1992年に定期借地権制度が創設されてから、定期借地権付き住宅を目にすることも多くなりました。ここでは、定期借地権付き住宅とはどのようなものなのかを説明し、定期借地権付き住宅の持つメリットや資産価値、売却する際の注意点などについて解説していきます。

定期借地権付き住宅とは
建物の所有には土地所有権・借地権や地上権などの権利がある

建物を所有するには、建物の敷地に対する権利が必要です。この敷地に対する権利には土地所有権のほかに、賃借権地上権があります。

借地借家法という法律では、建物の所有を目的とする賃借権と地上権をまとめて借地権と呼んでいます。賃借権や地上権は民法の規定によって認められる権利ですが、住居などの建物はそこに暮らす人の生活の重要な基盤であるため、借地権については特別法である借地借家法で特別な保護や手続きを定めているのです。

借地権とは

建物所有を目的とする借地権は、期間が満了した時点で建物がある場合、借地権者が希望したり土地の使用を継続したりすれば、借地借家法の法定更新の制度によって契約が更新されます(借地借家法第5条)。また、地主側から更新拒絶をするには正当事由が必要とされるなど制限がかけられています(借地借家法第6条)。

さらに、契約が更新されない場合には、借地権者は建物などを地主に時価で買い取るように請求することができる建物買取請求権も認められています(借地借家法第13条)。このように借地借家法は借地権者に有利に定められています。これらに反して借地権者に不利な特約をしても無効です(借地借家法第9条、第16条)。

このように、建物所有を目的とする借地権が手厚く保護されていると、地主としては借地契約を結ぶことに慎重になってしまい土地の有効利用が進まないという面もあります。そこで、地主にとっても安心して土地に借地権を設定できるようにしたのが定期借地権です。

安心できる定期借地権

定期借地権は、存続期間を50年以上に設定し、契約の更新や建物買取請求権を認めない特約を付した借地権のことをいいます(借地借家法第22条)。通常は更新しない特約や建物買取をしない特約は借地権者に不利な特約で無効ですが、50年以上という長期の土地利用を認めることと引き換えに特別にこれらの特約を結べるようにしているのです。

ただし、この特約は公正証書などの書面で行わなければなりません。

定期借地権では期間が満了したら土地は必ず地主に返ってきます。また、借地上の建物を地主が買い取る必要もありません。したがって、地主としては安心して土地に借地権を設定できるのです。また、土地を借りるなどして活用したい人にとっても、地主が契約に応じてくれる可能性が高くなるというメリットがあります。

そのため、定期借地権制度のメリットを活かして定期借地権付きの分譲マンションなどが供給されています。

定期借地権付き住宅が持つメリットとデメリット

定期借地権付き住宅は、敷地の所有権がある場合に比べていくつかの制限があります。

借地権の存続期間は50年以上と長期であるものの、期間が満了したら更新はなく必ず土地を返さなければなりません。また、期間満了前に建物の建て替えをすることによって期間満了時に資産価値のある建物が残っている場合でも、地主に対する建物買取請求権はありません。期間満了に伴い法律上借地権は当然に消滅してしまうため、地主に立ち退き料を請求することも不可能です。

しかし、これらの制限があることと引き換えに建物所有者にメリットも生じます。通常、借地権を設定する場合には借地権者から地主に対し、保証金が支払われます。この保証金は土地を返す際に返却されるものです。

定期借地権は期間満了によって当然に消滅し、土地は確実に地主に戻ってくるので、この保証金は通常の借地権に比べてかなり低額となります。また、敷地の所有権がないため、土地に関する固定資産税や都市計画税を支払う必要もありません。

定期借地権付き住宅の持つ資産価値

定期借地権付き住宅の資産価値は?

住宅の資産価値は、建物の価値と土地に対する権利の価値の合計で決まります。

土地所有権のある住宅の資産価値は建物の価値と土地の価値の合計ですが、定期借地権付き住宅の資産価値は建物の価値と土地に対する借地権の価値の合計ということです。

したがって、定期借地権付き住宅の資産価値は土地所有権のある住宅の資産価値に比べて当然低くなります。実際、定期借地権付き住売却のてで約60%、分譲マンションで70%から80%程度であることが多くなっています。

また、土地所有権のある住宅の場合、新築後の年数を経るごとに建物の価値は減少していきますが土地の価値は変わりません。一般の借地権付き住宅の場合も法定更新の制度などによって特別な事情がない限り借地権は存続していきますので、借地権の価値も変化しません。

これに対し、定期借地権付き住宅の場合は、建物の価値の減少のほかに借地権の価値も減少していきます。借地権の残存期間が明確に決まっているからです。定期借地権の存続期間満了とともに借地権の価値はゼロになるのです。

定期借地権付き住宅は売却しやすいか?

買いやすい物件

定期借地権付き住宅は土地所有権のある住宅に比べると資産価値は低くなりますが、その分だけ購入希望者にとっては買いやすい物件ともなります。交通利便性や生活利便性の高い立地は人気がある一方で土地価格が高いため住宅価格は高額になりがちですが、定期借地権付き住宅であれば手の届く価格になることも多いからです。

どんなに資産価値が高くても、それを購入できる買い手が見つからなければそれを金銭に変えることはできません。したがって、購入者が買いやすい、つまり売り手からすれば売りやすいということも重要な要素です。

ただし、定期借地権付き住宅は借地権の存続期間を超えて建物を所有することはできないことが確定しているので、建物を資産として子孫に残したいと考えている人には不向きです。しかし、子供への相続は考えず、定期借地権の存続期間の間だけそこに住めれば十分だと考える人にとっては、購入資金を抑えることができて最適な選択肢になりうるものです。

売却する際は地主の承諾を

なお、借地権付きの住宅を売却する際には、原則として地主の承諾が必要です。借地権は地主と借地権者との信頼関係を基礎として成り立つものだからです。もっとも、地主にとっても特に不利がないにもかかわらず承諾をしない場合には裁判所を通じて承諾を認めてもらうことができるので特に心配は必要ありません。

ただ、トラブルを避けるためにも売却時には地主から書面で承諾を得るようにしましょう。

定期借地権の場合は一般の借地権とは異なり契約期間を超えて更新されることがないため、最初の契約内容として転売時の地主の承諾は必要なく、転売の通知をすればよいとされている場合もあります。特に定期借地権付き分譲マンションで入居者の個性を特に重視するような地主は考えられないので、転売にあたっての承諾が問題になることは特にないでしょう。

借地権の存続期間の残存期間

定期借地権付き住宅の売却をする場合に特に気をつけておくべきことは、借地権の存続期間がどれくらい残っているのかということです。

定期借地権付き住宅の資産価値は借地権の残存期間によって大きく変わります。これが単に価格に反映するだけならまだ良いのですが、定期借地権の残存期間が短くなるとそもそも買い手が現れないということも予想されます。あと数年しか使えず新たに建て替えることもできない建物を買おうと思う人はほとんどいないでしょうから、定期借地権付き住宅を売却するなら借地権の残存期間が十分に残っている間に検討したほうが良いでしょう。

定期借地権制度は1992年に創設された新しい制度で、借地権の存続期間は50年以上ですから、残存期間が極めて短くなった定期借地権住宅の取引実績はまだありません。市場においてどのように扱われていくのかは今後の動向を見ていく必要がありますが、売却を検討しているなら早めに動くことをおすすめします。

定期借地権住宅を売却する際の注意点

売却の際の注意点

定期借地権付き住宅を売却する際に買主が住宅ローンを利用する場合には多少注意しておく必要があります。

金融機関が住宅ローンの貸し出しをする際には、返済の担保のために抵当権を設定します。土地所有権のある住宅の場合には建物と土地の両方に抵当権を設定するのが通常です。しかし、定期借地権付き住宅で借地権の内容が賃借権の場合には、建物にしか抵当権を設定できません。

また、定期借地権が地上権の場合には、建物と地上権に抵当権を設定できますが、定期地上権の価値は土地の価値に比べて大幅に小さいものです。しかも、建物の価値は時間を経るにしたがって大きく目減りしていくものなので、金融機関としては十分な担保を得られないと判断する場合も多くなります。

したがって、中古の定期借地権付き住宅を購入する買主が住宅ローンを借りるためには、買主自身の支払い能力が特に重視されて審査されるため、容易にローンを借りられないという問題があります。定期借地権付き住宅については、新築でない限り住宅ローンを貸し出さない金融機関もあるのです。

通常、不動産売買において買主が住宅ローンを利用する場合、売買契約の特約として「住宅ローン特約」というものをつけます。これは、買主が住宅ローン利用を予定していたのに融資の審査を通らず資金を借り入れできなかった場合には、無条件で契約を解除できるとする約定です。この場合は、買主が既に支払った手付金も売主は返還しなければなりません。

中古の定期借地権付き住宅の売却にあたっては、この住宅ローン特約による売買契約の解除という事態が、土地所有権のある住宅の売却に比べて生じやすいことに注意しましょう。契約が解除になっても売主に金銭的な負担があるわけではありませんが、売却に向けた準備手続きや時間が無駄になり、良い買主を見つける機会を逃してしまう可能性もあります。

売買契約を仲介する不動産会社を通じて、買主が住宅ローンを借りられることが確実であるかどうかを確認してもらうようにしましょう。

借地権の残存期間を意識して慎重に売却しよう

定期借地権付き住宅は購入する人にとっては安く住宅を手に入れることができ、地主は土地を有効活用できる制度です。

住宅利用中は土地所有権のある住宅との違いを特に意識することもありません。ただ、定期借地権付き住宅の資産価値は借地権の存続期間がどれくらい残っているのかによって大きく左右されます。資産価値が目減りするだけでなく、残存期間が短くなると売却自体が難しくなってしまう可能性もあります。

 したがって、定期借地権付き住宅の売却を検討しているなら残存期間を意識して早めに計画を立てておくことが重要です。

また、定期借地権付き住宅の売却にあたっては買主が住宅ローンを借りにくいという事情も意識して慎重に行う必要があります。定期借地権付き住宅を売却する際には、これらの事情を良く理解している不動産会社に依頼することが重要です。

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