固定資産税評価額とは、固定資産税や都市計画税などの計算の元となる価額です。
固定資産評価額を算出する方法は決まっており、計算式を理解していればご自身で算出も可能です。
本記事では固定資産評価額とはなにか、固定資産評価額の調べ方についても解説します。
固定資産評価額の計算方法についてもわかりやすく解説しているので最後までご覧ください。
この記事の目次
固定資産税評価額とは
固定資産税評価額とは、固定資産税や都市計画税などを計算するために用いられる価額です。
固定資産税評価額に税率や補正率を乗じることで、税額が算出できます。
固定資産税評価額は3年に1度評価替えされ、数字が更新されます。
計算方法を理解すれば固定資産税評価額を算出することも可能ですが、計算自体は複雑でありなかなか計算できません。
そのため、固定資産税評価額を知るときには、書類などで価額を確認する方法もおすすめです。
固定資産税評価額の3つの調べ方
固定資産税評価額を調べる方法は以下の通りです。
- 固定資産税通知書で確認する
- 固定資産税評価証明書・公課証明で確認する
- 固定資産税課税台帳で確認する
ご自身に合った方法で調査してみましょう。
固定資産税通知書で確認する
固定資産税評価額は、固定資産税通知書で確認できます。
固定資産税通知書とは、毎年自治体から送られてくる固定資産税の金額が決定したことを通知する書類です。
固定資産税通知書には納付書も同封されており、納付書を利用して固定資産税を納付します。
固定資産税通知書には固定資産税を計算する過程が記載されており、その中に固定資産税評価額が記載されています。
固定資産税評価証明書・公課証明書で確認する
固定資産税通知書を紛失している場合は、固定資産税評価証明・公課証明書で固定資産税評価額を調べられます。
固定資産税評価証明書は固定資産税評価額が記載されている書類で、公課証明書は固定資産税評価額と固定資産税額の両方が記載されている書類です。
固定資産税評価証明書・公課証明書は、所有している不動産を管轄する自治体での取得が可能です。
両証明書を取得するには費用がかかります。東京都の場合は1件目の不動産の評価証明は400円、2件目以降は1件につき100円必要です。
取得費用は各自治体で異なるため、取得先の自治体に確認しましょう。
なお、固定資産税評価証明も公課証明書も個人情報であるため、不動産の所有者以外が取得するには委任状が必要になります。
固定資産税課税台帳で確認する
固定資産税評価額は、固定資産税課税台帳で確認できます。
固定資産税課税台帳は各自治体に備えられている不動産の固定資産税評価額や課税される人、不動産の情報などが記載されている台帳です。
固定資産税課税台帳は個人情報が多く掲載されているため、本人が縦覧を希望し本人確認書類を提示すれば閲覧が可能です。
縦覧できる日程が決まっているケースもあり、東京都の場合は2023年の6月30日で終了しています。
固定資産税課税台帳を縦覧する場合は、縦覧できるか確認してから自治体を訪れるとよいでしょう。
固定資産税評価額をわかりやすく計算する方法
固定資産税評価額をわかりやすく計算する方法について解説します。
家屋と土地の固定資産税評価額の計算方法は異なるため、両方の計算方法を理解してからやってみましょう。
計算方法は複雑であるため難しいと判断したら、固定資産税通知書などで確認する方法がおすすめです。
家屋の固定資産税評価額は再建築価格方式によって算出される
家屋の固定資産税評価額は、「再建築価格方式」を使い計算します。
再建築価格方式とは、現時点で建物を再建築したらいくらかかるのか計算し、築年数などを補正して算出する方式です。
再建築価格方式の計算式は、次のとおりです。
家屋の固定資産税評価額 = 再建築費評点数 × 損耗の状況による × 評点一点当たりの価格 減点補正率 ※再建築費評点数 = 標準評点数 × 補正係数 × 計算単位 |
再建築価格方式では、建物の構造を基準とした数字に屋根や基礎の面積を乗じ、築年数で補正した数字を積み上げて計算します。
1つの部分の点数を積み上げて計算していくことにより計算式も多くなるため、家屋の固定資産税評価額を計算するのはかなり難しいといえます。
土地の固定資産税評価額は路線価方式か標準宅地比準方式で算出される
土地の固定資産税評価額は、「路線価方式」か「標準宅地比準方式」のどちらかで計算されます。
路線価方式で計算されるのは市街地であり、標準宅地比準方式で計算するのは路線価の設定されていない郊外です。
路線価は相続時に利用される路線価ではなく、固定資産税路線価を利用します。
路線価方式の固定資産税評価額の計算方法は、次の通りです。
土地の固定資産税評価額 = 固定資産税路線価 × 土地面積(㎡)× 評点 |
なお、固定資産税路線価は、一般財団法人 資産評価システム研究センターのホームページ「全国地価マップ」で確認できます。
標準宅地比準方式は、自治体が決めた基準の土地と比較して固定資産税評価額を算出する方法です。
標準宅地比準方式の固定資産税評価額の計算方法は、次の通りです。
土地の固定資産税評価額 = 標準宅地の単価 × 土地面積(㎡)× 補正率 |
評点や補正率を加味して計算するのは非常に難しいため、路線価・単価に土地面積を乗じた数字を固定資産税評価額のおおまかな目安としておくとよいでしょう。
固定資産税評価額を利用して固定資産税をかんたんに計算する方法
固定資産税は、固定資産税評価額がわかっていれば簡単に計算ができます。
特例を利用しない通常の計算方法と、特例を利用する2つの計算方法について把握しておきましょう。ここでは、通常の計算方法と、住宅用地の特例を利用したときの固定資産税の計算方法を解説します。
固定資産税評価額に税率を乗じて計算
固定資産税は、次の計算式で計算します。
固定資産税 = 固定資産税評価額 × 1.4%(標準税率) |
固定資産税の税率は自治体が決定できるため、1.4%に設定されていない自治体もあります。
固定資産税を計算するときには、固定資産税を課税している自治体が税率を何%に設定しているのか確認しておきましょう。
住宅用地の特例を受けているケースの計算方法
住宅用地の特例を受けていると、土地の固定資産税が最大で1/6に減額されます。
住宅用地の特例は住宅が建っているだけで適用され、居住しているか空き家にしているかは関係ありません。
住宅用地の特例が適用された場合の固定資産税は、次の表のように減額されます。
住宅の敷地面積 | 固定資産税評価額の軽減率 |
小規模用土地(200㎡以下) | 固定資産税評価額 × 1/6 |
一般住宅用地(200㎡を超える部分) | 固定資産税評価額 × 3/1 |
住宅用地の特例が適用される土地の面積は、住宅の延べ面積の10倍までです。
また、住宅が居住用ではない、併用住宅のときは階数や居住割合により計算できる延べ面積が制限されます。
併用住宅の居住割合は、次の通りです。
家屋 | 居住割合 | 住宅用地の率 | |
---|---|---|---|
併用住宅 | 地上4階建て以下 | 4分の1以上2分の1未満 | 0.5 |
2分の1以上 | 1 | ||
地上5階建て以上 | 4分の1以上2分の1未満 | 0.5 | |
2分の1以上4分の3未満 | 0.75 | ||
4分の3以上 | 1 |
引用:大阪市「住宅用地の課税標準の特例措置」
たとえば、地上3階建てで居住割合4分の1以上2分の1未満の場合、住宅用地の率は0.5で計算しなければいけないため、延べ面積200㎡であれば100㎡の建物とみなされてしまいます。
固定資産税評価額を利用して計算する税金
固定資産税評価額は固定資産税以外の税金を計算するときにも利用されます。
固定資産税評価額を利用して計算する税金は、次の通りです。
税金名 | 備考 |
---|---|
固定資産税 | 1月1日現在の固定資産や償却資産の所有者に毎年課税される税金 |
都市計画税 | 都市計画法の用途地域内にある不動産を所有しているときに毎年課税される税金 |
登録免許税 | 所有権移転登記など法務局へ登記を申請するときに課税される税金 |
不動産取得税 | 不動産を取得したときに課税される税金 |
固定資産税評価額はさまざまな税金に利用されているため、どのようなケースで利用されるのか理解しておきましょう。
固定資産税をシミュレーション計算して目安を知ろう
固定資産税は、税金の中で比較的かんたんに計算できる税金の1つです。
ここからは固定資産税を家屋、土地に分けてシミュレーション計算していきます。
どのような計算をすればよいのか確認し、固定資産税がいくらになるのか自分でも計算できるようにしていきましょう。
家屋の固定資産税のシミュレーション
固定資産税を計算するときには、次の計算式を利用します。
固定資産税 = 固定資産税評価額 × 1.4%(標準税率) |
家屋の固定資産税評価額が2,000万円だった場合の計算式は、次のとおりです。
2,000万円 × 1.4% = 28万円(家屋の固定資産税) |
なお、家屋が新築であった場合には、次のような減税措置があります。
床面積要件 | 減額割合 | 減額期間 | |
新築住宅 | 50㎡以上280㎡以下 | 1/2 | 3年間 |
新築マンション | 5年間 | ||
認定長期優良住宅 | 5年間 7年間(耐火・準耐火建築物、マンションなどの場合) |
※2024年3月31日までに完成した家屋に適用
※併用住宅の場合は延べ床面積のうち2分の1以上が居住用の場合に適用
新築の減税措置が適用される場合は、一定期間、家屋の固定資産税が半額になります。
土地の固定資産税のシミュレーション
土地の固定資産税も家屋の固定資産税と同じ計算の仕方をするため、ここでは住宅用地の特例が適用されたケースのシミュレーションを行っていきます。
【シミュレーション条件】
- 敷地の上の家屋は100㎡の専用住宅
- 土地面積:300㎡
- 土地の固定資産税評価額:3,000万円
- 固定資産税率:1.4%
【シミュレーション計算】
土地面積200㎡までの土地の固定資産税
3,000万円 × 200㎡ ÷ 300㎡ × 1/6 × 1.4% = 約4.6万円…①
土地面積200㎡超え300㎡までの土地の固定資産税
3,000万円 × 100㎡ ÷ 300㎡ × 1/3 × 1.4% = 約4.6万円…➁
① + ➁ = 約9.2万円(土地の固定資産税)
住宅用地の特例の適用を受けられない土地の固定資産税は、このシミュレーションの場合42万円課税されるため、いかに減税措置の効果が大きいのかがわかります。
固定資産税評価額についてよくある質問
固定資産税評価額についてよくある質問は、次の通りです。
- 固定資産税の家屋の評価額が0円になるのはなぜですか?
- 土地の価値には4つも違う価格があるのはなぜですか?
- 固定資産税評価額は実勢価格の何割くらいですか?
固定資産税評価額についての質問やその回答を紹介していきますので、固定資産税評価額の内容に疑問に思っている方は内容をご確認ください。
固定資産税の家屋の評価額が0円になるのはなぜですか?
固定資産税の家屋の評価額は0円になることはありません。
家屋の固定資産税評価額は築年数が経過するごとに評価が減るように計算されますが、評価の計算方法上、最終的に建物の価格の2割が残るようになっています。
ただし、固定資産税は0円になる場合があります。
固定資産税には免税点があり、固定資産税の課税標準額が免税点以下になった場合は課税が免除されます。
固定資産税の免税点は、土地30万円・家屋20万円・償却資産150万です。
免税点はあくまで固定資産税の課税標準額であり、固定資産税額ではありません。
土地の価値には4つも違う価格があるのはなぜですか?
土地の価格が4つもあるのは、それぞれの価値の利用目的が違うからです。
土地の4つの価格は、次の通りです。
- 時価(実勢価格):不動産売買の価格、相場
- 公示価格:一般の土地取引の指標となる価格
- 相続税評価額(路線価):相続税や贈与税を算出するための価格
- 固定資産税評価額:固定資産税や都市計画税などを算出するための価格
上記のように土地の価格はそれぞれに異なる利用目的があるため、利用目的にあわせた価格を使用していかなければいけません。
固定資産税評価額は実勢価格の何割くらいですか?
固定資産税評価額は、実勢相場の約7割です。
1994年から各自治体の固定資産税の不均衡を是正するために、公示価格の約7割を基準とすることが決まりました。
公示価格は実勢価格の目安となる価格であるため、固定資産税評価額は実勢価格の約7割になります。
もし実勢価格の目安を知りたいのであれば、固定資産税評価額を70%で割り戻して計算してみましょう。
固定資産税評価額とは固定資産税を計算するための価額
固定資産税評価額は、固定資産税を計算するための価額です。
固定資産税評価額を算出する方法は決まっているものの、計算方法は複雑で容易に計算できません。
そのため、固定資産税評価額を知りたいときには、固定資産税通知書や固定資産税評価証明書を確認してみてください。
また、固定資産税評価額から固定資産税を計算するのは比較的かんたんであるため、固定資産税の目安を調べたい人は固定資産税の計算方法を理解しておきましょう。