土地を有効活用する手段のひとつとして賃貸併用住宅があります。マイホームを入手でき、同時に家賃収入で住宅ローンを返済できるというのが売り文句です。

ただ、注意が必要なのはそれを売却しなくてはならなくなった場合です。その対策をおざなりにしていると、大きな損失につながりかねません。そこで、賃貸併用住宅を所有している利点を解説しつつ、同時に売却の際の注意点についても検証をしていきます。

マイホームと賃貸住宅の一体化!賃貸併用住宅の特徴

そもそも賃貸併用住宅とはどのようなものを指すのでしょうか。

簡単にいうと、一つの建物に所有者の自宅と賃貸住宅が共存している形の建物です。昔よくあった二世帯住宅に近いものだと言えるかもしれません。ただ親族同士が生活する二世帯住宅とは異なり、賃貸併用住宅はあくまでも他人同士が同じ建物で生活するため、それぞれのプライバシーは確保できるようになっています。

自宅と賃貸住宅が共存

玄関は個別に用意され、それぞれの生活空間が交わることは基本的にはありません。

典型的な賃貸併用住宅としては2階建ての建築物を建て、1階部分に1Kの部屋を3戸~4戸用意し2階部分を丸ごと自宅に当てるといったようなものが考えられます。また、都心部で土地の値段が高い場合にはより効率てきにスペースを確保するために、建物を3階以上にして上半分を自宅スペース、下半分を賃貸スペースにするといった活用法もあります。

ちなみに、定義として定められているわけではないものの賃貸併用住宅では所有者の自宅面積は総面積の50%以上であるのが一般的です。なぜなら、大手銀行の多くが住宅ローンの貸出要件として「自宅面積が総面積の50%以上を占めていること」という条件を掲げているからです。

ただし、それ以外の要件を提示している金融機関もあり取引する金融機関が建物の設計プランに影響を及ぼす点が賃貸併用住宅の特徴のひとつだとも言えます。

なぜ賃貸併用住宅が注目されているのか?

単なるマイホームや賃貸住宅ではなく、あえて賃貸併用住宅という形を選択するのには理由があります。

注目される賃貸併用住宅

ひとつはローン対策です。住宅費とは非常に負担の重いものであり、生涯支出の4分の1を占めているともいわれています。しかも、分割払いという形で数十年に渡って払い続けなくてはならないので精神的な重荷にもなりかねません。

定年まで同じ職場で働くのが当たり前の時代であればその負担もそれほど気にならなかったかもしれませんが、定年制という概念が崩れつつある時代において長期間のローンの存在は大きな足かせとなってしまいます。

その点、賃貸併用住宅という形をとると家賃をローンの支払いに当てられるので背負った重荷を軽くすることができます。一方、賃貸併用住宅は投資用物件としても魅力的です。なぜなら、住宅ローンを利用して低い金利で収益物件を獲得できるからです。

通常、アパートやマンションといった賃貸目的の物件は金利2%以上のアパートローンやプロパーローンを利用して購入します。ところが、金融機関が定めた条件をクリアした賃貸併用住宅ならば金利1%以下の住宅ローンが利用可能となります。また、住宅ローンならがんや脳卒中など深刻な病気になった時に返済を免除される疾病保障付き住宅ローンが選択できるのも魅力です。

このように、賃貸併用住宅はマイホームを購入しようと思っている人にとっても、賃貸住宅の経営を行おうと考えている人にとってもメリットの大きな選択肢であるのです。

まだまだある!賃貸併用住宅所有のメリット

賃貸併用住宅には家賃で住宅ローンを相殺できる、マンションやアパートといった収益物件を利率の低い住宅ローンを利用して購入できるといったことのほかにも多くのメリットがあります。

賃貸併用住宅を所有するメリット

まず、賃貸併用住宅は100%自宅の場合と比べて相続税が有利です。敷地内の一部が賃貸住宅であると、入居者がいるためにその不動産は相続人が自由に使えない財産だと見なされます。すると、相続財産の査定の際に評価減を受けることになるのです。財産の評価が下がれば、当然課税される相続税の額も安くなることになります。

また、賃貸併用住宅は固定資産税の節税対策にもなります。

たとえば、必要以上に広い土地を相続したとしましょう。その土地をそのまま更地にしておいたのでは固定資産税が重くのしかかってきます。一方、その土地の上にマイホームを建てると税額を引き下げる効果をもたらします。土地の上に住宅を建てると、その土地の固定資産税額が減額される小規模住宅用地の特例というものがあるからです。

ただ、この特例が適用されるのは約60坪までです。それを超過した部分に関しては固定資産税が2倍になってしまいます。つまり、広過ぎる土地を相続した場合はマイホームを建てるだけでは税金の負担は重いままなのです。そこで、賃貸併用住宅の出番です。

小規模住宅用地の特例の適用範囲は住宅1戸に約60坪までという規定になっているので、賃貸併用住宅にして戸数を増やせば固定資産税を減額してもらえる範囲も広くなるという理屈になります。仮に、300坪の土地を相続したならば300÷60で自宅を含めた5戸以上の賃貸併用住宅を建てると所有する土地のすべてが減額対象となるわけです。

さらに、マンション経営をメインに考えている人にとっては自主管理ができるという点もメリットとして挙げられます。

一般的に、自宅から離れた場所にマンションを建てるとその管理は不動産会社に委託することになります。入出金管理や入退去の対応・入居者からのクレーム対応などといったことを離れた場所から個人で行うのは困難だからです。しかし、そうなると管理委託料を払わなくてはならなくなり利益が目減りしてしまいます。

その点、賃貸住宅と委託が同じ敷地内にある賃貸併用住宅なら個人での管理も十分可能です。ちなみに、アパート経営において重要なのは入居者にいかに長く住んでもらうかです。入居者と大家が顔見知りで良い関係を築いていると、退去率が低くなる傾向があります。

このように、より大きな収益を目指せるのも賃貸併用住宅の魅力のひとつです。そのほかにも、将来的なメリットとしては間取りの変更に対応しやすいという点も見逃せません。

マイホームを建てる際には、将来子どもは2人欲しいから家の広さはこのくらいがいいというように考えるものです。ところが、計画通りいかなければ家が無駄に広過ぎたり逆に狭すぎたりということになってしまいます。

賃貸併用住宅なら子どもが増えれば賃貸住宅の一部を自宅として使い、子どもが巣立っていけばまた賃貸住宅に戻すといった具合に自在に自宅の広さを変えていくことができます。

思わぬ落とし穴!賃貸併用住宅の売却問題

多くのメリットがある賃貸併用住宅ですが、良いことずくめだと安易に考えていると思わぬ落とし穴にはまってしまうケースがあります。それが売却の問題です。

安易に考えていると思わぬ落とし穴が。。。

当初の思惑通りに部屋が入居者で埋まり、その家賃によって住宅ローンの返済が順調に進んでいる内は問題ないでしょう。しかし、空室が目立つようになり家賃収入が当てにできなくなってくると、大きな家を建てた分だけ負担が増えてしまいます。そうなると、ローンの返済が苦しくなって家を売却しなくてはならない事態になる可能性もあります。

また、ローンは完済したけれど他に事情があって住み替えがしたいという場合もあるでしょう。ただ、その際に買い手が付くかどうかが問題です。賃貸併用住宅は前述のようなメリットがある一方で、マイホームでも賃貸住宅でもないという中途半端な面があるのは否めません。しかも、中古となるとそれを欲しがる人は限られてきます。

仮に、中古の賃貸併用住宅を欲しがる人がいたとしても自宅部分が半分ほどしかないという特殊な構造であるため、間取りなどがその人の希望と合致する可能性は決して高くはないでしょう。さらに、賃貸併用住宅の中古物件は数が非常に少ないため売却価格の予想がつきにくいというリスクもあります。

以上のように、いざという時に売却しづらいのが賃貸併用住宅の最大のデメリットだと言えます。

賃貸住宅として売るか?自宅として売るか?賃貸併用住宅の売却方法

賃貸併用住宅には、アパートローンやプロパーローンよりも低い利率の住宅ローンを使って賃貸物件を購入できるという魅力があります。したがって、売却の際にはその点をアピールして買い手を探すのはありです。

しかし、賃貸併用住宅のままではどうしても買い手が付かない場合はその物件を100%自宅として売りだすか、逆に自宅部分もすべて賃貸住宅にしてしまうというのもひとつの手です。そうすれば、ある程度の需要を期待できます。

ただ、前者のように賃貸併用住宅をすべて自宅にしてしまうとどうしても間取りがいびつな形になってしまいます。一般の中古住宅より高いお金を出してそのような家に住みたいと思う人はあまりいないでしょう。そうなると、自宅も賃貸とし100%賃貸住宅にしてしまうのが無難な方法だということになります。

それに、賃貸住宅として売却するならば入居者に退去してもらう手間が省け、買主にそのまま賃貸経営を引き継いでもらえるのも大きなメリットです。

とはいうものの、売りに出した時点で家賃を下げ過ぎていると賃貸物件としての魅力が著しく低下してしまいます。賃貸経営がうまくいかずに売却する場合、売却を決める以前に入居者を増やそうとして極端な値下げに走りがちです。ところが、それをしてしまうといざ売りに出した際に利回りの低さを知って誰もその物件を欲しがらないといった事態が起きかねません。

したがって、家賃の変更を考える際には将来売却するときのことも考えて慎重に検討を重ねる必要があります。

売却検討の際の重要ポイント!自宅部分に対する特別控除

賃貸併用住宅を売却する際には税金の問題についても考える必要があります。その際にポイントとなるのは売却によって得た譲渡益の内、住宅部分に関しては最大で3,000万円の特別控除が受けられるという点です。

たとえば、賃貸併用住宅をそのまま売却して住宅部分で2,000万円、賃貸部分で1,000万円の利益を得たとします。すると、2,000万円の部分は非課税となり賃貸部分で得た1,000万円の利益に対してのみ譲渡所得税がかかってきます。

一方、賃貸併用住宅をすべて賃貸住宅として売り3,000万円の譲渡益を得た場合の控除は一切なく、3,000万円すべてに税金がかかってくるので注意が必要です。

さらに、売却時点では賃貸経営をやめており100%自宅として売却して3,000万円の利益を得た場合にはすべて控除の対象になるので税金はかかってきません。したがって、賃貸併用住宅をどういった形で売却するかについては単に売りやすいかどうかだけでなく、税金による損得の計算も考慮に入れた検討が重要になってきます。

賃貸併用住宅の売却に関しては早めに方針を決めておこう!

 賃貸併用住宅には家賃収入をローン返済に充てられる、相続税の節税対策になるといった具合にさまざまなメリットがあるのは確かです。

しかし、その一方で、通常の自宅や賃貸住宅に比べて買い手が付きにくいというデメリットも存在します。そのため、賃貸併用住宅を所有している人はどのような形で売却するのがベストかを早めに考えておく必要があります。

売却問題についてしっかりとした方針を固め、賃貸併用住宅のメリットを最大限に活かせるようにしていきましょう。