この記事で分かること 

・不動産売却した場合、確定申告は必要か?

・家賃収入など不動産所得がある場合の申告方法

・申告に必要な書類と手続きの流れ

「不動産を売却をしたけど確定申告は必要?」という疑問を持つ方は多いのではないでしょうか?

実は、不動産を売ったときに確定申告が必要かどうかは、売却によって利益が出たかなど、個々の状況によって異なります。

本記事では、不動産売却にともなう確定申告が必要なケースとそうでないケースの違いを解説しています。

「自分の場合、確定申告は必要なのか?」と迷っている方は、この記事を通して正しく理解し、必要な手続きを進めていきましょう。

この記事の目次

不動産売却後の確定申告の要否

確定申告が必要なケースと不要なケースのイメージ

不動産を売却した場合、多くのケースで確定申告が求められます。

ただし、売却の内容や利益の有無など、一定の条件を満たせば申告が不要になるケースも存在します。

ここでは、不動産売却における確定申告の要否を分かる基準について詳しく解説します。

不動産売却時に確定申告が必要になるケース

不動産を売却した際、下記の場合は確定申告が必要です。

  • 売却益(譲渡所得)が発生した場合
  • 取得費が不明な場合
  • 税金の特例を利用する場合

【売却益(譲渡所得)が発生した場合】

譲渡所得とは、不動産を売却して得た利益のことす。
売却時は、不動産会社に譲渡所得が出るか確認しておくと安心です。

【取得費が不明な場合】
相続などで取得費がわからない場合は、「概算取得費」で計算して申告します。

取得費を調べる方法については下記でもご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

【税金の特例を利用する場合】

次のような税の特例を利用する際も確定申告が必要です。

  • 居住用財産の3,000万円特別控除
  • 10年超所有軽減税率
  • 相続空き家の3,000万円特別控除

特例を使う場合は、利益がなくても申告を忘れないようにしましょう。

不動産売却時で確定申告が不要なケース

不動産を売却し、確定申告が不要なケースは下記の場合です。

  • 譲渡所得(利益)がない
  • 特例などを利用しない

上記の場合、所得税や住民税の課税対象とならないため確定申告は不要です。

まずは譲渡所得の有無を計算し、申告の必要性を確認しましょう。

ただし、購入時より安く売っても、減価償却の影響で譲渡所得が生じることがあります。

そのまま申告しないと「延滞税」や「無申告加算税」が課される恐れがあるため注意が必要です。

また、売却で損失が出た場合でも、一定の条件を満たせば税負担を軽減できる制度を利用できます。

この制度を使う際は確定申告が必要なので、該当する場合は忘れずに手続きしましょう。

不動産売却時に利用できる5つの特例や控除

不動産売却に利用できる5つの特例や控除のイメージ

不動産を売却する際に一定条件を満たすことで特例を利用できます。

ここでは、不動産売却時によく利用される5つの特例・控除についてご紹介します。

  • 居住用財産の3,000万円特別控除
  • 10年超所有軽減税率の特例
  • 相続空き家の3,000万円特別控除
  • 買い替えの特例
  • 取得費加算の特例

どんな特例が利用できるのかしっかり確認して、節税対策をしましょう。

居住用財産の3,000万円特別控除

マイホーム(居住用財産)を売却した際に、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度です。

この制度は、一定の条件を満たせば、売却時に譲渡所得が発生しても3,000万円まで非課税になるという仕組みです。

この特別控除を利用する場合、確定申告時に上記で紹介した書類に特例の利用を記入するだけで申請が可能です。

【注意点】

売買契約の前日の住所と自宅の所在地が異なる場合には、戸籍の附票の提出が必須となる

10年超所有軽減税率の特例

10年以上所有していた居住用財産を売却する際、譲渡所得に軽減税率が適用される制度です。

通常は税率20.315%ですが、この特例を使うと6,000万円以下の部分が14.21%に軽減され、節税が可能になります。

さらに、「居住用財産の3,000万円特別控除」とも併用できるため、より大きな節税効果が見込めます。

確定申告の際に特例利用を記入すれば申請を受けることができます。

また、売買契約前日の住所と自宅の所在地が異なる場合は、戸籍の附票の提出が必要です。

詳細や条件は、国税庁のホームページ「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例」をご確認ください。

相続空き家の3,000万円特別控除

相続や遺贈で取得した被相続人の自宅や敷地を売却した場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度です。

この特例は一定の条件を満たすことで適用されます。

利用する際は確定申告書に加えて、次の書類の提出が必要です。

  • 譲渡所得の内訳書
  • 登記事項証明書(相続・築年数・区分所有でないことの証明)
  • 被相続人居住用家屋等確認書(市区町村発行)
  • 耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書の写し
  • 売買契約書の写し

これらの書類が不足すると申請できないため、提出漏れに注意しましょう。

詳細は、国税庁サイトの「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」をご確認ください。

買い替え特例

不動産を売却した後に新しいマイホームを購入する場合、一定条件を満たすと譲渡所得税の納付を新居売却まで繰り延べられる制度です。

利用時には確定申告書と下記の書類が必要になります。

  • 譲渡所得の内訳書
  • 売却物件の売買契約書(購入時・売却時)
  • 売却物件の所有期間証明(登記事項証明書など)
  • 買い替え物件の登記事項証明書・売買契約書
  • 建築済証・確認済証、耐震基準適合証明書(中古の場合)
  • 住民票や戸籍の附票(住所が異なる場合)

状況によっては、追加書類が必要になることもあるため事前に確認しておきましょう。

【注意点】

  • 非課税になるわけではない
  • 「居住用財産の3,000万円特別控除」とは併用できない。

詳細は、国税庁サイト内の「No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例」のページをご確認ください。

取得費加算の特例

相続や遺贈で取得した土地・建物を、一定期間内に売却する場合、相続税の一部を取得費に加算できる制度です。

取得費に相続税を加えることで、譲渡所得時税の負担を軽減できます。

利用する際は確定申告時に「相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書」が必要です。

この書類は税務署や国税庁のサイトから入手可能なので、事前に準備しておきましょう。

詳しい内容や条件は、国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」をご確認ください。

不動産売却をした際の確定申告のやり方

不動産売却をした際の確定申告のやり方のイメージ

不動産を売却した際には、確定申告の手続きを行う必要があります。

ここでは、申告までの流れや手順をわかりやすく解説します。

事前に一連の流れを把握して、スムーズに申告を進めましょう。

不動産売却の確定申告の流れのイメージ画像

STEP1.確定申告に必要な書類を集める

書類名称

書類概要

入手先

確定申告書第一表・第二表

収入金額や所得金額を申告するための書類

税務署もしくは

国税庁ホームページ

確定申告書第三表

(分離課税用)

分離課税の対象である所得を申告する際に必要な書類

税務署もしくは

国税庁ホームページ

譲渡所得の内訳書

売却した不動産の所在地、費用、売却金額などを記入する書類

税務署もしくは

国税庁ホームページ

売却した不動産を購入したときの売買契約書の写し

購入価格を証明できる書類

個人所有

手元になかったら不動産会社に問い合わせる

売却したときの売買契約書の写し

収入を証明できる書類

個人所有

手元になかったら不動産会社に問い合わせる

購入諸費用と売却諸費用の領収書の写し

取得費や譲渡費用を証明できる書類

例:不動産会社に支払った仲介手数料、収入印紙代など

不動産会社

建物・土地の登記事項証明書

建物や土地の所有者、担保、大きさなどが記載された書類

法務局もしくは

オンライン請求

源泉徴収票

年内の収入や納付した所得税額が記載された書類

勤務先

戸籍の附票

住民票に記載されていた住所と異なる場合に必要

売却した不動産がある市区町村

本人確認書類

免許証、保険証、住民票などのコピー

個人所有または市区町村役場

※e-TAXでの申告時には不要

STEP2.譲渡所得税を計算する

譲渡所得の内訳書を作成する際は、用意した書類の情報をただ転記するだけでなく、自分で計算が必要な項目もあります。

この段階では、譲渡所得の金額を算出する作業が中心となるため、あらかじめ計算方法を理解しておくことが大切です。

譲渡所得税の具体的な計算手順については、次の章で詳しく解説しています。

ぜひ参考にして、正確に計算を進めましょう。

STEP3.譲渡所得の内訳書・確定申告書を記入する

次に「譲渡所得の内訳書」と「確定申告書」に記入をしていきます。

まずは、譲渡所得の内訳書の記入手順を見ていきましょう。

譲渡所得の内訳書には1面~5面あり、それぞれの記入内容を説明します。

【譲渡所得の内訳書 1面】

譲渡所得の内訳書 1面のイメージ

出典:「譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】」国税庁

1面には、申請者の氏名・住所・電話番号・職業などを記入します。

【譲渡所得の内訳書 2面】

譲渡所得の内訳書 2面のイメージ

出典:「譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】」国税庁

2面では、売買契約書の内容をもとに以下の情報を記入します。

  • 売却した不動産の所在地
  • 土地や建物の種類・面積
  • 土地や建物の利用状況
  • 売買契約日や引き渡し日
  • 持分割合 ※共有の場合
  • 買主の氏名・住所・職業
  • 譲渡価格
  • 代金の受領状況
  • 売却した理由

【譲渡所得の内訳書 3面】

譲渡所得の内訳書 3面のイメージ

出典:「譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】」国税庁

3面には、以下の内容を記入します。

  • 譲渡された土地、建物の購入代金
  • 不動産の購入先、支払先、購入・建築年月日・購入・建築代金
  • 減価償却費
  • 取得費
  • 譲渡費用
  • 譲渡所得金額の計算

譲渡所得税額は、こちらの書類に記入した計算結果によって決まるため、不備がないように気をつけましょう。

【譲渡所得の内訳書 4面】

譲渡所得の内訳書 4面のイメージ

出典:「譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】」国税庁

4面は「買い替え特例」の適用を受ける場合に使用します。

買い替えたマイホームの所在地や種類、面積などを記入していきます。

また、買い替え特例を利用した場合は、譲渡所得金額の計算もこちらの書類に記入します。

【譲渡所得の内訳書 5面】

譲渡所得の内訳書 5面のイメージ

出典:「譲渡所得の内訳書(5面)」国税庁

5面は「相続空き家の3,000万円特別控除」の適用を受ける場合に使用します。

被相続人の居住用家屋や敷地の情報、被相続人の氏名や死亡年月日などを記入していきます。

【確定申告書への記入】

譲渡所得の内訳書への記入が終わったら、次は確定申告書の記入をおこないましょう。

内訳書の3面や4面に記入した譲渡所得金額は、確定申告書第三表(分離課税用)の以下項目にも記入します。

  • A 収入金額(①):収入金額欄シ・セ・タに記入
  • E 譲渡所得金額(C-D):所得金額66~70に記入

これら以外の項目は、源泉徴収票や生命保険料控除証明書などの書類を確認しながら、確定申告書の指示に従って記入を進めてください。

STEP4.税務署に確定申告する

必要書類の準備が整い、譲渡所得の内訳書と確定申告書の記入が完了したら、税務署に提出しましょう。

不動産を売却した場合、確定申告の提出期間は売却した年の翌年にあたる2月16日~3月15日までと決まっています。

この期間内に申告を忘れずにおこないましょう。

また、確定申告は以下3つの方法で申告が可能です。

  • 税務署の窓口に直接書類を持参する
  • 書類を郵送する
  • e-Taxで電子申請をおこなう

確定申告に慣れていない方は、税務署の窓口に書類を持っていくと安心です。

窓口の担当者によっては、必要書類が揃っているか確認してくれる場合もあります。

ただし、詳しい記載内容まではチェックしてもらえないので、記載ミスには十分に注意しましょう。

STEP5.納税・還付を受ける

確定申告で納税が必要な場合は、2月16日〜3月15日の間に税務署や金融機関で支払いを行います。

振替納税を利用すれば、手続き済みの口座から自動引き落としも可能です。

給与所得者は勤務先で住民税が天引きされますが、個人事業主や自営業者は5月以降に届く納付書で納税します。

還付金がある場合は、4月上旬~5月上旬に申告書に記載した口座へ振り込まれます。

振込前には、還付金のお知らせはがきが届くので、事前に確認しておくと安心です。

不動産売却でおさえておきたい譲渡所得税の計算方法

譲渡所得税の計算方法のイメージ画像

上記でもご紹介しましたが、不動産を売却した後の確定申告では、譲渡所得税が重要になってきます。

ここでは、譲渡所得税の計算方法を解説していきます。
譲渡所得税の計算手順のイメージ画像

①取得費や譲渡費用を確認する

取得費:不動産を購入した際の購入代金と購入諸費用を足した金額
譲渡費用:不動産を売却した際に支払った費用のこと

上記の費用を不動産売買時に支払っているのであれば、譲渡所得から費用を差し引くことができます。

売却した土地が相続したもので取得費が不明な場合などは、売却金額の5%を取得費として計算することができます。

この一定措置のことを「概算取得費」といいます。

概算取得費の詳しい内容については、国税庁ホームページ内の「No.3258 取得費が分からないとき」のページをご確認ください。

②譲渡所得を計算する

譲渡所得は、次の計算式で求めることができます。

譲渡所得 = 譲渡金額 -(取得費 + 譲渡費用)

この計算式を用いて、次の条件の土地を売却した際の譲渡所得を求めてみましょう。

  • 譲渡金額:5,000万円
  • 取得費:3,200万円
  • 譲渡費用:200万円

計算式を当てはめてみると

5,000万円 -(3,200万円 + 200万円)= 1,600万円(譲渡所得)

上記の計算例の場合、譲渡所得が発生しているので確定申告が必要となります。

また、上記の計算式は土地の譲渡所得を求めたものですが、建物がある場合は取得費から減価償却費も差し引かなければいけません。

減価償却費とは、固定資産を購入した際の費用を耐用年数に応じて計上する経費のことです。

③譲渡所得に税率を乗じて譲渡所得税を算出する

譲渡所得が計算できたら「譲渡所得税」を算出します。

譲渡所得税の計算式は、下記のとおりです。

譲渡所得税 = 譲渡所得 × 税率

譲渡所得税の税率は、次の表のとおりで売却した不動産の所有期間によって変わります。

短期譲渡所得

(所有期間:5年以下)

39.63%

【内訳】

所得税:30.63%

住民税:9%

長期譲渡所得

(所有期間:5年超)

20.315%

【内訳】

所得税:15.315%

住民税:5%

譲渡所得が発生すると住民税の納税も必要になるため、譲渡所得税の計算のときにあわせて税額を確認しておきましょう。

不動産所得がある場合確定申告は必要?

不動産所得がある場合確定申告は必要かのイメージ画像

不動産を売却せずに、賃貸として家賃収入を得ている人も多いでしょう。

ここでは、家賃収入がある場合に確定申告が必要となるケースや、その判断基準について詳しく解説します。

家賃収入がある場合確定申告は必要? 

家賃収入を得ている場合、確定申告を行うかどうかは、不動産所得の金額によって判断されます。

年間の不動産所得が20万円を超えると、原則として確定申告の手続きが必要になります。

【不動産所得とは】
家賃収入などから、管理費や修繕費などの必要経費を差し引いた後に残る金額を指します。
不動産所得に関するイメージ画像

【相続した家やマンションでも確定申告は必要?】

親から引き継いだ家やマンションを貸し出して家賃収入を得ている場合は、「不動産所得」として扱われます。

そのため、不動産所得の金額が年間20万円を超える場合には、確定申告の対象となります。

相続によって取得した物件であっても、税金の申告義務がなくなるわけではありません。

思わぬ申告漏れを防ぐためにも、しっかり確認しておきましょう。
 

知らないと損!不動産所得の「経費」基礎知識 

不動産所得の確定申告で特に重要なポイントのひとつが、経費の扱い方です。

経費として認められるためには、次の2つの条件を満たしている必要があります。

  • 収益を得るために必要な支出であること
  • その支出を裏付ける証拠(領収書など)があること

【家賃収入で計上できる経費リスト】

経費に該当する費用

詳細

修繕費

壁の塗り直し、水回りの修理、エアコンの交換など、建物の機能維持や原状回復にかかる費用。
(大規模なリフォームで資産価値を高めるものは「資本的支出」とみなされ、一括経費にはできない場合がある)

管理費・修繕積立金

マンションの管理組合に支払う費用も経費になる。

損害保険料

火災保険や地震保険など、賃貸している物件にかかる保険料も経費になる。

共用部分の電気代・水道代

入居者がいない期間の共用部分の費用など。

その他税金

固定資産税や都市計画税、不動産取得税(購入時や相続時に一度だけかかる税金)なども、不動産所得の経費として計上可能。

不動産会社への手数料

入居者募集や管理委託にかかる手数料

基本的な考え方として、「その支出が家賃収入を得るために必要かどうか」が判断の基準になります。

どの費用が経費として認められるか不安な場合は、自己判断せず税理士などの専門家に確認するのがおすすめです。

経費の中でも特に重要!「減価償却費」とは? 

不動産所得の経費で特に押さえておきたいのが、減価償却費です。

これは、建物の取得費(購入時や相続時の評価額など)をもとに計算して経費として計上できる費用のことを指します。

一方で、土地は時間の経過によって価値が減らないため、減価償却の対象には含まれません。

減価償却費は、実際に現金が出ていくわけではない「目に見えない経費」ですが、所得税の節税効果が大きいことから、不動産所得を申告する上で理解しておくことが非常に重要です。

不動産所得がある場合の確定申告の進め方 

不動産所得がある場合の確定申告の方法のイメージ画像 

不動産所得の申告には、大きく分けて2つの方法があります。

まずは、自分に合った方法を選ぶことが大切です。

ここでは、不動産所得の確定申告に必要な書類や、申告の手順について、初心者でもわかりやすく解説します。

不動産所得の確定申告は白色申告と青色申告がある 

不動産所得を申告する際には、「白色申告」と「青色申告」のどちらかを選んで手続きを行います。

【白色申告】
帳簿の作成が青色申告に比べて簡単ですが、青色申告で受けられる特別控除は適用されません。

【青色申告】

定められた帳簿を整え、その記録に基づいて申告・納税を行う方法です。

青色申告を利用することで、さまざまな税制上の優遇措置を受けることができます。

※青色申告を行うには、事前に所定の手続きを済ませ、一定の条件を満たす必要があります。 

【青色申告の条件】

不動産所得で青色申告を利用するには、下記の条件を満たす必要があります。
①事業的規模であること
 目安としては、アパート5棟やマンション10室以上の規模ですが、相続したマンションの一室であっても、継続的に賃貸経営が行われていれば青色申告が認められる場合があります。

②青色申告承認申請書の提出
 青色申告を希望する年の3月15日までに、税務署へ「所得税の青色申告承認申請書」を提出する必要があります。

③複式簿記による記帳
 青色申告特別控除65万円を受けるためには、日々の取引を複式簿記で記録しておくことが求められます。

※参照:国税庁ホームページ

不動産所得の確定申告で必要な書類 

必要書類

詳細

不動産所得の収支内訳書または青色申告決算書

・年間の収入と経費をまとめた書類。

・青色申告の場合は青色申告決算書を使用。

源泉徴収票

会社から発行される給与所得の源泉徴収票

各種控除に関する書類

生命保険料控除証明書、医療費控除の明細など、適用を受ける控除に関する書類。

経費の領収書・レシート

修繕費、管理費、保険料、交通費など、経費として計上するすべての領収書や支払い証明書

固定資産税の納税通知書

毎年送付される固定資産税の金額がわかる書類

借入金の返済予定表・利子支払証明書

住宅ローンなどを利用している場合

通帳のコピー

家賃収入や経費の支払いが確認できるもの

不動産所得の確定申告のやり方 

不動産所得の確定申告の流れのイメージ画像

STEP1.申告方法を決める(白色申告か・青色申告かを決めます)
STEP2.上記でご紹介した内容を参考に必要書類を準備
STEP3.確定申告書類を作成し提出する

【家賃収入の確定申告で提出する書類】

  • 確定申告書
  • 不動産所得用の青色申告決算書(青色申告の場合のみ)
  • 不動産所得用の収支内訳書(白色申告の場合のみ)

これらの書類は、国税庁のホームページや税務署の窓口で入手できます。

ケース別不動産売却後の確定申告について

ケース別の不動産売却後の確定申告の仕方のイメージ画像

上記では、不動産所得がある場合の確定申告の方法についてご紹介しましたが、このほかにも、海外の不動産を売却する方や年金を受給している方など、不動産を売却する状況は人それぞれです。

ここでは、いくつかのケース別に不動産売却後の確定申告の方法についてご紹介していきますよ。

年金受給者が不動産を売却した場合の確定申告 

年金を受け取っている方でも、不動産の売却によって譲渡所得が生じた場合は、確定申告を行わなければなりません。

不動産を売却して得た譲渡所得は、将来の年金受給額に直接影響することはありません。

ただし、所得の増加によって保険料は上がる可能性がある点には注意が必要です。

前年の所得額に応じて次の保険料が変動するため、不動産売却後に負担が増えるケースもあります。

  • 自営業者や年金生活者が加入する「国民健康保険」
  • 75歳以上の方が加入する「後期高齢者医療制度」


これらの保険料は、年金から自動的に差し引かれる仕組みのため、結果として「年金の支給額が減った」と感じる方もいるかもしれません。

専業主婦の方が不動産を売却した場合の確定申告 

収入のない専業主婦の方が不動産を売却し、譲渡所得が発生した場合でも確定申告は必要になります。

また、確定申告は所有者である本人が行う必要があるため、夫が代わりに行うことはできません。

海外不動産を売却した場合の確定申告 

海外に所有している不動産を売却した場合でも、日本に居住している方は日本国内で確定申告を行う必要があります。

ただし、海外での売却によって現地でも課税されるケースがあります。

そのような場合、日本と海外の双方で税金が課される「二重課税」の状態になってしまう恐れがあるのです。

外国で所得税にあたる税が課される際には、この二重課税を避けるために「外国税額控除」の手続きを行う必要があります。

外国税額控除を受けるには、定められた計算方法に基づいて控除額を算出し、必要な書類を確定申告書に添付することが求められます。

参照:国税庁(外国税額控除を受けられる方へ(居住者用))

自分で申告?税理士に依頼?状況別おすすめ方法 

確定申告を自分でするか税理士に依頼するかのイメージ画像

不動産を売却した際の確定申告は、「自分で行うか」「税理士に依頼するか」で迷う方が多いでしょう。

どちらにするか迷った際は、売却内容のシンプルさや、控除の有無・件数によって最適な方を選びましょう。

ここでは、状況別にどちらの方法が向いているのかを具体的に解説します。

自分でできるケース:単純な売却や控除1件のみ

売却した不動産が1件のみで、譲渡所得の計算や控除の内容が単純な場合は、自分で確定申告を行うことも可能です。

例えば、マイホームを売却して「3,000万円の特別控除」だけを利用するケースなどが該当します。

国税庁のホームページでは申告書作成コーナーがあり、ガイドに沿って入力すれば申告書を作成できます。

ただし、書類の不備や控除の漏れがあると税額が変わる可能性があるため、提出前に内容をしっかり確認しましょう。

税理士に頼むべきケース:複数物件や相続物件など

下記のようなケースでは、税理士への依頼がおすすめです。

  • 複数の不動産を売却した
  • 相続や贈与を経て取得した物件を売却した
  • 取得費が不明で計算が複雑
  • 長期・短期譲渡などの判定が難しい

これらは、計算の誤りや特例の適用ミスが起きやすく、結果的に税負担が増えるリスクがあります。

専門家である税理士に依頼することで、適切な控除の適用や節税対策まで含めたサポートを受けられます。

税理士費用の相場と依頼のタイミング

不動産売却の確定申告を税理士に依頼する場合、費用の相場は5万〜10万円程度が一般的です。

ただし、物件の数や内容が複雑な場合は、10万円を超えるケースもあります。

依頼のタイミングは、売却が完了した段階で早めに相談するのがベストです。

売却時の契約書や経費の領収書など、申告に必要な資料を整理しながら進めることで、スムーズに申告を終えられます。

不動産売却時の確定申告についてよくある質問

不動産売却時の確定申告でよくある質問のイメージ画像

不動産を売却した際の確定申告について、よく寄せられる質問とその回答をまとめました。

事前に疑問点を整理しておくことで、スムーズに申告手続きを進められます。

  • 確定申告をしないとバレる?
  • 確定申告をしないと何か罰則はある?
  • 確定申告の期日が過ぎた場合の対処法ってある?

確定申告をしないとバレる?

不動産売却で譲渡所得があるのに確定申告をしない場合、税務署に把握される可能性が高いです。

売却時の所有権移転登記の情報は法務局から税務署に共有されます。

そのため、税務署から「お尋ね」という確認の通知が届くことがあります。

お尋ねを受け取った場合は、必要事項を記入して返送する必要があります。

税務署は簡単に申告状況を把握できるため、忘れずに確定申告を行いましょう。

確定申告をしないと何か罰則はある?

不動産売却時に確定申告を行なわないと、罰則の対象となるため注意が必要です。

不動産売却による譲渡所得が発生した場合、所得税法に基づき、確定申告が義務付けられています。

申告を怠ってしまうと「延滞税」や「無申告加算税」などのペナルティが課されることがあります。

それぞれのペナルティについての詳細は下記のとおりです。

延滞税

期日までの税金が納付されない場合に課される。

【課税率】

・納期限翌日から2ヶ月を経過する日までの翌日:原則年7.3%

・納期限翌日から2ヶ月を経過した日以後:原則14.6%と「延滞税特例基準割合+7.3%」のいずれか低い方

無申告加算税

期日までに確定申告をしなかった場合に課される。

【課税率】

・納付すべき税額が50万円までの部分:15%

・納付すべき税額が50万円以上300万円までの部分:20%

・納付すべき税額が300万円以上の部分:30%

重加算税

仮装や事実の隠ぺい、または意図的に申告を怠った場合に課される。
【課税率】

・納入すべき税額を本来より少なく申告していた場合:35%
・申告書を提出していない場合:原則40%

譲渡所得税が高額な場合、これらの罰則によってさらに多額の納付が必要となるリスクがあるため、忘れずに確定申告を行うことが大切です。

確定申告の期日が過ぎてしまった際の対処法ってある?

期日を過ぎても、できるだけ早く期限後申告を行うことが大切です。

遅れると上記でもご紹介した「延滞税」や「無申告加算税」が課されるため、早めの対応でペナルティを抑えられます。

また、税務署の調査前に自主的に申告すれば、無申告加算税の税率を下げられる可能性もあります。

さらに、下記の条件を満たすと無申告加算税が免除される場合もあるので、よく確認しておきましょう。

  • 法定申告期限の1ヵ月以内に自主的に申告している
  • 納付額を期限前に納付済み
  • 過去5年間に無申告加算税や重加算税を受けたことがない
  • 過去5年間に期限内申告の意思が認められる場合に不適用を受けたことがない

期限後でも諦めず、早めに対応することで負担を最小限に抑えられます。

不動産売却後は確定申告を忘れずに!

不動産売却後の確定申告は忘れずに行う必要があるというイメージ

不動産を売却した場合、基本的には確定申告が必要です。

 特に、譲渡所得が発生した場合や、税金の特例を使いたいときは、必ず申告を行いましょう。

また、家やマンションを貸して家賃収入を得ている場合も、年間の不動産所得が20万円を超えると申告が必要になります。

 不動産収入は大切な副収入です。きちんと管理して、確定申告を正しく行うことで、余分な税金を抑え、手元に残るお金を増やすことができます。

確定申告では、必要な書類の準備や記入方法の理解が大切です。

準備が不十分だと、書類が揃わなかったり、記入に時間がかかって申告期限に間に合わないこともあります。

そんなトラブルを防ぐためにも、申告の前に書類や手順を確認しておきましょう。

必要であれば、税理士など専門家に相談するのもおすすめです。

 本記事を参考に、手順や書類をチェックして、スムーズに確定申告を終わらせてくださいね。