家を建てるとき、どんな家にするか誰もが理想を思い描いているでしょう。しかし、自分の所有する敷地であっても、どんな建物を建てていいというわけではありません。建築にはさまざまな制限があり、高さに関することもそのひとつです。そこで、ここでは建物のデザインや大きさに影響する高さ制限について詳しく説明します。

高さ制限とは?

なんの制限もなく建物を建築していいということになると、高さがバラバラの建物が混在する街並みになってしまいます。そうなると、街の雰囲気が損なわれるとともに、住居環境が悪くなることもあるでしょう。

また、競うように高い建物ばかりになってしまうことも考えられます。それが住宅地ならば、高い建物に隣接する家の日当たりや風通しは悪くなってしまうはずです。そこで、建物を建築する際には、前面道路や隣接地の日当たりや通風を確保する目的で高さ制限が設けられています。

高さ制限といっても、どの場所でも同じように制限されるというわけではありません。戸建住宅が建ち並び、静かに暮らすことができる住環境を確保したい地域と、商業施設が集まる地域では求める街の姿も違ってきます。

そのため、用途地域や都市計画などによって高さ制限は異なり、それぞれ上限が決められているのです。

また、高さ制限は1種類ではなく、大きく分けて

  • 絶対高さ制限
  • 道路斜線制限
  • 隣地斜線制限
  • 北側斜線制限

という4種類があります。

そのほかには、条例で日影規制が指定されることや、都市計画によって高度地区が設定されることもあります。

今回の記事では上記の4つの高さ制限について説明しましょう。

1.低層住居専用地域の絶対高さ制限

住宅地の風景

絶対高さ制限は、第1種低層住居専用地域と第2種低層住居専用地域だけに適用されてきた高さ制限のルールです。2018年4月からは住居系の用途地域として新たに田園住居地域が加わり、絶対高さ制限はこの田園住居地域にも適用されるようになりました。

第1種低層住居専用地域や第2種低層住居専用地域は、そもそも低層住宅のための用途地域です。

そのため、第1種低層住居専用地域の場合は、お店や事務所なども住宅と兼用になっているような小規模なものしか建てられません。第2種低層住宅専用地域でも、お店は150平方メートル以下の大きさまでです。

また、田園住居地域は農業ができる環境も守りながら、住宅地としても調和を図っていきたい地域になります。つまり、低層住宅専用地域や農地との調和を考える地域として静かで落ち着いた環境を作りたいエリアであるため、高い建物が建つことは避けたいのです。

絶対高さ制限では、建物の高さが10m以下または12m以下に制限されます。なお、制限が10m以下になるか12m以下になるかは、都市計画でどちらに決められるかによります。

10mや12mならば、一般住宅であれば3階建てでもほとんどクリアすることのできる高さです。なお、絶対高さ制限には一定の条件を満たせば規制が緩和される制度があります。

たとえば、10mが制限の地域でも、環境を害する恐れがなく、敷地面積と敷地内の空地が一定以上あれば12mまで緩和されるケースもあるのです。また、敷地の周囲に公園や広場などがあり、日照や風通しが確保できるような場合も緩和されることがあります。

2.道路面に適用される道路斜線制限

高さ制限のなかには斜線制限というものが3種類あります

そのなかでも、道路斜線制限は道路の日照や採光、通風などに支障をきたさないために建築物の高さを規制するよう設けられているものです。また、周辺に圧迫感を与えないことも目的としています。

具体的には、敷地の前面道路を渡った反対側の境界線をスタートとして、敷地の方向に一定の勾配で斜線(=道路斜線)を引きます。建物を建てる際は、その斜線を超えない範囲に収めなければなりません。

勾配の適用角度は、前面道路反対側の境界線からの距離を1としたとき、1.25倍または1.5倍の角度で設定します。ただし、道路から一定の距離が離れていれば、建物が道路に影響を及ぼすこともなくなるため、20~50mの範囲で適用距離というものも定められています。

適用距離までの間は斜線を超えて建てることはできません。しかし、適用距離を超える場所では斜線に関係なく建てることが可能です。なお、斜線を引く際の角度や距離は、用途地域や容積率、道路の幅などによって変わります。

3.隣地の日照を考慮した隣地斜線制限

斜線規制のなかでも隣の土地に関連するものが隣地斜線規制で、道路に面している部分以外の隣地との間で考える必要があります。自分の土地に建てる建築物が隣家の日照や採光、通風などを妨げず、良好な環境を保つことを目的として高さを制限したルールです。

隣地斜線規制では、隣地との境界線上にまず一定の高さをとります。そこから一定の勾配で敷地側に斜線(=隣地斜線)を引き、その斜線の範囲内に建築物を建てなくてはなりません。

隣地との境界線上に設定する基準の高さは20mまたは31mです。斜線を引くときの角度は敷地境界線からの距離を1としたとき、1.25倍または2.5倍で考えます。

境界線上に設定する基準の高さや斜線を引く角度などは、用途地域や容積率、道路の幅などで異なるため確認が必要です。

なお、第一種低層住居専用地域と第二種低層住居専用地域、および田園住居地域の場合は、もともと建築物の高さを制限するための絶対高さの制限が設けられています。

この3つの用途地域では原則として10mまたは12m以上の建築物は建てられないため、隣地斜線制限は適用されません。

4.北側の日照を確保する北側斜線制限

4つの斜線規制のうち最後のひとつは北側斜線制限です。

敷地に思うような建物を建てて自分の家は満足できても、それが隣地の人の環境を悪くしていれば地域全体の住みやすさにはつながりません。特に住居系の用途地域の場合は建物が並んで建っていることも多いです。
そのような場所では、北側に位置する敷地にも、南からの日当たりを確保する必要があります。

そこで、側の隣人の日照に考慮することを目的として設けられた、建築物の高さ制限が北側斜線規制なのです。

具体的に北側斜線制限を考えるときには、隣地との北側境界線上にまず一定の高さをとります。そこから他の斜線制限とおなじように一定の勾配で斜線(=北側斜線)を引き、その範囲内を超えない範囲で建築物を建てることが可能です。

北側境界線上にとる基準の高さは5mまたは10mで、用途地域によって異なります。勾配の角度は北側境界線からの距離を1とすると1.25倍です。

ここで注意が必要な点としては、北側斜線制限は南からの日照を確保するためのものであるため、斜線は真北方向に引いて算定するということです。

つまり、敷地や建物は必ずしもどこかの方角にまっすぐ向いているわけではないため、前面道路や隣地との境界線と直角になるというわけではありません。

北側斜線制限は、住環境として良好な日当たりを保護するために定められているルールです。

そのため、住居系の用途地域の中でも

  • 第1種低層住居専用地域
  • 第2種低層住居専用地域
  • 第1種中高層住居専用地域
  • 第2種中高層住居専用地域
  • 田園住居地域

の5つのみに適用されます。

用途地域を確認しよう

高さ制限があると建てられる建物の大きさはもちろん、デザインにも影響を及ぼします。

また、同じ斜線規制であっても種類によって敷地のどの部分にどれだけの大きさの建物が建てられるかが違ってくるでしょう。さらに、用途地域によっても適用される制限の数字が異なっています。

そのため、これから家を建てようと考えているならば、土地がある場所の用途地域を確認しておくことが大切です。希望するデザインや大きさで家を建てられるように、どのような高さ制限が設けられているかを把握しておきましょう。

まとめ

建物の高さは地域によって厳密に制限されており、煩わしいと感じられるかもしれません。

しかし、それも日当たりや景観などを守って快適な暮らしを送るために必要なルールです。

なのできちんと建てられる高さを確認し、その範囲で気に入ったデザインの家を建築するようにしましょう。