マンションを売却するときに高く売れるにこしたことはありませんが、それが妥当な価格であるかはわからないものです。なぜなら、同じマンションの隣の部屋であったとしても売却時期や室内の状況で売却価格は変動するからです。売却価格が適正かどうか判断する参考指標としてPERとPBRがあります。詳しく見ていきましょう。

マンションのPERとPBRの考え方

PERは株価収益率であり、Price Earnings Ratioの頭文字です。PBRは株価純資産倍率と呼ばれ、Price Book-value Ratioの頭文字です。元々は株式投資をしている人が参考にする指標で、株式投資に詳しい人にとっては身近なものかもしれません。

この指標をマンションに当てはめたものが、マンションのPERとPBRです。マンションの購入価格と売却価格、自宅マンションを賃貸したときにどれくらいの家賃になるのかなどの情報を元に計算して客観的な数値にまとめ、指標として表しています。

マンションのPERを調べることで、マンションの新築時の価格からそのマンションを賃貸したときに何年で価格分を回収できるのかを知る目安になります。PERの数値が小さいほど資金を回収する年数が早くなることを表しています。そのため、数値が小さい場合は投資に適したマンションと言えるでしょう。

一方、マンションのPBRは新築時の価格と比較して、売却時の価格が何倍になっているのかを知る目安となります。PBRの数値が大きいほど新築時価格よりも中古価格の金額が高いことを表し、資産価値が高いマンションと言えます。

マンション売却の際、価格を考えるときに参考にしてみましょう。

PERとPBRの計算方法

マンションPERとPBRの計算方法と、具体的な数値で例を挙げてみます。

マンションPER=新築時の価格÷賃貸したときの年間賃料で計算
■年間賃料の目安は、所有しているマンションと同じ駅にあり、駅からの距離などが近い分譲マンションの賃料相場を参考にしている

たとえば
◇PERが25
◇5年間賃貸をし続けた場合

25年で新築時の価格分が回収できるということを表している
※10であれば10年で価格分が回収できるので、さらに収益性に優れたマンションであることがわかる

所有しているマンションを賃貸にするとは限りませんが、もし売却前に人に貸す機会があれば参考になるでしょう。売却時にも収益性が高いマンションであれば、購入者が増える可能性があります。

マンションPBR=中古価格÷新築価格で計算

◇PBRが1を超えたときは、新築価格よりも売却価格が高く、新築時よりも値上がりしていることを表している

※1を下回ると新築時よりも価格が下がってしまう

指標がすべてではない!自分の住んでいる駅が人気でも指標が高いとは限らない

PERの指標が低いと、マンションの収益性が高いのだから資産価値もあるのではと考えることもあるかもしれません。一方で、PBRの指標が高ければ資産価値が高いので、収益性もあると考えることがあるでしょう。しかし、必ずしもその傾向は一致しない可能性があります。

たとえば、一般的に知られている地名や人気がある駅から徒歩何分というマンションは、賃貸で住みたい人や購入したい人が多い傾向にあります。

そのため、このような立地にあるマンションの家賃や価格は高くなるでしょう。それでも、新築時の購入価格が比較して高すぎたときは家賃収入がそれなりにあったとしてもPERの指標が高くなります。その結果、回収に長い年数がかかるケースもあります。

住んでいる駅が人気でも必ずしも指標が高いわけではない

一方で、それほど知られていない地名や駅であったり交通アクセスが多少不便であったりしても、マンションによってはPBRとPERの指標が低くなることがあります。この場合、収益性で見ると一般的に知られている地名よりもPER値が高くなることもあります。

その理由として、マンションを購入後にその周辺に大きな工場ができたり、大型の商業施設や学校ができたりして急激にマンション周辺の人口が増えることもあるからです。賃貸物件の不足などから高めの家賃で賃貸できる可能性があります。その結果、PER値が低くなることがあるのです。

しかし、マンションを売却することを目的としている場合は、両方の指標の良し悪しに惑わされることなく、資産価値を表すPBRの指標に注目しておくとよいでしょう。

資産性が高いマンションは中古で売却するときの価格が落ちにくいという傾向があります。価格が下がらないということは、売却後に戻ってくるお金がより増えるということなので、結果的にお得な買い物をしたと言えるでしょう。

もし、投資用物件としてマンションの売却を検討するのであればPERの指標にも注目しておきましょう。

PERがよいマンションの特徴は?

一般的にPERが低いマンションの特徴はあるのでしょうか。PERが低くなる理由のひとつとして、マンション新築時に相場より安く購入している可能性があります。

購入時の価格は後から変更できません。売却時にも売却利益に大きく影響する可能性があるので、周辺のマンション販売価格の動きは知っておくとよいでしょう。さらに、相場より安く購入していれば最初に支払った金額が少なくなるため、PERの数値が低くなる可能性が高いです。

PERがよいマンションの特徴

PERの数値を求める計算式はひとつです。そのため、どのエリアのマンションでも新築価格と賃貸したときの年間賃料を元に数値を出します。そのため、この地域だからPERが低くなるということはありません。

たとえば、都心の人気があるマンションであっても、新築価格と賃貸したときの年間賃料のバランスによっては、収益率はそれほど見込めない場合があります。一方で、都心から少し離れているような地域でも、電車のアクセスが良くて通勤や通学に便利な駅で、賃貸の需要と供給のバランスが良いエリアにあるマンションはPERが低く、収益性が高いことがあります。

このように考えると、都心などの新築価格が高めの傾向にあるマンションよりも、価格が安く抑えられる郊外のマンションが収益性は高くなるのではと考えるかもしれません。しかし、いくら価格が安くても、同じような賃貸物件が近隣に過剰に供給されていたり、賃貸できたとしても家賃が低すぎたりすることでPERが高くなることもあります。

PERが低いマンションの特徴は、新築価格が安く家賃が高いこと

です。地域性はあまり影響しないと言えるでしょう。

さらに、PERが低い傾向にあるマンションの特徴としては、同じ駅にあるマンションであっても駅から徒歩でどれくらいかかるのかでPERがかわることがあります。駅に近いほどPERは低くなるでしょう。また、階数が高めの部屋は同じマンションであっても賃料は高い傾向があります。これらはあくまでも傾向として言えることであり、それぞれのマンションの状況によって多少なり異なることもあります。

また、売却を考えるときは駅からの距離、マンションの所在階数などは価格に影響する可能性が高いです。

PERが低いマンションは、価格が高騰している時期に新築で購入していなければ、売却価格もそれなりに高く見込め、PBRが高く資産価値があるマンションである可能性があります。

PBRがよいマンションの特徴は?

PBRが高ければ、中古で売却するときに新築価格と比べて価格が下がりにくいマンションと言えます。価格が落ちにくいということは、資産価値が高いということを表しています。

一般的には、大都市の一等地など人気のエリアのマンションは購入したいという人が多いので、価格が落ちない傾向にあります。国内、海外を問わず富裕層や投資家が購入を検討していることもあり、場所によっては新築で購入した価格よりも高く売却できることもあるでしょう。

一方で、たとえ一等地と呼ばれる場所であっても、PBRが低いケースがあります。その理由として考えられるのは、新築で分譲したときに価格が高騰していた場合です。

相場よりもかなり高い価格で売り出されたマンションは、売却時に価格が比較的落ち着ている時期なら売却価格を高く見込めなくなることもあります。そのため、一概にすべての大都市にある一等地のPBRが高いとは言えないでしょう。購入時と売却時の価格のバランスによって、PBRが低下する可能性があることを覚えておくとよいでしょう。

郊外のマンションは交通の利便性や需要性がPBRに影響する

郊外のマンションは、交通アクセスや購入したいという需要があるかどうかがPBRに影響します。また、新築価格が高めの時期に購入してしまうと、中古で売却するときに大幅に価格が下がってしまうことがあるので注意が必要です。売却時に価格が下がるとPBRは低くなってしまい資産価値はそれほど高いとは言えません。

しかし、郊外のマンションは比較的安い時期に購入できており、交通アクセスが比較的よく売買が盛んなエリアであれば値崩れしにくくPBRは高い傾向を示すことがあります。

PBRは毎年変動するもの!PBRとPERはあくまでも売却時の参考に!

マンションを売却するにあたり、マンションPBRは資産価値を表すので気になる数値と言えます。マンションPBRは新築価格に対して中古で売却するときにどれくらいの価格で売却できるのかという割合を示すものです。

しかし、個別のマンションにおいての数値ではなく、同じ駅の圏内で過去10年間に分譲された新築マンションの価格を参考にしています。そのため、そもそも新築マンションの供給が少なかったり、一時的に高級な新築マンションが分譲されてしまったりするとPBRの計算式の「新築価格」が想定より高くなったり、安くなったりする可能性があるので注意が必要です。

そのため、ある年はPBRが高いエリアだったとしても、次の年にはその数値が大きく変わることがあるのです。

 PBRやPERはマンション売却のときには参考になる数値ではあるものの、それが売却価格に直接影響するものではありません。結果的にPBRが高くて資産価値が高かった、PERが低く収益性が高いマンションだったというように、後からわかるものです。

そのため、あくまでも個別のマンション売却に関しては、不動産会社と相談しながら現実的に売却価格を決めてスムーズな売却を心がける必要があるでしょう。しかし、その相談相手の不動産会社と合わなければ元も子もありません。

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