買い換えが決まったり、同居などにより今まで住んでいた住居が不要となったりしたことで、マンションの売却を検討している人もいることでしょう。居住用マンションの売却をすると譲渡益が出ることもありますが、逆に利益がマイナスとなってしまうケースも少なくありません。そこで、居住用マンションの売却によってマイナスとなってしまったときに、知っておきたい税金の特例制度について解説します。

得した?損した?そもそも、マンション売却の損得判断の方法とは?

マンション売却の損得判断とは?

マンションの売却によって受けることができる特例を知る前に、まずは、売却により得をしているのか、損をしているのかを確認しておくことが必要です。

マンションを売却したことによって生じる所得を譲渡所得といい、譲渡所得がプラスであれば得をしていることになります。そして、反対にマイナスとなっていれば損失が出ていることになるのです。

■譲渡所得・・・譲渡価額から取得費と譲渡費用を差し引くことで算出
※譲渡費用は売却したマンション物件そのものの費用以外にかかる仲介手数料のほか、売主負担の印紙税といったものも対象

■譲渡価額・・・マンションなどの不動産を売却したときの代金
■取得費・・・マンションを購入したときの費用 マンションの購入代金だけではなく、購入のための手数料や設備費用といった諸費用も取得費に含まれる

取得費の計算におけるマンション購入費用の算出については注意が必要となります。

マンションなどの不動産は、取得したときから年月が経つと、使用にともなって価値が低下していくからです。たとえ3,500万円で取得したマンション物件であったとしても、売却する際には3500万円の資産価値はなくなっています。このため、譲渡所得の計算において取得費を取得当時の金額そのままで使用することはできません。

取得費の計算方法

原則、取得費は2つの方法で算出した金額のうち、大きいほうの金額を使います。

取得費を計算するための2つの方法

■概算法・・・概算法では、マンションの譲渡による収入額の5%が取得費となる
実額法・・・実際のマンションの購入代金と購入時の仲介手数料や設備費などのすべての費用の合計金額から、減価償却費を差し引いて取得費を算出

減価償却とは、使用や年月の経過とともに減少した資産価値を、耐用年数に応じて費用計上すること
※減価償却費の計算には、定額法と定率法という2つの方法があり、定額法で計算されることが一般的

取得費の計算方法

居住用マンションなどの減価償却費について定額法により計算する場合、マンションの購入の際にかかった費用の90%の金額に償却率と経過年数を乗じて算出します。

償却率は建物の構造によって異なり、たとえば耐用年数が70年となる鉄筋コンクリート造のマンションであれば償却率は0.015です。同じ構造でも事業用の建物とでは償却率が異なるため、注意しましょう。

また、経過年数は6カ月未満の月は切り捨て、6カ月以上の端数は1年として計算します。たとえば、4,000万円で取得した築10年の鉄筋コンクリート造の物件について取得費を計算する場合には、4,000万円×0.9×0.015×10が計算式となり、540万円が取得費になります。

売却でマイナスとなった時の特例は2種類!

売却でマイナスとなった時の特例

居住用のマンションの売却による譲渡所得が、計算によりマイナスとなったときに受けることができる特例は2つです。

◆「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」
「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」

この2つの特例の適用の違いは、譲渡により買い換えを行うか、買い換えを行わないかということで異なっています。ただし、どちらの特例も所有期間が5年を超えていることが条件です。所有期間とは、譲渡した年の1月1日時点における年数により判断します。

たとえば、2013年1月1日に取得したマンションを2018年12月31日に売却した場合には、売却日が1月1日に達していないため、所有期間は6年ではなく、5年という扱いです。譲渡所得は税法上、5年以下の所有期間を短期譲渡5年を超える所有期間を長期譲渡といい、長期譲渡のみ売却時に特例を受けることが可能となっています。また、実際に自分が住んでいたマイホームの売却であることも適用要件です。

ただし、現在住んでいないマンション物件であっても、以前はマイホームとして使用していて、住まなくなってから3年目の12月31日までに売却した場合については適用の対象となります。さらに、転勤などが理由で配偶者が住んでいたマンションを売却したときにも対象内です。

買い換えをした場合の特例とは?

■居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例■
所有期間が5年を超えるマンションの売却において損失が生じたケースのうち、買い換えをした場合に受けることができる特例
2017年12月31日までに売却して、新たにマイホームを購入した場合に限って要件を満たすと対象となる
※2018年以降の売却における特例の適用については、確認が必要

特例を受けると、給与所得や事業所得といった、その年の所得から損益通算されます。損益通算とは、一定のルールに従って所得金額から損失のうちの一定の金額を控除することができるというものです。そして、損益通算を行っても控除しきれなかった場合には、売却した年の翌年以降3年以内であれば繰り越しをして控除することが可能となっています。

買い換えをした場合の特例

買い換えしたときとは何が違う?買い換えなしで売却だけをする場合の特例とは

■特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例■
5年を超える年数で所有していたマンションの売却において損失が生じたケースのうち、買い換えをしない場合に受けることができる特例
◆2017年12月31日までに売却していることが適用の要件

※2018年以降の売却における特例の適用については2018年度の税制改正に合わせて再度確認が必要
※買い換えをした際に受けることができる特例と同じく、損益通算や繰り越して控除をすることも要件さえ満たしていれば可能

ただし、買い換えがある場合と買い換えがない場合とでは、損益通算ができる損失金額が異なっています。買い換えありの場合の損益通算できる損失額は、譲渡所得の算出をした際に生じた損失額です。

一方、買い換えなしの場合の損益通算できる損失額

◆「譲渡所得の算出をした際に生じた損失額」 ◆「譲渡資産の譲渡に係る対価の金額を譲渡資産にかかる一定の住宅ローンの金額から控除することで残った金額」

以上の2つのうち少ないほうの金額となります。また、売却する物件にかかる住宅ローンについて、買い換えをしない場合には要件があります。

◆売却契約を結んだ日の前日の時点で、金融機関から借り入れた譲渡資産となるマンションの住宅ローンに残高がある
◆その住宅ローンの償還期間が10年以上であること

この2つが要件となっています。

マイナスだからと諦めないで!少しでも損をカバーするためにも特例を上手に利用しよう

大切な資産であるマンションを売却したら、利益がマイナスとなってしまうというケースは少ないことではありません。しかし、実際にマイナスである事実を知るとがっくりとしてしまうことでしょう。しかし、特例を上手に利用することで、その損失の一部をカバーすることができる場合もあります。

売却で損失が出た場合の2つの特例の要件を知り、自分の売却ケースは特例を受けることができる対象となるのかを事前に調べ、対象となる場合にはしっかりと利用するようにしましょう。