マンションの売却をする際には、事前に売却に関わるお金について知っておくことが重要です。売却価格のことだけを考えて売却を行うと、後で思いのほかお金が手元に残らず驚いてしまう可能性もあります。安心して売却を終えるためにも、売却に必要となるお金のことは前もってしっかりとシミュレーションをしておきましょう。

まずはマンション売却の流れを知ろう!

マンションの売却に関わるお金についてシミュレーションを行うためには、まずは売却を行う際の全体の流れについて知っておくことが必要となります。

売却を検討して最初に行うことが、住宅ローンのチェックです。現状でいくらの残債があるかをチェックし、抵当権を抹消するために残債を完済することができる資金があるかを確認します。

住宅ローンのチェックをしましょう

マンションの売却代金で残額の返済を考えている場合や手元にまとまったお金がない場合には、住宅ローンの残債額と売却の際に必要となる諸費用を合わせた金額が、マンションの売却価格より安くなるようにしなければいけません。そこで、実際にどのくらいで売れそうかという売却価格の目安を知るために、次に売りたい物件の価格の査定を行います。

不動産会社などに査定依頼を行う際には、事前に不動産情報誌やインターネットの不動産情報サイトなどを利用して相場観をつかんでおくと安心です。

目安となる売却金額に納得することができたら、不動産会社と契約を結び、売却活動が開始されます。売却するマンションに購入希望者が出て、条件などの交渉が成立し、お互いに金額への合意ができたら正式契約です。そして、決済が無事に終了すると、売主から買主へ売却するマンションの引き渡しが行われます。

売主が負担する費用その1「仲介手数料」
売主負担費用その①仲介手数料

マンション売却では、査定と売却の際に不動産業者と関わることが一般的です。ただし、査定を不動産業者に依頼するときにお金はかかりません。しかし、実際に売却活動を始める際に、不動産業者と仲介の契約を結んだ場合には仲介手数料がかかります。仲介手数料とは、売却取引が成功したときに仲介した不動産業者へ支払う成功報酬です。

仲介手数料は、売却金額の3%に6万円を足した金額が上限価格となり、別途消費税もかかります。たとえば、3,000万円でマンションを売却した場合であれば、3,000万円×0.03+6万円=96万円に、消費税をプラスした金額が仲介手数料です。仲介手数料の上限金額は、宅地建物取引業法により定められているルールとなります。

なかには、仲介手数料を無料にするサービスを行っているところもありますが、多くの不動産業者では上限となる金額を報酬金額として求めることが一般的です。

売主が負担する費用その2「印紙税」

買主との間に売買契約が結ばれることとなったら、契約書を作成することが必要です。そして、契約書には収入印紙を貼り付けます。収入印紙とは、税金の納入が求められる文書に対して税金を納める手段で、印紙税法で定められているルールです。文書の作成の際に現金を用意する代わりに、事前に購入しておいた税金額と同額の収入印紙を貼ることで納税したことになります。契約書に対する税金額となる収入印紙の金額は、売却したマンションの金額によって異なります。

売主負担費用その②印紙税

マンションの売却金額が1,000万円以上5,000万円以下である場合には、収入印紙の金額は1万円です。売却金額が5,000万円より高く、1億円以下である場合には3万円の収入印紙を貼ります。契約書は、必ず契約に関わる人数分の枚数を用意することが原則です。マンションの売却は、売主と買主の2者が存在するため、契約書も2部用意します。

そして、収入印紙は作成した契約書すべてに貼り付けなければいけません。しかし、契約書に貼り付ける収入印紙は、売主と買主がそれぞれ自分の分の収入印紙代だけを負担することが基本となっています。このため、契約書1枚に付き必要となる金額×2部分の費用を売主が用意する必要はありません。また、多くの場合、収入印紙は仲介する不動産業者が事前に用意しておくことが通常です。

売主や買主は、収入印紙を自分で購入して持参するのではなく、収入印紙分の代金を不動産会社に支払うという方法が一般的となっていることも知っておきましょう。

売主が負担する費用その3「司法書士への費用」

売主負担費用その③司法書士への費用

売却するマンションは、引き渡しをする前に抵当権の抹消を行うことが必要です。

マンションに付いている抵当権とは、マンション購入のために住宅ローンを組んだ際に付ける担保権です。お金を借りた人が住宅ローンの返済ができなくなってしまったときに、お金を貸した金融機関が担保となっているマンションを差し押さえすることができるという権利になります。抵当権は、必ず付けなければいけないという決まりはありません。しかし、お金を貸す金融機関は抵当権を付けないと住宅ローンの契約を行わないため、抵当権を付けてローン契約を行っていることが一般的です。

そして、引き渡し前に必要な抵当権の抹消は、司法書士が行うことが多いです。抵当権は、住宅ローンの残債をすべて完済させれば抹消することはできます。

ただし、末梢の手続きには、本当に完済されたのかということを証明する書類とともに、登記所で申請を行わなければいけません。このため、実際の手続きは法律に関わる書類作成の専門家である司法書士に依頼することが一般的となっています。抵当権抹消の手続きにかかる司法書士への報酬金の目安は2万円程度です。

抵当権抹消のときには、登録免許税という税金がかかりますが、通常は司法書士への報酬金に含まれています。

売主が負担する費用その4「住宅ローンの残債の返済費用」

住宅ローンの完済は、抵当権の抹消の際に必ず必要となります。残債を完済させる方法としては、事前に現金を用意して支払う方法と、マンションを売却した代金から差し引いて支払う方法とがあります。どちらの方法で行うにしても、売却後に手元には残らない金額となるため、事前のシミュレーションではしっかりと把握しておきましょう。

売主が負担する費用その5「譲渡所得税」

マンション売却の際にかかる費用のなかでも重要となる税金が譲渡所得税です。

  • 譲渡所得税とは・・・地や建物を売却したときに出る売却益の「譲渡所得」に課される所得税および住民税
  • 譲渡所得とは・・・売却金額である譲渡価格から取得費や譲渡費用を差し引いたもの
  • 取得費とは・・・売却するマンションの購入費や、購入時の仲介手数料などの諸費用を合計した費用から、減価償却費を差し引いた金額

減価償却費を差し引かなければいけないのは、マンションを長く使用すると、購入したときよりもマンションの資産価値が下がるためです。

売主負担費用その⑤譲渡所得税

減価償却費の計算には、定額法と定率法という2つの計算方法がありますが、定額法で計算することが一般的となっています。定額法の計算式は、マンションなどの物件の購入代金×0.9×償却率×経過年数です。償却率はマンションの構造により異なっていて、たとえば耐用年数が70年の鉄筋コンクリート造のマンションであれば、0.015となっています。10年経過した3,000万円の鉄筋コンクリート造のマンションであれば、減価償却費は3,000万円×0.9×0.015×10年=405万円です。

また、譲渡費用とはマンションを売ったときにかかった費用を指します。売却時にかかった仲介手数料や登記に要した費用、印紙税などのうち、売主が負担したものなどが譲渡費用となります。居住のためのマンションを売却した際に生じる譲渡所得税には、要件に応じて各種特例があるため、上手に利用することがポイントです。

売却により利益が生じた場合

  • 「居住用財産を売却した場合の3000万円の特別控除の特例」
  • 「所有期間が10年超の居住用財産を売却した場合の軽減税率の特例」
  • 「特定の居住用財産を売却した場合の買換えの特例」

売却で損をしてしまった場合

  • 「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」
  • 「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」

があるため、事前に確認しておくとよいでしょう。

【確定申告が必要!マンション売却時にかかる税金】

シミュレーションで安心!税金などの費用は事前にしっかりと確認を

大切な資産であり、大きなお金が動くマンションの売却は、後で後悔をしないようにするためにも、計画的に行うことが大切です。

売却活動中に想定外のお金がかかり焦ってしまったり、売却を終えた後で思った以上に手元に残ったお金が少ないと感じたりといったことは、シミュレーションが不足していると起こりやすくなります。不動産の売却金額は、需要と供給のバランスにより決定されるものであるため、正確に予想することは難しいものです。しかし、税金など予想が付きやすい費用については、事前にしっかりと確認しておくことが安心へとつながります。