不動産売却時に確定申告は必要なのかどうかわからず、不安という方も多いのではないでしょうか。

確定申告しなければいけないかどうかは、人によって異なるため注意しなければいけません。

本記事では不動産売却時に確定申告が必要・不要なケース、確定申告するときに必要な書類について解説します。

不動産売却時に確定申告する必要があるのか心配な方は、ぜひ最後までご覧ください。

不動産売却で確定申告は原則必要

不動産売却で確定申告は原則必要である事イメージ


不動産売却をするときには、確定申告をしないといけないケースと不要なケースに分かれますが原則必要です。

なぜなら不要なケースでも、自主的に確定申告をして税金の特例を受けるケースもあるからです。

そのため、不動産売却時に確定申告しないケースは少なく、ほとんどの人が確定申告を行います。

どのようなときに確定申告が必要で、不要になるのかを解説していきます。

不動産売却時に確定申告が必要なケースと不要なケース

確定申告が必要なケースと不要なケースのイメージ


不動産売却時に確定申告が必要なケースと不要なケースにはどのような違いがあるのでしょうか。各ケースの違いについて解説していきます。

関連記事:確定申告って必要?不動産売却に関する税制上の注意点

不動産売却時に確定申告が必要になるケース

不動産売却時に確定申告が必要になるケースは、次の通りです。

  • 不動産を売却し譲渡所得が発生したケース
  • 税金の特例を利用するケース

譲渡所得とは不動産を売却したときに得た所得のことです。

建物を売却するときには、不動産を会社に譲渡所得が発生したか確認しましょう。

税金の特例の一例は、次の通りです。

  • 居住用財産の3,000万円特別控除
  • 10年超所有軽減税率
  • 相続空き家の3,000万円特別控除 など

各特例を利用するときには、確定申告で特例を申請しなければいけません。

譲渡所得が発生しなくても特例の適用を申請するときには、確定申告する必要があります。

不動産売却時に確定申告が不要なケース

不動産売却時に確定申告が不要なケースは、譲渡所得が発生せず特例も利用しない場合です。

譲渡所得が発生していないかどうかは計算してから、確定申告をしなくても大丈夫と判断しましょう。

とくに建物を売却したときには注意が必要です。

不動産を購入したときよりもかなり安く売却しても、長年居住した建物は減価償却の関係で譲渡所得が発生しているケースも多くあります。

譲渡所得が発生しているにも関わらず確定申告をしないと、罰則の対象になるため注意しなければいけません。

不動産売却時の確定申告に必要な書類

不動産売却時の確定申告で必要な書類のイメージ


不動産売却時の確定申告では、多くの書類を提出しなければいけません。

  • 確定申告書(第一表)
  • 確定申告書第三表(分離課税用)
  • 譲渡所得の内訳書
  • 売却した不動産を購入したときの売買契約書の写し
  • 売却したときの売買契約書の写し
  • 購入諸費用と売却諸費用の領収書の写し
  • 建物・土地の登記事項証明書

上記の書類は、譲渡所得が発生したしたときに税務署へ提出する書類です。

特例を利用する場合には、特例ごとに定められた書類を提出しなければいけません。

不動産売却によく利用される特例と提出書類

不動産売却の提出書類のイメージ

不動産を売却するときに一定条件を満たすと特例を利用できますが、その中でもとくに利用の多い3つの特例と申請に必要な書類を紹介していきます。

  • 居住用財産の3,000万円特別控除
  • 10年超所有軽減税率
  • 相続空き家の3,000万円特別控除

税金がなぜ軽減されるのか理解し、特例を利用していきましょう。

居住用財産の3,000万円特別控除

居住用財産の3,000万円控除とは、マイホームを売却したときに譲渡所得から3,000万円を控除できる制度です。

条件を満たせば、売却時に譲渡所得が発生しても3,000万円まで譲渡所得税は課税されません。

居住用財産の3,000万円控除を利用する場合には、確定申告に必要な書類に特例の利用を記入するだけで申請が可能です。

ただし、売買契約の前日の住所と自宅の所在地が違う場合は、戸籍の附票を追加し提出しなければいけません。

なお、居住用財産の3,000万円控除について詳しく知りたい方は、下記の記事で特例の内容を詳しく解説していますので、ご覧ください。

関連記事:不動産売却の3000万円特別控除はどんな制度?条件や注意点を解説!

10年超所有軽減税率

10年超所有軽減税率とは、所有期間10年超えの自宅を売却したときに所得税率が下がる制度です。

居住用財産の3,000万円特別控除を利用し譲渡所得が残ってしまった場合でも、譲渡所得税の課税額を減らすのに使えます。

10年超所有軽減税率の適用を確定申告で申請する場合は、確定申告に提出する書類に特例の利用を記入するだけで利用が可能です。

また、居住用財産の3,000万円特別控除と同じく、自宅の売買契約前日の住所と、自宅の所在地が違う場合は、戸籍の附票を追加し提出する必要があります。

10年超所有軽減率の適用条件は、国税庁のホームページ「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例」をご参照ください。

相続空き家の3,000万円特別控除

相続空き家の3,000万円特別控除とは、一定条件を満たした相続か遺贈で譲り受けた空き家を売却したとき、譲渡所得から3,000万円を控除できる制度です。

相続空き家の3,000万円特別控除を利用する場合、確定申告書に加えて次の書類を提出しなければいけません。

  1. 譲渡所得の内訳書
  2. 次の事項が証明できる登記事項証明書
    ・売却した人が被相続人から相続もしくは遺贈で譲り受けたこと
    ・譲り受けた家屋が昭和56年5月31日以前の築年数であること
    ・区分所有建物ではないこと
  3. 売却した不動産の所在地を管轄する市区町村長から取得する被相続人居住用家屋等確認書
  4. 耐震基準適合証明書か建設住宅性能評価書の写し
  5. 売却したときの売買契約書の写し

参考:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

相続空き家の3,000万円特別控除の申請には多くの書類が必要であるため、適用を申請するときには税務署に確認をしておきましょう。

なお、相続空き家の3,000万円特別控除の適用条件は、国税庁ホームページ「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」をご参照ください。

確定申告を自分で行うときの流れ

確定申告を自分で行うときの流れのイメージ


確定申告を行うときには、次の手順で進めていきます。
STEP1.確定申告に必要な書類を集める
STEP2.譲渡所得税を計算する
STEP3.譲渡所得の内訳書・確定申告書を記入する
STEP4.税務署に確定申告する

確定申告には時間がかかるため、しっかりと準備を行って期限内に申告を済ませましょう。

STEP1.確定申告に必要な書類を集める

確定申告書に必要事項を書き込むときには、書類の準備をしておくとスムーズに記入が進みます。

確定申告書を記載するときにあった方がよい書類は、次の通りです。

  • 売却した不動産の土地・建物の登記事項証明書
  • 売却時・購入時の不動産売買契約書
  • 売却時・購入時に払った費用の領収書
  • 不動産を売却した年の源泉徴収票
  • 生命保険料控除証明書

不動産売却時に提出する確定申告書や譲渡所得の内訳書は、準備した書類の内容を転記して記入していきます。

STEP2.譲渡所得税を計算する

譲渡所得の内訳書を記載するときには準備した書類の転記だけでなく、計算をしなければいけない箇所があります。

主に譲渡所得の内容を記載しなければいけないため、譲渡所得の計算方法を理解しておきましょう。

関連記事:不動産売却でかかる譲渡所得税とは?計算方法や税率まで解説!

取得費や譲渡費用を確認する

譲渡所得を計算する前には、取得費や譲渡費用を確認します。

取得費・譲渡費用と認められる支払いは決まっており、どのような支払いが該当するのか理解しておく必要があります。

取得費・譲渡費用と認められる主な費用は、次のとおりです。

取得費と認められる費用 譲渡費用と認められる費用
  • 土地や建物を売るために支払った仲介手数料
  • 印紙税で売主が負担したもの
  • 貸家を売るため、借家人に家屋を明け渡してもらうときに支払う立退料
  • 土地などを売るためにその上の建物を取り壊したときの取壊し費用とその建物の損失額
  • 既に売買契約を締結している資産をさら
  • 有利な条件で売るために支払った違約金
  • 借地権を売るときに地主の承諾をもらうために支払った名義書換料など
  • 売った土地や建物の購入代金、建築代金、購入手数料のほか設備費や改良費など
  • 土地や建物を購入(贈与、相続または遺贈による取得も含みます。)したときに納めた登録免許税(登記費用も含みます。)、不動産取得税、特別土地保有税(取得分)、印紙税
  • 借主がいる土地や建物を購入するときに、借主を立ち退かせるために支払った立退料
  • 土地の埋立てや土盛り、地ならしをするために支払った造成費用
  • 土地の取得に際して支払った土地の測量費
  • 所有権などを確保するために要した訴訟費用
  • 建物付の土地を購入して、その後おおむね1年以内に建物を取り壊すなど、当初から土地の利用が目的であったと認められる場合の建物の購入代金や取壊しの費用
  • 土地や建物を購入するために借り入れた資金の利子のうち、その土地や建物を実際に使用開始する日までの期間に対応する部分の利子
  • 既に締結されている土地などの購入契約を解除して、他の物件を取得することとした場合に支出する違約金

出典:国税庁「No.3255 譲渡費用となるもの」・「No.3252 取得費となるもの

上記の表に該当する費用を不動産売買時に支払っているのであれば、譲渡所得から費用を差し引くことができます。

それぞれの費用に応じた領収書が確定申告に必要となるため、準備しておきましょう。

なお、取得費が不明の場合、譲渡金額に5%を乗じた数字を取得費とみなして計算できます。

譲渡所得を計算する

譲渡所得の計算に必要な書類を準備したら、譲渡所得を計算していきます。

譲渡所得の計算方法は、次の通りです。

譲渡所得 = 譲渡金額 -(取得費 + 譲渡費用)

取得費とは、不動産を購入したときの購入代金と購入諸費用を足した金額です。

建物の取得費は、減価償却を計算しなければいけないため計算が複雑になります。

たとえば、次の条件の土地で売買をしたら譲渡所得がいくらになるのか計算してみましょう。

  • 譲渡金額:5,000万円
  • 取得費:3,200万円
  • 譲渡費用:200万円

5,000万円 -(3,200万円 + 200万円)= 1,600万円(譲渡所得)

上記の計算例では譲渡所得が発生し、確定申告をしなければいけないパターンに該当します。

なお、上記の計算式は土地の譲渡所得計算方法であり、建物がある場合には取得費から減価償却費も差し引かなければいけません。

減価償却費の計算方法は複雑ですが、資料を確認しながら計算すれば算出が可能です。

減価償却について詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。

関連記事:建物の減価償却とは?耐用年数や計算方法について解説

譲渡所得に税率を乗じて譲渡所得税を算出する

譲渡所得が計算できたら、譲渡所得に税率を乗じて譲渡所得税を算出します。

譲渡所得税 = 譲渡所得 × 税率

譲渡所得税の税率は、次の表のとおりです。

長短区分 短期譲渡所得 長期譲渡所得
所有期間 5年以下(※) 5年超(※)
税率 39.63%
(内訳・所得税30.63% 住民税 9%)
内訳20.315%
(内訳・所得税15.315% 住民税 5%)

※不動産を売却した年の1月1日現在の所有期間が何年なのかで判断します。

譲渡所得が発生すると住民税の納税も必要になるため、譲渡所得税の計算のときにあわせて確認しておきましょう。

STEP3.譲渡所得の内訳書・確定申告書を記入する

譲渡所得と譲渡所得税の計算方法を理解したら、まず譲渡所得の内訳書の記入を始めます。

出典:国税庁「譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】

譲渡所得の内訳書の1面には、申請者の氏名や住所などを記載します。

2面に特別な計算はなく、売買契約書を転記すれば記入できます。


出典:国税庁「譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】

譲渡所得の内訳書の3面からは計算が必要となり、まず建物と土地の売買金額の内訳を計算しなければいけません。

一戸建てのように建物と土地を一体として、建物と土地の売買代金を合計して売却したときには金額を分ける必要があります。

建物と土地の価格を分ける場合は、固定資産評価額の割合に応じて計算します。

たとえば、一戸建ての売却金額3,000万円、建物の評価額1,000万円、土地の評価額が1,000万円のケースなら建物と土地の評価額は同等であるため、建物代金・土地代金ともに1,500万円です。

譲渡所得の計算は、取得費・譲渡費用を記載した上で前述した計算式を利用して計算します。

出典:国税庁「譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】

4面の上部は買い替え特例利用時に記載する項目のため、買い替え特例を利用しない場合は下部の譲渡所得税の計算をしましょう。

譲渡所得の内訳書の記載が終わったら、確定申告書の記載に移ります。

確定申告書の記載事項の一部は譲渡所得の内訳書から転記できる箇所があるため、次の箇所を転記します。

  • A 収入金額(①)→収入金額欄シ・セ・タ(※)
  • E 譲渡所得金額(C-D)→所得金額66~70

※各文字は〇囲みされています

上記以外の部分は源泉徴収票や生命保険料控除証明書などの書類を転記し、確定申告書に従って記載してください。

STEP4.税務署に確定申告する

確定申告に必要な書類を準備し、譲渡所得の内訳書と確定申告書の記載が終わったら税務署に書類を提出します。

不動産売却したときの確定申告には提出期間が決まっており、不動産を売却した年の翌年の2月16日〜3月15日に申告しなければいけません。

確定申告は以下3つの方法で申告が可能です。

  • 窓口に書類を持参する
  • 書類を郵送する
  • e-Taxで電子申請をする

確定申告したことがない人は、税務署の窓口に書類を持っていくとよいでしょう。

書類を提出したときに窓口の人によっては、書類が整っているか確認してくれる場合があります。

ただし、記載内容までは見てくれないため、記載ミスには注意しなければいけません。

不動産売却時の確定申告についてよくある質問

不動産売却時の確定申告でよくある質問


ここでは、不動産売却時の確定申告によくある質問とその回答を紹介していきますので、疑問や不安がある人はぜひ参考にしてください。

  • 不動産売却に確定申告をしないとバレますか?
  • 不動産売却の確定申告を税理士に依頼したときの費用目安は?
  • 不動産売却で確定申告をしないとどうなる?


不動産売却時に確定申告をしないとバレますか?

不動産売却時に確定申告をしないとバレる可能性は高いと考えましょう。

不動産売却すると所有権移転登記を行いますが、移転されたことは法務局のデータから税務署のデータに転送されます。

所有権移転されたデータに基づき、税務署は不動産を売却した人に「お尋ね」を送付します。

お尋ねは、いくらで不動産を売却したのかなどを記載して返送しなければいけません。

税務署が確定申告しているかどうかを確認するのは容易なことであり、バレてしまうため必ず確定申告しましょう。

不動産売却時の確定申告を税理士に依頼したときの費用目安は?

不動産売却時の確定申告を税理士に代行の依頼をした場合は、譲渡所得の額によって次の陽に変動します。

譲渡所得の額 相場の目安
1,000万円未満 3万円~6万円
1,000万円以上3,000万円未満 6万円~12万円
3,000万円以上5,000万円未満 12万円~15万円
5,000万円以上8,000万円未満 15万円~24万円
8,000万円以上 24万円以上

上記の費用は目安であり、依頼する税理士によって異なります。

実際に確定申告を税理士に依頼するときには、依頼する税理士に費用がいくらかかるのかあらかじめ確認しておきましょう。

不動産売却で確定申告をしないとどうなる?

不動産売却時に確定申告を行わないと、罰則の対象となるため注意しなければいけません。

不動産売却による譲渡所得が発生した場合、所得税法により確定申告しなければいけないと定められています。

もし確定申告の義務を怠ってしまうと、延滞税や無申告加算税が課税されてしまうのです。

高額な譲渡所得税を納税する必要がある場合、罰則金額が大きくなるため注意しましょう。

不動産売却後は確定申告を忘れずに行おう

不動産売却後の確定申告は忘れずに行う必要があるというイメージ

不動産売却後の確定申告は原則必要であり、譲渡所得が発生したケースや、税金の特例を申請するときに申告します。

確定申告するには多くの書類を準備し、書類の書き方も理解しておかなければいけません。

準備をせずに確定申告に臨んでしまうと、書類の不備が発生し申告時期に終わらない可能性もあります。

どのようなときに確定申告が必要なのか、必要な書類は何か確認しスムーズな申告を行っていきましょう。