憧れの夢、マイホーム。 不動産の資産価値が上昇が確実でなくても、たとえ大金を必要とする買い物であっても、できることならやっぱりマイホームがほしい!と思う方が多いのではないでしょうか。

これから家を買う人、買った人、売買する人にもぜひ今後のためにも知っておいて損のない情報です。

様々な住宅ローン

いくつかある住宅ローン

一生のうちで一番高い買い物になる可能性が高い、マイホーム。 そんなマイホーム購入のサポートをしてくれるのがご存知、住宅ローンです。

どのくらいの割合の方が住宅ローンを借り入れているか調べてみたところ、注文住宅を新築された方のおよそ70%、分譲住宅を購入された方のおよそ60%が、住宅ローンを借り入れていました。(参考:国土交通省サイト内平成22年度住宅市場動向調査

住宅ローンは借金

住宅ローンを完済し抵当権が抹消になったあかつきには、住宅が文字通り自分のものになるという大きな見返りがあるとはいえ、住宅ローンとはいわゆる借金です。そして、長期間に渡る借金であり、その返済金額も安くありません。

住宅ローンとひとことで言っても、ひとつではなく

■どこの住宅ローンを借り入れる?
⇒「公的住宅ローン」or「民間住宅ローン」

■住宅ローンの金利はどうするか?
⇒「固定金利型」or「変動金利型」

など、住宅ローン借り入れるにあたって、考えなくてはならないことはたくさんあります。

もちろん、不動産会社の営業担当者、銀行の融資担当者、ファイナンシャルプランナーなど、相談できる専門家はいるものの、どの住宅ローンを借り入れるかの最終的な選択は、みなさんご自身がしなくてはなりません。

そこで、今回は住宅ローンの種類・金利・審査基準などについて紹介していきたいと思います。

いくつかある住宅ローン

住宅ローン控除などの減税(還付)措置についても合わせて紹介していきます。

住宅ローンの種類

住宅ローンは、大きく分けて

公的住宅ローン(公的融資)」「民間住宅ローン」「 フラット35(公的住宅ローンと民間住宅ローンの連携商品)

があります。

公的ローン

公的住宅ローンは、金利面は比較的有利なのですが物件に対する審査基準が厳しく、借入限度額が低いので高額の借り入れは難しいという特徴があります。

サラリーマン

現在、サラリーマンや公務員を対象とした「 財形住宅融資 」、地方自治体が地域内に在住・在勤している人向けに提供している「 自治体融資  」などがあります。

民間ローン

民間住宅ローンは、人(つまりは住宅ローン借入者)に対する審査基準が厳しいですが、借入限度額が大きく、物件に対する審査基準は比較的緩い(ただしフラット35は例外)という特徴があります。

民間の住宅ローンは銀行などの金融機関、住宅ローン専門会社、農業共同組合(JA)、一部の生命保険会社などで販売されています。 また、「フラット35」も民間住宅ローンに分類されます。

公的住宅ローン
  • 金利面は有利
  • 物件への審査基準が厳しい
  • 借入限度額が低いため高額の借り入れは難しい
  • サラリーマンや公務員を対象とした「財形住宅融資」
  • 地方自治体が在住・在勤者を対象とした「自治体融資」
民間住宅ローン
  • 借入者に対する審査基準が厳しい
  • 物件への審査基準はゆるい(フラット35は例外)
  • 借入限度額が大きい
  • フラット35(公的・民間連携商品)
  • 金融機関
  • 専門会社
  • 農業協同組合(JA)
  • 一部の生命保険会社

手続きの利便性という観点から話すと公的住宅ローンは、原則として、すべての手続きを「住宅ローン借入者本人」がしなければなりません。 一方、民間住宅ローンは、不動産会社と住宅ローン会社が提携していたりするので、不動産会社が手続きを代行してくれることが多いでしょう。

確かに、不動産会社の利益になる(リベートの高い)住宅ローンを勧められる可能性はゼロではありませんが、最近は金融機関同士の競争が激しいこともあり、公的住宅ローンに引けを取らない好条件になってきています。

住宅ローンの金利について

住宅ローンの金利の大原則は、借金と同じです。 額が少なければ少ないほど、完全に返済するまでの期間が短ければ短いほど安くなります。 そうは言っても、「どこから」借り入れるか「固定金利」にするか「変動金利」にするかによって、最終的に支払う住宅ローンの合計金額が、数百万円単位で異なる場合があります。

では、「最も良い住宅ローン」とは何でしょうか。

残念ながら、それは誰にも断定できません。なぜならば、住宅ローンは長期間にわたって返済していくものです。その長期間の間に、市場金利が上昇するか低下するかはわからないのです。

固定金利を選択した場合
住宅ローン利用者の視点から見れば
■市場金利が上昇すれば
⇒「得」

■市場金利が下降すれば
⇒「損」
変動金利を選択した場合
住宅ローン利用者の視点から見れば
■市場金利が上昇すれば ⇒「損(固定金利を選択すればよかった)」

■市場金利が低下すれば ⇒「金利を低い金利に見直せて安上がり」

ということになります。

株取引と似ていると考えると、わかりやすいかもしれません(もちろん厳密には違います)。

そして、さらには、各金融機関が、お互いに競争しつつ、購入者(住宅ローン借入者)に魅力的に映る商品を販売しています。 なので、ますますわからない状況になっています。

近年、住宅ローンの「乗り換え」が話題になっているのも、市場金利などの動向をみて、よりよい住宅ローンに契約しなおそうとしてのことです。 ここ1年くらい、携帯電話会社の価格競争が激しく、それによってみなさん携帯電話キャリアを乗り換えたりしていますよね。

極端なことをいえば、それと似たようなことが住宅ローンでも起こっているのです。(もちろん携帯電話のように、住宅ローン会社が途中解約金を肩代わりしてくれることはありません)

なお現在、住宅ローンの金利タイプとしては、大きく分けて、変動金利型・固定金利型・変動金利・固定金利併用型の3種類があります。

住宅ローンの審査基準

せっかく気に入った不動産を見つけたのに、住宅ローン借り入れの審査に落ちてしまったら、がっかりですよね。そこで、住宅ローンの一般的に審査基準について触れておきます。 (ただ、住宅ローンの細かい審査基準は、ほとんどが非公開なので、一般的に言われていることの紹介になります)

1.勤務形態や勤続年数

非正規雇用、アルバイト、派遣・契約社員、フリーランス、自営業などの方は、住宅ローンも組みにくい傾向があります。転職したばかりの人も要注です。やはり、正社員が審査でも有利にはなるでしょう。

住宅ローンの審査は何を基準に行われているの?

最も、近年の雇用環境の変化もあり、契約社員でも審査に通るようになってきています。

2.住宅ローン借入の年齢制限

住宅ローン完済時の年齢条件を70?80歳に設定している金融機関がほとんどなので、年齢制限に抵触する場合は審査に通りません。

3.他の債務や返済状況

自動車ローン、教育ローンなど他のローンの残高がチェックされます。キャッシングやカードローンで過去に遅延事故を起こしたことがある方も要注意となります。また、消費者ローンを利用していると審査に通らないこともあります。

4.住宅ローンの返済負担率が適切か

年収のうち、住宅ローン返済額の占める割合のことです。

返済負担率=住宅ローン年間返済額÷年収(額面)×100」で計算し、年収の30%が住宅ローンになると返済困難とみなされ、審査に通らないこともあります。

5.健康状態が良好か

民間の金融機関のほとんどは、団体信用生命保険への加入を住宅ローン借入の必須条件にしています。

団体信用生命保険とは、住宅機関返済期間中に保険加入者が死亡あるいは高度障害を負った場合に、生命保険会社が残りの住宅ローンを支払うというものです。健康状態に問題がある人はこの保険に加入できず、従って住宅ローンの審査も通過できません。

以上が、住宅ローン審査の主な項目といわれています。 なお、従来は頭金がないと住宅ローンが組めなかったのですが、最近は頭金なしでも組める住宅ローンも出てきています。しかし、「頭金0円」であるということは資金力に余裕がないということです。

住宅ローン借入は、より慎重に検討してくださいね。

住宅ローン控除/減税(還付)措置について

マイホームは誰にとっても大きな買い物です。そのため、少しでも住宅ローンの負担を軽減するべく、住宅ローン控除という減税(還付)措置が設けられています。

控除額の計算方法及び控除適用年数(10?15年)は、控除対象になる住宅に入居した年によって異なります。
※住宅ローン控除を受けるには、一定の条件を満たす住宅である必要があります。 

計算方法は複雑だったのですが、2009年以降、計算方法がシンプルになり、2009年?2015年に入居を開始した場合、入居開始後10年間にわたって 

  • 住宅ローンの名義人が1年間に納めた所得税額 
  • その年の年末現在の住宅ローン残高(限度額が上限)×1% 上記のいずれかの、低いほうの金額の控除

を受けることができるようになりました。

最大控除額は入居した年により異なります。具体的には

入居した年
最大控除額
2009年・2010年
年間最大50万円
2011年
年間最大40万円
2012年
年間最大30万円
2013年
年間最大20万円

と、現在、住宅ローン控除「段階的廃止」の方向へ動いているようです。 詳しくは税務署の資料をご参照ください。 (【参考】 住宅借入金等特別控除の控除期間及び控除額の計算方法

ただし、減税手続きとしてはあくまで「控除」なので、医療費控除のように確定申告をして初めて、還付(=返金)されます。必ず確定申告してください。 

そして、2009年度からは所得税で還付しきれなかった分は、住民税からも還付できるようになりました。

計算方法は、当該年分の所得税の課税総所得金額×5%なのですが、最高額が、97,500円と上限があります。そのため、例えばAさんが2011年に入居を開始した住宅ローンの借入残高が、年末に5,000万円だった場合。

5,000万円×1%=50万円ですが、上限規定により、最大控除額は40万円。そして、Aさんの納めた所得税が25万円であれば、所得税による住宅ローン控除額は25万円。翌年2月16日?3月15日の間に確定申告をすることにより、25万円が還付されます。

しかし、25万円では、控除限度額40万円が還付しきれていません。 そのため、Aさんは住民税からも97,500円の還付を受けることができるのです。 ※住民税の還付は指定口座に返金されるのではなく、翌年の住民税が割り引かれる形になります。

以上が、住宅ローン控除額の計算方法になります。なお、先ほど少し触れたように、住宅ローン控除を受けるために、下記、8つの条件を満たした住宅である必要があります。

  1. 返済期間10年以上の住宅ローンを借り入れていてマイホーム用の住宅であること
  2. 登記簿に記載されている住宅の床面積が、50平方メートル以上であり、その2分の1以上が、もっぱら自らの居住用であること。 ※注測方法の関係で、不動産屋の広告よりも、登記簿面積が小さくなる場合があります。床面積50平方メートルギリギリの住居は気をつけてください。
  3. 住宅取得後半年以内に入居し、各年12月31日まで引き続き住んでいること ※国内転勤の場合は、(住宅所有者が単身赴任し)家族が居住し続ければ適用されます。ただし、海外転勤の場合は適用外になるので注意してください。
  4. 住宅ローン控除を受ける年の合計所得金額が3,000万円以下であること
  5. 同居の親族や配偶者(婚約者も含む)から購入した住宅ではないこと
  6. 自分の働いている会社からの恩恵として安価(時価の2分の1未満)で得た住宅でないこと
  7. 認定長期優良住宅であると証明されていること (認定長期優良住宅の新築などに係る住宅ローン控除の特例を適用を受ける場合)
  8. 中古住宅の場合は、耐震基準に適合していることが(平成17年4月1日以降に)証明された住宅であること ※耐火建築物(マンションなど)は取得日時点で築25年以内、非耐火建築物(木造住宅など)は取得日時点で築20年以内

併用ローン

以上が住宅ローンについてでした。その住宅ローンですが、利用する場合、複数のローンを併用する場合があります。 これを「併用ローン」と呼んでいます。

ただ、民間の金融機関だと他のローンと併用することができないのが大半です。 しかし、フラット35を利用する場合、併用ローンが可能となります。 利用できる併用ローンを以下になります。

住宅金融支援機構の財形貯蓄融資との併用

これは、住宅金融支援機構で扱っている財形住宅融資を併用するパターンです。 財形貯蓄融資とは、財形貯蓄を行なっていている人が利用できる融資で、5年間、固定金利制で利用できます。

この財形貯蓄融資なら、フラット35と併用することが可能です。なお、5年間の固定金利制ですが、金利は5年毎に見直しが行なわれます。この点は、注意が必要です。

フラット35パッケージとの併用

フラット35パッケージとは、金融機関が取り扱っている商品です。低金利のメリットを持つ固定金利期間選択型変動金利型の住宅ローンと、 フラット35をセットにした商品を指します。

この商品を利用することで、将来発生するかも知れない金利変動のリスクを軽減することが可能となります。

次に、併用ローンのメリットや、どんなケースでの利用が向いているかを考えてみましょう。

併用ローンのメリット

併用ローンのメリット

「できるだけ金利上昇のリスクを避けて、支払額を可能な限り減らしたい」というような 希望を持つ人には、良い商品です。ローンを長期固定の商品と短期低金利の商品を併用することで、金利上昇のリスクを避ける事が出来ます。

利用が必要なケース

購入物件価格の9割を超える借り入れを希望する場合

購入物件価格の9割を超えての借り入れをしたい場合、適していると思います。 例えば、購入物件の価格が4,000万円だとします。現在、用意できている頭金は1,000万円。この場合、借り入れ額は3,000万円です。

しかし、フラット35の借り入れ可能金額(上限)は、全体の9割までです。ということは、2,700万円まで借りられても300万円足りなくなります。こういった場合に、不足している300万円を他のローンで補うというわけです。

低金利の住宅ローン商品を利用したい

現在、金利は非常に低くなっています。 特に、民間の金融機関が独自販売している商品の中には、非常に低金利のものがあります。中でも、短期固定金利ローン、当初期間固定ローンといった商品などは、フラット35に比べてかなりの低金利を実現しているのです。
例:固定5年→1.180%、固定10年→1.580%

しかし、その一方でこういったローン商品は固定期間が短く、期間終了後の金利は市場によって変動するので、予想が立てにくいのが現状でもあります。ここまでのお話で、いいことづくめのように感じた方もいらっしゃるかと思います。

しかし、メリットが存在すれば必ずデメリットも存在します。

併用ローンのデメリット

住宅ローンは自分の思い通りには進まないという点です。これは、きっとどの商品を選ぶにも当てはまるでしょう。

抵当権(設定順位)の問題

フラット35を例にすると、融資条件の中に「抵当権一位設定」という内容が含まれます。ということは、選択する併用ローンの融資条件に「抵当権一位設定」が含まれていないことを確認し、探す必要があります。

借り入れ手数料が更に発生

複数のローンを利用する、ということは当然ですが、諸費用もだいたい倍になるということです。

諸費用は主に、手数料・保証料・印紙代など。 これらの諸費用の負担が、せっかく用意した頭金を減らす要因にもなりかねません。

金融機関によっては、取扱がないケースも

取扱商品をフラット35のみとしている金融機関も存在するでしょう。そうなると、併用ローンの取扱をしている金融機関を別途探す必要が出てきます。また、複数の金融機関を組み合わせるような行為は、金融機関がハッキリ言わずとも歓迎はされないと思います。

気持ちよく、取引や手続きを行なう為にも、金融機関への確認や相談は念入りに行なうのがベストです。

まとめ

今回は住宅ローン、そして併用ローンについてのお話をしました。住宅ローンには様々な種類や形態があるので、幅広い世帯に合わせて利用できるようになっています。

どんなものでメリットやデメリットはという疑問は少しお分かりいただけたでしょうか。 また、どんなことにも言えますが、それぞれに特性やメリット・デメリットというものは必ず存在します。

特に、住宅ローンの利用は長期戦になります。早めに完済してしまえるのが一番だとは思いますが、なかなかそうもいかないのが現実でしょう。

金利や返済の総額といった数字も重要ですが、ご自身のライフプランを今一度見直して、 慎重な調査と検討を重ねて、より適切でお得な方法を選んで下さいね。