不動産売買で出てくる専門用語のなかに「第一種住居地域」という言葉が出てきます。これは、不動産重要事項説明書にある、建築基準法に基づく制限という項目で、相手に説明することが義務づけられている用途地域のひとつです。今回は、第一種住居地域について説明していきます。

第一種住居地域とは?

住居の環境を保護するために定める地域

のことです。

まず、都市計画では原則として、対象の市町村の中心部を含む整備や開発、保全を一体的に行う必要がある「都市計画区域」という区域を定めます。

都市計画区域の中にも「市街化区域」「市街化調整区域」「非線引き区域」という区域が存在します。

市街化区域
■すでに市街地が形成されている区域や、おおむね10年以内に市街化を図る予定の区域
◇特定の地域に指定されていなければ原則として住宅を建てることが可能
市街化調整区域
■市街化しないよう開発行為を抑制する地域のこと
◇公的な施設や道路の整備、農林水産業などの施設の建築は可能
◇原則として新たに住宅を建てることはできない
◇既存の住宅が増改築を行う際も、申請しなければならない地域
非線引き区域
■区域区分が定められていない区域のこと
◇都市計画法では第7条で
指定都市等では必ず区域区分を定めなければならないと規定されている

◇非線引き区域は指定都市以外にある
◇土地利用の規制は比較的ゆるやかなのが特徴

3つの区域以外の区域を都市計画区域外といいます。

都市計画区域外
◇床面積
500平方メートル以下で2階建て以下の建築物であれば、建築工事届を出せば建築確認は必要ない

ただし、1ha以上の開発をする場合は開発許可が必要になる

このように都市計画ではそれぞれの区域の特徴に合わせて区分が細かく分けられています。なかでも、積極的に市街化を図ろうとしている市街化区域では、用途の混在を防ぐために用途に合わせて「用途地域」という地域が定められています。

用途地域とは?

用途地域は市街化区域のなかで、それぞれの地域の特性に合わせて12種類に分類して定められています。

12種類もありますが、大きく分けると「住居系」「商業系」「工業系」の3つです。分けられた区域のなかで建築可能な建物、営業できる店舗などが定められているので、どの地域に区分けされているのかを見れば住環境や将来の街並みをイメージすることができます。

たとえば、不動産を購入しようと考えた場所の目の前に、空き地や近い将来取り壊しがされると思われる古い建築物があったとします。空き地の状態ではどんな建築物が建つのかわからないので、高さのあるマンションやビルが建てられる可能性もあるでしょう。古い建築物が取り壊されたあとも何が建てられるのか想像ができません。しかし、用途地域を見れば、どんな建築物が建てられるのか想像することが可能になるのです。

用途地域の建ぺい率と容積率は地域ごとに定められていて、建築物の高さは隣接道路の幅などによって変わります。建ぺい率と容積率は快適な住環境の保護を重視する地域ほど厳しいルールが定められています。

第一種住居地域の内容

第一種住居地域
■建ぺい率の限度
50%、60%、80%
容積率の限度
100%~500%以内

建築できるものと建築できないものは明確に決められています。

建築できるもの
◇戸建・マンションなどの住宅や共同住宅
◇寄宿舎や下宿などの住居
◇幼稚園・小中高等学校
◇病院や公衆浴場など生活に密着している建築物
◇店舗や飲食店、事務所
床面積の合計が3,000平方メートル以下と定められている

◇工場も建築可能
危険や環境悪化のおそれがなく作業場の面積が50平方メートル以下の工場のみに限られている

◇ホテル・旅館などの宿泊施設、ボーリング場やスケート場などのスポーツ施設
3,000平方メートル以下なら建築可能

◇3,000平方メートル以下の
ガソリンスタンドなどの火薬類が非常に少ない施設・自動車教習所も建築可
建築できないもの
◇床面積
3,000平方メートル以上の店舗や飲食店

◇床面積に関わらず
パチンコ店やマージャン店・カラオケボックス・映画館や劇場・ナイトクラブ

このように、建築可能な施設と建築できない施設を具体的にチェックしてみれば、どんな街並みになるのか想像しやすくなるはずです。

用途地域の種類「住居系」

第一種住居地域は、用途地域の住居系に分けられます。

住居系には制限の厳しい順に

「第一種低層住居専用地域」「第二種低層住居専用地域」「第一種中高層住居専用地域」「第二種中高層住居専用地域」「第一種住居地域」「第二種住居地域」「準住居地域」の7種類があります。

第一種低層住居専用地域
■良好な住環境が最優先される地域
◇建築できるのは3階建て以下の低層住宅のみ
◇店舗や事務所は特定の条件を満たした小規模な兼用住宅は建築可
◇病院や大学、ホテルなどの宿泊施設や遊戯施設などは建てられない
第二種低層住居専用地域
■良好な住環境が優先される地域
◇2階建て以下で日常生活に必要な店舗のみ営業することができる
◇病院や大学、ホテルなどの宿泊施設や遊戯施設などは建てられない
第一種中高層住居専用地域
■基本的に高さ制限がなくなる地域
◇店舗の面積や業種の制限もゆるくなるので、事業用の賃貸経営も可能
第二種中高層住居専用地域
◇1,500平方メートル以下で2階建て以下であれば、店舗や事務所を建築することができる
◇レンタル収納スペースの設置も可能になるので、土地活用の幅が広がる

この2つの地域は宿泊施設や遊戯施設の建築は制限されていますが、病院や大学などの建築が可能となります。

第一種住居地域は先ほど紹介した内容で、第二種住居地域は大規模な店舗も建築することができます。

カラオケボックスやパチンコ店の営業も可能で、ほとんどの施設を建築できるようになります。ただし、危険物を多く取り扱う施設や大規模な工場、風俗施設の建築は許可されません。

準住居地域は利便性を図りながら住環境との調和も保護する地域で、倉庫業の倉庫や客席が200平方メートル未満の劇場や映画館を営業できます。さらに、自動車修理工場の床面積が緩和されます。

住居系以外の用途地域

用途地域の商業系は「近隣商業地域」と「商業地域」の2種類です。

近隣商業地域は主に近隣住民が日用品を手に入れやすい環境を提供する地域なので、店舗の床面積の制限がなくなります。住民が日用品を購入できる店舗やスーパーが営業している地域で、住居系用途地域と比べるとにぎやかなイメージです。中心市街地の周辺に多く見られる地域です。

商業施設はキャバレーやダンスホールなど一部の風俗施設のみ建築不可となりますが、それ以外は制限されていません。

商業地域
■一般的な市街地の中心部
◇商業の利便性を優先するので、大きなビルが建ち並び大規模な商業施設や繁華街がある地域
◇遊戯施設や風俗施設の営業も可能

建築できないもの
◇150平方メートル以上で危険性の高い工場
◇危険物を多く取り扱う施設のみ
生活に便利で建ぺい率が大きいので、タワーマンションは商業地域に建てられることが多くある

工業系には「準工業地域」「工業地域」「工業専用地域」の3種類あります。

準工業地域
■住宅と町工場が混在している地域
◇商業地域同様、ほとんどの建物を建築することができる
ただし、環境の悪化をもたらす工場は建築できない

◇危険物を大量に取り扱う工場や危険性の高い工場の建築は制限されている
◇工業のみを優先しているわけではないので、地域内に商業施設が建築されていることも珍しくない
工業地域
■工業の利便性が優先されている地域
◇どんな種類の工場でも建てられる
◇病院や学校は建築することができない
◇住宅の制限はないが、商業施設の床面積は制限される
◇良好な住環境が優先される地域ではないので、一般住宅が建てられることは少ない地域
工業専用地域
■工業を優先し増進することが目的の地域
◇住宅の建築が禁止されている
◇飲食店や物品販売業、福祉施設の建築も制限される

工業系の用途地域は住居系や商業系よりも建築物の制限がゆるいという特徴があります。

第一種住居地域のメリットは?

用途地区によって制限される内容が変わるため、それぞれにメリットがあります。

第一種住居地域は良好な住環境を保護しつつ、利便性も考慮されているのが特徴です。たとえば、低層住居専用地域や中高層住居専用地域は建築できる店舗に制限があり、大きな建物の建築も許可されていないため、静かな環境で暮らしたいと考える人には向いているでしょう。

しかし逆に、生活に必要最低限の施設しか建築されない地域でもあるので、利便性を考える人からすると少し不便に感じるかもしれません。一方、第一種住居地域では3,000平方メートル以下であれば、店舗や飲食店のほかガソリンスタンドなど近くにあると便利な施設の建築が可能になります。

そのため、第一種住居地域は良好な住環境と利便性を両方兼ね備えた、バランスの良さがメリットと言えます。

第一種居住地域にある不動産は売却しやすい!?

不動産の売却は、不動産が土地であっても建築物であっても立地や環境がポイントになります。いくら良い土地や良好な状態の建築物でも立地や環境が悪ければなかなか売れなくなります。そのため、その不動産がどの種類の用途地域に存在するかということが大きく影響するのです。

なぜなら、立地や環境は用途地域によって変わるといっても過言ではないからです。たとえば、良好な住環境を優先する住居系の用途地域と、工業の利便性も考慮されている工業用の用途地域では周辺の環境が違います。

実際に、宅地価格を見てみると住居系は良好な住環境を手に入れられるため人気があり高く評価されますが、工業系は環境悪化や危険性が懸念されるため、あまり人気がなく高い評価をされない傾向にあります。

ちなみに、東京都の宅地全体の価格平均を100%とした場合、住環境を最優先する第一種低層住居専用地域は86%ですが、第一種住居地域は111.2%と平均以上になっています。

準工業地域や工業地域はどちらも平均以下です。第一種住居地域に平均以上の宅地価格を付けられるのは、第一種住居地域が住環境だけでなく利便性も兼ね備えた立地の良い土地だからと言えます。

第一種住居地域の不動産を売却する際は良好な住環境が確保されることや、周辺には生活するうえで便利な施設が建築される立地であることをアピールすると良いでしょう。

第一種住居地域は用途地域なかのひとつ

第一種住居地域は、12種類ある用途地域のなかのひとつです。良好な住環境の保護に努める地域であることから、建築物の建ぺい率や容積率は制限され、建築できる施設にも制限があります。

とはいえ、生活するうえで必要な施設や便利な施設は建築することができるので、良好な住環境と利便性のバランスがとれた地域と言えます。

第一種住居地域で建築可能な施設と建築が制限される施設を知っておけば、将来その土地がどのような街並みになるのか想像することができるはずです。将来の様子がイメージできると、不動産売買の参考にすることができるでしょう。