「所有している不動産を売却したい」、「不動産にかかる固定資産税がいくらか知りたい」などで悩むとき、不動産の価値を把握できるのが不動産評価額です。

本記事では、5つある不動産評価額「固定資産税評価額」「公示地価」「基準地価」「相続税評価額」「実勢価格」それぞれの概要を解説します。

売却や相続など、ケースによってどの不動産評価額で算出するのかは異なります。

ケース別の不動産評価額の計算方法や調べ方も解説しているので、ぜひご覧ください。

不動産評価額とは?5つの評価額の概要

物件を評価するイメージ

不動産評価額とは、不動産がどれくらいの資産となるのか、価値を算出するために必要な基準です。

主に5種類あり、それぞれ次の通りに特徴が異なります。

不動産評価額の種類

特徴

固定資産税評価額

固定資産評価基準にもとづいた基準価格

(土地と建物で評価額が異なる)

公示地価

国土交通省が公表している基準値1㎡あたりの土地の価格

基準地価

各都道府県が公表している基準値1㎡あたりの土地の価格

相続税評価額(路線価方式・倍率方式)

国税庁が発表している1㎡あたりの土地の価額

実勢価格

国土交通省が集計している実際の売買における取引価格


それぞれの不動産評価額の特徴をもとに、なぜ不動産の価値を知りたいのかによって算出方法を選ぶ必要があります。

まずは、それぞれの評価額の内容を詳しく解説します。

①固定資産税評価額とは

固定資産税評価額とは、固定資産税のほか登録免許税や不動産取得税などを算出する際の基準となる価格です。

土地と建物で評価額は異なります。

建物に関しては、構造によって次の通りに評価額に差があるのが一般的です。

・鉄筋コンクリート造>木造
・マンション>一戸建て

木造戸建てよりもマンションの方が評価額は高い傾向です。

そのほかにも、延べ床面積や築年数、住宅設備などによっても評価額は異なります。

固定資産税評価額は固定資産評価基準にもとづき、3年に1回「評価替え」と言う、不動産の時価を適切にはかるために見直しがされます。

②公示地価とは

公示地価とは、国土交通省が公表している、基準値1㎡あたりの土地価格の基準です。

都市計画区域内または、都市計画区域以外であっても売買取引がおこなわれるであろう、全国25,000以上の地点における、毎年1月1日時点での価格が同年3月に発表されます。

不動産市場における価値とは直結しませんが、一般的な個人売買や公益事業における売買での目安となる価値が把握できます。

③基準地価とは

基準地価とは、各都道府県が公表している、基準値1㎡あたりの土地価格の基準です。

公示地価と同じく、個人や公共事業における土地の売買の目安となる価格が把握できます。

公示地価とは異なり、都市計画区域以外でも地価を把握できる特徴があります。

全国2万以上の地点で、毎年7月1日に公表されているため、公示地価との比較にも活用できるでしょう。

④相続税評価額(路線価方式・倍率方式)とは

相続税評価額とは、相続税、贈与税の基準となる評価額です。

国税庁が発表している1㎡あたりの土地の価額の基準である「路線価方式」、それ以外の地域を「倍率方式」として、基準価格を把握可能です。

毎年1月1日時点での土地の価値が同年7月頃に公表され、評替えは毎年ごとにおこなわれます。

路線価には、各都道府県によって示される「固定資産税路線価」があります。

固定資産税路線価は、毎年4月頃に公表され、評替えは3年ごとです。

⑤実勢価格とは

実勢価格とは、国土交通省が集計している、実際の不動産の取引データから把握できる不動産価格です。

建物の広さや築年数、売却理由によって不動産の取引価格は異なります。

また、売却時期や景気など市場の動向によっても取引価格は変動するため、参考程度に留めておきましょう。

【ケース別】不動産評価額の調べ方と計算方法

家とお金のイメージ

どのような状況下で不動産評価額を知りたいのかによって、調べ方や算出方法は次の通り異なります。

不動産評価額を知りたいシーン

不動産評価額の調べ方

【売却】不動産がいくらで売却できるか知りたいとき

国土交通省の「国土交通省不動産取引価格情報」を活用する

【納税】固定資産税額や不動産取得税額を知りたいとき

納税通知書に記載されている「固定資産税評価額」をもとに算出する

【相続】相続税や贈与税を知りたいとき

国税庁「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」でわかる相続税評価額から算出する

【売買】土地の資産価値を知りたいとき

国土交通省「地価公示・都道府県地価調査」を活用する

【離婚】財産分与できる金額を把握したいとき

国土交通省の「参考土地情報システム」から算出する


下記で紹介している各サイトを確認し、調べたい土地やその周辺情報から不動産評価額を調べられます。

それぞれのシーンにあった、詳しい算出方法を解説します。

【不動産売却】相場を把握したいとき

不動産がいくらで売却できるのかを知りたいときは、過去の取引データがわかる実勢価格を調べましょう。

国土交通省の「国土交通省不動産取引価格情報」を活用し、売却予定の不動産のあるエリアを絞ります。

土地のみであれば坪単価、土地と建物であれば築年数や延べ床面積と取引総額などが確認できます。

売却に必要となるメインの不動産状況が把握できるため、簡単に売却時の目安が把握できるでしょう。

本格的に売却へと動き出す際には、売却価格の精度の高い不動産査定を不動産会社に依頼するとよいでしょう。

不動産査定ではどのくらいで売りに出すのかを把握できますが、成約価格ではないことを覚えておく必要があります。

>> 土地所有者は必見!保有時、売却時にかかる税金まとめ

【納税】固定資産税や不動産取得税を把握したいとき

毎年4〜6月頃に送付される、固定資産税の納税通知書の評価額では、固定資産税額不動産取得税を把握できます。

納税通知書に記載されている固定資産税評価額をもとに、次の式にあてはめて算出しましょう。

固定資産税=固定資産税評価額×4%(税率)

納税通知書がない場合、不動産の所有者本人であれば、自治体の役所に問い合わせて不動産評価額を確認可能です。

一方、所有者以外でも、委任状を作成して市区町村の役所へ提出すると、固定資産評価証明書などで確認ができます。


不動産取得時に一度だけ納税の義務付けられている「不動産取得税」は、次の通りに算出します。

不動産取得税=不動産の評価額×税率(4%)

不動産の取得日が令和6年 3月31日までであれば、土地のみ税率が0.3%に軽減されます。

新築購入時や宅地(住宅を建てるための土地)購入時では、税金負担がさらに軽くなる特別控除も適用可能です。

参考元:総務省「不動産取得税

【相続】相続税や贈与税を把握したいとき

相続した不動産にどれくらいの相続税がかかるのか、贈与した不動産にどれくらいの贈与金がかかるかを把握するためには、まず、相続税評価額を把握しなければいけません。

国税庁「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で調べたいエリアを検索します。

数字とアルファベットで構成された路線図と、固定資産税の納税通知書に記載されている土地の面積と持分割合を次の通りに乗じます。

相続税評価額(路線価方式)=土地の面積×持分割合×路線価(190Dであれば19万円)

路線価が記載されていない土地では、倍率方式を用いて相続税評価額を算出可能です。

上記サイトの倍率表で倍率を把握し、固定資産税納税通知書に記載された固定資産税評価額をもとに、次の通りに算出します。

相続税評価額(倍率方式)=固定資産税評価額×持分割合×倍率

続いて、相続税評価額から相続税・贈与税を算出します。

相続税・贈与税=(相続税評価額-基礎控除額)×税率

基礎控除は条件によって異なるほか、相続税では法定相続人の人数によっても基礎控除額が異なります。

参考元:国税庁「相続税の計算」「贈与税の計算と税率(暦年課税)

>> 土地相続税の税率を計算!控除を活かした節税対策もご紹介
>> 不動産の贈与税の考え方を解説。他人同士の場合もかかるの?

【売買】土地の資産価値を把握したいとき

土地の資産価値を把握したいときは、公示地価を調べます。

国土交通省「地価公示・都道府県地価調査」では、土地の㎡あたりの価格がわかります。

調べたい土地周辺にどのくらいの価値があるのかを検索してみましょう。

なお、方角や道路条件などの要因から実際の取引価格は異なり、一般的に考えられる取引価格であると考えましょう。

>> 土地の評価額とは?調べ方と計算方法についてわかりやすく解説

【離婚】財産分与できる金額を把握したいとき
離婚による財産分与では家庭への貢献度に関わらず、不動産の価格を折半し合うのが通常であり、実勢価格での合意が多いです。

実勢価格は、国土交通省の「国土交通省不動産取引価格情報」から調べられます。

また、固定資産税評価額から、次の通りにおおよその価格が把握可能です。

実勢価格の目安=固定資産税評価額÷0.70

たとえば、固定資産税評価額が3,000万円の不動産の場合では、3,000万円÷0.70=約4,285万円が実勢価格です。

【調停や裁判】相続などで揉めたとき

相続など不動産の売却価格などで揉め、調停や裁判が必要になった場合、不動産鑑定評価書を作成する必要があります。

不動産鑑定評価書は国家資格である不動産鑑定士がおこなう、不動産価格の説明を中心として記載した書面で、裁判にも活用されます。

鑑定費用は、土地のみか、土地と建物かなどの鑑定対象でも異なり、20〜50万円が目安です。

なお、金融機関が不動産を担保とする際には、不動産会社による不動産査定や固定資産税路線価などで算出します。

納税・相続時に活用できる税金の節約ポイント

税金を計算するイメージ
納税や相続・贈与時に支払う税金を節約できるケースがあります。

それぞれのケース別に節約できる条件などを解説します。

固定資産税は減税できるケースがある

毎年納める必要のある固定資産税は、納税通知書の地積が実際の面積と間違っているケースにおいて、申告することで税金を減らせる可能性があります。

地積とは土地の面積のことを指し、昔に測量している場合、登記簿に記載されている地積が実際の地積より多いケースがあります。

土地(家屋)価格等縦覧帳簿では、周辺の納税者の固定資産税評価額を確認できる「縦覧制度」が確認可能です。

固定資産税が高く感じるなど疑問がある場合は、自治体に問い合わせるなどして調べてみましょう。

相続税・贈与税には基礎控除がある

相続税および贈与税には基礎控除があり、支払う税金を抑えることが可能です。

相続税では基礎控除額として「3,000万円+600万円×法定相続人の数」を差し引けるため、相続人が多いほど次の通りに控除額が大きくなります。

法定相続人の数

基礎控除額

1

3,600万円

2

4,200万円

3

4,800万円


一方、原則、60歳以上の父母などから、18歳以上の子どもや孫への贈与を対象とした「相続時精算課税の制度」をふくむ贈与税では、年110万円の基礎控除がうけられます。

婚姻関係が20年以上の夫婦間での不動産贈与は基礎控除に加え、最高2,000万円の配偶者控除がうけられる特例もあります。

参考元:国税庁「夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除

不動産評価額でよくある疑問

家とはてなマーク

不動産の価値がわかる不動産評価額を調べる際によくある、疑問点について解説します。

不動産評価額は売却価格の目安となるのか

不動産評価額は税金の指標となる評価額であるため、売却価格の目安になります。

しかし、売却価格と不動産評価額に直接的に結びつくような、関係性はないと考えておきましょう。

売却価格は住宅市場の需要と供給のバランスで決まります。

たとえば、引越しの多くなる時期によっても売却価格が変わるほか、早期に売りたいのなら売り出し価格を低く設定する必要もあるでしょう。

さまざまな要因から売却価格は異なります。

不動産の売り出し価格を決めるのは不動産査定です。

売り出し価格と売却価格が異なる点も把握しておきましょう。

>> 不動産売却には相場がある!?相場を調べる方法

固定資産税評価が高くなる住宅設備はなにか
次の住宅設備は課税対象となり、固定資産税評価が高くなります。

  • ソーラーパネル
  • エコカラット
  • 外装タイル
  • 床暖房
  • 床の間 など

評価点は「木造家屋再建築費評点基準表」にもとづき、構造上、家屋と一体となり、効用を不動産評価額とはなにか、不動産の価値の調べ方についてまとめています。

固定資産税の算出や売却価格の目安となる評価額など、ケースによって指標が異なるため目的に合わせて活用しましょう。高める住宅設備に対して加算されます。

新築時やリフォーム時などで、「ウッドデッキの設置をしたいけれど固定資産税が高くなるのでは」と考える方もいますが、基本的には加算されません。

不動産の売却価格を把握するには不動産査定がおすすめ

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不動産評価額は5つの指標からなります。

不動産売却時は実勢価格を参考にし、固定資産税を把握したいときには納税通知書の評価額を確認するなど、ケースに合った評価額で算出しましょう。

具体的な売却価格を把握したいときは、不動産会社に査定を依頼します。

査定額は業者によってバラつきがあるため、複数の不動産会社に依頼し、納得できる売り出し価格と信頼できる担当者かどうかを見極めるとよいでしょう。

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