マンションを売却する場合、一度に大きなお金が入ってきます。そうなると心配になるのが税金です。青色申告で税金を安くすることができるという話をよく聞きますが、青色申告をすれば税金は安くなるのでしょうか。また、青色申告以外にも税金を安くする方法はないのでしょうか。ここでは、マンションを売却する場合の税金について学んでいきましょう。

マンションを売却した場合の税金の手続きは?

マンションを売却した場合に必要となる税金の手続きは、ケースごとに考える必要があります。

まず、マンションを売却したことで所得が発生したケースです。この場合には、その所得に対する税金を計算するために確定申告をする必要があります。逆に、所得が発生していないケースでは、確定申告は必要ありません。しかし、所得がマイナスになると税金の還付が受けられる場合があるので、確定申告をしたほうが良いこともあります。

個人事業主などですでに毎年確定申告を行っているケースでは、いつも行っている確定申告と同時にマンションの売却による所得を申告すれば足ります。最後に、自分が居住していたマンションを売却したケースでは、確定申告を行なうことで大きな税制上の優遇を受けることができます

これから、これらのケースを念頭におきながら、マンションを売却した場合の税金について見ていきます。

マンション売却時の税金の手続き

所得の計算はどうするの?

計算方法
所得=収入金額-(取得費+譲渡費用)

として計算されます。

収入金額
マンションの売却代金
取得費
マンションの購入代金や購入時の仲介手数料など
譲渡費用
売却時の仲介手数料など

を意味します。(取得費からはマンションを使用したことによる価値の減少(減価償却)を差し引く必要があり、同じ価格で購入したマンションでも古ければ古いほど取得費は低い金額となります。)

所得を計算する際によく問題となるのが、マンションを購入した際の売買契約書などが見つからず、いくらで買ったのかわからない場合です。この場合、原則的には売った金額の5%しか取得費として認められなくなってしまいます。しかし、売買契約書などがなくても適正な取得費を算出できる場合もありますので、困ったことがあれば専門家に相談しましょう。計算の結果、所得が発生していれば確定申告が必要ということになります。

青色申告ってなに?

確定申告をする場合に気になるのが青色申告という言葉です。

青色申告
確定申告の一種で、事業者が一定の水準の記帳と帳簿書類を行なうことと引き換えに、最大65万円の青色申告特別控除を受けられたり配偶者や親族に支払っている給与を経費に計上できたりする特典が与えられる制度

青色申告を行なうには、その年の3月15日までに税務署長に対して青色申告承認申請書を提出する必要があります。つまり、青色申告をするには個人事業主などの事業者が事前に税務署長に対して申請しなければならず、事業者ではない個人がマンションを売却した際の税金を安くするために青色申告をすることはできないのです。

マンションの売却と青色申告は関係があるの?

個人事業主などの事業者で、すでに青色申告をしている人がマンションを売却した場合には、毎年の青色申告の際にマンションを売却したことを申告することになります。しかし、青色申告では原則的にマンションの売却にかかる税金を安くすることはできません。

青色申告のメリット
青色申告特別控除は、不動産所得と事業所得から最高で65万円を控除できる

※ここでの不動産所得と事業所得

不動産所得
土地や建物などの不動産や不動産の上に存在する借地権などを貸し付けることによる所得
事業所得
農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業、その他の事業から生ずる所得

一方で、マンションを売却したことによる所得は譲渡所得となります。この譲渡所得は青色申告特別控除の対象とならないので、もともと青色申告をしている人がマンションを売却したとしても、税金を安くすることはできないのが原則です。

ただし、マンションの売買を事業といえる規模で繰り返し行なっている場合には、例外的にマンションを売却したことによる所得は事業所得となります。この例外的な場合に限っては、青色申告によってマンションを売却したことによる税金を安くすることができます。

具体的には、マンションを売買するために必要となった広告費などを経費として計上することができるうえに、最大65万円の控除を受けることもできるのです。

マンション売却と青色申告の関係

青色申告よりもお得な制度

マンションを売却した場合には、もともと青色申告をしている個人事業主でない限り青色申告を使えない、だから税金を安くすることができない、と考えるのは早計です。実は、事業者ではない個人が、自分が居住していたマンションを売却する場合には、青色申告よりもずっとお得な税制上の優遇を受けられるのです。

「居住用財産を譲渡した場合の3000万円の特別控除の特例」

これは名前の通り、譲渡所得から3000万円もの特別控除を受けられるというもので、青色申告を例外的に役立てられた場合の65万円とは比べ物にならないほど税金が安くなります。

「長期譲渡所得の税額を通常の場合よりも低い税率で計算する軽減税率の特例」

この特例は、自分が居住していたマンションを10年を超えて所有した後に売却した場合、3000万円の特別控除と同時に受けることができます。マンションを売却した場合に発生する譲渡所得にかかる税率は、所有期間が5年を超えるか超えないかで大きく異なるのですが、自分が居住していたマンションの場合で所有期間が10年を超える場合には、税率をさらに軽減することができるのです。

この他にも、居住するマンションを買い替える場合には、売却によって所得が生じても、新しく購入したマンションの売却時まで課税が繰り延べられるという制度もあります。

これらの制度は、どれも青色申告を利用している事業者には利用できない制度なのです。

マンションを売却する際の税金にかかわる注意点

マンション売却時の税金にかかわる注意点

せっかくマンションが高く売れても、その分以上に税金がかかってしまうのでは意味がありません。そこで、マンションを売却する際には、きちんと税金の計算を意識することが必要となります。特に意識したいのが、売りたいマンションを購入してから何年間所有しているかです。

5年以下しか所有していない場合
税率は約40%
5年を超えて所有している場合
税率が約20%
自分がそのマンションに居住していた場合で10年を超えて所有した場合
軽減税率を受けることができ、約14%まで税率が下がる場合がある

所有期間を考えながらマンションを売却することで、税金をずっと安くすることができるのです。この他にも、税金にまつわるマンションを売却する際に意識しておくべきことはたくさんあります。

自分で調べて理解することも大切ですが限界がありますので、税金に詳しい友人・知人や専門家に相談したり、きちんと税金のことまで考えてくれる不動産業者に売却を依頼したりすることが重要です。

大切なのはマンションを売却する前に税金を考えること

マンションを売却する場合の税金について見てきましたが、青色申告だけでなくさまざまな税制上の優遇を利用できることがわかりました。

しかし、マンションを売却した後に確定申告だけを税理士に依頼したのでは、利用できる制度は限られてしまいます。そのため、マンションを売却する前に今あるマンションをいくらで売却できるのかだけでなく、今マンションを売ればいくら手元にお金が残るのかをよく考えることが必要といえます。