中古住宅を売り出す際には、その物件の魅力をいかにアピールするかが重要になってきます。そのための方法として注目されているものにホームステージングがあります。しかし、ホームステージングという言葉自体をよく知らないという人も多いのではないでしょうか。

そこで、中古住宅の売却を考えている人のために、ホームステージングとはどういったものでどのようなメリットがあるのかなどについて解説をしていきます。

始まりはアメリカから!ホームステージングの歴史

一言でいうと、ホームステージングとは売却目的の中古住宅を家具やインテリアなどでディスプレイして魅力的に演出することです。

ホームステージングの始まりはアメリカから

中古住宅の購入希望者が内見に訪れた際に、何もない殺風景な部屋を見せるよりもこの演出によって新生活を喚起できるようにしておいたほうが購買意欲を刺激できるといわれています。同時に、住宅内部を魅力的に見せることで相場より高く売れる可能性も高まってきます。

こういった手法は日本よりも先にアメリカで発展していきました。なぜなら、マイホームを購入する際に新築を選択することの多い日本に対して、アメリカの住宅市場はその9割を中古住宅が占めているからです。

アメリカでホームステージングが本格的に行われ始めたのは1970年代であり、そこからフランス・アイルランド・イギリスなどに広まっていきました。さらに、アメリカではホームステージャーと呼ばれる専門職まで登場します。ホームステージャーは高度なスキルを有し、彼らの手にかかると従来よりも1割程度上乗せした価格で家が売れるといわれています。そのため、ホームステージャーは特殊技能を持った専門職として高いステータスを獲得しているのです。

少なくとも、アメリカでは不動産会社からの依頼が殺到する場合も珍しくないほどの人気の職業です。一方、日本でもこのホームステージングという手法は徐々に注目されるようになってきています。

なぜホームステージングが注目され始めたのか?日本の住宅事情

前述の通り、日本で住宅購入といえばこれまで新築物件が中心でした。そのため、ホームステージングが注目されることもあまりなかったのですが、現代においては状況が変わってきています。

少子高齢化や住宅の供給過多などが原因で空き家の数が増えているのです。2013年の総務省統計局の調べによると、日本の住宅総数は約6,063万戸ですが、その13.5%に当たる820万戸が空き家だということです。そうした現状と呼応し、売りに出される中古住宅や売れ残ってしまう物件も年々増加しています。

そんな中で中古住宅を販売するためには他の物件と差別化し、独自の魅力をアピールする必要があります。その結果、現状打破の手段として注目されるようになったのがホームステージングというわけです。

空き家問題によって日本でも注目され始めています!

中古住宅にはもともと「価格が手ごろ」「立地条件がよいものが多い」「値下がり率が低いので住み替えがしやすい」などといったメリットがあります。それらに加え、ホームステージングによって見た目のうえでも新築に劣らない魅力をアピールできれば一気に商品価値の高い物件となります。

また、ホームステージングの技術は売却物件だけでなく賃貸物件にも応用可能です。ホームステージング導入によって部屋の魅力を高めることで、入居者の早期獲得につながります。このように、ホームステージングは日本の不動産業界においても欠かせない存在になりつつあるのです。

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依頼先はどこ?ホームステージングの料金やプランについて

たしかに、国内においてもホームステージングの注目度は高まっています。しかし、日本ではまだ専門職としてのホームステージャーは確立されていません。そこで、ホームステージングを希望する場合はその手法を取り入れている専門会社を探して依頼をすることになります。

ホームステージングの料金やプランは?

一般的に、そういった会社は複数の大手不動産会社と提携して仕事を受注しています。したがって、なじみの不動産会社があればまずはそこで問い合わせてみるのがよいでしょう。一方で、インテリア会社が事業の一つとしてホームステージングを手掛けているケースも数多くあります。

価格は数万~数十万円といったところですが、具体的な数字は企業によって異なりどういったプランを選択するかによっても差がでてきます。

たとえばアドバイスだけを行うコンサルティングプランなら5万円、アドバイスに基づいて家具やインテリアなどのレンタルをしてくれるベーシックプランなら15万円、洗面所やトイレ・お風呂に至るまですべて業者の手でコーディネイトしてくれるハイクラスプランなら30万円などといった具合です。

売却機会が増加する!ホームステージングのメリット

ホームステージングを行うメリットをより具体的に分析してみると、まず不動産会社などが紹介や案内をしやすいという点が挙げられます。いくら立地や間取りのよい物件でも中身がみすぼらしいと、業者も顧客を連れて家に案内しづらくなってしまうものです。必然的に、そういった物件は後回しにされてしまいます。

逆に、家の中がホームステージングによっておしゃれな雰囲気になっていると業者も積極的に顧客を案内するようになります。そうすると、顧客の目に触れる機会が多くなるので短期間で売却できる可能性も高くなるわけです。

ホームステージングによっておしゃれな雰囲気になると好印象になります

また、家を見学する側の立場からすると部屋の中に何もない物件よりも家具やインテリアの充実した物件のほうが印象に残りやすくなるはずです。

印象に残った物件に対しては多少条件から外れていても候補として残しておこうとする心理が働きます。その結果、やはりホームステージングを施した住宅のほうが何もしなかった物件に比べて選ばれる確率は高くなるでしょう。

それに現代では家を探す際に、実際に物件を見て回るのではなく最初はインターネット上の写真で確認するといったケースが増えています。写真においてもより好印象を残しやすいのはホームステージングを行った家です。

さらに、物件がすぐに売れなかったとしてもホームステージングを施した家はメンテナンスが行き届いているということで、価格の下落が起きにくい傾向があります。

これも大きなメリットだと言えるでしょう。

こだわりが逆効果になる場合も!ホームステージングのデメリット

一見良いことずくめのホームステージングですが、もちろんデメリットもあります。

ホームステージングは当然コストがかかります

まずは当然の話として、コストがかかるという点です。

ホームステージングを行うことでコスト分よりも高く売れたり同じ値段でも短期間で売れたりすればよいのですが、現実では必ずしもそうなるとは限りません。ホームステージングを行ってその費用を売却コストに上乗せしたところ、内聞希望者が減ったという例もあります。いくら見栄えを良くしてもそれを見てくれないのでは本末転倒です。

それに、ホームステージングに使用する家具やインテリアは基本的にすべてレンタル品です。なかなか売却が決まらなければ、そのあいだにコストはどんどん膨れ上がっていきます。

なかには、その物件を自宅として使いながら売りに出すといったケースもありますがそうなると生活用品や自分の所有物をどこかに預けなければなりません。そして、それもコスト増大につながる可能性があるのです。

また、ホームステージングは購買意欲を高めるのに有効ではあるのですが購買層を狭めてしまう危険性もあります。たとえば、若い夫婦を想定したインテリアを施していた場合です。

想定通りの購入希望者が現れればよいのですが、独身男性や年配の夫婦などが内見に訪れた場合はイメージと違うと思われ、候補から外される可能性が高くなります。さらに、想定通りの購入希望者が現れたとしてもその人が自分の住む家に対して確固とした理想像を築いている場合は、ホームステージングによる演出は逆効果になってしまうケースもでてきます。

更地と現状維持での売却!ホームステージング以外の選択肢も視野に入れよう

中古住宅を売却する際、ホームステージングが必ずしもプラスに働くとは限らないためほかの選択肢についても考えておくことが大切です。その場合、有力な選択肢として挙げられるのが「家を解体し、更地にして売却する」「何もせずにそのままの状態で売却する」という2つの方法です。

前者の場合、解体コストはかかりますが家付きよりも高い値がついたり早く売れたりする傾向があります。更地は住宅付きの土地よりも使い勝手がよいため、高い需要があるからです。ただ、建物のあった土地を更地にすると固定資産税が一気に6倍になるという問題があります。取り壊したあとにすぐに買い手がつけば損をすることはありませんが、もしなかなか見つからなければそのあいだは高い税金を払い続けなくてはならなくなります。

一方、解体もせずホームステージングも行わずに中古住宅をそのまま販売する方法を選ぶと、不動産としての魅力が薄くてなかなか買い手が見つからないといったことにもなりかねません。その代わり、余計な手間が掛からないため最も安上がりな手段ではあります。

したがって、手を加えなくても売る自信のある物件ならばこの方法を選択するのも悪くはないでしょう。

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ホームステージングを行うかどうかで迷った場合の目安!

中古住宅をそのまま売却するのも、ホームステージングを行ってから売却するのにもそれぞれメリットとデメリットがあります。そのため、ホームステージングを行うかどうかで迷う場合も多いでしょう。そうしたときに目安となるのが、家の老朽化と内装の状態です。

老朽化が進んでおらず、内装も真新しい印象の家であればホームステージングの必要性は低いと言えるでしょう。

逆に、老朽化が目立ち始め内装もくたびれてきているような場合にはホームステージングは大きな力を発揮します。ただし、築数十年が経過し本格的に老朽化した建築物では、ホームステージングの効果も薄くなります。

壁紙がボロボロでフローリングも傷だらけといった住宅にいくらセンスの良い家具やインテリアを配置しても違和感が生じるだけです。そういった点を踏まえ、ホームステージングが本当にプラスの効果をもたらすのかを買い手の目線に立って考えていきましょう。

ホームステージングの特徴をよく理解して有効活用していこう!

家を売却するのであれば、少しでも高く売りたいというのは誰しもが思うところです。そして、ホームステージングはその手助けとなる可能性があります。ただし、家に対しては人それぞれ好みがあるため常にそれがプラスに働くとはかぎりません。

また「コストがかかる」「老朽化しすぎた家にはあまり効果が期待できない」などといった問題点もあります。そこで大切なのは、ほかの選択肢も視野に入れつつ不動産会社や専門会社などによく相談してから決めることです。

ホームステージングの特徴を理解して、不動産売却のために有効活用していきましょう。