不動産は一括で購入してもらえるのが理想的です。しかし買主側にすれば、なかなかそうはいかないという人は多いでしょう。通常、不動産の購入にはローンを組むというのが一般的です。頭金の代わりにつなぎ融資という方法もありますが、今回は不動産売買をスムーズにする代理受領について解説します。

不動産購入における代理受領とは?

代理受領を簡単に説明すると、融資を申し込んだ人の代わりに金融機関から直接支払い先に代金が支払われることです。

金融機関から支払い先にダイレクトに支払われることを代理受領という

通常、融資を受ける際は申し込みをした本人に融資金が入ります。その後、申込人自身が目的のものを購入したり支払いに充てたりするのが一般的な流れです。その手間を大幅に省き、金融機関から申込人に入るのではなく支払い先にダイレクトに支払われることを代理受領といいます。

不動産購入時における代理受領とは、申し込む人に代わって建築会社や不動産会社などが金融機関から直接不動産の代金を受け取ることです。

不動産売買の一般的な支払い方法

一般の戸建て住宅から家賃収益を目的としたビルやマンションなど、不動産にはさまざまなものがあります。所有の目的も人によってさまざまです。しかし、いずれの場合でも、不動産の売買には大きなお金が動きます。そのため、現金での売買契約ができるというケースはそう多くありません。

不動産を売買する際は、住宅ローンなどを利用するのが通常であり一般的な方法です。それ以外の大きな違いは、買主側が頭金を用意できるかどうかといったことでしょう。あとはせいぜい、頭金の額がどれくらいなのかローンの支払い年数や金利がどうなるかの違いです。自己資金で頭金が準備できない場合、親からの支援が見込める買主であれば「相続時精算課税贈与」や「住宅取得等資金の贈与税の非課税」などの制度を利用することもあるかもしれません。

ただし、非課税にできる上限はそれぞれで決まっていますし支援してもらう以外の不足分は金融機関からの融資を受けることになります。

不動産を売買する際、買主は何度かに分けて支払いをするのが一般的です。売却するのが土地だけであれば、売主には土地代が入ってくるだけで終わります。その後は、買主と建設会社とのやり取りです。建物代は契約するときに初回の支払いがあります。次は、上棟式が2回目の支払いです。さらに、建物が完了して引き渡しのタイミングにも支払いが必要になります。

支払う額の目安は土地の契約時がおよそ10%、そして名義変更のときに残り全額が支払われます。建物代に関しては、初回から引き渡しまでのあいだに3分割で支払うのが一般的です。たとえば2,000万円の土地を購入する場合、契約の段階で200万円を支払うということになります。

もちろん、買主に自己資金がない場合には全額をローンにすることも可能ですし、それぞれの金額も一般的な目安です。

住宅ローンの基本的な流れ

ここで、住宅ローンの基本的な流れを見ていきましょう。住居など不動産を売買する際の一般的な支払い方法や支払いのタイミングを考えたとき、住宅ローンが実行されるまでにどれくらいの期間がかかるのか知っておかなければなりません。

住宅ローンはいつ実行される?

仮審査

住宅ローンには、初めに仮審査があります。金融機関によって細かい部分は異なりますが、おおよその年収などをもとにローンが可能かどうかを簡単に審査するものです。仮審査はおよそ1週間で結果が出ます。

住宅ローン申し込み(本審査)

仮審査に問題がなければ、次に住宅ローンが申し込まれます。この時点で本審査が開始されるので、申し込みと同時に必要な書類を用意することになります。この時点で用意する書類は、収入が確認できるもの、印鑑証明、そして本人確認書類などです。ほかに勤続年数が確認できる書類も必要になる場合もあります。必要な書類は、利用する住宅ローンの種類や金融機関で異なります。本審査にかかる期間は、2週間~3週間が目安です。

住宅ローンの本契約

金融機関が利用する保証協会や信用情報機関などで審査が進められ、特に問題がなければ住宅ローンの承認がおります。そして、住宅ローンの本契約へと移ります。

住宅ローンの実行

建物の引き渡しが完了したら、住宅ローンが実行され、登記の手続きになります。この際、登記の代行手数料などが必要です。ここで注意したいのは、実際に住宅ローンとして融資を受けられるようになるのは、建物が完成して抵当権の設定ができてからという点でしょう。そのため、建売住宅や分譲マンションなどのような、すでに建物が完成している場合は心配ありません。

ただし、注文住宅などの場合は建物が完成するまで住宅ローンでの支払いは見込めないことになります。

頭金の代わりをする「つなぎ融資」

住宅ローンの性質を考えると、土地を購入して注文住宅のように設計から発注したい人にとって、資金繰りは難しいと言えます。たとえ買主が土地の購入は一括で可能でも、そこに建物を建設するときには建設に入る前の契約時と上棟式の2回は支払いが必要です。

引き渡しの際の残金も含めて3分割を目安に、契約時と上棟式でそれぞれ30%ずつ支払わなければなりません。2,000万円の建物だとしたら契約の段階で600万円、上棟式にも600万円で、計1,200万円の現金が必要です。親からの支援でもなければ、一般的になかなか難しい額でしょう。

ここで、よく活用されるのが「つなぎ融資」です。つなぎ融資とは、金融機関が融資を実行するまでの間に利用できる融資のことで、短期で一時的という特徴があります。住宅ローンは、通常、完成した建物に金融機関が抵当権を設定できないと実行されません。しかし、つなぎ融資は抵当権の設定に関係なく利用ができます。

住宅ローンを申し込みする際、つなぎ融資についても合わせて利用できる金融機関があるので、買主の負担が軽くなると考えることが可能です。

つなぎ融資のメリット・デメリット

つなぎ融資は、実際の建物がない状態でも利用できるのがメリットです。

住宅ローンが実行される前に現金が必要なときにも使えるので、自己資金がない買主にとって心強い存在と言えます。つなぎ融資は、住宅ローンを扱っている金融機関で一緒に対応しているケースもあれば、ほかの金融機関に分けなければならないこともあります。つなぎ融資があれば、建物の契約に必要な費用の支払いも可能ですし、上棟式といったその後の支払いの心配も要りません。あとは、建物が完成して金融機関が抵当権を設定し、住宅ローンが実行されるだけです。

ただし、その一方でデメリットもあります。つなぎ融資は住宅ローンと個別のローンなので、手数料や利息も別に発生するという点です。しかも、住宅ローンに比べて利率が高いのが一般的ですし、手数料に関しては5万円~10万円前後が相場といわれています。住宅ローンの利息を低めに設定している金融機関は多いものの、つなぎ融資には対応していない金融機関が多いのもデメリットです。

そのため、住宅ローンとつなぎ融資は別の金融機関を使うということもあります。ローンを分散したくない人にとっては面倒かもしれません。

代理受領のメリットとは?

つなぎ融資は住宅ローンとは個別に組むもので、その分だけ利息や事務手数料などが発生しますが、代理受領には利息や事務手数料が発生しません。代理受領は、住宅ローンの資金から一時金などの目的で利用されます。そのため、つなぎ融資より安く抑えることができるのがメリットです。

また、つなぎ融資とは違い、申し込み本人を経由してから支払われるわけではないので、不動産会社や建設会社からの信用度が増すというメリットもあります。金融機関から建設会社や不動産会社に直接支払いがされれば、不正防止にも役立つという考え方もされています。

そのほか、手続きにかかる時間が少ないというのもメリットです。特に、住宅ローンを申し込む金融機関でつなぎ融資を扱っていない場合には、買主は別の金融機関を探さなければなりません。その分だけ時間を取られることになり、代理受領なら、そのような手間がかからないのもメリットです。

代理受領を利用するには、融資金代理受領委任状が必要になります。融資金代理受領委任状は、金融機関か支払い先のいずれかで扱っています。

代理受領には条件がある

買主側の手数料や利息を抑えるなどメリットの多い代理受領ですが、利用には条件があります。それは、金融機関と支払い先が同意することです。

金融機関、そして実際に代金を支払う建設会社や不動産会社が代理受領を承諾することで初めて利用できます。また、建設会社などによってはそもそも代理受領に対応していない会社もあります。住宅ローンの審査がスムーズに進んでも、金融機関や支払い先のいずれかが代理受領に合意しないという要素があれば、買主側はつなぎ融資を検討するなど問題が生じることになります。

代理受領は、自己資金が十分ではない買主でも不動産購入をしやすいのがメリットです。しかし、必ずしも対応している金融機関や不動産会社ばかりとは限りません。代理受領は、スムーズに買主が見つかる条件として考えることができるので、対応しているところに不動産売買の仲介を依頼するのもいいでしょう。

代理受領で不動産売買をスムーズに!

不動産の売買には、資金だけでなくさまざまな手続きも必要です。

代理受領なら不動産売買がスムーズに

買主が土地から購入して設計段階から発注する場合には、場所の選定から設計の打ち合わせなどいくつかの工程を経ていかなければなりません。設計だけでも、何度かすり合わせが必要になることも出てきます。実際に建設が開始してからも、現場での確認や建築材料の確認に内装の細かい確認が必要になることもあるでしょう。

さらに、新居に設置する家具の手配や引越しの準備など、やることはいくらでもあります。住宅ローンの審査が下りても買主に十分な資金がなければ、つなぎ融資が必要です。そんなときに代理受領を利用できれば、買主にとって必要な支払いがスムーズにいきます。

 売主としては、不動産の売買をスムーズにするためにも買主側がお得に利用できる代理受領は覚えておくといいでしょう。不動産売却をするときには、代理受領に対応している不動産会社などを選択すると売却がスムーズになるかもしれません。

そのためには、不動産業者をあらかじめ選んでおきましょう。しかし所有する不動産が、どの不動産業者に依頼すれば一番良いか査定をしてみないと分かりません。ましてや、代理受領に対応しているかは多数の不動産業者を当たらなければわかりません。そこで、不動産一括査定サイト「イエイ」を一度利用してみてはいかがでしょうか。

イエイでは、1000社以上の不動産業者との取引があります。その不動産業者も、国内主要不動産会社や地元に強い不動産会社など様々です。参画不動産業者が多ければ選択肢が広がり、自身と相性の良い不動産業者を見つけやすいのです。

自身の希望にそった売却をしてくれる不動産業者を早めに選択しておくことも、スムーズな売却につながるのです。