マンションの売却を行う場合、消費税がどのような場合に課税されるか分からない方も多いかと思います。こちらの記事では、マンションの売却において消費税がかかる場合とかからない場合に分けて解説していきます。また、仲介手数料を節約する方法についても紹介しましょう。

マンションの売却に消費税がかかる場合とかからない場合の違い

マンションを比べているイメージ

マンションの売却を考えているけれど、どういったケースに消費税が課税されるのか分からない方も多いかと思います。
マンションには主に、消費税がかかる場合かからない場合が存在します。
売却したいマンションがどのケースに当てはまるのか確認してみましょう。

マンションの売却に消費税がかかる場合

国税庁の規定に該当する場合

国税庁の規定により「事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡」に該当するマンションには消費税がかかります。
そのため、以下の内容のものが対象となります。

新築マンション

基本的に不動産会社が売主になるため課税対象

中古マンション

売主が不動産会社の場合のみ課税対象

賃貸マンション

個人や法人売主に関わらず課税対象

「消費税のしくみ」(国税庁)(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/01_3.htm)を加工して記載

事業用物件や個人が所有する投資用のマンション

事業用物件を売却する場合や個人が投資用マンションを売却する場合も、上記で説明した賃貸マンションと同じく国税庁の規定に該当するため消費税が課税されます。

マンションの売却に消費税がかからない場合

マイホームやセカンドハウスのマンション

マイホームまたはセカンドハウスのマンションを売却する場合、消費税はかかりません。セカンドハウスとは別荘以外の家屋のことを言います。例えば、職場が遠方にあり平日のみ居住する為に職場の近くに購入しているマンションなどが該当します。
事業のために売却するものではないため、国税庁の規定に該当せず課税対象外となります。

土地の売却

不動産の売却において土地には消費税がかかりません。
消費税は、人間が生み出す資産やサービスに発生する「付加価値」に対して課税されるものであり、土地は人間が生み出した資産ではないため課税対象外となります。

マンション売却において何が非課税になるの?

悩む女性

マンション売却においては、消費税非課税取引の対象となるものを理解しておくことも大切です。消費税は事業者が行った資産の譲渡等を課税の対象と定めています。資産の譲渡等とは、資産の譲渡と貸付、サービスの提供のことです。事業者によるマンションの売却は資産の譲渡に該当しますので、原則として課税対象となります。

ただし、消費税には非課税取引の定めもあります。
消費税非課税取引に該当する場合は、事業者が行う資産の譲渡等であっても消費税を預かる必要はありません。消費税の非課税取引としてさまざまな取引が規定されており、マンション売却に関わるものとしては土地の売却があげられます。土地は使用しても価値が減少しません。消費課税になじまないため非課税とされているのです。


マンションの売却とは、土地見合いである敷地利用権と建物を一括して売却することです。取引全体は課税の対象となりますが、非課税の規定により土地の売却については非課税になることを理解しておきましょう。個人にとってこの消費税非課税に関する知識はマンション売却後に新たにマンションを購入する場合にも役立ちます。個人からマンションを購入する場合は消費税の課税対象にならず、事業者から購入する場合であっても土地に関する消費税は非課税ですので負担する必要はありません。


売主を確認する場合、契約書上で「売主」になっていれば事業者が売主ですので建物だけが課税で土地は非課税です。一方、個人間売買を不動産会社が仲介している場合は、不動産会社は契約書の中で「媒介」「仲介」「一般」などと表記されているはずです。その場合は、土地も建物も消費税を負担する必要はありません。

個人・個人事業主・法人の消費税はどうなる?

複数の人と電卓のイメージ

消費税の有無は、「課税取引か否か」という点で判断するため、個人や法人といった売主が誰かで区別する考え方は基本的に行いません。
また、納税に関しては「課税事業者かどうか」という点が判断ポイントになるため、個人であっても課税取引に該当すれば課税対象になり、法人であっても免税事業者であれば納税しなくても良いことになります。

マンション売却でかかる消費税

お金と人のイメージ

1.仲介手数料

マンションの売却を行う場合には、不動産仲介会社を利用するのが一般的です。マンションを売却したいと考えている人は、売却益に対する課税について理解することが大切ですが、消費税についての知識も必要です。

まず、仲介手数料に対する消費税の課税関係を理解しておきましょう。マンションを売却する場合、不動産仲介会社に対し成功報酬として仲介手数料を支払うことになります。一般的なマンションの売買価格の場合、仲介手数料は「売却価格に3%を乗じて6万円を加算した金額」です。仲介手数料は消費税の課税対象ですので、計算した仲介手数料の8%分を加算して支払う必要があります。

仲介手数料は売却価格に比例して負担が大きくなる計算方式になっていますので、売却価格が高くなるほど仲介手数料負担も増加することには注意が必要でしょう。また、仲介手数料の対象となる売却価格は税抜きが基本です。マンションの場合は、土地と建物をセットで売却することになります。

土地価格と税抜きの建物価格をベースにして仲介手数料が計算されていることを確認しましょう。

2.建物(売主が事業者の場合)

マンションを売却する売主が事業者の場合は、免税事業者でないかぎり、建物部分については消費税の課税対象です。

免税事業者とは、課税取引高が少なく小規模である一定の事業者のことです。消費税の免税事業者に該当しないマンション売却事業者は建物価格に対する消費税を買主から預かり、支払った消費税があれば控除して残額を納税する義務があります。ただし、マンションを売却する人が個人である場合は、事業者に該当しませんので納税義務者になることはありません。
消費税法上、事業者が事業として行う資産の譲渡を行った場合に消費税の課税対象となると定められています。

つまり、消費税の納税義務者は事業者に限られていて、事業者でない個人の行った取引は課税の対象とならないということです。個人がマンションを売却する場合は建物部分であっても消費税を上乗せする必要はなく、消費税を預かって納税する義務もありません。中古マンションについては個人が売主となるケースの場合、非課税とされる土地部分だけでなく建物部分の消費税課税について考慮する必要はないでしょう。

3.司法書士報酬

マンション売却時には登記に関わる費用が発生します。具体的には、抵当権抹消に関わる登録免許税とそれに伴って発生する司法書士の報酬です。自ら登記を行う場合は司法書士に対する報酬は発生しませんが、手間と時間を考えると司法書士に依頼するメリットは大きいといえます。そのため、抵当権抹消登記手続きを司法書士に依頼して行うのが一般的です。

抵当権抹消登記に関して負担する登録免許税については消費税が課税されません。国税については消費税不課税とされているからです。ただし、司法書士に対して支払う報酬については消費税の課税対象となっています。司法書士は事業として登記手続きの代行を行います。そのため、司法書士が代行する抵当権抹消登記手続きは、売主である依頼者に対して事業者が行うサービスの提供にあたります。

サービスの提供は消費税の課税対象取引ですので、税抜き報酬に対して8%の消費税を加算して司法書士に支払うことが必要です。

4.一括繰り上げ返済手数料

マンション売却時には、売却代金の受け取りだけでなく、さまざまな支払いも必要です。その支払いの1つとして「一括繰り上げ返済の手数料」があげられます。住宅ローンの返済をする場合、月々決められた返済額を継続的に支払っていかなければなりません。ただし、手元の資金に余裕がある場合には月々の支払い以外にまとめて返済することができます。これが繰り上げ返済です。

住宅ローンの残債の一部をまとめて返済することを一部繰り上げ返済、残債のすべてを一括して支払うことを一括繰り上げ返済または全部繰り上げ返済といいます。マンションを売却するタイミングで住宅ローンの残債が残っている場合は、すべての残高を一括して返済することが必要です。この一括繰り上げ返済については、一般的に手数料負担が求められます。

繰り上げ返済が行われると、融資した金融機関は得られるべき利息が得られなくなります。その代わりとして求められるのが一括繰り上げ返済手数料です。この手数料も消費税の課税対象とされていますので、定められた手数料に8%の消費税を加算して金融機関に支払います。

マンションの売却の際にかかる消費税の計算方法

電卓

基本的にマンションは、建物土地で構成されているため建物と土地を区分して価格を算出することになります。消費税は建物にのみ課税されるので、建物と土地の内訳価格が不明の場合には、建物価格と土地価格に分ける必要があります。
区分方法は、国税庁の「課税標準」を参考にしましょう。

(1) 譲渡時における土地および建物のそれぞれの時価の比率による按分

(2) 相続税評価額や固定資産税評価額を基にした按分

(3) 土地、建物の原価(取得費、造成費、一般管理費・販売費、支払利子等を含みます。)を基にした按分

出典:国税庁「課税標準」

上記の中でも最もポピュラーなのが「(2)相続税評価額や固定資産税評価額を基にした按分」を用いた方法です。
土地の固定資産税評価額が分からない場合は、固定資産税納税通知書と登記簿謄本に記載された敷地権割合を確認することで計算ができます。

簡易課税を利用した計算方法

簡易課税とは、預かった消費税に一定率を乗じて消費税の納税額を計算する方式になります。基準期間の課税売上が5,000万円以下の事業者は、「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出することで簡易課税を選択できます。
簡易課税事業者の消費税の納税額の計算方法
消費税の納税額 = 課税売上 × 消費税率 ー(納税されている消費税額 × みなし仕入れ率)
納税されている消費税額は、預り消費税から支払消費税を引いた額で求められます。
簡易課税事業者は、支払消費税の実額を計算する必要がなく、課税売上とみなし仕入れ率だけで簡単に納税額が計算できるというメリットがあります。
みなし仕入れ率は本業の業種によって下表のように決まっています。

事業区分

みなし仕入率

該当する事業

第1種事業

90%

卸売業(他の者から購入した商品をその性質、形状を変更しないで他の事業者に対して販売する事業)をいいます。

第2種事業

80%

小売業(他の者から購入した商品をその性質、形状を変更しないで販売する事業で第1種事業以外のもの)、農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業)をいいます。

第3種事業

70%

農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業を除く)、鉱業、建設業、製造業(製造小売業を含みます。)、電気業、ガス業、熱供給業および水道業をいい、第1種事業、第2種事業に該当するものおよび加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を除きます。

第4種事業

60%

第1種事業、第2種事業、第3種事業、第5種事業および第6種事業以外の事業をいい、具体的には、飲食店業などです。

なお、第3種事業から除かれる加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を行う事業も第4種事業となります。

第5種事業

50%

運輸通信業、金融・保険業 、サービス業(飲食店業に該当する事業を除きます。)をいい、第1種事業から第3種事業までの事業に該当する事業を除きます。

第6種事業

40%

不動産業

出典:国税庁「簡易課税制度の事業区分の表」

マンション売却の費用を節約する方法とは?

貯金箱

マンションの売却を行う場合、費用負担をできるだけおさえることも大切です。費用負担を減らすポイントは2つあります。

仲介手数料の値引き

1つは仲介手数料の値引きです。マンション売却において、仲介手数料の負担は無視できない金額になるのが一般的です。そのため、仲介を依頼する不動産会社と媒介契約を締結する前に、仲介手数料について値引きの余地があるかどうか交渉してみることをおすすめします。

仲介手数料は一般的な手数料計算式があり、この金額は手数料の上限です。手数料が安くなることには法的な問題はありません。

買主の手数料が無料

もう1つのポイントは、買主の手数料が無料になるケースがあることです。不動産仲介会社が売主と買主両方から依頼を受けている両手取引の場合、どちらからも仲介手数料を受け取れることになります。その場合は、仲介業務量が少ない買主の手数料を無料にする可能性があるのです。仲介する不動産会社と交渉してみましょう。

まとめ

マンションの模型とお金の計算をする人

 マンションの売却を行うにあたってはさまざまな支払い負担が発生します。所得税や消費税、各種手数料の負担などはできるだけ抑えたいでしょう。マンション売却において、土地部分は消費税非課税です。

さらに、個人間売却であれば土地だけでなく建物部分も消費税の課税対象取引ではなくなります。そのため、マンション売却で消費税負担を減らしたい場合は個人間売却をおすすめします。

もちろん、個人間売却であっても不動産会社を仲介することはあるでしょう。その場合、仲介手数料は消費税の課税対象です。

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