農地を所有していても、農家を続けていくことが難しくなってしまった場合、やむを得ず休耕地にしてしまうケースは多々あります。しかし、休耕地はそのまま放置してしまうわけにはいきません。正しく対処しなければ大きな損失に繋がることもあります。休耕地の対策や問題点についてお話していきましょう。

休耕地ってどういう土地?

休耕地とは、水田として機能していない田畑のことを指します。農家の高年齢化や後継者がいないことによって農地が休耕地になるケースは多いですが、ほかにも政府の定めた減反政策による影響を受けたものもあります。

これまで作物を栽培していた田畑での農業をやめる、あるいは作物を作らなくなると休耕地として扱われるのです。

休耕地をそのままにしてしまうと、やがて雑草が生い茂っていきます。草だらけの土地になるだけではなく、そうなれば虫が大量に沸き、近隣住民の迷惑をかけることになるので注意しなければなりません。特に、田畑が隣接している場合には、隣の田畑で育てている作物が病気になってしまう原因にもなり得るのでより一層気を配る必要があります。

つまり、休耕地にしたからといって放置していいというわけではないですし、雑草や虫を除去するための定期的な管理が欠かせないということです。農地として再び活用する機会はなく、ほかの方法で有効的に利用するというわけでもないのなら、売却という手段もあります。

しかし、後継者がおらず、交通の便もない休耕地は資産的な価値が低く、売却が難しいのも確かです。

賃貸として貸し出すという方法もなくはないですが、実際には休耕地になってそのまま所有し続けるというケースが国内に多々あるのです。

休耕地の管理の仕方は?

先述したように、休耕地は放置し続けてしまうと雑草が伸び切ってしまうので、定期的なメンテナンスが欠かせません。小さい規模の土地であれば手作業による草取りでも管理することもできなくはないものです。しかし、元々田畑だった土地となれば、多くの場合は広大な面積があります。そこに全面的に生えている雑草をすべて引き抜くとなれば大変な作業量になってしまうでしょう。

休耕地を管理する方法として有効的なのは、乗用草刈機の使用です。元々所有していない場合には相応のコストがかかってしまいますが、手作業では膨大な時間がかかってしまうようであれば有効的な手段だと言えるでしょう。

一見楽だと思われがちですが、絶対にやってはいけないのは除草剤を撒くことです。除草剤を撒いてしまえば確かに雑草は生えてこなくなり、管理は楽になるかもしれません。しかし、除草剤を散布することによって近隣の土地にも影響を及ぼしてしまう可能性があるので注意が必要です。

自分の所有している土地だけに散布したつもりでも、除草剤は風に乗って近隣の土地へと容易に運ばれてしまいます。近隣が田畑であった場合、作物が枯れ果ててしまったり、全く育たなくなってしまったりといった大きなトラブルに発展しかねないので安易に使わないようにしましょう。

作物だけではなく人体への健康被害がある恐れもありますから、除草剤の使用は極力避けるべきです。

それから、雑草を燃やすことも避けるべきです。燃やしてしまえば一気に雑草を処理できると思うかもしれませんが、野焼きは条例で禁止されている場合が殆どです。刈り終えた雑草に関しても野外で焼却すると処罰の対象となります。ゴミを燃やすとダイオキシンを発生させますし、立ち上る煙や匂いによって周辺の住民に迷惑をかけることにもなります。

また、刈らずに広大な規模の休耕地にある雑草を直接燃やすとなると大規模なものになってしまいます。下手をすれば火事だと思われかねないですし、実際に大火事に発展する可能性もないとは言い切れません。

億劫だと思ったとしてもこれらの方法は避けて、周辺の住民に迷惑をかけないきちんとした方法で雑草を処理するようにしてください。

休耕地は放棄されると耕作放棄地になる

ただちに耕作でき、耕作の意思もある農家が所有している田畑のための土地は休耕地として扱われますが、放棄してしまっている場合は耕作放棄地として扱われます。

一年以上作物が作られず今後も予定がない場合は耕作放棄地になる

具体的には1年以上に渡って作物の栽培がされず、今後も耕作に使われる予定のない土地のことです。類似した用語として「遊休農地」がありますが、耕作はされているが土地の大半を放棄している場合に当てはまる言葉です。懸念すべきなのは放棄することによって休耕地は耕作放棄地になってしまうということです。

耕作放棄地になったとしても、土地の所有者としての管理責任が消えるわけではありませんし、目に見える変化が起こるというわけでもないですが、さまざまな問題点が起こり得ます。

耕作放棄地で起こる問題点とは?

耕作放棄地でまず考えなければならないのがやはり雑草と害虫の増加です。農薬を使わずに放置し続けると、雑草や害虫は増えて続けていきますから管理し続けなければなりません。

虫が増えれば、それを食べる鳥も増えていきます。中山間部に位置する耕作放棄地の場合、イノシシやシカ、クマなどの侵入を簡単に許してしまうという問題もあります。耕作放棄地になり、農地として機能しなくなれば、鳥獣は活動範囲を広げてしまうので注意しなければなりません。

耕作放棄地では雑草やそれに伴う害虫問題が起きる

ほかにも農地が耕作放棄地になることによる問題点はあります。田畑は河川からの水を使うため、河川に流れる水の高さを下げるという効果を持ちます。それゆえに、大雨になった際には洪水を抑える機能もあるということです。

ほかにも、田畑によって雨水を地下水に変化させることで水質を浄化したり、緩やかに雨水を土に浸透させることで土砂崩れを防いだりといったさまざまな機能があります。

しかし、農地から耕作放棄地に変わるということは、このような多くの機能を失うということになります。自然とのバランスや景観面でさまざまな問題が起こり得ると考えるべきでしょう。

景観の問題には、ゴミが不法投棄されてしまうリスクも付きまといます。場所にもよりますし、周囲の視線が入ってくるような土地であれば特に心配する必要のない問題ですが、不法投棄される可能性は考慮しておいたほうがいいでしょう。特に、周囲の視線が入りづらい中山間部の土地では粗大ゴミや大量のゴミを不法投棄するケースは決して珍しくありません。

そもそもなぜ耕作放棄地が生まれるのか

農地が休耕地になり、やがて耕作放棄地になっていくのには相応の原因があります。主な原因としては先述したように、高齢化に伴って所有者が農業から離れてしまう問題です。

昨今では率先して農業に取り組もうと考える若年層の人は少なく、後継者候補が現れにくいという問題もあります。単純に農業を続けてくれる人がいないというだけではなく、農業に参入するハードルが高いことも耕作放棄地が生まれてしまう原因のひとつだと言えるでしょう。

農地を所有するためには、農家あるいは農業従事者として地域の農業委員会から許可を得なければなりません。しかし、新規参入する場合は上記の理由から土地を購入できないため、農家の元で下働きをするか、農家に農地を貸してもらって農業経験を積む必要があります。さらに、農業は高額な機械を揃えなければなりませんし、最初に収穫できるまでの生活費は自己資金でまかなわなければならないという問題があります。

農業に参入するためには多くのハードルを乗り越えなければならないうえに費用もかかるので、土地を購入して本格的に農業を始めようとする人はどうしてもごくわずかになってしまうのです。

土地の値上がりへの期待から農地をあえて手放さないでいるというケースもあります。市街地に近い農地が転用され、価値が上がる可能性があると所有者が判断した場合には、田畑にすることなくそのまま所有し続け、耕作放棄地になってしまうというわけです。ただ、この問題に関しては固定資産税の課税強化によって対策されている部分はあると言えるでしょう。

耕作放棄地への適切な対策方法は?

管理や有効活用の難しい耕作放棄地ですが、何の手の施しようもないというわけではありません。場所や広さにもよりますが、土地を上手く活用する方法はあります。

具体的な方法としてはまず、ソーラーシェアリングが挙げられるでしょう。いわゆる太陽光発電のことで、発電により収入を得ることもできます。元々は田畑だった土地なわけですから、日光の当たりやすさには期待が持てますし、設置の仕方によっては農業と並行して行えるので人気が高まっています。

耕作放棄地を賢く活用しましょう

もうひとつの対策方法としては市民農園の開設です。農園を利用できるサービスとして土地を提供することで収益を得られます。利用者それぞれが畑を管理することになりますから、一石二鳥だと言えるでしょう。

国、あるいは自治体で行われている耕作放棄地の対策としては、まず農地集積バンクがあります。農地集積バンクとは簡単に言えば、公的機関である農地中間管理機構が耕作放棄地を借り受けてくれるシステムです。

耕作放棄地であれば無条件で借り受けてくれるというわけではありませんが、利用できるかどうか試してみる価値は大いにあるでしょう。ほかにも、耕作放棄地再生利用緊急対策交付金制度を利用したり、自治体が定めている補助金を活用したりして管理状況を改善するという手段もあります。

容易に耕作できるまでの状態にすることができれば、売却や賃貸ができる可能性も出てきます。

自治体の補助金に関しては地域によるので必ずしも利用できるとは限りませんが、一度確認を取ってみることをおすすめします。

休耕地や耕作放棄地は有効活用すべき

 休耕地や耕作放棄地は所有している限り、管理し続けなければならないものです。近隣住民への負担や迷惑がかかる問題ですから、必要最低限でも管理は徹底して行うべきだと言えるでしょう。

ただ、田畑にしないのに所有し続けていても固定資産税がかかるばかりですから、できる限り有効活用できるように配慮すべきでもあります。そこで、賃貸ができる状態にするという方法があります。

土地を手放したくないのであれば、太陽光発電を取り入れたり、市民農園の運営を始めたりすることを検討してみるのもいいでしょう。そしてもしも、売却する場合には土地の売却に強い不動産会社を選びましょう。

その際には、不動産所有者が多く利用している不動産査定サイト「イエイ」を活用してみるのもおすすめです。主要不動産会社はもちろんのこと、地元に強い不動産会社との取引もありその数は1000社を越えます。しかも、自宅に居ながら査定価格を知ることができるのです。査定額だけでなく、売却には多くの手続きなどがありますので、自身と相性のいい不動産会社をみつけてスムーズな売却に臨みましょう。