相続した実家の空き家対策にお悩みではありませんか?
空き家を放置すると維持費がかさむだけでなく、2023年の法改正により、放置空き家は「管理不全空家」に指定される可能性があります。
これは倒壊の危険がなくても、周囲へ悪影響を及ぼす恐れがある物件を指し、指定されて自治体から勧告を受けると固定資産税が最大6倍に跳ね上がるリスクがあるため、早期の対策が不可欠です。

そこで注目されているのが、空き家の「民泊」転用です。
インバウンド需要もあり魅力的なビジネスに見えますが、法律の制限や初期費用、近隣トラブルといった現実的なリスクも存在します。

本記事では、空き家民泊に必要な知識からリスク、コストまでを詳しく解説します。
「民泊として活用すべきか、売却して現金化すべきか」の判断基準として、ぜひお役立てください。

この記事の目次

空き家を民泊にすることはできる?まずは結論

空き家を民泊にすることはできる?まずは結論のイメージ

空き家を所有している方にとって、その物件を民泊として活用できるかどうかは非常に重要な問題です。
結論から申し上げますと、法律や自治体が定める基準をクリアすれば、誰も住んでいない空き家であっても民泊として開業し、運営していくことは十分に可能です。

しかし、全ての空き家が民泊として成功するわけではなく、物件の特性や周辺の環境によって結果が大きく分かれます。

まずは民泊運営の可能性と、事前に考慮すべき判断基準について説明します。

空き家でも民泊運営は可能

法律上の要件と適切な手続きを踏めば、相続した実家などの空き家であっても民泊として運営することができます。
民泊を開業するための主要な法律である住宅宿泊事業法(民泊新法)では、一定の設備と居住要件を満たしている家屋であれば、届け出を行うことで宿泊施設として提供することが認められています。

空き家はそのまま放置していると資産価値が下がり続けるだけでなく、固定資産税などの固定費が発生し続けます。
民泊に転用することで、宿泊者からの利用料金によって維持管理費をまかない、黒字化を目指すことができるようになります。

ただし物件や地域によって向き・不向きがある

前述のとおり、空き家での民泊運営は可能です。
しかし、物件の立地条件地域の法規制によって、明確な向きと不向きが存在します。
どれほど建物が立派で内装が魅力的であっても、観光地から離れているエリアや、公共交通機関でのアクセスが困難な場所にある空き家は、宿泊需要を獲得することが非常に困難です。

また、自治体によっては独自の条例を定め、民泊の営業を厳しく制限しているケースもあります。
例えば、特定の期間しか営業を認めていない地域では、十分な稼働率を確保できずに収益を上げることが難しくなります。

空き家活用で民泊が注目されている理由

空き家活用で民泊が注目されている理由のイメージ

近年、全国の空き家オーナーの間で民泊への関心が急速に高まっています。
かつての不動産の有効活用といえばアパート経営や駐車場運営が主流でした。
しかし、現代においては、民泊という手法が注目されており、その背景には日本社会が抱える課題や時代の流れ、市場の拡大が関係しています。

ここでは、空き家の活用方法として民泊が注目されている理由を解説します。

空き家問題が深刻化しているから

日本国内における空き家の総数は年々増加を続けており、深刻な社会問題となっています。
総務省が実施している統計調査においても、全国の空き家数および空き家率は継続して増加しており、住宅全体の7軒に1軒以上が空き家という現状です。

空き家数及び空き家率の推移-全国(1978年~2023年)総務省 統計調査

出典:「空き家数及び空き家率の推移 - 全国(1978年〜2023年)」-総務省

親から引き継いだ実家に子どもが住まないケースや、地方の人口減少にともなって買い手や借り手が見つからない物件が市場に取り残されています。
これにともない、国や自治体も空き家対策を強化しており、放置された物件に対する税制上の優遇措置を廃止するなどの法改正が行われました。
所有者はただ家を維持するだけでも重い経済的負担を背負うことになり、何らかの形で有効活用せざるを得ない状況に追い込まれていることが、民泊検討の動機となっています。

インバウンド需要の回復で民泊市場が拡大しているから

空き家問題が深刻化する一方で、日本を訪れる外国人観光客は急増しています。
インバウンド需要の回復により、主要な観光地や都市部では、ホテルや旅館といった既存の宿泊施設が慢性的に不足しているのが現状です。

その代替の宿泊施設として注目されているのが「民泊」です。
特に外国人観光客からは、ビジネスホテルにはない「日本の伝統的な家屋や一般家庭での滞在」を体験できる、一戸建ての民泊が高い人気を集めています。

そのため、観光地周辺にある空き家であれば、通常の賃貸として貸し出すよりも、民泊として運用するほうが高い収益を期待できる可能性が高く、市場環境としては非常に有利な状況といえます。

空き家の維持費対策として注目されているから

空き家を所有しているだけで発生する固定資産税や、建物の劣化を防ぐための修繕費や電気・水道の基本料金といった固定費は、所有者にとって大きな負担です。
民泊は、これらの持ち出し費用を宿泊料金という売上によって相殺し、さらにプラスの利益を生み出すための対策として注目されています。

民泊運営が軌道に乗れば、空き家にかかる維持管理コストを全て事業の売上から捻出できるようになります。
資産をただ消費するだけの「負債」から、継続的に利益をもたらす「収益資産」へと転換できる可能性を秘めている点が、多くの所有者を引きつける大きな要因となっています。

空き家を民泊にするメリット

空き家を民泊にするメリットのイメージ

空き家を民泊に転用することには、他の不動産活用にはない独自のメリットが存在します。
単に毎月の収入を得るだけでなく、不動産という大切な資産を守り、さらには地域社会とのつながりを生み出すことも可能です。

ここでは、空き家を民泊として活用することによって得られる4つのメリットについて説明します。

収益化できる可能性がある

空き家を民泊にする最大のメリットは、使い道の定まっていなかった物件から、収入を得られる可能性がある点です。
特にインバウンド需要が高まる観光地周辺アクセスの良いエリアであれば、繁忙期に宿泊単価を柔軟に引き上げることで、短期間で大きな売上を達成することもできます。

稼働率を安定させることができれば、毎月の固定資産税や管理コストを大幅に上回る利益を手にすることができ、老後の資金づくりや家計の大きな支えとすることが可能です。

空き家の老朽化を防ぎやすい

一般的に、人が住んでいない家は傷むのが非常に早いといわれています。
その原因は、換気が行われずに室内に湿気がこもり、木材の腐食やカビが進行することや、水道管に水が通らないことでサビや異臭が発生することにあります。

空き家を民泊として活用すれば、宿泊客の受け入れにともなって定期的に窓が開けられ、換気水回りの清掃設備のチェックが確実に行われるようになります。
自然な形で建物に人の出入りが保たれるため、建物の劣化を防ぎ、健康的な状態で家を維持できる効果が期待できます。

地域活性化につながる

地方や郊外の空き家を民泊にすることは、地域の観光業や経済を支援し、地元に貢献できるという社会的なメリットもあります。
宿泊施設が不足している地域に民泊を開業することで、旅行者やイベント参加者の滞在拠点を作ることができます。

宿泊客が周辺の飲食店や土産物屋を利用することで、地域経済に新しいお金の流れが生まれ、地域活性化を直接サポートすることにつながります。
地元住民とのつながりを強化し、コミュニティに貢献しているという実感を持ちながらビジネスを運営することができます。

将来的な資産価値維持につながる場合もある

民泊として運営を行うにあたり、リノベーションやインテリアを整えることは、物件の魅力を高めるだけでなく、資産価値の向上にもつながります。
定期的なメンテナンスや設備更新を行うことで、建物の状態が良好に保たれ、長期間にわたって資産価値を維持しやすくなるためです。

また、稼働実績収益データを蓄積しておくことも大きな強みとなります。
将来的に物件を手放す際、「すでに収益化の仕組みが整った物件」として投資家からの需要が見込めるため、より有利な条件で売却できる可能性が高まります。

空き家を民泊にするデメリット・リスク

空き家を民泊にするデメリット・リスクのイメージ

空き家を民泊にすることは非常に魅力的な活用方法に見えますが、その裏にはデメリットやリスクが隠されています。
これらのマイナス面を把握しておかないと、事業を始めてから取り返しのつかない大損を被る危険性があります。

初期費用やリフォーム費用がかかる

民泊を始めるにあたり、多くの所有者が直面する最初の課題が、初期費用改修コストの問題です。
誰も住んでいない空き家を、不特定多数の人間がお金を払って宿泊する施設にするためには、住宅のクオリティを高める必要があります。

特に、家主が同居しない空き家を活用した民泊の場合、消防法令上は一般の住宅ではなく「宿泊施設」としての扱いを受けます。
そのため、一般住宅には設置義務のない消防設備の導入が必須となります。
自動火災報知設備や非常用照明器具、誘導灯などの設置工事が必要となり、これだけでもまとまった費用が発生します。

さらに、古い空き家の場合はキッチンや浴室、トイレといった水回りのリフォームが必要不可欠です。
魅力的な内装にするためのインテリアデザイン費用も含めると、開業前に数百万円規模の多額の自己資金を持ち出す必要があることを理解しておかなければなりません。

詳しい費用の内訳については【空き家民泊にかかる費用と収益の目安】で解説します。

集客できなければ収益化が難しい

民泊を開業したからといって、待っているだけで宿泊客が次々と訪れるわけではありません。
Airbnbなどの宿泊予約サイトに登録しても、周辺には数多くのライバル物件が存在しており、マーケティング集客のノウハウがなければ自社の物件を選んでもらうことは困難です。

空き家が郊外の住宅街や、アクセスの悪いエリアにある場合、宿泊需要そのものが極めて低いため、どれだけお金をかけてリフォームしても稼働率が上がらずに赤字になるリスクがあります。
集客のスキルが不足している状態で参入すると、初期投資を回収するどころか、毎月の電気代や水道代の基本料金、インターネットの通信費といった固定費を払い続けるだけの状態になってしまいます。

近隣トラブルが発生する可能性がある

民泊運営において、行政への通報や警察の介入をまねく最大の原因が近隣住民とのトラブルです。
民泊の利用客は観光目的の外国人が多く、日本の生活文化やルールに慣れていないため、悪気はなくてもトラブルを発生させがちです。

具体的には、以下のような深刻なクレームが発生するケースが見られます。

・深夜の騒音
・ゴミ出しマナー違反
・見知らぬ外国人の出入りに対する恐怖

さらに、現代における民泊規制は非常に厳格化しています。
近隣住民からの苦情が多発すると、自治体や警察から指導を受けるだけでなく、地域独自の条例によって営業日数をさらに削られるといった制裁を受ける可能性もあります。
近隣住民と揉めて地域社会から不信の目で見られながら営業を続けることは、所有者にとって精神的に非常に大きな負担となります。

法律や条例への対応が必要

民泊は、「住宅宿泊事業法」や「旅館業法」などの法律を完全に遵守して運営しなければなりません。
無許可・無届けの営業は最大で100万円以下の罰金や懲役刑が科される恐れがあります。
また、これらをクリアするための行政手続きは一般の人にとって非常に複雑であり、建物の登記事項証明書や間取り図、図面の作成など、大量の書類が必要となります。

さらに、自治体ごとに設定されている独自の「上乗せ条例」という厳しい規制も存在します。
住居専用地域における平日の営業を全面禁止している地域などもあり、事前の調査を怠ると、せっかくリフォームを終えた後に営業許可が十分に下りないという事態に直面します。

運営管理の手間がかかる

民泊の日常的な運営には膨大な労力が発生します。
宿泊者からの問い合わせへの返信、予約管理、鍵の受け渡し、宿泊客がチェックアウトした後の清掃やベッドメイキング、消耗品の補充など、対応すべき業務は多岐にわたります。

ご自身が遠方に住んでいる場合や、本業を持っていて自分で動けない場合は、これらの管理をすべて外部の専門業者に全面的に委託することになりますが、その場合は業務委託手数料が発生します。

民泊運営の手数料相場は、一般的に宿泊売上の20~30%程度に設定されていることが多く、これに加えて毎回の清掃費用が実費で差し引かれます。
結果として、売上があっても手数料や光熱費を引くと手元に残る利益は非常に薄くなり、リスクの割には大して儲からないという構造になりがちです。

空き家を民泊にするための条件と法律

民泊に関する法律 比較

空き家を活用して合法的に民泊を運営するため、国が定めた法律と、各地域を管轄する自治体のルールを理解し、必要な許可を得る必要があります。
日本国内で宿泊料金を受け取って人を泊めるためには、主に3つの異なる制度があります。

それぞれの制度によって、営業できる日数や満たすべき設備のハードルが大きく異なりますので、まずは特徴を理解しておきましょう。

民泊新法(住宅宿泊事業法)

空き家を利用して最も始めやすいのが、2018年6月に施行された住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく運営方法です。
この法律は、外国人観光客の増加にともなう宿泊施設の不足問題に対応するために新設された制度です。
従来の旅館業法に比べて設備や申請の難易度が比較的低く設定されているのが特徴です。

しかし、民泊新法を適用する場合、「年間営業日数が最大180日以内」という重い制約が定められています。
1年の半分しか稼働させることができないため、どれだけ宿泊需要が高いエリアであってもビジネスとしての売上が最初から決まってしまうデメリットが存在します。
また、所有者が同居しない家主不在型の場合は、登録された管理業者への業務委託が法律によって義務付けられています。

旅館業法

年間180日の制限を受けることなく、365日フル稼働でビジネスとして本格的に民泊を運営したい場合は、旅館業法に基づく「簡易宿所営業」の許可を取得する方法があります。
この方法であれば、年間通じていつでも宿泊客を受け入れることができるため、収益性を最大限に高めることが可能です。

ただし、旅館業法の許可を取得するハードルは極めて高いものとなります。
都市計画法における用途地域による厳しい制限を受けるため、第一種低層住居専用地域などの「住居専用地域(※)」に建っている空き家では、そもそも営業許可を取ることが法律上不可能です。
さらに、建築基準法上の用途変更手続きや、非常に厳しい消防設備・衛生基準を満たすための大規模なリフォームを求められるため、多額の資金と専門知識が必要となります。

※「住居専用地域」とは
都市計画法に基づき、良好な住環境を保護するために指定された地域です。
主に住宅の建築を優先し、店舗や工場の建築が厳しく制限されているエリアを指します。

特区民泊

特定の地域限定で、旅館業法の特例制度を利用して運営されるのが、国家戦略特別区域法(※)に基づく「特区民泊」です。
東京都大田区や大阪市、北九州市など、政府が指定した経済特区の一部自治体において実施されています。
特区民泊は、民泊新法のような年間180日の制限がないことが多く、住居専用地域であっても365日営業が可能です。

ただし、特区民泊には「最低宿泊日数は2泊3日以上」といった独自の利用制限が設けられているほか、近年において各都市部では急速な規制強化の動きが進んでいます。
例えば、大阪市では周辺住民からの苦情増加を理由に、2026年5月29日をもって特区民泊の新規認定申請の受付を完全に終了しました。
また、東京都大田区でも2026年春から認定基準が大幅に厳格化されており、新規の参入や手続きの難易度はかつてないほど高くなっているのが現状です。

参考:「大阪市国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業(特区民泊)」-大阪市
参考:「大田区の民泊制度について」-大田区

※「国家戦略特別区域法」とは
国が指定した特定の地域において、経済の活性化や国際競争力を強化するために、本来適用されるべき規制を緩和・特例化するための法律です。
この制度を活用することで、通常の法律では制限されている事業(民泊など)を、特定のエリア内に限り、緩和された基準で実施することが可能になります。
参考:「国家戦略特区の活用事例〜岩盤規制改革による社会課題解決〜」-内閣府

【重要】自治体ごとの条例にも注意が必要

国の法律をクリアしている場合であっても、空き家がある所在地の地方自治体が独自に定めている「上乗せ条例」を必ず確認しなければなりません。
自治体によっては、騒音や近隣トラブルを防止する目的で、独自の営業制限を課しているケースが非常に多く存在します。

具体的には、以下のような条例の制限が見られます。

・営業期間の制限
住宅街のエリアにおいて、平日の営業を一切禁止し、土曜・日曜の宿泊しか認めないとする条例です。

・事前手続きの厳格化
開業前に、周辺住民への戸別訪問や、説明会の開催を2回以上義務付けるといった所有者の手間や負担がかかるルールです。

これらの条例に違反すると営業を開始することができませんので、まずは必ず管轄の保健所や市区町村役場の窓口へ事前に直接相談に行く必要があります。

空き家を民泊にする流れ

空き家を民泊にする流れ

空き家を民泊としてオープンさせるためには、物件の調査から各種法令の確認、行政への正式な手続き、そして実務面の準備にいたるまで、数多くのステップを順序立てて進めていく必要があります。

ここでは、住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づいて、空き家を開業するまでの具体的な流れを解説します。

物件調査を行う

最初に、所有している空き家が法的に民泊として使える物件かどうかを調査します。
建物の登記事項証明書(登記簿)を取得し、名義人や権利関係に問題がないかを確認します。

また、物件があるエリアの用途地域を調べ、自治体の条例による独自の営業制限がないかを管轄の保健所役所で確認します。
この段階で、物件の図面を用意し、建築基準法や消防法の基本的な基準に適合しているかを専門の窓口で相談することが、後のトラブルを防ぐための鉄則です。

必要なリフォームを検討する

物件の法的な可否が確認できたら、宿泊施設としての機能を整えるためのリフォーム工事を計画します。
民泊に必須となる4大設備(台所、浴室、トイレ、洗面設備)が清潔に使える状態であるかを確認し、古い場合は水回りの改修を行います。

特に重要なのが消防設備の整備です。
家主不在型の民泊を申請する際は、「消防法令適合通知書」の取得が必要です。
まずは自動火災報知設備や非常用照明、誘導灯などの工事見積もりを取りましょう。
あわせて消防署の事前指導を受け、適切な改修工事を実施します。

許可・届出を行う

工事と設備の準備が整ったら、必要書類一式を揃えて行政への届出申請を行います。
個人の場合は、市区町村長が発行する身分証明書、欠格事由に該当しない旨の誓約書、建物の図面、権利関係を証明する書類など、大量の添付書類を準備する必要があります。

さらに、家主不在型の場合は、住宅宿泊管理業者と事前に交わした管理受託契約書の写しも必須です。
これらの書類を「民泊制度運営システム」などを通じて都道府県知事宛てに提出し、保健所による現地への立ち入り検査をクリアすることで、無事に届出完了証が交付されます。

集客準備を進める

行政からの届出完了証が交付され、正式な民泊番号を取得できたら、いよいよ実際の集客に向けた実務準備を始めます。
宿泊客が快適に過ごせるよう、ベッドや寝具、冷蔵庫、電子レンジ、Wi-Fi環境などの家具・家電・備品を揃えます。

外国人観光客が多いため、各種設備の使用方法やゴミ出しのルール、緊急時の避難経路などを明記した多言語(英語・中国語・韓国語など)の案内書を作成し、室内に掲示します。
その後、民泊仲介サイト(AirbnbやBooking.comなど)に物件情報や、プロのカメラマンが撮影した写真を登録し、宿泊予約の受付を開始します。

運営開始後も管理業務が必要

宿泊客の受け入れが始まった後も、継続的な管理業務が日々発生し続けます。
日常的なゲスト対応や清掃業務だけでなく、法律に基づいた事務手続きを適切に行う必要があります。

具体的には、以下のような管理業務が義務付けられています。
・宿泊者名簿を正確に作成して備え付けること
・定期的に宿泊実績(日数や人数)を取りまとめて行政へ報告すること

遠方に住んでいる場合や、本業があってご自身でこれらの対応ができない場合は、すべての管理を外部の専門業者に全面的に委託することになります。
その場合は毎月の手数料が発生するため、事前の収支計画が重要になります。

空き家民泊にかかる費用と収益の目安

空き家民泊にかかる費用と収益の目安のイメージ

民泊を一種のビジネスとして捉えた場合、最も重要になるのが「お金の計算」です。
初期投資やランニングコスト、年間180日以内の営業制限による売上予測を厳密に把握しなければ、資金繰りに行き詰まるリスクが高まります。

ここでは、空き家を民泊にする際にかかる具体的な費用項目と、現実的な収益の考え方について解説します。

開業時に必要な費用

空き家を民泊としてオープンさせるためにかかる初期費用は、建物の状態によって数十万~数百万円と大きな幅があります。

一般的に必要となる代表的な開業費用の内訳は以下のとおりです。

費用項目 概要 費用目安
消防設備改修工事費 自動火災報知設備や非常用照明の設置にかかる費用 約40万~60万円
(構造や部屋数によって変動。小規模な戸建てを想定)
リフォーム費用 古いキッチンやトイレ、お風呂の改修、外壁の塗装などにかかる費用 約50万~300万円以上
(構造やリフォームの内容によって変動)
家具・家電・備品購入費 ベッド、寝具、カーテン、エアコン、家電類一式を揃えるための費用 約30万~50万円
行政手続きにかかる費用 行政書士や専門家へ書類作成・申請を丸投げする際にかかる費用 約5万~15万円

ランニングコスト

民泊を維持・運営していくために毎月発生するランニングコストも、一般的な賃貸住宅に比べて非常に重いものとなります。

営業開始後に毎月支払う必要がある主な経費は以下のとおりです。

費用項目 概要 費用目安
管理代行手数料 専門業者に支払う委託費用
(家主不在型の場合に必要)
宿泊売上の15%~30%程度
清掃費用 宿泊客の入れ替わりごとに発生する費用 約5,000~1万円(1回あたり)
光熱費・通信費 ゲストが使用する電気・ガス・水道代、Wi-Fiの月額費用 約1万~2万円(月額)
民泊仲介サイトへの掲載手数料 民泊仲介サイトへ掲載する際にかかる費用 宿泊売上の10%程度
消耗品補充費用

トイレットペーパーやシャンプーなどを補充するために必要な費用

約3,000~5,000円(月額)

想定収益の考え方

民泊新法を適用する場合、年間の営業日数は最大でも180日に制限されています。
1泊15,000円で年間180日フル稼働させたとしても、売上の上限は年間270万円(月平均22.5万円)です。

そこから代行手数料や光熱費、リフォーム費の償却分を差し引くと、純利益は月額数万円程度しか残りません。
このように、普通のアパート経営と収益水準が変わらないケースは珍しくありません。

また、「小規模事業者持続化補助金(※)」などの国の補助金・助成金は非常に魅力的ですが、原則として「全額先出しの完全後払い制度」です。
採択されたとしてもリフォーム費用は全額自己負担となるほか、不採択のリスクも存在します。
資金調達やキャッシュフローの面から、慎重な計画が必要です。

※「小規模事業者持続化補助金」とは
小規模事業者が経営計画に基づいて行う販路開拓や業務効率化などの取り組みを支援する国の制度です。
民泊運営においては、集客のためのWebサイト作成や広告宣伝、事業に必要な設備投資などの経費が補助対象となります。
参考:「小規模事業者持続化補助金について」-中小企業庁

あなたの空き家は民泊向き?向いている物件・向いていない物件

あなたの空き家は民泊向き?向いている物件・向いていない物件のイメージ

所有する空き家で民泊を始めるべきか判断するには、物件の可能性とリスクを客観的に見極めることが大切です。
世間の「民泊ブーム」という表面的なイメージだけで参入すると、市場の需要と合わず、失敗する可能性が高まります。

ここでは、民泊で収益を上げやすい「向いている空き家」と、大損するリスクが高い「向いていない空き家」の特徴を解説します。

民泊に向いている空き家

民泊として成功し、安定した継続収入を得られる可能性が高い空き家には、宿泊客を引きつけるための明確な強みが備わっています。

具体的には、以下のような要素を多く満たしている物件です。

・有名な観光地へのアクセスが良い
インバウンド客の目的地への移動がスムーズなエリアです。

・最寄り駅から徒歩圏内
電車やバスを利用する外国人観光客が、大きな荷物を持って自力で迷わずに到着できる駅近(徒歩10分以内)の立地です。

・敷地内に駐車場がある
レンタカーやマイカーを利用する国内の旅行者やファミリー層の需要を取り込める設備です。

・広い一戸建て(戸建て住宅)
アパートの一室とは異なり、周囲への騒音を比較的気にせず、大人数グループや家族連れが1棟貸しでユニークな滞在を楽しめる空間です。

これらの要素が揃っている物件であれば、高い稼働率と高単価を維持しやすく、民泊として運営する価値が非常に高いといえます。

民泊に向いていない空き家

一方で、どれだけ思い入れのある実家であっても、以下の特徴に該当する空き家は民泊ビジネスとしての難易度が極めて高く、参入を避けるべき「向いていない物件」となります。

具体的には、以下のような問題を抱えている空き家です。

・地方の需要が少ないエリア
周辺に有名な観光資源やビジネス需要が一切なく、公共交通機関も走っていないような、旅行者が訪れる理由がない立地です。

・老朽化が著しく進んでいる
雨漏りや柱の腐食、電気・配管トラブルなどがあり、快適な宿泊環境を整えるために大規模な修繕工事が必要な建物です。

・開業前に数百万円以上の水回り・インフラ工事費用がかかる
初期投資額が大きすぎて、年間180日規制のなかでは何年かかっても投資回収(ROI)が計算できない物件です。

・周辺住民との距離が非常に近い
閑静な住宅街の密集地や、高齢者の一人暮らしが多い田舎の集落など、見知らぬ外国人の出入りに対して地域コミュニティの警戒心が強く、騒音やゴミ問題で深刻な近隣トラブルに一瞬で発展しやすい環境です。

これらの特徴に該当する場合、無理に大金を投じて民泊を始めても、精神的・経済的に追い詰められる結果になる可能性が非常に高いため、慎重な判断が必要です。

民泊と売却はどちらがおすすめ?ケース別に比較

民泊と売却はどちらがおすすめ?ケース別に比較のイメージ

空き家の取り扱いに悩んだ際、民泊という「事業運営」に乗り出すべきか、それとも「売却」によって不動産自体を完全に手放すべきか、最終的な方向性を決める必要があります。
所有者の現在の状況や目的に応じて、どちらの選択肢が最適であるかは明確に分かれます。

ここでは、それぞれの選択肢がおすすめとなる具体的なケースを整理し、各手段のメリット・デメリットを比較します。

民泊がおすすめなケース

以下のような条件や目的がある場合は、空き家を売却せず、あえて民泊として活用すべきといえるでしょう。

・将来にわたって安定した継続収入(不労所得や事業収入)を得たいと考えているケース

・自身が近隣に住んでおり、清掃やゲスト対応などの管理業務の多くを自力で「自主管理」でき、外部への手数料を限界まで抑えられるケース

・趣味の知識を活かして、自分の手で資産価値を向上させることに強いやりがいを感じられるケース

日々の手間をご自身の労力でカバーでき、長期的な事業運営を行う覚悟がある場合は、民泊を選択することで高いリターンを得られる可能性があります。

売却がおすすめなケース

一方で、以下のような状況に1つでも該当する場合は、民泊を始めるよりも、不動産をそのまま売却してしまうほうが、トータルの結果として圧倒的に得をします。

・毎年の固定資産税の支払いや、建物の管理・維持にともなう経済的・精神的な負担を一瞬で完全に無くしたいケース

・将来的にご自身や親族がその空き家を使う予定が一切ないケース

・自身が遠方に住んでいるため現地の管理が全くできず、外部の代行会社に手数料を支払って全面的に委託せざるを得ないケース

・見知らぬ外国人が出入りすることによる近隣住民からのクレームなどを完全に回避し、安全にまとまった老後資金を無傷で得たいケース

手間や借金のリスクを背負わず、何の後腐れもなく確実に空き家問題を解決したい場合は、売却が最も賢い選択肢となります。

【比較表】民泊・売却の特徴

空き家の活用・処分方法について、その特徴や違いを一目で理解できるよう、以下の比較表にまとめました。

所有している空き家の現状と照らし合わせながら、どの方法が最もご自身の目的に合致しているかを確認するための参考にしてください。

比較項目 民泊 売却
得られる成果 短期・高単価の宿泊収入 一括でのまとまった現金
初期費用 数十万~数百万円かかる 不要
(現状渡し可能)
収入の安定性 不安定
(季節や集客力で大きく変動することもある)
安定
(売却時に受領)
運営の手間・労力 極めて高い
(清掃、ゲスト対応、行政報告)
ゼロ
(手放した後は一切なし)
法的な制限・リスク 年間180日規制、自治体条例、近隣クレームなどあり なし
維持費 支払いが必要
(売上から相殺)
完全にゼロになる

空き家を売却する場合は事前に査定がおすすめ

イエイの主な特徴

空き家の今後の取り扱いについて、「民泊として活用し、毎月の収入を狙うべきか」「売却してまとまった現金を手に入れるべきか」の最終判断を下すためには、事前に「不動産の査定」を行うことが大切です。

民泊としての活用を始めるためには、リフォーム費用や消防設備の設置費用がかかるだけでなく、開業後も維持管理の手間やコストが発生し続けます。
一方で、現在の状態で売却した場合にどれほどの現金が手元に残るのかがわからなければ、どちらの方法を選ぶことがご自身にとって経済的に有利であるかを正しく比較することができません。
安易に改修工事を始める前に、まずは客観的な基準となる「売却価格」を把握することが後悔のない選択をするための出発点となります。

不動産の価値を調べる際は、インターネットを通じた不動産一括査定サービスの利用がおすすめです。
不動産会社によって得意とする地域や査定の基準が異なるため、1社だけの査定価格で判断するのではなく、複数の会社が提示する価格を比較することで、より正確な市場価値を知ることができます。

当サイトが提供する「イエイ」では、物件の基本情報や住所を入力するだけで、複数の会社から無料で査定価格を取り寄せることが可能です。
民泊への投資を進める前に、まずは所有している空き家が現在どの程度の価格で売却できるのかを確認し、それぞれの選択肢を冷静に比較するための判断材料としてお役立てください。

不動産一括査定・売却なら【イエイ】

まとめ|売却も含めて民泊として活用するかどうか比較検討しよう

売却も含めて民泊として活用するかどうか比較検討しようのイメージ

相続した実家や長年放置されている空き家は、毎年の固定資産税や維持管理のコストがかかるため、インバウンド需要を活かした「民泊」としての活用が注目されています。
制度を正しく利用すれば、誰も住んでいない空き家を新たな収入源にすることは十分に可能です。

しかし、これまで解説してきたとおり、民泊を始めるためには、厳しい法律や条例への対応、数十万円以上の初期費用、年間180日の営業制限など、多くの課題が存在します。
駅からアクセスが良く、観光需要のある物件であれば収益化の可能性は高まりますが、大規模な修繕が必要な空き家や立地の悪い物件では、初期費用の回収が難しくなるのが現実です。

そのため、大金をかけてリフォームを行う前に、まずは現在の状態でいくらで売却できるのかを確認しましょう。
不動産一括査定サービスを利用すれば、複数の不動産会社から無料で査定価格を取り寄せることができます。

そのまま売却して維持管理の負担から解放される選択肢と、費用をかけて民泊を運営する選択肢の収益性を比較し、ご自身にとって最も納得のいく活用方法を検討してみてください。