不動産を売る際に必ず必要となるのが契約書です。後でトラブルが起きないようにするためにも、契約書を不備なく正しく作成することは重要な事項となります。しかし、不動産についての専門的な知識を持っていなかったり、売買経験がなかったりといった場合には、どのように契約書を作成すればよいか迷ってしまうものです。

そこで、買取時に必要となる契約書の作成の流れと書き方の注意ポイントについて解説します。

「仲介」とは違う?そもそも不動産の「買取」とは

仲介と買取は違う!

「買取」とは、不動産を売却する方法の1つです。不動産業者が売却したい物件を買い取ってくれる方法をいいます。そして、不動産の売却には、もう1つ「仲介」という方法もあります。
仲介とは、売却する物件の購入希望者との間を不動産業者に仲介してもらうやり方です。

買取は買主が不動産会社となるのに対して、仲介では1個人となります。このため、どちらの方法を選択するかによって、最終的に売買契約書を交わす相手が異なってくるのです。そして、実際の買取の流れでは、信頼できる不動産会社を探した後に、その不動産会社に買取の金額を提示してもらう必要があります。提示された金額に対して納得ができたら、正式に買取についての契約を結ぶことになるのです。

買取には種類がある!2種類の買取方法

買取にも2種類ある

売却方法だけではなく、買取にも2つの種類があります。契約書を作成する前に基本の知識として知っておくようにしましょう。

即時買取

まず、1つ目となるのが「即時買取」という方法です。即時買取とは、売却しようとする物件を不動産業者に、すぐに買い取ってもらう方法をいいます。急いで売却したいといった場合には、売却活動期間を設けずに手続きを終えることができるため、メリットのある手段です。

買取保証

そして、もう1つが「買取保証」という方法になります。
買取保証とは、その名のとおり、売却したい物件の買取について不動産会社の保証を受けることができる方法です。売却活動に一定の期間を設け、もしも、その期間内に売ることができなかった場合には、不動産業者によって買い取ってもらうことができるという契約を結びます。

必ず買取をしてもらえるという保証がありながらも、売却期間を利用して即時買取よりも高い価格で売ることができる可能性も有する方法です。買取保証は、買取の手段の1つとなりますが、仲介と即時買取の中間の良さを併せ持った方法にもなっています。

ただし、買取保証を行う会社は限られているため、業者選びの際には注意が必要です。取扱い会社が限定されてしまっている理由は、災害などで不動産売却が困難になってしまったときに、不動産会社の大きなリスクとなる可能性があるからです。

契約書作成のための3つのステップ

自分に合った買取方法により売却が成立したら、正式な契約として契約書の作成に取り掛かります。契約書の作成のために必要となるステップは大きく3つです。

1.重要事項説明を受ける

まず、正式に契約書の作成が行われる前に、不動産業者の宅地建物取引士により重要事項説明を受けることが必要となります。これは、宅地建物取引業法で定められたルールです。重要事項説明では、売主と買主双方に対する売買契約のさまざまな確認が行われます。たとえば、売買代金の支払い方法や登記簿に記載されている権利に関わる情報の説明、契約解除が生じた場合の規定といった内容です。

さらに、買主が将来建て替えなどをすることになった際に知っておくべき物件の法的制限など、売却物件に関わるすべての説明が行われます。重要事項説明を受けたうえで、買主と売主の双方が売買を承諾したら、次のステップとして契約書の作成に入ります。

2.契約書の作成

売買契約は不要式契約とされ、口頭でも成立し、原則、書面によって契約を結ぶ必要はないとされています。ただし、不動産売買では高額な資産が動く取引となるため、契約書が交わされることが一般的です。宅地建物取引業法では、不動産会社に対して宅地建物取引士の記名と押印のある契約書の交付をすることが義務付けられています。

3.契約内容の確認

契約内容確認は買主・売主双方で行う

売買契約書の作成が完成したら、最後のステップとして契約内容の確認が行われます。契約内容の確認では、売主と買主の両者が同席することが必要です。すべてにおいての確認ができ、全員の承諾を得られれば契約書への署名と押印を行い、手付金の支払いの受け渡しとともに契約完了となります。

契約書に記載されている事項とは?

不動産の買取の際に使用する契約書のフォーマットは、不動産会社によってさまざまです。ここでは、一般的な記載事項について紹介します。

売買物件の情報

まず、必ず明記されているのが売買物件の情報です。

土地や建物がある住所や広さなどについて記載する欄があります。また、売買代金や手付金、残代金の金額、それぞれ支払いを完結させる期限などといった、契約金に関する記載も必須となっている事項です。さらに、引っ越しなどの事情も踏まえたうえで、所有権の移転や引き渡し、登録手続の日を明確にさせておくことも大切となります。

付帯設備についてもしっかり取り決めを!

売買が行われる物件が住宅であった場合には、エアコンや照明といった設備取り決めがなされることもあります。設備を撤去するのか、引き継ぐのか、現状と併せて情報を共有し、処置方法を決めておきます。引き渡し後のトラブル防止のために、すべての付帯設備について個々に契約書ではっきりとさせておくケースも少なくありません。

責任の所在も明らかに

また、契約時に明らかにされていない物件の欠陥が発覚した場合には、売主が欠陥部の修補や賠償を行うといった責任の所在も明らかにしておきます。売却する不動産に関わる負担についても、契約書の記載事項です。

負担とは、具体的には所有権を移転させるまでに抵当権や賃借権といった所有権の行使を阻害するような権利や、売却物件にかかる税金などをさします。売主がすべての負担について、きちんと整理済みであるということを明記しておくことが求められます。さらに、万が一の際の取り決めも大切な記載事項です。

契約違反や契約解除となってしまったり、天災などにより売却物件が引き渡し前の状況と変わってしまったりしたときなどへのトラブル防止につながります。また、不動産の売買では、買主がローンを利用して物件を購入することもあります。しかし、融資の審査がおりず支払うべき代金を用意できなくなり、買主の意図なく契約違反をせざるを得ないケースもあるのです。

このようなケースでは、買主を配慮して売買契約を無条件解除できるという特約を契約書に記載することが一般的となっています。

ここに注意!契約書作成時のチェックポイントとは

契約書作成で気をつけること

契約書の内容は、すべてが正式なものとして扱われるため、どの記載についても間違いがないように注意することが必要です。しかし、特に数字の記載については慣れていないと確認を見落としてしまうことがあるため、十分に注意しましょう。

たとえば、「手付金」です。特に金額の決まりはありませんが、一般的には売買代金の1割前となっています。手付金が納得できる、適した金額であるかという点とともに、手付金、中間金、残代金の合計が、契約の総額となるかについてもしっかりと確認しておきましょう。また、売却する不動産に関わる売主の負担金額についてもチェックしておくと安心です。

固定資産税や都市計画税、マンションであれば管理費といったものは、通常物件の決算日を基準として日割りで計算し、精算します。さらに、特別な理由により手付解除や契約違反となった際の解除金についても、十分に確認しておきましょう。

金額は当事者間で決めることができますが、多くの場合、売買価格の20%以内の金額に設定されることが一般的です。

まとめ

トラブル回避のためにも!契約書の作成は確認を重ねて、慎重に!

 不動産の買取では大きな金額が動くため、トラブルが生じたときの負担はより一層大きくなることが予想されます。取引相手となる買主への考慮といった点からだけではなく、自分の資産を守るためにも、できる限りトラブルを回避できる取引を行うことは大切です。後悔のない取引を行うためには、契約内容をお互いに明確にすることができる契約書の存在が重要となります。

契約書は、不備のないよう十分に確認をして、慎重に作成するようにしましょう。