この記事の概要
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不動産売却をすると、税金が発生します。
しかし、具体的にどのような税金がかかるのかわからない方も多いでしょう。
本記事では、不動産売却をした際にかかる税金や賢く売却を進めるための節税対策について紹介します。
この記事の目次
不動産売却にかかる税金にはどういったものがある?
不動産を売却する際には、具体的にどういった種類の税金がかかるのでしょうか?
不動産を売却する時にかかる税金にはさまざまなものがありますが、「売却手続きの際にかかる税金」「売却で利益が発生した際にかかる税金」の大きく2種類があります。
ここでは、「売却手続きの際」「売却で利益が発生した際」のそれぞれの状況で発生する税金の種類について解説します。
売却手続きにかかる税金
売却手続きをする際には、以下3つの税金がかかります。
- 印紙税
- 登録免許税
- 仲介手数料の消費税
印紙税
契約書や受領書など、課税の対象となる書類(課税文書)に課される税金を印紙税と言います。
不動産売買においては、売買が成立した際に「不動産売買契約書」という書類を売主と買主の間で交わします。
この契約書を作成するにあたって印紙税が課されるのです。
印紙税は、契約書面に所定の金額分の収入印紙を貼り、消印することで納税したとみなされます。
また、印紙税は、以下のように売買が成立した契約金額によって税額が変動します。
出典:不動産売買契約書の印紙税の軽減措置-国税庁ホームページ
ちなみに2014年4月1日から2027年3月31日までに作成された「不動産売買契約書」については、租税特別措置法に則り、軽減税率が適用されます。
軽減税率とは、原則10%である消費税の税率を特定の品目について旧税率である8%にするという制度のことです。
詳しい税額は上記表の右欄をご確認ください。
売買契約時の手付金に収入印紙は必要?
不動産の売却が決まり、売買契約が締結されると、買主から手付金を受け取ります。
この手付金の領収書にも印紙を貼る必要があるのでしょうか?
手付金に関しては、売主が個人か不動産会社かによって印紙を貼る必要があるかどうかが異なります。
売主が
個人の場合:不要(営業目的ではないため)
不動産会社の場合:必要(営業目的であるため)
印紙税は、経済的な取引に伴い作成される文書に課されるものです。
そのため、営業目的でない不動産売買の場合は不要となるのです。
登録免許税
不動産登記をおこなう際に課される税金のことを登録免許税と言います。
不動産登記は、不動産の購入時だけでなく住所変更や相続した際にも必要です。
例えば、不動産を売却して住宅ローンを完済した場合、その抵当権を抹消するために「抵当権抹消登記」をおこなう必要があります。
また、不動産の所有者が亡くなり相続することになった際は、相続した人が「所有権移転登記」をおこないます。
このような登記手続きをおこなう際に発生する税金が「登録免許税」です。
税額は登記の種類によって以下のように異なります。
売買時の所有権移転登記 |
・土地…固定資産税評価額の1.5% ※2026年3月末までに登記する場合 ・建物…固定資産税評価額の2% ※一定条件を満たす家屋の場合は0.3% 長期優良住宅は0.1% 2027年3月末までに登記する場合 |
---|---|
相続時の所有権移転登記 |
土地・建物…固定資産税評価額の0.4% |
贈与時の所有権移転登記 |
土地・建物…固定資産税評価額の2% |
抵当権抹消登記 |
土地・建物それぞれ1つにつき1,000円 |
登記手続きは個人でおこなうことも可能ですが、手続きが複雑な場合が多いので、司法書士に依頼することが一般的です。
依頼する際の手数料は、司法書士によって異なりますが、およそ5万〜10万円前後が相場と言われています。
仲介手数料の消費税
不動産の売却をする際、一般的に不動産仲介会社に依頼することが多いでしょう。
不動産仲介会社では、売却のための広告宣伝や買主との契約手続きなど、不動産売却に必要な業務を進めてくれます。
そして、売買が成立した場合、売主は不動産会社に「仲介手数料」を成功報酬として支払う必要があります。
この仲介手数料には、消費税も課されます。
仲介手数料は、以下のように売却価格に応じて金額が変動するため、それに伴い消費税の金額も変わります。
売却金額 | 仲介手数料の上限 |
---|---|
200万円以下 | 売却金額×5%+消費税 |
200万~400万円以下 | (売却金額×4%+2万円)+消費税 |
400万円超 | (売却金額×3%+6万円)+消費税 |
例えば、3,000万円の不動産を売却した場合の仲介手数料は、以下の通りになります。
3,000万円×3%+6万円=960,000円 消費税…960,000円×0.1=96,000円 合計…960,000円+96,000円=1,056,000円 |
なお、2024年7月1日から売りにくい空き家や空き地の流通を促すために仲介報酬の特例規定が拡充されました。
具体的には、物件価格が800万円以下の売買において、売主と買主双方から最大で33万円(税込)を仲介手数料として受け取れることが認められました。
ただし、あらかじめ依頼者に報酬額を説明し、合意を得る必要があります。
売却金額 |
仲介手数料の上限 |
---|---|
800万円以下 |
30万円+消費税 |
800万円超 |
(売却金額×3%)+消費税 |
売却で利益が発生した際にかかる税金
不動産を売却して利益を得ると、「譲渡所得税」という税金が発生します。
この税金は、「所得税」「復興特別所得税」「住民税」の3つの税金で構成されています。
譲渡所得税は、不動産を売った年の1月1日時点で所有期間が5年を経過しているかどうかによって税率が異なります。
例①の場合、実際の売却時点では所有期間が5年を経過していますが、判定上の売却日では所有期間が4年となるため、短期譲渡となります。
一方、例②の場合は、判定日時点で所有期間が5年を経過しているため、長期譲渡となります。
このように、例①と例②では実際の売却日は1ヶ月しか違いませんが、判定日によって短期譲渡か長期譲渡かが異なるのです。
所有期間が5年以内(短期譲渡所得) |
・所得税:30% ・復興特別所得税:0.63% ・住民税:9% 合計:39.63% |
---|---|
所有期間が5年超(長期譲渡所得) |
・所得税:15% ・復興特別所得税:0.315% ・住民税:5% 合計:20.315% |
上記の表でもわかる通り、5年以下の所有よりも5年以上所有してから売却したほうが税金を抑えることができます。
できるだけ税率を抑えたいと考えているのであれば、売却するタイミングもしっかり見計らいましょう。
また、譲渡所得税の税額については、以下の手順で求めることができます。
出典:土地や建物を売ったとき-国税庁ホームページ
こちらの計算方法で「課税譲渡所得金額」を求めた後に前述した税率をかけることで、譲渡所得税を求めることができます。
下記の記事では譲渡所得税の計算方法についてより詳しく解説しています。
ぜひ合わせてご確認ください。
【※復興特別所得税とは?】
復興特別所得税は、東日本大震災からの復興財源を確保するために創設された税金です。
所得税に復興特別所得税が加算されます。
なお、適用期間は2013年1月1日から2037年12月31日までの25年間にわたり適用されます。
不動産売却の税金の納税時期はいつ?納税方法も
不動産売却にかかる税金には「売却手続きの際にかかる税金」「売却で利益が発生した際にかかる税金」と2種類ある事をご紹介しましたが、それぞれの納税時期はいつ頃なのでしょうか?
ここでは、納税時期と納税方法についてご紹介します。
納付時期 |
納税方法 |
詳細 |
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収入印紙 |
売買契約を結んだ際 |
収入印紙を購入し、契約書に貼付、消印する |
・郵便局やコンビニ、法務局で購入することが可能。 ・コンビニの場合、200円の収入印紙しか取り扱っていない店舗が多いので注意が必要。 |
登録免許税 |
・抵当権の抹消登記 ・所有権移転登記などの登記申請を行った時 |
収入印紙で納付 |
登記の申請を司法書士に依頼する場合、司法書士に登記費用を支払い、司法書士が代理で納めます。 |
譲渡所得税 (復興特別所得税) |
物件を売却した翌年の確定申告 |
確定申告後の納付書で納付 |
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譲渡所得税 |
物件を売却した翌年の確定申告 |
・給与所得者の場合:確定申告をした場合、手続きは不要※
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_ |
【※給与所得者が住民税の手続きが不要なのはなぜ?】
給与所得者の場合、原則として住民税を給与から天引き(特別徴収)されるので、個別に納付する必要がないため。
節税対策に!譲渡所得税で適用できる4つの控除
ここからは譲渡所得税で適用できる控除について紹介します。
譲渡所得税に対し適用できる控除には、主に次の4つがあります。
- 居住用財産の3000万円特別控除
- 10年超所有軽減税率の特例
- 特定の居住用財産買い替えの特別控除
- 空き家の譲渡所得の特別控除
これらの控除の内容を理解して、節税対策に活用しましょう。
居住用財産の3000万円特別控除
マイホームを売却する際、一定の条件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円の控除を受けられるというものです。
この特例を受けるための適用条件は、以下の通りです。
1.自分が住んでいる家、またはその家の敷地を売却すること 2.過去に住んでいた家の場合、そこに住まなくなってから3年を経過する日に属する年の年末までに売却すること 3.家を取り壊した後、敷地だけを売却する場合には以下の条件を満たすこと ・取り壊してから1年以内に敷地の売却契約が成立していること ・その家に住まなくなってから3年を経過する日に属する年の年末までに売却すること ・売却契約が成立するまでその敷地が別の用途に使われていないこと(例:駐車場など) 4.過去3年間の間に同様の控除や譲渡損失の特例を利用していないこと 5.ほかの税制優遇との併用がないこと(例:収用などに関連する控除) 6.自然災害などで住めなくなった家でもその敷地に住まなくなってから3年を経過する日の属する年の年末までに売却すること 7.売主と買主が特別な関係に該当しないこと(例:親子、夫婦など) |
ちなみに、仮住まいや別荘などといった趣味・レジャー目的で所有している家には適用されませんので注意が必要です。
また、「居住用財産の3000万円特別控除」を受けるためには、売却した翌年に確定申告をおこなう必要があります。
確定申告は毎年2月16日から3月15日までの期間におこなわれるので、余裕を持って準備を進めましょう。
確定申告時に必要となる書類
申告時には以下の書類が必要となります。
必要な書類 |
詳細 |
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譲渡所得の内訳書 |
税務署の相談窓口や国税庁のホームページの「確定申告書等作成コーナー」で入手可能 |
戸籍の附票写しなど |
住所が異なる場合のみ必要。市区町村の窓口で入手可能。 ※戸籍の附票とは、本籍を定めた時以降の住民票の移り変わりを記録したものです。 |
売買契約書のコピーや購入時と売却時の領収書 |
_ |
物件の状況によっては上記以外の書類が必要になる場合もあります。
10年超所有軽減税率の特例
所有期間が10年を超えているマイホームを売却する場合、譲渡所得税に軽減税率を適用することができる特例です。
上記で説明した通り、10年所有している場合は「長期譲渡所得」となるので譲渡所得税が20.315%となります。
しかし、この特例を利用すると、以下のように長期譲渡所得の税額を通常よりも低い税率で計算することが可能になります。
出典:マイホームを売ったときの軽減税率の特例-国税庁ホームページ
また、10年超所有軽減税率の特例を受けるには、以下の条件を満たす必要があります。
1.所有者自らのマイホーム(居住用財産)を売却すること 2.売却した年の1月1日において不動産の所有期間が10年を超えていること 3.売却した年の前年や前々年に、本特例を受けていないこと 4.売主と買主の関係が特別な関係でないこと(例:親子、夫婦など) |
ちなみに本特例は、前述した「居住用財産の3000万円特別控除」と併用することが可能です。
併用することでさらに節税することができるので、条件を満たしている場合はぜひ活用してみましょう。
確定申告時に必要となる書類
特例を受ける際は、以下の必要書類を準備したうえで確定申告をおこなうことが必要です。
必要な書類 |
詳細 |
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譲渡所得の内訳書 |
税務署の相談窓口や国税庁のホームページの「確定申告書等作成コーナー」で入手可能 |
売却した居住用家屋やその敷地の登記事項証明書 |
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戸籍の附票写し |
居住用財産の3000万円特別控除と同様に、マイホームの売却契約日前日の住所と所在地が異なる場合は必要 |
特定の居住用財産買い替えの特別控除
マイホームを買い替える際に発生する譲渡所得税の納税を将来に繰り延べることができる制度のことです。
通常、不動産を売却して利益が出ると譲渡所得税が発生し、翌年の確定申告で納税する必要があります。
しかし、新たにマイホームを購入するなど一定の条件を満たすことで、売却した物件の譲渡所得税の課税を次に購入したマイホームを売却する時まで先送りできます。
この特例を受ける際は、以下の条件を満たす必要があります。
1.売却したマイホーム(居住用財産)の所有期間が10年を超えていること 2.住まなくなってから3年目の12月末までに売却していること 3.過去2年以内に「居住用財産の3000万円特別控除」や「軽減税率の特例」などの特例を受けていないこと 4.売却した不動産の所在地が日本国内にあること 5.売却価格が1億円以内であること 6.買い替え後のマイホームの面積基準を満たしていること ・床面積:50平米以上 ・土地面積:500平米以内 7.マイホームを売却した前年から翌年までの期間に買い替えが完了していること 8.2024年1月1日以降に入居または建築確認を受けた住居は、省エネ基準を満たしていること 9.買い替え後の中古住宅が耐火建築物の場合、築25年以内かつ耐震基準を満たしていること 10.売主と買主の関係が特別な関係でないこと(例:親子、夫婦) |
前述した通り、この特例は譲渡所得税を非課税にするものではありません。
あくまでも納税のタイミングを伸ばす制度ですので、後で必ず納税が必要となる点に留意してください。
また、この特例を受けるためには、他の特例を受ける際と同様に確定申告が必要です。
確定申告時に必要となる書類
申告時には以下の書類が必要となります。
必要な書類 |
詳細 |
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譲渡所得の内訳書 |
税務署の相談窓口や国税庁のホームページの「確定申告書等作成コーナー」で入手可能 |
売却した家を購入した際の売買契約書 |
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売却した際の売買契約書 |
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売却した家の所有期間を証明できる書類 |
(例:登記事項証明書など) |
購入した家の登記事項証明書、売買契約書の写し |
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購入した家の建築済証、確認済証 |
ー |
耐震基準適合証明書中古の場合 |
中古の場合 |
住民票 |
住所が異なる場合 |
必要になる書類は、購入した物件の性能などによっても変わるため時間に余裕を持って確認しながら準備しましょう。
空き家の譲渡所得の特別控除
相続した空き家を売却する際、一定の条件を満たすことで譲渡所得から最大3,000万円控除できる制度のことです。
この特例を受けるには、まず次の条件を満たしている不動産であるかどうか確認する必要があります。
・1981年(昭和56年)5月31日より前に建築された建物か ・区分所有建物登記がされている建物ではないか ・相続開始前に被相続人以外の人が住んでいないか |
上記の条件をクリアし、さらに以下の条件を満たすことで特例を適用できます。
1.建物付きで売却する場合、一定の耐震基準を満たしていること(または、売却日の翌年2月15日までに耐震基準を充たすためのリフォームをすること) 2.更地として売却する場合は、売却日の翌年2月15日までに解体が完了していること 3.相続から売却までの間、別の用途で使用していないこと(例:駐車場) 4.売却価格が1億円以内であること 5.ほかの特例を受けていないこと 6.同一被相続人から相続した空き家について、この特例を過去に受けていないこと 7.売主と買主の関係が特別な関係でないこと(例:親子や夫婦など) |
このように条件が複雑であるため、自分で判断するのが難しいこともあるでしょう。
もし判断に悩んだ場合は、税務署の相談窓口など専門機関に相談してみることをおすすめします。
また、空き家の譲渡所得の特別控除を受ける際もほかの特例と同様に確定申告が必要です。
そして、申告時に提出する書類もいくつかあるので事前にしっかりチェックしておきましょう。
確定申告時に必要となる書類
必要な書類 |
詳細 |
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譲渡所得の内訳書 |
税務署の相談窓口や国税庁のホームページの「確定申告書等作成コーナー」で入手可能 |
登記事項証明書 |
以下の情報が明らかになっていること ・1981年5月31日より前に建築されたことがわかる ・区分所有建物でないことがわかる ・相続・遺贈で取得したことがわかる |
被相続人居住用家屋等確認書 |
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耐震基準適合証明書もしくは建設住宅性能評価書の写し |
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譲渡した翌年2月15日までに取り壊ししたことがわかる書類 |
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売買契約書の写し |
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書類も複数あり、内容も複雑であるため、余裕を持って準備することが重要です。
少しでも不明点があったら、一人で悩まず、早めに税務署などに確認してくださいね。
不動産売却で損をした場合適用できる特例とは?
不動産の売却では、利益が出ることもあれば、損失が発生することもあります。
損失が発生した場合、譲渡所得はマイナスとなるため、本来であれば売却による所得税は発生しません。
しかし、特例を利用することで、給与所得など他の所得と相殺し、所得税の還付を受けることが可能です。
ここでは、譲渡損失が発生した場合に利用できる特例をご紹介します。
なお、利用できる特例は主に2つあり、
・売却後、新たに住宅を購入する予定はない
・売却後、新しく住宅を購入をする予定がある
のどちらかによって適用できる特例は異なります。
売却後、新たに住宅を購入する予定はない場合
適用できる特例:【特定居住用財産の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例】
5年を超えて住んでいた家を売却した際、住宅ローンがまだ残っており、かつ売却で損失が出た場合、この損失を一定の限度でその年の所得から差し引くことが可能です。
さらに、その年に差し引かれなかった金額については翌年以降3年間繰り越して控除できる制度になります。
適用要件に関しては、国税庁のホームページでご確認ください。
特例の内容
①譲渡損失において、他の所得(給与所得)などの損益通算※が可能
②翌年以降3年以内の各年分の総所得金額の計算上、譲渡損失を一定の方法により繰越控除することが可能
【※損益通算とは?】
所得を計算する上で、1年間で生じた利益からほかの所得の損失分を差し引ける制度のこと。
売却後、新しく住宅を購入をする予定がある場合
適用できる特例:【居住用財産の場合の譲渡損失の繰越控除の特例(買い換え)】
5年を超えて住んでいた家を売却し、さらに、住宅を買い換えた際に、売却損が出た場合、その年の所得と、損益通算することができます。
さらに、損益通算しても赤字となった場合は、その金額分翌年以降3年間繰り越して所得から控除することが可能です。
適用要件に関しては、国税庁のホームページでご確認ください。
特例の内容
①譲渡損失において、他の所得(給与所得)などの損益通算が可能
②②翌年以降3年以内の各年分の総所得金額の計算上、譲渡損失を一定の方法により繰越控除することが可能
あわせて知っておきたい!その他の節税方法
前述した特別控除を利用することで、譲渡所得税の軽減や納税の繰り延べをすることが可能です。
しかし、これらを利用する方法以外にも節税する方法があります。
以下の方法を活用することでさらに節税効果が期待できるでしょう。
- ふるさと納税を利用する
- 売買契約書を1通にする
ふるさと納税を利用する
「ふるさと納税」とは、自分が生まれた自治体や応援したい自治体に寄付できる制度のことです。
ふるさと納税で寄付した金額のうち、2,000円を超える部分については、住民税や所得税の控除を受けることができます。
さらに、寄付先の自治体によっては、その地域の名産物などが返礼品としてもらえることもあります。
こうした節税効果が期待できるふるさと納税ですが、寄付できる金額には上限があり、その年の所得によって決まります。
所得が多ければ多いほど上限額が高くなるため、不動産売却をして利益が大きくなるほど、より多くの自治体への寄付が可能です。
上限額を確認する際は、ふるさと納税サイトなどにあるシミュレーションを活用し、事前にチェックしてみると良いでしょう。
売買契約書を1通にする
不動産売買契約を締結する際に作成する「不動産売買契約書」を1通のみにして、印紙税を節税する方法もあります。
前述した通り、不動産売買契約書は課税文書であり、作成する際には印紙税を支払わなければなりません。
印紙税は、契約金額によって税額が異なりますが、例えば5,000万円を超える契約では、軽減税率が適用されても3万円かかります。
通常、不動産売買契約書は2通作成することが一般的ですが、もし2通作成するとなると6万円の印紙税が発生するということになります。
しかし、必ずしも複数通作成しなければならないという決まりはないので、少しでも印紙税を節約したいのであれば、1通のみにしてしまうのも手です。
もし1通のみにする場合は、一方は原本、もう一方はコピーを所持するということになるでしょう。
その場合、万が一原本を紛失してしまうと、コピーだけでは法的効力が弱くなってしまうリスクがあるため注意が必要です。
可能であれば通常通り2通作成することをおすすめしますが、少しでも印紙税を抑えるための裏技として覚えておくと役立つかもしれません。
不動産売却時の税金対策での注意点
不動産売却の際は、譲渡所得税に対しての控除やふるさと納税などを用いた節税対策など、さまざまな方法で税金対策をおこなうことができます。
しかし、税金対策には注意すべき点もあります。
ここからは、不動産の売却においての税金対策で注意しておきたい点についてご紹介します。
併用できない控除がある
上記で紹介した控除の中には、ほかの控除と併用することができないものもあります。
例えば、居住用財産の3,000万円の控除と住宅ローン控除の特例措置(※)などです。
せっかく控除を受けられると思っても、内容によっては併用することができない場合もあるので、利用する前に確認しておきましょう。
※住宅ローンの控除とは? 住宅ローンの残額の1%の金額がその年の所得税から控除される特例です。 年間40万円の控除を10年間受けることができます。 |
譲渡損失がある場合も確定申告が必要
不動産売却で20万円以上の課税所得がある場合は、所得税の確定申告が必要となりますが、売却をして損失が発生した場合でも確定申告が必要なケースがあります。
それは、譲渡損失の損益通算を希望する場合です。
損益通算とは利益と損失を合算することで、課税対象の利益を減らし、納税額を抑える仕組みです。
そのため、不動産を売却して損失が発生した場合でも確定申告をしておいた方が損はありません。
相続した不動産の場合他の税金が発生する
親から相続した不動産を売却する場合、上記でご紹介した税金に加えて、他にも税金が発生します。
具体的には、以下の2つです。
・相続税
・名義変更に伴う税金
・印紙税
相続した不動産を売却する際は、名義を売主に変更しなければなりません。
この名義変更の際、不動産の価格の0.4%に相当する登録免許税がかかります。
さらに、土地を売却する際には不動産売買契約書などの書類を作成しますが、こうした課税文書を作成する際には、印紙税も納めなければなりません。
また、相続財産総額が基礎控除額を超える場合には、相続税が課税されます。
基礎控除額の計算式
【3,000万円+(法定相続人の数×600万円)】 |
不動産売却時の税金についての相談窓口
不動産売却をする際にかかる税金が多いうえ、控除を利用するには細かい要件などを確認しなくてはなりません。
そのため、自分で判断するのが難しい場面もあるでしょう。
そのようなときには以下の機関に相談することをおすすめします。
- 税務署
- 不動産会社の顧問税理士
- ファイナンシャルプランナー
- 自治体がおこなっている無料税務相談会
これらの相談窓口の特徴について紹介していきます。
税務署
税務署では、税金に関する相談を無料で受け付けています。
確定申告に関することはもちろんのこと、それ以外のことも相談することができるので、不動産売却時の税金について疑問があれば税務署に相談してみましょう。
また、税務署への相談は電話だけではなく、対面で受け付けていることもあります。
相談を考えている場合は、まず最寄りの税務署のホームページなどを確認してみると良いでしょう。
ただし、確定申告の時期は混雑する可能性があるため、この時期を避けて相談することをおすすめします。
不動産会社の顧問税理士
不動産会社によっては、顧問税理士が税務に関する相談会を実施していることがあります。
こういった税理士による相談会を利用することで、税金に関する問題をスムーズに解決することができるでしょう。
また、契約している不動産会社に尋ねることで税理士の相談を受けられるので、個人で税理士を探す必要もなく、手軽に相談することができるので大変おすすめです。
ファイナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナーとは、税金や保険、年金、不動産など、お金に関するさまざまな悩みを解決する専門家です。
ファイナンシャルプランナーでは、税金に関するアドバイスを受けられるのはもちろん、ライフプラン全般についての相談ができる点が特徴です。
そのため、単に税金だけではなく、不動産売却時にかかる費用や将来のお金の見通しなど詳しく聞くことができます。
また、ファイナンシャルプランナーは金融機関に所属している場合が多く、その際は無料で相談できることが一般的です。
一方、独立系のファイナンシャルプランナーに相談する際は、有料となることが多いので、ニーズに応じて選ぶと良いでしょう。
自治体がおこなっている無料税務相談会
自治体によっては、役所などで税金に関する無料相談会を開催していることがあります。
この相談会では、地元の税理士が対応することが多いため、追加費用を気にせず気軽に相談することができます。
不動産売却時の税金に関して気になることがあれば、ぜひ利用を検討してみましょう。
ただし、ほとんどの場合は予約が必要ですので、まずは自治体のホームページなどで予約方法や予約状況を確認してみることをおすすめします。
不動産売却時の税金に関するよくある質問
ここでは、不動産売却の税金に関してよくある質問をまとめてみました。
ぜひ参考にしてみて下さいね。
確定申告ってどうやるの?
不動産を売却して利益が生じた場合や上記でご紹介した特例を受ける場合は確定申告が必要となります。
確定申告の大まかな流れは以下の通りになります。
- 必要な書類を準備する
- 譲渡所得税を計算する
- 必要な項目を書類に記入する
- 必要な書類を提出する(税務署へ直接提出・郵送・e-TAXなど)
確定申告の詳しいやり方については、以下の記事でも紹介しているので、こちらもぜひ参考にしてみてくださいね。
また、「自分で確定申告を進めるのが不安」という方は、税理士などに依頼するのもおすすめです。
不動産の売却に消費税は発生するのか?
個人間で不動産の売買をした場合は、消費税は発生しません。
しかし、一般的には不動産会社を通して売買の手続きをおこなうことが多いです。
その際、不動産会社に支払う仲介手数料などには消費税がかかるため注意が必要です。
土地と建物の売却で税金に何か違いはあるか?
土地だけの売却か、建物も合わせて売却したかなど、取引内容による税金の違いはありません。
ただし、取引にかかる諸費用や手数料は、取引の種類によって異なります。
また、不動産売却時に受けられる控除についても、建物の売却時に適用できるものや土地の売却のみに適用できるものがある場合があります。
そのため、同じ取引金額であっても内容次第では税額に差が生じることがあります。
不動産を売却した年の固定資産税はいくらになるか?
固定資産税は、その年の1月1日時点で不動産を所有していた人に請求されます。
例えば、3月に不動産の引き渡しが済んだとしても固定資産税の納付書は売主に送られます。
しかし、すでに引き渡した不動産に対する固定資産税を1年分支払うことに納得できない方も多いはずです。
そのため、通常は日割り計算をして、売主と買主の間で分担して納税するケースが一般的となっています。
また、固定資産税は次の計算式で求めることができます。
固定資産税 = 固定資産税評価額 × 標準税率(1.40%)
税金や節税対策の知識を身につけて不動産売却をしよう
不動産売却後にかかる税金には、「売却手続きにかかる税金」と「売却で利益が発生した際にかかる税金」の2種類に大きく分けられます。
また、利益が出た場合にかかる譲渡所得税には、控除の対象となる特例もいくつかあります。
事前にどのような控除が適用されるのかを知っておくことで、節税対策に繋げることができるでしょう。
これらの手続きは複雑な場合もあるため、不安や疑問がある方は、最寄りの税務署や税務の相談会などで専門家からのアドバイスを受けることも大切です。
ぜひ本記事を改めて参考にして、少しずつ税金や節税対策の知識を身につけ、賢く不動産売却を進めていきましょう。
また信頼できる不動産会社に売却を依頼したい方は、当サイトが提供する不動産一括査定サービス「イエイ」がおすすめです。
あなたのニーズに合致する不動産会社もきっと見つかるはずなので、売却を検討している方は、ぜひ「イエイ」を活用してみてくださいね。