マンションの売買を行う場合、消費税についても正しく理解しておかなければなりません。そこで、マンション売買における土地部分や建物部分、各種手数料に対する消費税の課税関係と、どの程度の消費税負担が発生するのかについてお伝えします。また、仲介手数料を節約する方法についても紹介しましょう。
この記事の目次
マンション売買でかかる消費税
1.仲介手数料
マンションの売買を行う場合には、不動産仲介会社を利用するのが一般的です。マンションを売却したいと考えている人は、売却益に対する課税について理解することが大切ですが、消費税についての知識も必要です。
まず、仲介手数料に対する消費税の課税関係を理解しておきましょう。マンションを売却する場合、不動産仲介会社に対し成功報酬として仲介手数料を支払うことになります。一般的なマンションの売買価格の場合、仲介手数料は「売却価格に3%を乗じて6万円を加算した金額」です。仲介手数料は消費税の課税対象ですので、計算した仲介手数料の8%分を加算して支払う必要があります。
仲介手数料は売却価格に比例して負担が大きくなる計算方式になっていますので、売却価格が高くなるほど仲介手数料負担も増加することには注意が必要でしょう。また、仲介手数料の対象となる売却価格は税抜きが基本です。マンションの場合は、土地と建物をセットで売却することになります。
土地価格と税抜きの建物価格をベースにして仲介手数料が計算されていることを確認しましょう。
2.建物(売主が事業者の場合)
マンションを売却する売主が事業者の場合は、免税事業者でないかぎり、建物部分については消費税の課税対象です。
免税事業者とは、課税取引高が少なく小規模である一定の事業者のことです。消費税の免税事業者に該当しないマンション売却事業者は建物価格に対する消費税を買主から預かり、支払った消費税があれば控除して残額を納税する義務があります。ただし、マンションを売却する人が個人である場合は、事業者に該当しませんので納税義務者になることはありません。
消費税法上、事業者が事業として行う資産の譲渡を行った場合に消費税の課税対象となると定められています。
つまり、消費税の納税義務者は事業者に限られていて、事業者でない個人の行った取引は課税の対象とならないということです。個人がマンションを売却する場合は建物部分であっても消費税を上乗せする必要はなく、消費税を預かって納税する義務もありません。中古マンションについては個人が売主となるケースが多く、非課税とされる土地部分だけでなく建物部分の消費税課税について考慮する必要はないでしょう。
3.司法書士報酬
マンション売却時には登記に関わる費用が発生します。具体的には、抵当権抹消に関わる登録免許税とそれに伴って発生する司法書士の報酬です。自ら登記を行う場合は司法書士に対する報酬は発生しませんが、手間と時間を考えると司法書士に依頼するメリットは大きいといえます。そのため、抵当権抹消登記手続きを司法書士に依頼して行うのが一般的です。
抵当権抹消登記に関して負担する登録免許税については消費税は課税されません。国税については消費税不課税とされているからです。ただし、司法書士に対して支払う報酬については消費税の課税対象となっています。司法書士は事業として登記手続きの代行を行います。そのため、司法書士が代行する抵当権抹消登記手続きは、売主である依頼者に対して事業者が行うサービスの提供にあたります。
サービスの提供は消費税の課税対象取引ですので、税抜き報酬に対して8%の消費税を加算して司法書士に支払うことが必要です。
4.一括繰り上げ返済手数料
マンション売却時には、売却代金の受け取りだけでなく、さまざまな支払いも必要です。その支払いの1つとして「一括繰り上げ返済の手数料」があげられます。住宅ローンの返済をする場合、月々決められた返済額を継続的に支払っていかなければなりません。ただし、手元の資金に余裕がある場合には月々の支払い以外にまとめて返済することができます。これが繰り上げ返済です。
住宅ローンの残債の一部をまとめて返済することを一部繰り上げ返済、残債のすべてを一括して支払うことを一括繰り上げ返済または全部繰り上げ返済といいます。マンションを売却するタイミングで住宅ローンの残債が残っている場合は、すべての残高を一括して返済することが必要です。この一括繰り上げ返済については、一般的に手数料負担が求められます。
繰り上げ返済が行われると、融資した金融機関は得られるべき利息が得られなくなります。その代わりとして求められるのが一括繰り上げ返済手数料です。この手数料も消費税の課税対象とされていますので、定められた手数料に8%の消費税を加算して金融機関に支払います。
マンション売買において何が非課税になるの?
マンション売却においては、消費税非課税取引の対象となるものを理解しておくことも大切です。消費税は事業者が行った資産の譲渡等を課税の対象と定めています。資産の譲渡等とは、資産の譲渡と貸付、サービスの提供のことです。事業者によるマンションの売却は資産の譲渡に該当しますので、原則として課税対象となります。ただし、消費税には非課税取引の定めもあります。
消費税非課税取引に該当する場合は、事業者が行う資産の譲渡等であっても消費税を預かる必要はありません。消費税の非課税取引としてさまざまな取引が規定されており、マンション売却に関わるものとしては土地の売却があげられます。土地は使用しても価値が減少しません。消費課税になじまないため非課税とされているのです。
マンションの売却とは、土地見合いである敷地利用権と建物を一括して売却することです。取引全体は課税の対象となりますが、非課税の規定により土地の売却については非課税になることを理解しておきましょう。個人にとってこの消費税非課税に関する知識はマンション売却後に新たにマンションを購入する場合にも役立ちます。個人からマンションを購入する場合は消費税の課税対象にならず、事業者から購入する場合であっても土地に関する消費税は非課税ですので負担する必要はありません。
売主を確認する場合、契約書上で「売主」になっていれば事業者が売主ですので建物だけが課税で土地は非課税です。一方、個人間売買を不動産会社が仲介している場合は、不動産会社は契約書の中で「媒介」「仲介」「一般」などと表記されているはずです。その場合は、土地も建物も消費税を負担する必要はありません。
マンション売買の費用を節約する方法とは?
マンションの売買を行う場合、費用負担をできるだけおさえることも大切です。費用負担を減らすポイントは2つあります。
仲介手数料の値引き
1つは仲介手数料の値引きです。マンション売却において、仲介手数料の負担は無視できない金額になるのが一般的です。そのため、仲介を依頼する不動産会社と媒介契約を締結する前に、仲介手数料について値引きの余地があるかどうか交渉してみることをおすすめします。
仲介手数料は一般的な手数料計算式があり、この金額は手数料の上限です。手数料が安くなることには法的な問題はありません。
買主の手数料が無料
もう1つのポイントは、買主の手数料が無料になるケースがあることです。不動産仲介会社が売主と買主両方から依頼を受けている両手取引の場合、どちらからも仲介手数料を受け取れることになります。その場合は、仲介業務量が少ない買主の手数料を無料にする可能性があるのです。仲介する不動産会社と交渉してみましょう。
まとめ
マンションの売買を行うにあたってはさまざまな支払い負担が発生します。所得税や消費税、各種手数料の負担などはできるだけ抑えたいでしょう。マンション売買において、土地部分は消費税非課税です。
さらに、個人間売買であれば土地だけでなく建物部分も消費税の課税対象取引ではなくなります。そのため、マンション売買で消費税負担を減らしたい場合は個人間売買をおすすめします。
もちろん、個人間売買であっても不動産会社を仲介することはあるでしょう。その場合、仲介手数料は消費税の課税対象です。