自分の保有している土地を活用する方法として売却という手段がありますが、それに伴い登記が必要になります。登記は公的な機関で行われますが、それが登記所とよばれる場所です。
登記所とは何か、登記所で登記するためには何が必要なのかを知っておけば、スムーズに登記に臨むことができるでしょう。賢く損をしない登記をするため、登記所とその周辺知識についてのあれこれをまとめました。
この記事の目次
登記所ってどんなところ?
自分が持っている不動産を売却しようとする動機にはさまざまなものがあります。
子どもが育って夫婦二人暮らしになったシニア世代が、自分たちにとっては家も土地も広すぎると感じれば土地を売却するかもしれません。手に余る土地や建物は、維持費も結構値が張るため生活を圧迫します。できれば、自分たちにとって最小限の負担になるよう調整したいと思うのが人情でしょう。
法務局や支局
不動産を売却するために必要な登記ですが、「登記所」とよばれる場所で行われます。登記所は、それぞれの地域に応じて設置してありますが、実は、登記所という名前の施設は存在しません。登記所は、法務局やその支局という形で存在しています。「登記する場所=法務局」ということです。
法務局は全国各地に点在しており、インターネットでも簡単に見つけることができます。自分の住んでいる地域ごとに管轄の法務局があるため、事前に調べておくとよいでしょう。
登記=一般公開
そもそも登記という言葉自体のイメージがあいまいという方もいるかもしれませんが、これは自分の土地や建物の所有権を一般公開するというものです。登記をしていないということは、公的に自分が土地と建物を所有しているという事実が証明されていないということです。
登記をせずに家に住むということは、ある土地の上に段ボールを置いて「ここが私の土地と家です」と主張するようなものです。
この場合、土地は表面上段ボールを置いて敷いている人のものに見えますが、次の日にその土地を買って登記を済ました人が邪魔になった段ボールをどけてしまっても法的には問題ありません。
登記を済ませていないと、このように第三者に土地の所有権を奪われてしまうおそれがあるのです。そうならないために、不動産を所有する権利が移動するたびに登記をしなければなりません。それを行う場所が、登記所である法務局なのです。
登記所で何をするの?
不動産売却では登記所に行って登記をする必要がありますが、不動産売却に伴う登記は大きく分けて二種類あります。それは、所有権と抵当権の登記です。
所有権とは
所有権とは、誰がその土地・建物を扱う権利を持っているかということですから、土地・建物のオーナーが所有権を持っている人となります。マンションやハイツなどの賃貸物件であれば、大家さんが土地・建物のオーナーであり所有権を持っています。実際に住んでいる人には所有権はなく、登記の義務もありません。
仮に、部屋を借りている側の人が部屋で勝手に商売を始めるということは、部屋の所有権がないため原則できません。所有権のあるオーナーに相談して同意が得られてはじめて商売をはじめることができます。逆に、オーナーは借り手がいない空き部屋を使って店を開こうと思えば、開くことができます。
すでに人に貸している部屋を無断で商売用に替えることは、賃借権という借り手の権利が働くので法的にも認められません。
抵当権とは
抵当権とは、いわば土地・建物をお金に替えることができる権利です。先ほどの例で説明すると、マンションのオーナーが銀行などに借金をしている場合、銀行はマンションをお金に替える権利があると言えます。万が一、オーナーが借金を返済できない場合、抵当権を銀行が行使すればマンションを所有する権利を手に入れることができます。
銀行は所有したマンションを売りに出すことで、利益を回収することができます。
不動産売却では売主と買主の関係があり、そこにローンの問題が加わると銀行などの第三者も関わることになります。登記所では、これらの相関関係をはっきりと整理するための証明を行います。
登記の前に要チェック!登記所での準備物
不動産売却の際には登記を行いますが、それは原則専門家である司法書士に依頼します。しかし、すべてを司法書士に任せきりとなると費用もかかります。そこで、登記の流れとそれに必要な書類や手続きなどを知っておきましょう。
委任状
登記を司法書士に任せるという本人の意向を確認できる書類
印鑑証明書
これは、登記申請日前3カ月以内に発行されたものを出さなければならない
固定資産税評価証明書
役所などで必要書類を提出すれば取得することができる
住民票と本人確認書類
そのほか、土地によっては市長などの許可書を提示しなければならない場合もある
効率よく登記を進めていこうと思えば、事前に役所などに行って必要書類をすべてそろえておくことが肝要です。このような作業に触れておくことで、登記というものに対するイメージが明確になってきます。何となく抵抗を感じて避けるのではなく、ややこしくても自分からまず飛び込んでいくことが登記を理解することに繋がります。
登記所でかかる費用は?
不動産売却の過程でかかる費用のひとつに、登記料があげられます。不動産売却で行われる登記については、「所有権の移動」と「抵当権の抹消」という二つの作業があります。
所有権の移動
抵当権の抹消
例
たとえば、35年ローンを組んで土地と建物を購入した人が、所有後10年で売却したとしましょう。この場合、25年分のローンの支払いがまだ残っている状況となります。この時点では銀行がいつでも抵当権を行使して、物件を競売にかけてお金に替えることができます。
極端な話、抵当権を抹消せずに放置したまま家に住んでしまうと、銀行の都合で家を売りに出さなければならない事態になっても法的には逆らえないのです。そのような状況を防ぐべく、抵当権の登記をしておく必要があるのです。借金が絡めば抵当権がついてまわりますが、すでにローンを返済した、借金をせず一括で物件を購入したなどの場合であれば銀行などの第三者が関係することはありません。
その場合は抵当権がつかないので、抵当権抹消の登記作業は不要となります。「不動産をお金に替える権利」である抵当権が誰にあるかは、不動産を扱ううえでは非常に重要な要素となってくるので必ず確認しておきましょう。
二種類ある登記料
登記料には主に二種類あり、それぞれどこに支払うかで区別されます。ひとつは登記所に対して支払う料金である「登記登録料」、もうひとつは司法書士に対して支払う料金である「司法書士手数料」です。
1.登記登録料
登記登録料とは、登記所にて行う登記作業そのものに対して発生する料金です。法務局の職員の方に対して支払う料金といってもいいでしょう。こちらの相場はさほど高くありませんが、司法書士に登記を依頼する場合の手数料は登記登録料に比べると少し高くなります。
登記登録料は登記所で登記をするためには必ず負担しなければなりません。司法書士が代行しても自分で登記してもかかる料金です。
2.司法書士手数料
対して司法書士手数料は、自分で登記をすることで節約することができます。登記登録料に対して司法書士手数料のほうが高額であり、節約効果も高くなります。
しかし、節約効果を狙って自分で登記をする場合、記入項目に誤りのないように注意する必要があるのに加えて、不動産売却における所有権や抵当権が移動するタイミングも考慮して行動しなければなりません。所有権が移動しないまま買主が売却物件に住んでしまったり抵当権が残ったままの物件だったりという事態を防ぐためにも、順序よく登記作業を済ましていく段取りの良さが求められます。
不動産売却の流れと登記所の利用
ここで、不動産売却の流れと登記所を利用するタイミングについて整理しておきましょう。
業者とのコンタクト
まず、自分の土地を売るために業者とコンタクトをとります。そこで、物件を売りたい人と買いたい人のマッチングが行われ、お互いが納得できる条件が決まれば売買契約成立です。
いつから、誰がその物件のオーナーになるのかを決めれば、そこから登記所で所有権とローンが残っていれば抵当権の抹消の登記作業を行います。このときに、土地の権利証や本人確認書類などの準備はもちろん、銀行など金融機関にも事前にスケジュール調整をして書類を用意してもらっておきましょう。
税金などの管理費用も清算しておこう
物件の引き渡しまでに固定資産税や都市計画税などの税金や物件の管理費用なども清算しておきます。契約や登記と同時進行で現地の確認も必要です。土地の境界や隣接土地との不具合を調整しておくことでスムーズな売買契約になります。正確な土地の評価をしてもらうためにも土地家屋調査士にも現地を見てもらいましょう。
売主、買主、近隣住民も立ち合いのもと、正当な評価がなされることで物件引き渡し以降に起こり得るトラブルを未然に防ぐことができます。
金銭の移動
金銭の移動も引き渡し前の作業です。住宅ローンを利用する場合、このタイミングでローンを組みます。この時点で売主にかかっていた銀行からの債権は買主に移動したと言えます。
金銭を受け取った売主は買主に所有権移転に関する証明書類などを渡し、正当に買主が売物件の所有者になったことが確定します。ここまでが一連の不動産売買の流れとなりますが、登記申請を司法書士などの専門家に依頼する場合には委任状も用意しておく必要があります。
登記を理解して賢く不動産売却ができる
不動産の売買では、普段は扱わないような多額の金銭が動きます。一生に一回あるかないかという人もいるでしょう。特に、登記となると不動産関連の難しい専門用語がずらっと並んでいるので、自分で登記をするということに対して抵抗があるはずです。
また、仕事など生活上の用事で忙しくて時間が取れないという人もあるかもしれません。しかし、普段しないことだからこそ十分な知識をもって臨むことで、損をしない取引ができるのです。
登記所での作業や不動産の契約を面倒に感じて専門家に丸投げしてしまいたくなるものですが、登記を理解しておくことで賢い不動産売却を実現できるでしょう。