サラリーマンによる不動産投資が注目を集めています。不動産で収入を得る手段は主に毎月一定額の家賃が入る「インカムゲイン」と、売買の価格差によって収益を得る「キャピタルゲイン」の2つです。しかし、気を付けなくてはいけないのは、売却するときは思った以上にいろいろな税金や費用がかかるということです。

そこで、この記事では不動産の売却にかかる税金や費用について紹介します。

売却に必要な税金その1:譲渡所得税

不動産を売却して利益がでた場合は譲渡所得税と呼ばれる税金の課税対象です。名称に所得税と付いていることからもわかる通り、大きな分類としては給与所得や事業所得などと同様に所得税に区分されます。

譲渡所得税が課されるのは

「売却価格-取得費-譲渡費用」

で計算してプラスになった場合だけです。仮に5,000万円で購入した物件が7,000万円で売却できた場合に譲渡費用として500万円かかったケースでは

「7,000万円-5,000万円-500万円」で算出された1,500万円が譲渡所得として課税対象

となります。

注意点としては、売却価格や取得費、譲渡費用に含まれるものと含まれないものがあることです。たとえば、売却価格に含まれるものには不動産を売却して得た収入だけでなく、固定資産税の清算金や実測売買の清算金が含まれます。また、取得費には購入時に占有していた人に支払った立退料や取得した建物の取り壊し費用などを含んでも問題ありません。

実際にはもっと細かく指定されていますので、それぞれの価格や費用に含まれる項目については売却を実施する前にしっかりと確認しておきましょう。譲渡所得の計算ができたら、譲渡所得税率を掛け算して納める譲渡所得税を算出します。譲渡所得税の税率は売却する不動産の所有年数によって異なります。

5年を超えて保有していた場合は長期譲渡所得となって

「所得税およそ15%+住民税5%=およそ20%」

ですが、保有していた期間が5年未満のケースでは短期譲渡所得とみなされて

「所得税およそ30%+住民税9%=およそ40%」

です。仮に1,500万円の譲渡所得があり長期譲渡所得が適用される場合はおよそ300万円ですが、短期譲渡所得とみなされると倍の600万円もの税金を納めなければいけません。

税率の違いは金額が大きくなるほど影響も大きくなりますので、所有年数には注意して売却を慎重に検討してください。なお、所有年数の数え方は売却した年の1月1日時点で計算される点にも気を付けるようにしましょう。

売却に必要な税金その2:住民税や消費税

譲渡所得税の計算式にあるとおり、不動産を売却して利益がでた場合には住民税も課されます。具体的な流れとしては、売却して利益を得た翌年の2月16日から3月15日の期間内の管轄の税務署へ確定申告を行ない、まずは所得税を納めます。

その後、確定申告を行なった情報を基に税務署が住所地のある市区町村へ通知を行い、5月~6月頃に納付書が自宅に郵送されてくる仕組みです。サラリーマンの住民税の納付方法はほとんどの人が給料から天引きされる「特別徴収」で行っているでしょうが、不動産で多額の売却益が出た場合には金額も大きくなってしまいます。

天引きされる金額が大きくなると、社内でも噂になってしまう可能性がありますのでそれが嫌だという人は確定申告をするときに住民税を個人で納付する「普通徴収」を選択するようにしましょう。建物を売却するときは消費税を購入者から預かる形となります。

ただし、消費税を納税する必要があるのは「2期前の課税売上高が1,000万円以上ある場合」です。頻繁に売買を繰り返しているのでなければ、納税する必要はありません。また、不動産には土地と建物がありますがそもそも土地は消費税の課税対象ではないことは知っておきましょう。もしも売却する対象が土地と建物の両方であるときは、それぞれの売却価格の内訳と消費税の課税金額について仲介する不動産会社に明細を出してもらうようにしてください。

売却に必要な税金その3:印紙税   

不動産の売却は数百万円や数千万円単位の比較的高額な取引です。そのため、売買にあたってはしっかりとした契約書を作成する必要があります。その契約書に必要なのが印紙税と呼ばれる収入印紙です。

印紙税は契約書の目的によって課される税金が異なりますが、不動産の売買契約書においては1万円以上から貼ることとなっています。契約書に記載されている金額が「1,000万円超え~5,000万円以下」のケースでは1万5,000円分の収入印紙が必要です。それほど大きな出費を伴うことはありませんが、貼らないと原則として罰金が発生するので注意してください。

また、不動産の売買契約書は基本的に売主用と買主用の2部作成します。2部作成した場合はそれぞれに同額の収入印紙を貼る必要あるので、気を付けましょう。収入印紙代を少しでも少なくするためのテクニックとしては、どちらか一方をコピーにするという方法があります。

コピーのほうには収入印紙を貼る必要がないので、1部分の印紙税で済むというわけです。ただし、印紙税はそれほど高額な税金ではありませんので節税できる金額もそれほど大きくありません。また、実務上は不動産仲介会社が収入印紙を貼った契約書を作成してくれるケースがほとんどなので、わざわざ「コピーでいいです」と言うよりも相手の自署・押印のある契約書を保管しておくほうが望ましいでしょう。

売却に必要な経費その1:仲介手数料

不動産投資を行って不動産を売却する時にはさまざまな費用がかかります。売却先の相手を見つけてくれる不動産仲介会社へ支払う報酬もそのひとつです。不動産会社へ支払う報酬は一般的に仲介手数料と呼びますが、宅建業法で上限額はあらかじめ決まっています。上限額を求める計算式は

「200万円以下」「200万円超え~400万円以下」「400万円超え」

の3つです。売却価格が400万円以上の取引における仲介手数料の上限額は「売却金額×3%+6万円」となっています。仮に、7,000万円で売却した場合には「7,000万円×3%+6万円=216万円」です。実際にはこの金額に消費税がかかりますので、「216万円×1.08=約233万円」となります。

ただし、この金額はあくまで上限でしかありません。つまり、上限額で算出した金額よりも低い金額で仲介手数料を支払う契約をしても法律的には問題ないのです。不動産仲介会社も利益を上げないといけないのであまり値下げには応じてくれませんが、条件によっては認めてくれる可能性もあります。

たとえば「売買金額が当初の値段よりも低くなった」「仲介契約を結んでからすぐに契約が決まった場合」などです。良い物件であれば、あらかじめ仲介契約を結ぶときに条件を提示しておくと不動産仲介会社も応じてくれるケースがありますので試してみるとよいでしょう。

売却に必要な経費その2:司法書士へ支払う報酬

不動産の売却自体は持っている土地の権利書の名義を書き換えるだけで済みますが、登記の名義も書き換えておかないと後で問題になるケースがあります。登記名義を書き換えるための専門家としては司法書士が挙げられます。

法務局へ直接行ったり、インターネットを使ったりして自分で手続きをすることも不可能ではありませんが手間暇や上手くできなかったときのリスクを考えると専門家に任せるほうがよいでしょう。司法書士に支払う費用については、不動産会社へ支払う仲介手数料のような上限金額は法律で定められていません。そのため、依頼する司法書士によって金額が異なります。

登記に関して売主が支払う費用はおよそ「3万円~10万円」が目安です。ただし、打ち合わせ回数が多かったり抵当権の絡みなどで複雑な処理が必要だったりするときは金額が高くなることもあります。抵当権を外して売却するためには、あらかじめ担保となっている債権額を銀行などに返済するか、売却代金の一部を債権の返済に充てて債権者に解除してもらう必要があります。

事前に段取りを組んでおく必要がありますので、債権者はもちろん司法書士や不動産仲介会社とも連絡を密にとって流れを確認しておいてください。

売却に必要な経費その3:測量に関する費用

不動産を売却するためには、契約書へ正確な土地の面積を記入する必要があります。購入したあとになって、契約書に記載されている面積と違うことが判明した場合には訴えられてしまう危険性もありますので、慎重に計測を行わなくてはいけません。そのため、契約にあたってはあらかじめ買主と売主のあいだで不動産の面積について合意しておくことが望ましいです。

不動産の売却における面積の考え方には「公簿面積」と「実測面積」があります。前者は登記されている面積をそのまま使うので新たに費用は発生しないという点はメリットです。

ただし、古いものでは数十年前に実測されたままになっているものもあるので実際の面積と異なっているケースもあるので注意してください。不動産の売却に伴って新たに実測をした面積のことを「実測面積」と呼びます。不動産の売買において、正確な面積を計測してくれる測量士に依頼する場合の目安は20万円~100万円程度が一般的です。

土地の形状が不整形であったり、面積が大きかったりすると金額は高くなる傾向にあります。面積の特定における費用の支払いについては買主にもメリットがあるので一般的には折半するケースが多いです。ただし、契約によっては売主が全額負担することもあり基本的には不動産仲介会社を交えての話し合いとなります。

【土地売却時に必要となる測量に欠かせない地積測量図とは?】

売却に必要な経費その4:確定申告を税理士に頼む?

不動産の売却には税金と費用がかかります。売却で得た利益が大きいほど税金も高くなるので、気をつけなければいけません。確定申告をして税金を支払うことになるのは実際に売却をした翌年以降になるので、不動産の売却によって多額の利益を得た場合でも納税するために必要な資金を残しておくようにしましょう。

また、サラリーマンの場合、確定申告を普段は行うことがないので、税理士に依頼するという選択肢もあります。税理士に依頼すると費用がかかりますが、さまざまな特例を有効に活用して支払う報酬以上の節税をしてくれるケースもあるため、検討の余地はあるでしょう。

確定申告だけを依頼するケースでの税理士に対する報酬は一般的に「10万円から30万円」程度です。個人で確定申告を行なうと時間や労力もかかりますので、この金額を高いと見るかどうかは人それぞれでしょう。

サラリーマンにとって自己資金以上の投資が行えて、普通預金よりも高い利回りが期待できる不動産投資は魅力的です。ただし、経費や納める税金のことをよく知っておかなくては、利回りが悪くなっているのに気が付かないケースもあります。あらかじめよく勉強したうえで取り組むようにしましょう。