この記事の概要
・不動産取得税の計算方法について ・不動産取得税の課税・非課税になるそれぞれのケースについて ・不動産取得税で適応出来る軽減措置について |
不動産の購入や建物の新築・増築などにより、その取得に対して課税されるのが「不動産取得税」です。
あらかじめ、どのくらいの税金がかかるのか把握しておきたいと考える方も多いのではないでしょうか?
この記事では、不動産取得税の計算方法をわかりやすく解説しています。
さらに、不動産取得税が非課税となる場合や、税額を抑えられる軽減措置についても詳しくご紹介します。
この記事の目次
不動産取得税とは?
不動産取得税とは、土地や建物の購入などにより、その取得した不動産に対して課される税金です。
毎年支払う「固定資産税」とは異なり、不動産取得税は取得時に一度だけ納める税金となっています。
また、不動産取得税は、国税ではなく地方税のため、不動産が所在する都道府県から納税通知書が送付されます。
【課税対象となる土地と建物】
土地に該当するもの |
田んぼ・畑・住宅地・塩田・池沼・山林・牧場・温泉・原野 |
---|---|
建物に該当するもの |
住宅・お店・工場・倉庫 |
固定資産税との違いとは?
不動産取得税と固定資産税とは何が違うのでしょうか?
まず、固定資産税とは、土地や建物などの固定資産を所有している人に対して課される税金です。
固定資産を所有している限り毎年課税されます。
固定資産には、土地や建物に加え、機械設備やソフトウェアなど形のないものも含まれます。
このように、不動産取得税は不動産を取得したことにより一度だけ課される税金なのに対して、固定資産税は、不動産以外にも対象となる固定資産を所有している限り課される税金になります。
つまり、不動産取得税と固定資産税の大きな違いは、
・課税されるタイミング
・対象となる資産の範囲
・納税先
にあります。
不動産取得税 |
固定資産税 |
|
---|---|---|
課税の時期 |
取得後数か月後のことが多い |
4・7・12・2月のことが多い |
対象となる資産の範囲 |
土地や建物などの不動産 |
・土地 ・建物 ・建物附属設備 ・機械装置 ・工具器具備品 ・車両運搬具 ・ソフトウェア等 |
納税先 |
都道府県 |
市区町村 |
無償で不動産を取得した場合でも課税される?
この不動産取得税のよくある誤解として「不動産を取得したことによる利益に課税される」と思われがちですが、実際には「不動産の移転」の事実に着目して課税される税金になります。
そのため、無償で取得した場合や1日だけ不動産の権利を取得した場合でも課税されてしまうのです。
「不動産の移転」には、例えば増改築や贈与などがあります。
ただし、不動産取得税がかからないケースもあります。
詳しくは下記でご確認ください。
不動産取得税の計算方法とは?
不動産取得税は下記の計算式で求めることができます。
固定資産税評価額×税率(4%) |
この不動産取得税では、実際に不動産を購入した価格ではなく「固定資産税評価額」を元に計算します。
この固定資産評価額は約70%程度が評価額になります。
例えば、3,000万円で購入した建物の場合、約2,100万円が評価額です。
ただし、不動産取得税は、住居用の土地・建物の場合、計算方法が異なります。
下記でそれぞれご紹介していきます。
住居用不動産を取得した場合の不動産取得税の計算方法
マイホームなど「住居用」として土地や建物を取得した場合、不動産取得税には軽減措置が適用されます。
まず、建物については、固定資産税評価額に対して3%の税率が課されます。
たとえば、評価額が2,000万円の建物なら、不動産取得税は60万円(2,000万円 × 3%)となります。
一方、土地についてはさらに優遇されており、「宅地」として評価された場合、固定資産税評価額が2分の1に軽減されます。
そのため、税額の計算式は以下のようになります。
土地の不動産取得税 = 固定資産税評価額 × 1/2 × 3% |
例えば、評価額が1,500万円の宅地なら、
→ 1,500万円 × 1/2 × 3% = 22万5,000円
【※宅地とは】
宅地とは、現在すでに建物が建っている土地、または住宅の敷地として利用される予定の土地を指します。
このように、住居用の土地と建物を取得した場合は、それぞれに異なる優遇措置が適用されるため、正しく計算することが大切です。
固定資産税評価額の調べ方
不動産取得税を計算するには、固定資産税評価額を知っていることが大切です。
この固定資産税評価額は主に
・納税通知書による確認
・市区町村窓口での照会
・電子申請システムの活用
によって知ることができます。
下記の記事では固定資産税の確認方法を詳しくご紹介していますので、ぜひ参照くださいね。
計算ツールについて
不動産取得税をもっと気軽に知りたい場合は、計算ツールを利用する方法もあります。
計算ツールを利用することで、簡単に不動産取得税を知る事ができますよ。
ただし、算出される額はあくまで参考であり、実際の税額とは異なる場合もあるという点は覚えておきましょう。
参照:東京都主税局ホームページ
不動産取得税は「必ず課税される」とは限らない?
不動産取得税と聞くと、どんなケースでも支払いが必要だと思っていませんか?
実は、すべての不動産取得に課税されるわけではなく、条件によっては非課税になることもあります。
この記事では、不動産取得税がかかるケースとかからないケースについて、具体例をまじえながらわかりやすく整理していきます。
課税対象になるケース
不動産取得税が課税される主なケースは以下の通りです。
・新築や購入によって不動産を取得した場合
・増改築により不動産の価値が上がった場合
・他人との間で不動産を交換した場合
・共有部分の持分を取得した場合
・不動産を贈与された場合
不動産取得税は「所有権の移転」に関連して課税されるため、たとえば、知人とお互いの不動産を交換した場合でも課税の対象となります。
また、所有している建物を増改築し、その結果として不動産の評価額が上がった場合も不動産取得税が発生する可能性があるので、注意が必要です。
さらに生前贈与や死因贈与、あるいは法定相続人以外の方に遺贈されたケースでも課税の対象となります。
不動産贈与は贈与税も課税される
不動産を贈与によって取得する場合、不動産取得税だけでなく「贈与税」も課税されます。
そのため、贈与によって不動産を受け取った場合、不動産取得税と贈与税の2種類の税金が発生することになります。
贈与税に関しては以下の記事でも解説していますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
非課税対象になるケース
不動産取得税が非課税になる主なケースは以下の通りです。
・法定相続人が不動産を相続した場合
・不動産の価格が低く免税点※を下回る場合
相続によって不動産を取得した場合は、原則として不動産取得税は課税されません。
これは、相続が本人の意思に関係なく発生し、財産だけでなく負債も含めて引き継がれるためです。
そのような状況で課税するのは適切でないという観点から、相続による不動産取得は非課税とされています。
ただし、非課税が認められるのは「法定相続人」が取得する場合に限られます。
法定相続人でない人物が遺贈によって不動産を取得した場合は、課税対象となるため注意が必要です。
また、不動産の評価額が一定の免税点に満たない場合も、不動産取得税は発生しません。
【免税点とは?】
免税点とは、「一定の金額に満たない場合には税金を課さない」という基準額のことを指します。
不動産取得税においても、取得した不動産の評価額が免税点を下回る場合は、課税対象外となります。
区分 |
免税点の金額 |
---|---|
土地 |
10万円未満の場合 |
家屋(新築、増築、改築の場合) |
1戸につき23万円未満の場合 |
家屋(売買、交換、贈与等の場合) |
1戸につき12万円未満の場合 |
不動産取得税で適応出来る軽減措置とは?
不動産取得税が課税されるケースと非課税になるケースをご紹介していきましたが、この不動産取得税は軽減措置を適用できる場合があります。
ここでは、不動産取得税で適応できる軽減措置についてご紹介していきます。
・新築の住宅の場合
・新築の長期優良住宅の場合
・中古住宅の場合
なお、マンションの場合は上記でご紹介している新築・中古のそれぞれの軽減措置と適用条件は同じです。
新築の住宅の場合
未使用の一戸建ての住宅や、分譲マンション等一戸建で、下記の床面積要件を満たす場合【課税標準額から1,200万円が控除】されます。
なお、当該住宅の評価額が1,200万円未満の場合はその額を限度とします。
床面積(※) | ||
---|---|---|
一戸建ての住宅 | 一戸建て以外の住宅 | |
貸家以外 | 50㎡以上240㎡以下 | 50㎡以上240㎡以下 |
貸家 | 50㎡以上240㎡以下 | 40㎡以上240㎡以下 |
※注意点
・現況の床面積で判定するため、登記床面積と異なる場合があります。なお、マンション等で共用部分がある場合、共用部分の床面積を専有部分の床面積割合により按分した床面積も含まれます。
・店舗兼住宅のような併用住宅の場合は、非住宅部分からは控除されません。住宅部分の床面積で判定します。
以上の条件をふまえ、新築住宅の建物部分の不動産取得税額は下記の計算式で求められます。
(建物の固定資産税評価額 ― 1,200万円) × 税率=建物の不動産取得税 |
新築の長期優良住宅の場合
令和6年3月31日までに、一定の要件を満たす「認定長期優良住宅※」を新築した場合には、 課税標準額から1,300万円が控除されます。
控除を受けるためには自治体への申告が必要なので注意しましょう。
【適用要件】
・2024(令和6)年3月31日までに取得した建物であること。
・取得者の居住用、またはセカンドハウス用の住宅であること。
・延べ床面積が50㎡以上240㎡以下。(延べ床面積には物置や車庫、マンションの共用部分なども含む)
【※長期優良住宅とは】
耐震性や省エネ性に優れ、長く住める基準を満たした住宅のこと。
行政から認定を受ける必要がある。
中古住宅の場合
中古住宅の場合も、要件を満たしていれば、軽減措置を適用する事ができます。
ここでは、
・耐震基準に適合する中古住宅
・耐震基準不適合の中古住宅
それぞれの内容をご紹介します。
耐震基準に適合する中古住宅
下記の要件全てを満たす場合に課税標準額から一定額が控除されます。
居住要件 | 個人が自己の居住用に取得した住宅であること (住宅以外であった家屋を住宅にリフォームする場合は、取得前に当該リフォームが完了している必要があります) |
|
床面積要件(※) | 50㎡以上240㎡以下 | |
耐震基準要件 (①②のいずれか) |
① | ② |
昭和57年1月1日以降に新築された住宅であること |
昭和56年12月31日以前に新築された住宅で、建築士等が行う耐震診断によって新耐震基準に適合していることの証明がされたもの (当該証明に係る調査が取得前2年以内に終了しているものに限る) |
※注意点については先述の新築住宅と同じ
<控除額>
当該住宅が新築された日に応じた額が、課税標準額から控除されます。
新築された日 | 控除額 |
---|---|
平成9年4月1日以降~ | 1,200万円 |
平成元年4月1日~平成9年3月31日 | 1,000万円 |
昭和60年7月1日~平成元年3月31日 | 450万円 |
昭和56年7月1日~昭和60年6月30日 | 420万円 |
昭和51年1月1日~昭和56年6月30日 | 350万円 |
昭和48年1月1日~昭和50年12月31日 | 230万円 |
昭和39年1月1日~昭和47年12月31日 | 150万円 |
昭和29年7月1日~昭和38年12月31日 | 100万円 |
※注意点
・昭和56年12月31日以前の新築については、先述した耐震基準要件②を満たさなければ控除されません。
・昭和29年6月30日以前に新築された住宅の場合、上記要件を満たしていても控除されません。
上記の控除額を参考に中古住宅の建物の不動産取得税を算出すること
ができます。
(固定資産税評価額 ― 控除額)× 税率 =建物の不動産取得税 |
【耐震基準不適合の中古住宅】
ここでは、平成26年4月1日以降に取得した中古住宅を対象とした、耐震改修による税額控除の仕組みをわかりやすく解説します。
【軽減を受けるための条件】
条件 | 詳細 |
---|---|
床面積の要件(工事前の状態) | 建物の延床面積が 50㎡以上240㎡以下 であること |
耐震改修の条件(取得後6ヶ月以内に行う) | ・取得した本人が改修工事を実施すること ・改修後に建築士などによる診断で、「現行の耐震基準を満たしている」と証明されること |
居住要件(工事後6ヶ月以内に入居) | 工事完了後、その住宅に実際に住み始めること |
【注意点】
住宅の引き渡し前や購入前に耐震工事が済んでいる場合は、この減税の対象外となるので注意しましょう。
減額される金額はいつ建てられたかで決まる
控除額は、住宅の新築年に応じて以下のように変動します。
新築された日 | 減額額 |
---|---|
昭和56年7月1日~昭和56年12月31日 | 12万6千円 |
昭和51年1月1日~昭和56年6月30日 | 10万5千円 |
昭和48年1月1日~昭和50年12月31日 | 6万9千円 |
昭和39年1月1日~昭和47年12月31日 | 4万5千円 |
昭和29年7月1日~昭和38年12月31日 | 3万円 |
昭和29年6月30日以前に建てられた住宅は、たとえ耐震改修しても控除対象外なので要注意です。
【節税のポイント】
実際に減税される金額は、「当初の税額」よりも大きくなることはありません。
たとえば、課税標準額に基づいて算出された税額が6万円だった場合、控除額が12万6千円であっても、減額されるのは6万円までとなります。
軽減措置はどのように受ける?手続きの流れ
上記でご紹介した不動産取得税の軽減措置を受けるためには、所定の手続きが必要です。
【手続きの流れ】
①不動産取得税申告書※を都道府県税事務所に出す
②①の書類を出す際に、軽減措置の適用を希望する旨を明記する
※申告書は、各都道府県の税事務所の窓口またはホームページからダウンロードできます。
【注意点】
・不動産取得税は、不動産を取得してから30日以内に登記を行った場合、一般的には申告は不要です。
・申告をしなくても、多くの場合は、各都道府県から納税通知書が自動的に送付されます。
・ただし軽減措置の適用を受けるには、取得日から原則30日以内に申告が必要です。
軽減措置の申請を忘れた場合どうする?
上記で軽減措置の適用を受けるには、申告が必要とご紹介しましたが、申請を忘れてしまった場合どうすればいいのでしょうか?
軽減措置の申請を忘れてしまった場合でも、不動産の取得日から5年以内であれば、還付申請によって払いすぎた不動産取得税を取り戻すことが可能です。
【還付申請の手続き方法】
不動産取得税の還付を受けるには、以下の書類をそろえて、管轄の都道府県税事務所に提出します。
・不動産取得税還付申請書
・その他、軽減措置の対象となることを証明する書類(登記事項証明書、売買契約書、住民票、耐震診断書など)
※還付申請書は、各都道府県の公式ホームページからダウンロードできます。
なお、申請が受理されてから、実際に還付金が振り込まれるまでには1〜2ヶ月程かかるのが一般的です。
不動産取得税はいつ払えばいいの?
不動産を購入したあと、「不動産取得税っていつ払えばいいの?」と疑問に思う方も多いでしょう。
実際には、不動産を取得したあとに都道府県から納付書(納税通知書)が届き、それに従って納税する形になります。
この通知書は、申告書を提出した後に都道府県税事務所から送られてきます。
【注意点】
納付書が届いたら、そこに記載された支払期限(多くは通知書が届いてから約1ヶ月以内)までに支払いましょう。
期日を過ぎると延滞金が発生する可能性もあるので、放置せず早めに対応するのが安心です。
【納付書が届くタイミングは、物件や地域によって異なる】
納付書が手元に届く時期は一律ではありません。
以下に、おおまかな目安を紹介します。
・新築住宅の場合
一般的に、取得した翌年の4月頃に納税通知書が送付されることが多いです。
ただし、地域によっては半年~1年以上経ってから届くケースもあります。
・中古住宅・土地の場合
通常、取得から2~3ヶ月ほどで納付書が送られてきます。
こちらも地域差があるため、都道府県の税務事務所に確認しておくと安心です。
【事前に「お知らせハガキ」が届くことも】
地域によっては、納付書の前に「不動産取得税の課税についてのお知らせ」などと書かれたハガキが届くこともあります。
これは納税通知ではなく、課税予定の連絡のようなものになります。
突然届いても慌てず、納付書が来るまで待ちましょう。
不動産取得税は軽減措置を上手く活用して節税に!
不動産取得税の計算の仕方についてご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか?
不動産取得税は、不動産を取得後に課税されるため、突然の出費に慌てないよう、あらかじめ資金の準備をしておくことが大切です。
記事内でもご紹介した通り「不動産取得税」は自分で計算する事も可能です。
都道府県によっては、専用の「税額計算ツール」が提供されている場合もありますので、ぜひ活用してみてください。
また、一定の条件を満たすことで適用できる軽減措置もあります。
これらの制度を上手く利用すれば、税負担を軽くすることができるため、不動産の取得前にしっかりと確認しておきましょう。