不動産売却後は様々な税金を支払う必要があることはご存知でしょうか? 場合によっては支払いが必要でない事もありますので、「支払いが必要な場合」「支払いが不要な場合」のそれぞれのシミュレーションと、所得税・住民税・譲渡所得税などの不動産売却時に関係する税金の説明も含めながら、それぞれの支払うタイミングや注意点を詳しく解説します。

不動産売却時にかかる税金

不動産売却時にかかる税金は所得税住民税です。不動産売却に利益が出た場合のみ所得税が発生し、利益が出た所得を課税譲渡所得といいます。これは給与所得などの他の所得とは切り離して計算する分離課税方式となります。

不動産売却により利益が出た分が課税対象となりますので、利益が出ていない場合税金の支払いは不要で申告も不要です。課税譲渡所得金額は、売却時に手に入れた利益=売却金額ではなく、その不動産を売ったり買ったりした時の手数料を差し引いて計算します。

課税譲渡所得税は不動産売却で利益が出た時

課税譲渡所得の計算式

課税譲渡所得=譲渡価額−(取得費+譲渡費用)−特別控除

譲渡価額
◇売却金額
◇引渡日以降の固定資産税の清算金など
取得費
◇売却した土地建物の購入価額(建物は減価償却後の価格)
◇購入時の仲介手数料
◇購入時の登記費用や不動産取得税など
譲渡費用
◇売却時の仲介手数料
◇売却時の測量費や建物取り壊し費用など
※修繕費や抵当権抹消登記費用は売却費用に含まれない
特別控除
◇個人が居住用財産を売却した場合など一定の条件で特別控除がある

上記の計算式で譲渡所得の金額がプラスになった場合のみ住民税・所得税の支払いが発生します。

減価償却

建物については「減価償却」を考える必要があります。

「減価償却」とは年数によって価値が下がっていくことをさします。建物は年々価値が下がっていくものと判断して計算しますが、その金額より高く売れた場合、それは利益となります。     

参考:国税庁 建物の取得費の計算

例えば

購入時
4,000万円だった建物
減価償却
(仮)2,000万円の価値になった
売却
3,000万円で売却できた
利益
1,000万円(課税対象)

では次に税率についてみていきましょう。   

 課税譲渡所得金額に税率を掛けて税額を計算します。

所得税と住民税には税率が設けられています。基本的には合計約20%程ですが、5年以内に売却を行おうとすると税率が一気に倍になり約40%まで増えてしまいます。

これは住宅の譲渡所得の仕組みが、国民の居住を促進されるために考えられた税率の仕組みであり、5年以内に売却をする所有者は、居住を目的としておらず投資のために購入したのではないか?ということを前提に設定された税率です。不動産を売却する年の1月1日時点で不動産の所有期間が5年を超えているかどうかが判断の基準となります。丁度5年くらいの方はよく確認してから売却時期を考えることをおすすめします。

  • 所有期間が5年以内の場合(短期譲渡所得)
    所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%=合計39.63%
  • 所有期間が5年を超える場合(長期譲渡所得)
    所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%=合計20.315%

※復興特別所得税は東日本大震災からの復興のため、2037年(令和19年)まで納めるものです。所得税に対して2.1%相当額が加算されます。

譲渡所得の特別控除とは?

自分の住んでいた戸建てやその土地、マンションなど住宅の売却(マイホームの売却)で譲渡益が出た場合は、一定の要件を満たしていれば特別控除の特例を受けることができます。

①3,000万円の特別控除の特例

居住用財産を売却した場合には、長期譲渡所得または短期譲渡所得のどちらに該当する場合であっても、その譲渡所得から最高3,000万円の特別控除額を控除することができます。

譲渡所得が3,000万円に満たない場合、特別控除額はその譲渡所得の金額が限度となります。この特例を利用すれば、譲渡所得が3,000万円以下の場合税金はかかりません。

②軽減税率の特例

所有期間が10年を超える居住用財産で国内にあるものを売却した場合には、3,000万円の特別控除額を差し引いた後の課税長期譲渡所得金額について、軽減税率を適用することができます。

課税長期譲渡所得金額 所得税 復興特別所得税 住民税
6,000万円までの部分 10% 0.21% 4%
合計14.21%
6,000万円を超える部分 15% 0.315% 5%
合計20.315%

3,000万円の特別控除を差し引いた上で、さらに残りの譲渡所得金額も6,000万円以下の部分については6.105%税率が軽減されるので大きな節税になります。

③買い換えの特例

居住用財産を売却した年の前年から翌年までの3年の間に、代わりの居住用財産を購入した(マイホームの買い換えを行った)場合、売却物件による利益(譲渡益)よりも新居の購入金額(取得価額)の方が高い時には、譲渡益に対する課税を将来に繰り延べることができます。

新居の購入費用と譲渡所得税の支払いによる負担を軽減できる特例です。

ただし、特例の適用を受ける為には複数の要件に該当する必要があり、あくまで課税を先送りにする特例のため、譲渡益が非課税になるわけではありません。

参考:国税庁 特定のマイホームを買い換えたときの特例

なお、買い換えの特例は①3,000万円の特別控除の特例または②軽減税率の特例とは併用できません。どちらかを選ぶことになりますが、利用するなら節税効果の高い①②の方がおすすめです。

また、新居の購入時に住宅ローン控除の利用を検討している場合、売却物件の譲渡所得に対する上記①②③の特例は住宅ローン控除との併用はできません。

多くの場合では購入物件で住宅ローン控除を利用する方が節税効果は高くなりますが、自分がどの利用条件に適合しているかを確認し、制度を選んで活用してください。

個人が不動産を売却する際によく使われる特例は主に上記ですが、他にも国の土地区画整理事業で売却した場合など、さまざまな特例がありますのでわからないことがあれば税理士に相談するのもおすすめです。

◆売却して譲渡益が出ず、損失が出た場合

不動産を売却して利益が出なかった場合は、税金は発生しません。そのため確定申告も不要ですが、一定の条件に該当すれば確定申告を行うことでその他の所得から税金を控除する特例が利用できる場合もあります。

確定申告によって売却損を取り戻せる可能性もあるので、利益が出なかった場合も制度を確認してみましょう。関連記事も是非ご確認ください。

関連記事:不動産売却時にかかる税金の計算方法、支払時期を解説

税金を支払うタイミング

確定申告時に所得税を申告し税金を支払います。確定申告時期は「売却した翌年の2月16日~3月15日まで(曜日で異なる)」で、期間内に申告を行い税金を納めます。

住民税は翌年の6月からの支払いとなります。会社勤めで給与をもらっている場合、基本的に給与から住民税が天引きされていることが多いですが、不動産売却で得た利益について別途申告し納付する必要があります。確定申告時の「住民税に関する事項」にて納付方法を選択できるので、「給与から差引き」に〇をすれば給与所得の住民税分に加算されて天引きされます。「自分で納付」に〇をすれば住民税の納付書が送付されるので、期限内に納付書で支払います。確定申告時に所得税を申告し税金を支払う

所得税と住民税を支払うタイミングに注意!

先述した様に、所得税は翌年の確定申告時に支払うことになります。その際「振替納税」といって銀行口座から自動的に引き落とされる支払い方法を選んだ場合は、4月20日頃(引き落とし日は毎年異なります)に引き落としにより支払いが発生します。

確定申告時に早く支払っても、「振替納税」で約1か月後に支払っても税金の金額は変わりませんので、1か月でも運用してから「振替納税」で支払う方法も一つの手として参考にしてください。ただし、振替日に口座の残高が不足していた場合は振替納税ができず延滞税が発生してしまうので、事前に口座残高はきちんと確認しておきましょう。

住民税の納付はさらに2か月後の6月から8月・10月・翌年1月の4期に分けての納付となり、申告後に住民税納付書が届きますので金融機関での支払いとなります。もちろん一括での納付も可能で、手続きをすれば給与からの天引きも可能です。

まとめ

不動産売却を検討している場合、お持ちの不動産がいくらで売れるかわからなければ不動産売却による所得税を計算することができませんので、まずは不動産会社に「査定」してもらいましょう。今は、手軽にインターネットで自宅から複数社の査定を無料で比較する事ができます。

「不動産売却専門マッチングサイト・イエイ」では全国1,000社以上の登録不動産会社から、最大6社までの査定価格を最短60秒で比較する事ができます。また、「イエローカード制度」で悪徳業者を徹底排除しているため、イエイに登録している査定会社は「優良な不動産会社」ばかりです。つまり、売却までを安心して任せられる不動産会社をみつけやすいということです。売却検討中の方は、一度活用してみてはいかがでしょうか。

不動産売却時の税金に関しては、利益がない場合であっても確定申告によって控除の特例が利用できる場合もあります。もし利益が出た場合は、所得税と住民税の支払いが必要となりますので、支払う時期に気をつけてください。

所得税は申告時か振替納税・住民税は翌年の6月から発生しますので、くれぐれも翌年の納付時期に支払えなくならないように注意しましょう。