売りに出していたマンションが希望通りに売却できることが決まるとひと安心です。しかし、無事にマンションを引き渡す前後は気を抜かないようにしましょう。なぜなら、契約の段階で契約内容や流れを把握しておかないと、売却後に予期せぬトラブルが発生することがあるからです。契約時に気をつけておきたいポイントについて紹介します。

不動産会社に確認!買主の住宅ローン審査

マンションの買主が住宅ローンを利用して購入するケースがあります。住宅ローンを利用する金融機関の審査状況については、売主は把握できないため、念のため仲介を依頼している不動産会社に問い合わせて進捗状況を確認しておくとよいでしょう。

買主の住宅ローン進捗状況は不動産会社に確認を!

一般的には、不動産会社の担当者が買主の住宅ローンの仮審査が通ったときに、売買契約に向けて準備をすすめていきます。金融機関の仮審査が通れば、ほぼ問題なく本審査も通るでしょう。

住宅ローンの本審査にかかる期間は金融機関により異なりますが、早ければ1週間、遅くても3週間以内には結果が出ます。しかし、あまりないことですが、仮審査が通った後に本審査で住宅ローンが通らないことがあります。そうなると、マンションを買主に売却できなくなる可能性が高くなりますし、本審査にかかっていた数週間はほかの人に販売活動ができたであろう貴重な機会を失ってしまうでしょう。このような万が一のことにそなえて、一般的に売買契約書には「住宅ローン特約」の特記事項が記載されています。

住宅ローン特約
買主が住宅ローンを借りられなかった場合は売買契約を白紙にし、事前に売主が受け取っていた手付金をすみやかに返還する

といった内容が記載されています。もし、「住宅ローン特約」に記載されている期間があまりにも長いようであれば、買主のローン審査が万が一通らなかったときに売主は特約期間をただ待たされてしまい、売却活動に支障が出ることになるので注意が必要です。できるだけ短い期間を記載するよう、不動産会社に伝えておくとよいでしょう。

さらに、無事にマンションの引き渡しができるときにも注意したいポイントがあります。事前に買主と約束していた明け渡しの日が、自らのやむを得ない事情で守れないことがあります。買主は明け渡し日当日に引っ越しの手配をしている可能性もあり、迷惑をかけないようにしたいものです。明け渡しの日は、不動産会社と相談して余裕をもった日付を契約書に記載してもらいましょう。

契約前に必ず売買契約書に目を通すことが大切!

不動産売買契約書は、マンション売却の話がまとまると不動産会社が準備してくれます。売買契約書は、すべての不動産会社で同じものを使っているわけではないので、契約日前に必ず目を通して理解しておくことがとても大切です。ここで、わからない点をあいまいにしてしまうと思わぬトラブルに発展することがあるので注意しましょう。

契約前には必ず売買契約書に目を通すこと!

契約日当日に初めて売買契約書を見て、内容をよく確認しないまま捺印することは避けたいものです。不動産会社の担当者によっては、頼まれなくても事前に売買契約書のコピーを渡してくれることがあります。

しかし、一般的には自分から不動産会社の担当者に依頼しないと、売買契約書は見ることができません。必ず取り寄せて、自分が不利になるようなことにならないか、事前に話し合いをして合意した内容が記載されているかをチェックしましょう。

心配であれば、司法書士などの専門家に見てもらうのが無難です。

おさえておこう!売買契約書のチェックポイント

売買契約書を読みすすめていくと、たくさんの項目があるのでどこをチェックしたらよいかわからなくなることもあります。基本的には、合意した内容がしっかり反映されているかを確認します。しかし、ときには数字や日付など内容が間違って記載されていることがあるので、すみずみまで目を通しましょう。

売買契約書のチェックポイントは?

チェックしておきたいポイントは、

■売却するマンションの住所、売却金額、手付金額が間違えていないかを確認

■買主からの残金支払日

■万が一、契約が白紙になったときの手付金解除の期限、買主の責任による違約金の取り扱いについて記載されているか

■また、大規模災害などでマンションが売却前に正常な状態で利用できなくなったときの契約解除条件

■マンションの設備について、あらかじめ申告していた内容が正しく反映されているか

■マンションの場合には、管理費や修繕積立金の精算をするので、引き渡し日が正しく記載されていて計算が間違えていないか

■<固定資産税(引き渡し日から起算して日割りで精算します)の計算があっているか

知っておきたい!売主の瑕疵担保責任

瑕疵担保責任 (かしたんぽせきにん)とは、マンションを引き渡したあとに買主がマンションの欠陥や不具合について指摘したとき、売主は修繕や賠償責任を一定の期間負わなければならないとされる責任のことを指します。

売買契約書にはほぼ記載されているのですが、売主が瑕疵担保責任を負わなくても問題はありません。しかし、一般的には個人間の売買で中古の物件であれば、瑕疵担保責任の期間やどこまで責任を負うかの取り決めをします。不動産の売買で代表的な瑕疵(欠陥)は雨漏りやシロアリですが、マンションの場合にはあまり該当しないでしょう。しかし、排水管の水漏れなどは修理が高額になる傾向があるので気をつけておくのが無難です。

マンションの瑕疵で知っておきたいもの

心理的瑕疵
過去にマンション内で自殺や事件があったときに該当
環境瑕疵
近隣に大きな騒音や振動を感じるような道路・鉄道・施設などがあり、住み心地に問題がある場合に該当することがある
隠れた瑕疵
自分が住んでいたときには気にならなかった、知らなかったことが瑕疵担保責任に問われ、損害賠償の対象になることがある

注意したいのは、たとえ知らなかったことでも、契約書の瑕疵担保責任期間に買主から指摘されれば修繕費用を支払わなければならなかったり、最悪の場合には契約解除になったりする可能性もあります。

そのため、売買契約書を作成する際には、不動産会社の担当者に瑕疵担保責任の期間や責任範囲について、内容が妥当であるかどうかしっかり確認することが大切です。また、もし自分が「隠れた瑕疵」を知っていながら売買契約を結んでしまうと、後々大きなトラブルになる可能性があります。なんらかの瑕疵があることを知っているときは、状況を正しく伝えて契約書に記載しておく必要があります。

契約解除は難しい!高額な違約金が発生することも

契約解除は高額な違約金が発生することも。。。

売買契約書で契約をしたあとに契約解除するのはとても難しいです。そのため、契約をする前に余裕をもった売買スケジュールになっているかどうか、計画に無理がないかをしっかり確認しておくことが大切です。

もし、買主の住宅ローン審査が通らなかったり、大規模災害によってマンションが利用できなかったりする場合には、契約書に特約としてあらかじめ記載されていればスムーズに契約解除が可能です。しかし、自分のやむを得ない事情により契約締結後に解除するときには、多額の違約金が発生することになるので注意しましょう。

一般的に、自己都合で契約解除するときの違約金は、マンションの売買代金の10~20%くらいの金額を買主に支払わなければなりません。数千万円ほどするマンションであれば、違約金は数百万円になるので大きな金額です。

売買契約が終わってもしばらくは気が抜けない!

マンション売却は、希望の条件で売れればそれで終わりではありません。売買契約書にしっかり目を通しておかないと、予想もしなかった問題に発展してしまうことがあります。買主も売主も余計な時間やお金を使ってしまいますし、契約解除になることもあるので細心の注意を払うようにしましょう。

売買契約書は契約日前に確認して、わからない点は不動産会社や司法書士などに相談して疑問を解消しておき、契約日当日は不安が残らないようにしたいものです。