都市計画法で定められている用途地域は13種類あり、住居系、商業系、工業系と分かれています。このなかで最も種類が多いのは住居系地域で、その数は全部で7つです。今回紹介する第二種住居地域は、住宅系のなかでも比較的自由度の高い地域です。第二種住居地域にはどのような特徴があるのでしょう。

住居系用途地域について理解しよう!

第二種住居地域について理解するために、住居系用途地域の概要を把握しておきましょう。

住居系地域の目的は、主に住環境を守ることです。ただ、同じ住居系でも、地域によって特徴や建築においての制限、街並みなどは相当変わります。なかには、商業系地域と間違えてしまう地域もあるかもしれません。

快適な環境で住むなら住居系用途地域が良いという印象がありますが、それぞれの特徴を理解しておくと不動産売買における戦略を立てやすくなります。

閑静な住宅街といえば低層住宅専用地域

一般的に閑静な住宅街といえば、低層住宅専用地域を思い浮かべるのではないでしょうか。10~12メートルを超える高さの建物を作ることができないかわりに日照条件の良い住宅が多く隣地斜線制限もありません

第一種と第二種があり、第一種のほうが建物に関する規制が厳しくなっています。近隣には小規模な店舗しかなく、住環境としては申し分ないものの、利便性の点では劣る傾向にあります。

中高層マンション希望なら中高層住居専用地域

2階建て、3階建ての分譲マンションや一戸建て住宅が多い地域です。住宅街に加えて、病院や学校なども建てられます。第一種のほうが規制は厳しく、第二種になると小規模なスーパーもOKです。賃貸、分譲、戸建てと住居の種類が多く、小規模でありながら商業施設も少しあるので、小さい子どものいるファミリー世帯が住むにはちょうど良い環境です。

住居系に見えないかも?雑多な街並みが特徴の住居地域

低層住居と中高層住居の専用地域は、一般的に住宅街と定義しやすい街並みです。一方、これから紹介する住居地域と準住居地域は、閑静な住宅街のイメージからは少々離れる街並みが特徴です。

雑多な建築物が立ち並ぶ住居地域

住居地域も前述した地域と同様、住居環境を保護するための地域であることに変わりはありません。これまでの地域と異なるのは、集合住宅の規模や店舗の規模が非常に大きくなる点です。

第一種住宅地域では、大規模分譲マンションが姿をあらわす反面、戸建ての割合が少なくなります。3,000平方メートルまでの店舗やホテル、事務所なども認められており、中規模程度の運動施設もOKです。

第二種住居地域に至っては、店舗や事務所は1万平方メートルまでOK、ホテルやカラオケボックス、パチンコ屋なども建てられます。幹線道路沿いや郊外の駅前地域が指定されるケースが多く、オフィスや店舗の間を縫って住居が点在しているイメージです。住環境としては、少々騒々しいと感じるかもしれません。

周辺環境の特徴から人を選ぶ準住居地域

準住居地域では、第二種住居地域と同様の店舗条件に加えて、劇場や映画館なども建てられるようになります。自動車倉庫や倉庫業の倉庫、小規模工場などもOKで、そのなかに集合住宅が点在しています。国道沿いや幹線道路沿いに多く、建物の制限は非常に緩いです。常に一定数の車両が行き来している環境で、住居として選ぶには、向き不向きがあるでしょう。

どんな建物が建つ?第二種住居地域の用途制限

では、第二種住居地域についてです。

第二種住居地域では、戸建てや共同住宅のほか、店舗やホテル、1万平方メートル以下で風俗以外の娯楽施設などの建設が許可されています。住宅地域でありながら工場も建てられるので、一見すると住宅地域とは思えないかもしれません。工場の条件は準住居地域と同じなので、そちらを紹介します。

第二種住居地域に建つ建物

原動機を使う工場の場合、作業場は50平方メートルまで、自動車修理工場なら150平方メートルまでです。ただ、危険性の高い工場は不可で、住環境を害する恐れがなく、特定行政庁がやむを得ないと判断したものに限ります。準住居地域自動車関連施設と住居の環境を守る名目で作られています。

第二種住居地域の工場の要件は準住居地域に準じていますので、第二種住居地域に存在する工場も、もっぱら自動車関連施設と捉えていいでしょう。

一般的な住宅地域のイメージとは違う景観を持っていますが、幼稚園や小学校などの教育施設や、病院、老人ホーム、図書館なども建築できます。ゴルフ練習場、ボーリング場、カラオケボックス、パチンコ屋などの娯楽施設もそろっているので、前述した専用住居よりも生活している人の層は幅広いと言えるでしょう。

建ぺい率と容積率は次の通りです。

建ぺい率
容積率
50%
200%
60%
300%
80%
400%

となっています。斜線制限は道路斜線制限と隣地斜線制限がかかっており、北側斜線制限はありません。

第二種住居地域の住居環境の特徴

商業施設、自動車関連施設、オフィスビル、教育施設、公共施設、病院、娯楽施設と、さまざまなジャンルの建築物が混在しているのが大きな特徴です。

住居系地域のなかでは住居数が少なく、戸建てより集合住宅のほうが多くなっています。また、第二種住居地域の道路の向こう側やすぐ隣の敷地が商業施設や準工業地域になっているケースも多く、区画間で街の様相がガラリと変わるケースも見られるでしょう。

オフィス系や商業施設が多いことから、地域住民以外の人たちが多く行き交う地域であります。

フィス系や商業施設が多いことから地域住民以外の人たちが多く行き交う地域

幹線道路沿いの場合は、人の往来よりも車の交通量のほうが多いかもしれませんが、近隣に大型商業施設があったり、大企業のオフィスビルがあったりすると人の往来も頻繁に見られるでしょう。第二種住居地域の隣がどの用途地域になっているのかでも人の流れは異なります。

建てられる建物の種類が多いので、地域ごとに景観や個性が変わります。ひと言で第二種住居地域といっても、共通の特徴で一括りにすはできません。

居住の候補地として考える場合は、実際に足を運んで周辺環境を確認するようにします。朝、昼、晩で街の表情が変わりますので、できれば時間帯を変えて複数回チェックするのが望ましいです。

第二種住居地域の住居環境の注意点

第二種住居地域は車の通りが多いことから、騒音に悩まされるケースが多々あります。子どもを静かな環境で育てたい、車の排気ガスが気になると感じる人にはあまり向かない環境です。また、第二種住居地域のある幹線道路沿いは、冬になると風の通り道になりやすく、冷たい強風がビュービューと吹きやすくなります。実際の温度より体感温度が低く感じられるので、寒がりの人には少々つらい環境になるかもしれません。

高層マンションに住んでいる場合は、強風と排気ガスの影響でベランダに洗濯物を干せないケースも出てきます。洗濯バサミでしっかり留めても、高層階の強風は大変強いので、場合によっては騒音も手伝って窓は閉めっぱなしという状況になる可能性もあります。

第二種住居地域は治安などを気にする人には住環境として向かない

さらに、幹線道路の歩道は幅が広く、自転車OKになっているケースがあります。スピードの出し過ぎ、スマートフォンを見ながらの運転、逆走など、道交法違反の自転車が多いと、事故の危険性が高まるでしょう。小さな子どもや高齢者はもちろん、歩行者は十分注意をしながら歩く必要がありますし、自転車同士の事故も心配です。

さまざまなジャンルの施設が集まる場所には、良くも悪くもいろいろなタイプの人が集まります。当然、考え方や倫理観がまったく異なる人もいます。地域住民じゃない人がいるので治安が心配と思う人にとっても、第二種住居地域はあまり向いている住環境とは言えないでしょう。

第二種住居地域が向いている人とは?

それは、利便性の良さやプライベートを大事にしたい人です。

利便性の高い地域に住みたい
■第二種住居地域は利便性に優れているケースが多い
◇便利に暮らしたい人には向いている地域
◇その良さを享受するなら工業施設より商業施設の多い場所を探すと良い
交通の便が良い地域に住みたい
■車をよく運転する人にも使い勝手が良い地域
◇都市部は道路の狭い地域が多いが、幹線道路に近い地域なら主要道路にすぐ出られ、狭い道路を走る窮屈さを感じずに済む

◇幹線道路沿いは並行して地下鉄が通っていることも多いので、地下鉄を使い通勤・通学する人にとっても便利
生活音を聞かれたくない
■第二種住居地域の騒音というデメリットはメリットにもなりえる
◇閑静な住宅街であれば気になる生活音でも、騒音のある環境なら気にならなくなる
実は犯罪が少ない可能性がある
■幹線道路沿いの地域は、夜間でも車や不特定多数の人が行き来する
◇仕事やプライベートで帰りが遅くなっても、車のライトと外灯の明かりが夜道を照らしてくれるので安心

◇つねに往来の目があり泥棒が入りにくいというメリットもある

独身世帯や夫婦二人家庭をターゲットにするほうが賢明

買手として狙うべきは

第二種住居地域の不動産売却を考えている人にとっては、買主を探すのに少々骨を折るかもしれません。というのも、住居系地域とはいえ、商業施設も工業施設もあるような地域は、高値で売りにくいのです。

ただ、所有不動産の周辺環境に商業施設が多ければ、買い物のしやすさをメリットにできるでしょう。また、利便性に優れているケースが多いため、便利に暮らしたい人には向いている地域です。自動車関連施設やオフィスビルが多く商業施設が少ない場合は、生活をするのに不便ですが夜は静かで過ごしやすいです。

売却するときは、ファミリー世帯よりも子どものいない独身世帯や夫婦2人世帯を狙ったほうが、買手が見つけやすくなります。

生活拠点としてはデメリットのほうが気になる第二種住居地域ですが、考え方を変えれば良い環境にもなります。向き不向きは個人によって異なりますので、第二種住居地域のデメリットをメリットに変えて話せるようにしておくと良いでしょう。

もし、子供ができたり環境が変わって今の住んでいる家を売るしかない、でも時間がないというときは簡易査定がオススメです。イエイの簡易査定なら家にいながらでもすぐに不動産の価格を知ることができます。

第二種住居地域ならば人気エリアな場合が多いので思っていたよりも高値な場合も考えられます。まずは簡易見積りをしてみましょう。