遺産相続などで手に入れた古家つき土地の売却をする際は、建物を壊して更地にしてから売りに出すべきかどうかの判断は難しいものです。一度壊してしまえば取返しはつかないので、更地にするかどうかは慎重に判断する必要があります。
そこで、今回は売りに出す古家つき土地を更地にすべきかどうかの判断基準について解説していきます。

 

古家つき土地とは

 

建物を残して土地を売るメリットとデメリット

古家つき土地(ふるやつきとち)とは、古い建物が建っている土地です。
一般的に流通している中古戸建て物件と異なり、建物にほとんど経済的価値がありません。

古家と呼ばれる物件の基準は正確には決まっていませんが、築20年以上の建物や建物の状態によって判断されることが多いです。

古家つき土地を売却するメリット・デメリット

古家つき土地を売却しようとしたとき、古屋つき土地として売り出す方法と、古い家屋を解体して更地にした上で売り出す方法があります。

ここではそれぞれのメリット・デメリットを解説していきます。

建物をそのままにして土地を売るメリットとデメリット

メリット

・解体費用がかからない

売り主にとって一番のメリットは解体費用がかからないことです。

古屋つき土地として売却する場合は、建物が建っている状態で売却するため解体費用が発生しないので、費用面の負担を減らすことが出来ます。

・固定資産税を節税できる

土地だけの場合に比べて固定資産税が6分の1も安いため、落ち着いて売却活動を進めることが出来ます。仮に売れ残ったとしても必要以上の出費を強いられることはないでしょう。

・古家を買い主が利用できる

買い主にとって、建物が建っていたほうが日当たりの具合や屋上からの眺めなどを確認でき、暮らしていくうえでのイメージを掴みやすいというメリットがあります。一般の人にとっては、不動産は決して安い買い物ではないので、そうした具体的なイメージを重視する人も少なからずいます。

・買い主が住宅ローンを利用できる

土地だけを購入する際には受けられない住宅ローンについても、建物が残っていればローンを受けられるという買主側のメリットもあります。ですから、一括で買うほどの余裕はないがローンを組んででも欲しいという買い主からも声がかかる可能性が出てくるのです。

デメリット

・売却価格が下がってしまう

古い家屋が建ったままの土地は、土地の査定額から解体費用をマイナスした価格で売りに出されることが多いです。

また、初めから建物を解体する予定の買い主から解体費用分の値引きを要求されることがあります。

・買い手がなかなか見つからない

金額的には売り主が解体しても買い主が解体しても結局同じことなのですが、買い主の感じ方は違います。

買い主は感覚的に、不動産を購入した上に解体費用も捻出しなければならないというように考えます。そのうえ、解体費用というのはローンが組めないので、一般の購入希望者は離れていくことが多く、不動産業者が競争に残ることになります。

・瑕疵担保責任に問われる場合がある

瑕疵担保責任とは、売買契約後に契約時点では明らかでなかった欠陥が見つかった場合に売り主が負う責任です。買い主が建物を解体したあとで家の下から埋設物が見つかることがあります。同様に、建設工事を始めたら地中から大きな石や廃材などが出てくることもあります。
これらは土地の隠れた欠陥と判断されるので、売り主側で除去や処分の費用を負担することになります。

ただし、古家の場合は契約時に瑕疵担保責任を免責できる場合もあるので確認しておきましょう。

更地にしてから売却するメリットとデメリット

メリット

・買い手が見つかりやすい

更地で売却する場合、すぐに建物を建設したい人や建物以外の別の用途での買い手も増えます。
また、地盤調査や土壌調査もすぐに行うことが出来ます。

そのため、更地にすれば購入希望者が多く早期に売却できるというメリットがあります。

・物件の瑕疵を事前に発見しやすい

土地も建物も一回崩してみないことにはわからない不具合や瑕疵、契約上の不適合責任などがわからないことも多くあり、解体+整地をした場合に土中の埋設物などが発見されて契約トラブルが未然に防げる場合もあります。

デメリット

・解体費用がかかる

更地にするには売り主の負担で解体費用を捻出する必要があります。

解体費用は嵩んだのに不動産が思ったより高く売れず、かえって損をしてしまうようなことがないように、解体の見積もりはしっかりとしてもらいましょう。

・固定資産税が古家つき土地より高くなる

更地にした場合、建物が建っている際に適応されていた住宅用地の軽減措置特例がなくなり、固定資産税が最大6倍となります。

土地が売れない状況が翌年まで続くと、固定資産税の負担が多くなっていきます。

どんな不動産なら更地にするべき?

更地にするべき不動産とは?

更地の魅力

日本では更地が最も人気の高い不動産だといわれています。

更地の魅力は、どんな用途にも使うことができるという点です。同じ区画でも、そこにオフィスビルやマンションを建てたい人、駐車場を設けたい人と、欲しがる人によって用途はさまざまです。ですから、更地というのは購入希望者の競争が激しく、それに伴って価格も高くなる傾向にあります。

国土の狭い日本では何もない土地というのは貴重です。逆に、アメリカや中国のような国土の広い国では土地が余っている地域が多いため、建物があってこそ不動産に価値が認められます。このように、更地の人気が高いのは日本ならではの現象だと言えるでしょう。

建物の価値がないとき

とはいえ、真新しいマンションを取り壊してまで更地にして売り出す人はいません。それでは、どんな不動産の場合に更地にして売り出すのかというと、土地にある建物に価値がないと判断したときです。

ここでいう建物の価値とは査定価格のことではなく、今後も実際に利用することができるかどうかという意味です。

たとえば、木造家屋は築20年で査定価格が0円になりますが、住宅として利用することは十分可能です。買い主の側からしてみれば、土地を買えばただで家も付いてくるという感覚で受け入れられるので、更地にしてから売り出すよりもむしろ需要が高いという可能性もあるのです。

しかし、築30年の木造家屋となると住宅としての価値もなくなってきます。そして、1981年6月以前に建築物として確認された家は旧耐震基準に基づいて設計されているため、耐震強度に不安があります。2018年現在から見て1981年は37年前にあたります。旧耐震基準の家屋は市場での需要が極めて低いので取り壊したほうが無難です。

これらをまとめると、木造家屋の場合は築30年以上かどうかを取り壊しのひとつの目安とするとよいでしょう。

解体費用ってどれくらいかかるの?

解体費用の金額

それでは、いざ解体して更地にしてから売りに出そうと決めたとき、解体費用はどれくらいかかるものなのでしょうか。解体費用は解体を依頼する業者や建物の立地状況などによって下記図のように変わってきます。

木造家屋
■1坪当たりの解体費用の一般的な目安
2万円~4万円程度
鉄骨造
■1坪当たりの解体費用の一般的な目安
4万円~6万円程度
コンクリート造
■1坪当たりの解体費用の一般的な目安
6万円~8万円程度

ですから、30坪程度の木造家屋ならば60円~120万円ほどの費用が必要になることになります。より正確な費用を知りたい人は解体業者に見積もりを依頼するとよいでしょう。一括見積もりサイトを利用すれば複数の業者の見積もり額を比較することができるので、不当に高い金額を要求されるリスクを減らせます。

解体を依頼する際の注意点

解体を依頼する際の注意点として、1坪当たりの解体費用とは別に諸経費が請求されるということです。

足場の建設費や廃棄費用は家屋の解体費用に含まれますが、塀の撤去費用や車庫の解体費用などは別口として請求されます。同じ30坪の木造家屋でも、立地状況が違えば解体にかかる全額が同じになることはまずありません。

たとえば、重機を搬入するだけのスペースがあるかどうかによっても、解体にかかる手間はかなり変わってきます。

そういった条件によってかかる費用は大きく違ってくるのです。解体業者に見積もりを依頼したときには、その見積もり額は解体費用だけの金額なのか、それとも諸経費も含まれた金額なのかを必ず確認しておくようにしてください。

大きさによって解体単価を変えるところもある?

また、建物の大きさによって1坪当たりの解体単価を変動させる業者も存在します。これは家を建てるときも同じことで、20坪の家を建てるのと50坪の家を建てるので1坪当たりの建築費用を変えている業者はよくいます。

具体的には、20坪未満の建物を解体するときの坪単価は3万円で、50坪以上の建物を解体するときの坪単価は2万5,000円というように価格を設定している業者もいるということです。

ちなみに、ホームページなどに掲載している坪単価の解体費用というのは最安値であることが多いので、このあたりも見積もりの段階でしっかり確認しておくようにしましょう。

更地にする前に!建物解体時の注意点

解体を実行する前にいくつか注意しておきたいポイントがあります。

税金が増える

更地にすると税金が増える

まず、更地にすると土地にかかる税金が増えることになります。というのも、建物がある状態の土地にかかる固定資産税は評価額の6分の1に軽減されるのですが、建物を取り壊すとその軽減措置が受けられなくなります。

つまり、今まで土地にかかる税金が年間5万円で済んでいたとすれば、建物を壊してからは最大で年間30万円になる可能性があるということです。ですから、更地にしてから買い主が見つからないということになると余計な出費を強いられることになります。解体する前に買い主が見つかりそうかどうかのリサーチは必ずしておきましょう。

新たに建築することができるか要確認

そして、更地にした土地に新たに建物を建築することが可能なのかどうかも事前に知っておかなければなりません。

たとえば、更地にした土地が市街化調整区域内にあった場合、土地の売買自体ができなかったり、買い主が新たに住宅などを建てられなかったりするおそれがあります。市街化調整区域とは市街の発展を抑制するために設けられた区域です。

また、解体したのが古くからある家屋だった場合、道路との位置関係などの問題で法律によって新たに住宅などを建築することが禁じられてしまうこともあります。

古民家にも注目

古民家ブームにのってそのまま売り出して見る?

ちなみに、古民家ブームに便乗するという手もあります。喫茶店や雑貨屋などに古民家が利用されるケースが増え、古民家の価値が上がっています。もしも都会やアクセスのよい場所などに古い木造家屋を所有しているのであれば、古いからといって取り壊すよりも、まずはそのまま売りに出すことを検討してみてください。

解体費用も節約できますし、条件によっては古い家屋にも値段を付けてくれる買い主が見つかる可能性もあるからです。

判断が難しいときは古屋つき土地の両方で売りに出そう

古屋つき土地を売るときに更地にするべきかどうかについては、明確な判断基準はありません。基本的に古い家屋は解体しないで売却したほうがよいと言えますが、古民家の流行に乗って高い価格で売れる可能性もあります。

逆に、新しい家であっても周辺の環境が悪くて買い主が見つからないということもあり得ます。もしも判断に迷ったときは、不動産業者に相談して、中古物件と古屋つき物件の両方で売りに出すことを検討してみてはいかがでしょうか。

解体費用相談可」などの注意書きを付けて土地物件でも売りに出すことで、土地だけを欲している買い主の目にも留まる可能性があるからです。速やかに不動産を売却するには、いくつかの方法を試してみましょう。

今回解説した情報をもとに、損をしない不動産売却を目指してみてください。