するかどうかを判断するため、内覧は非常に大切なイベントになります。
買い手の購入判断をスムーズに進めてもらえるよう、売主はアシストをしていきましょう。
内覧後に買い手から購入申込書が来ても、値段交渉などの条件交渉が入っても二つ返事をしてはいけません。
条件交渉を受けたときにどのような影響が出るのか、不動産仲介会社に確認しつつ判断しましょう。
また、売買契約書を締結するときには内容を理解してからサインしましょう。
売買契約書は法律用語で表現されているため、内容を理解するのが難しい文書です。
内容を理解しないまま契約してしまうと、トラブルの元になってしまうため注意しなければいけません。
マンション売却後の注意点
マンションの売買契約が終わっても不動産取引はまだ続くため、注意しなければいけない点があります。
マンション売却後の注意点は、次のとおりです。
- 引き渡しまでをスケジュール管理する
- 確定申告を忘れずに行う
売買契約を締結したら引き渡しの準備をしなければいけません。
引っ越しは売買契約で取り決めた日までに行わないといけないため、スケジュール管理をしなければいけません。
契約書で決めた期日を過ぎてしまっても不動産は「仕方ない」で済まされないため、違約金が発生するケースもあるため注意しましょう。
また、マンションを売却したときに譲渡所得が発生した場合、確定申告を行わなければいけません。
確定申告は不動産を売却した年の翌年、2月16日~3月15日の間に行います。
譲渡所得が発生したときの確定申告は義務であるため、確定申告しないと罰則の対象になるため注意しましょう。
マンション売却時の3つの失敗事例
マンションを売却するときには、起きやすい失敗事例が3つあります。
マンション売却時に起きやすい3つの失敗事例は、次のとおりです。
- 不動産会社に囲い込みをされてしまった
- マンションがなかなか売れず焦って売ってしまった
- 居住用財産の3,000万円特別控除の申告を忘れた
失敗事例を知っておけば、自分がマンションの売却時の失敗を防止できます。
不動産会社に囲い込みをされてしまった
囲い込みとは、両手仲介(不動産売買にて、1社の仲介会社が売主と買主の両方を担当する取引方法)を狙った不動産会社が不動産売却情報を隠すことです。
専属専任媒介契約か専任媒介契約を締結し売却できた場合、不動産仲介会社に売主からの手数料が必ず入ります。
もしその不動産会社が買主を見つければ、売主と買主の両方から手数料が入る、いわゆる両手仲介ができます。
両手仲介になれば仲介手数料が倍になるため、不動産仲介会社はほかの不動産仲介会社に買主を見つけられないよう売却情報を隠すわけです。
囲い込みをする不動産仲介会社は減ってきているものの、いまだに囲い込みする会社もあるため媒介契約時にきちんと「囲い込みをしないように」と伝えましょう。
不動産の「両手取引」「片手取引」とは?仲介手数料と囲い込み問題を解説
マンションがなかなか売れず焦って売ってしまった
マンションがなかなか売れず焦ってしまい、買い手からの交渉に対して安易に回答して損してしまう人がいます。
マンションの売却には時間がかかり、東日本不動産流通機構の「レインズデータライブラリー」によると、2022年首都圏のマンションは成約まで平均71.4日かかるとされています。
売れ行きがよい首都圏のマンションでも売り出ししてから成約まで2ヶ月以上かかるため、郊外のマンションであればもっと時間がかかると考えておいたほうがよいでしょう。
マンションを売却するときに焦らないためには、余裕を持ったスケージュールを組むことが大切です。
居住用財産の3,000万円特別控除の申告を忘れた
マンション売却時に譲渡所得が発生すると、譲渡所得税が課税されます。
譲渡所得税には多くの特例が用意されているものの、どの特例も確定申告で申請しなければ適用されません。
多くの人に利用されている「居住用財産の3,000万円特別控除」も確定申告で適用を申請する必要があります。
居住用財産の3,000万円特別控除とは、一定条件を満たした自宅を売却した場合に譲渡所得から3,000万円を控除できる制度です。
居住用財産の3,000万円特別控除が適用されれば、譲渡所得3,000万円までであれば譲渡所得税が無税になります。
制度を利用して減税を図るときには、忘れずに確定申告を行いましょう。
なお、居住用財産の3,000万円特別控除の適用要件は、国税庁のホームページ「No.3302 マイホームを売ったときの特例」でご確認ください。
関連記事:不動産売却の3000万円特別控除はどんな制度?条件や注意点を解説!
マンション売却に関してよくある質問
マンションをこれから売却しようと考えている人は多く、それぞれの人が疑問を持っています。
そのため、次のような疑問に対しての回答を紹介していきます。
- マンション売却の税金はいつ払えばいいの?
- 住宅ローンの残債があっても売却できるの?
- マンション売却の確定申告に必要な書類はなにがありますか?
マンション売却時にどのような疑問が出やすいのか理解し、自分がマンションを売るときの参考にしていきましょう。
マンション売却の税金はいつ払えばいいの?
マンション売却時に課税される税金の支払いのタイミングは、次のとおりです。
- 印紙税:売買契約締結時
- 消費税:仲介手数料や司法書士への報酬支払い時(契約時と引き渡し時)
- 登録免許税:引き渡し時
- 譲渡所得所得税(復興特別所得税含む):確定申告期間中
- 住民税:住民税決定通知書に記載された期日(不動産売却した年の翌年)
マンション売却に関する税金は、それぞれ納税時期が違います。
税金をいつ納税しなければいけないのか理解し、納期に遅れることのないようにしましょう。
住宅ローンの残債があっても売却できるの?
マンションは住宅ローンの残債があっても売却可能です。
ただし、アンダーローンの場合と、オーバーローンの場合では売却できる方法が異なります。
売却金額よりも住宅ローンの残債の方が少ない状態をアンダーローンと呼び、アンダーローンの場合は通常の売却が可能です。
しかし、住宅ローンの残債の方が売却金額よりも多い状態をオーバーローンと呼びますが、オーバーローンの場合は、次の方法でしかマンションを売却できません。
- 住宅ローンの残債から売却金額を差し引いて残った金額を現金で返済する
- 住み替えローンを利用する
- 任意売却を利用する
オーバーローンの状態でマンションを売却するときには通常の売却方法で売れないため、不動産仲介会社に相談し売却できるか確認しましょう。
マンション売却の確定申告に必要な書類はなにがありますか?
マンション売却時の確定申告に必要な書類は、次のとおりです。
- 確定申告書第一表・第二表
- 確定申告書第三表(分離課税用)
- 譲渡所得の内訳書
- 売却したマンションを購入したときの売買契約書の写し
- 売却したマンションの取得費が確認できる領収書の写し
- マンション売却時の売買契約書の写し
- 譲渡費用が確認できる領収書の写し
- 登記事項証明書(全部事項証明書)
- 本人確認書類
- 源泉徴収票もしくは確定申告書の写し
なお、確定申告で特例の申請をする場合は、上記の書類に加えて別の書類が必要です。
どのような書類が必要なのかは特例によって異なるため、税務署に確認してから確定申告しましょう。
マンションを売却するときには流れや注意点を理解しておこう
マンション売却前・売却中・売却後と各手続きには、注意点など理解しておくべきことが多くあります。
また、マンション売却時には多くの費用や税金がかかります。
どのような費用や税金がかかるのか、支払う金額の目安はどのくらいなのか理解しておくことで、マンションの売却がスムーズに進みます。
理解しなければいけないことが多いため、なかなか覚えられないという人は不動産仲介会社にマンション売却の相談をするのもよいでしょう。
相談したからといって必ず売却する必要はありませんので、気軽に相談してみてください。