空き家問題は、深刻化の一途をたどっています。2019年4月に総務省から発表された2018度の空き家率は、13.6%。日本にある住宅の7、8戸に1戸は空き家だということです。近い将来空き家になる可能性の高い「空き家予備軍」にいたっては、総住宅数の4分の1に登るとの統計もあるほどです。

2015年に施行された「空き家対策特別措置法」により、空き家所有者への風当たりも一層強くなっています。「空き家の管理」はもはや義務化されており、管理を怠った場合には以下のような罰則が与えられる可能性があります。

  • 固定資産税の実質的な増税
  • 過料(罰金のようなもの)
  • 強制的な撤去や解体(費用負担は所有者)

本記事では、空き家問題の現状とともに、空き家所有者のリスクを回避するための方法について解説していきます。

空き家問題の現状

まずは、空き家問題の現状からみていきましょう。

空き家率は年々上昇

(出典:総務省

2018年におこなわれた最新の調査では、空き家数は846万戸に及び、空き家率とともに過去最高となっています。空き家問題の背景には人口減少や少子高齢化など様々な原因がありますが、新築住宅の過剰供給が止まらないことが一番大きな要因だといえるでしょう。

日本は他国に類を見ないほど「新築信仰」が強い国。既存住宅が有り余っている状況にも関わらず、結婚や出産などのライフスタイルの変化に応じて多くの人が新築住宅を購入します。実家や今まで住んでいた家を取り壊すことはしませんから、どんどん住宅数だけが増えていってしまうんですね。

(出典:総務省

近年まで、日本の総人口は増加傾向にありました。しかし少子化の影響を受け、今では減少に転じ、そのスピードは加速しています。住宅数が増え続ける中、人口は減り続けることで、空き家問題のさらなる深刻化は避けて通れないといえるでしょう。

地方の戸建てだけが空き家ではない

(出典:総務省

都道府県別の空き家率を見てみると、やはり都市部の水準は低いことがわかります。しかし都市部では、マンションの空き家が多いという問題があります。空き家といえば地方の戸建てを思い浮かべる方が多いでしょうが、都市部における「マンション空き家」も深刻な問題です。

(出典:総務省

上記の図は、空き家総数に対するマンションなどの集合住宅の割合を示したものです。東京、神奈川、名古屋、大阪、福岡は、集合住宅の空き家率が高いことがわかります。東京の空き家率は10.6%と全国平均を下回っていますが、その内の7割以上が共同住宅の空き家となっています。

マンションに空き家が増えるとなると、適正な管理や修繕ができなくなり、さらに空き家数が増えるという悪循環が生じます。さらに今後はマンションと住人の「2つの老い」が進むことが明白であり、住む人もいない、修繕や建て替えをすることもできないという「スラム化」したマンションが増加することが懸念されています。

戸建てでもマンションでも、地方でも都市部でも、空き家問題はすべての場所と住宅に関わる問題なのです。

空き家所有者のリスク

空き家問題は、空き家を所有しているすべての人に影響します。とくに2015年に施行された空き家対策特別措置法によって、空き家を所有し続けるリスクは増大しています。

固定資産税が大幅に増税する

各自治体は、以下のような状態にある空き家を「特定空き家」と位置付けます。

  • 周囲に危害を及ぼす恐れがある
  • 衛生・景観・治安面で不適切

続いて特定空き家に対し、行政指導や行政処分をおこないます。その過程で、指導に従わない空き家に対し、固定資産税の軽減措置が撤廃されます。

そもそも住宅が建つ土地には、「住宅用地の特例」という軽減措置が適用となっている状態です。

小規模住宅用地(200㎡以下)

固定資産税
課税標準×1/6
都市計画税
課税標準×1/3

一般住宅用地(200㎡超)

固定資産税
課税標準×1/3
都市計画税
課税標準×2/3

この優遇措置が撤廃となることで、土地の固定資産税は最大6倍になってしまいます。

自治体の調査や命令に応じない場合は過料も

固定資産税が増税する前の段階で、自治体による現地への立ち入り調査がおこなわれます。この調査は強制ではありませんが、応じない場合には20万円以下の過料。また固定資産税の軽減措置撤廃後におこなわれる「命令」という行政処分に従わない場合には、50万円以下の過料となります。

過料
■刑罰ではないため、前科などがつくことはない
※ただし、経済的に大きな痛手となることは免れない

最終的には行政代執行に

行政処分にも応じない場合の最終的な措置として、空き家の解体や一部撤去などの行政代執行がおこなわれます。所有者への意思確認は一切されず、執行は強制です。

所有者は解体業者を選定することもできず、すべての費用を負担しなければなりません。支払いを拒めば、財産が差し押さえられてしまう恐れもあります。

空き家の管理と活用方法

増税や過料などのリスクを避けるには、空き家の適正管理や有効活用がもとめられます。

空き家管理の難しさ

自治体から「特定空き家」と判断されないようにするためには、危機管理・景観・衛生・治安という4つの面で最低限の水準を維持していかなければなりません。しかし、それは簡単なことではありません。

国土交通省のガイドラインから、「特定空き家」の条件をいくつか抜粋してみます。

  • 屋根、外壁等が汚物や落書き等で外見上大きく傷んだり汚れたまま放置されている
  • ゴミ等の放置、不法投棄による臭気の発生があり、地域住人の日常生活に影響を及ぼしている
  • 立木の枝等が近隣の道路等にはみ出し、歩行者等の通行を妨げている
  • シロアリが大量に発生し、近隣の家屋に飛来し、地域住民の生活環境に悪影響を及ぼすおそれがある

(引用:国土交通省

空き家になれば、落書きされたりゴミが投げ捨てられたりすることもあるでしょう。このような不可抗力に対しても、責任は所有者にあるわけです。さらに立木の越境や、シロアリ被害など目に見えない基礎の欠陥などについても、所有者は常に注意していなければなりません。

人が住まなくなった空き家は、湿気やほこりが溜まりやすくなることで予想以上に劣化のペースが速まります。適切な形で管理するには、月に1度などの定期的な通風や清掃、目視による現状把握が不可欠。近年では空き家管理サービスなどもありますが、月額1万円など費用が高額です。どちらにせよ、空き家が遠方にある場合はとくに所有者の経済的・物理的負担は計り知れません。

空き家の活用方法

「管理が難しいなら活用を」との考えにいたる方もいるでしょう。空き家の活用方法として考えられるのは、第三者に貸し出すことです。

住宅や空き家カフェなどの店舗、近年需要が高まっているシェアオフィスや民泊施設など、様々な賃貸方法が考えられます。ただしいずれの方法も、需要が見込めなければ経営は難しいといえます。

空き家の立地や築年数、広さによって向き不向きの活用方法があります。もちろん人通りがないような立地であれば、活用そのものが不向きともいえるでしょう。

また貸し出すにしても、管理が不要というわけではありません。居住者の入退去時などには家主が立ち会ったり、原状回復したりする必要がありますし、設備不良があれば修理の手配や費用の負担も家主です。管理会社に一任することもできますが、それには委託料がかかります。さらに貸し出すには初期費用や継続的にかかる費用も必要なので、赤字リスクについても考えなければなりません。

解体という選択肢

一切の建物の管理から解放されるための方法としては、空き家の「解体」が考えられます。

ただし、この場合には数百万円にも及ぶ解体費用の存在と、固定資産税が増税することについて忘れてはいけません。先述通り、住宅が建つ土地は固定資産税が軽減されている状態。建物を解体すれば、無条件でこの軽減措置はなくなります。

また更地にすれば、今度は土地の管理や土地活用についても考えなければなりません。更地になったとしても、不法投棄の対処や草木の剪定等の管理は必要です。 

土地活用方法としては、以下のようなことが考えられます。

  • 駐車場経営
  • トランクルーム経営
  • 資材置き場

上記は、比較的初期費用がかからず、敷居が低いといえる土地活用です。ただしその分、収益性も低く、固定資産税などの維持費用を考えれば収支をプラスにもっていくのは簡単ではないでしょう。

  • 借地
  • 店舗や高齢者施設の誘致

一方、上記のような活用は収益性が高いですが、一度貸し出すと何年も転用できないというデメリットがあります。

基本的に、活用は高リスク高リターン・低リスク低リターンです。そもそも住宅用地という制限が多い土地では活用の選択肢も少なく、収益を上げるためには専門性や経営負担が必要になってきます。

土地活用を含めた空き家の活用は、よほど立地に恵まれていない限り現実的ではないといえるかもしれません。

空き家問題の根本解決は必要としている人に空き家を“つなぐ“こと

管理・活用・解体が難しいとなれば、最終的には空き家の売却を考えるべきです。適正な管理をしたとしても、空き家がある限りそれは応急処置にしかすぎません。

「いつか住むかもしれない」「いつか貸せるかもしれない」

このように考えているかもしれませんが、この「いつか」に対する負担はあまりにも大きいのです。さらに空き家を必要な人へとつなぐことができれば、社会的責任をも果たせることになります。

空き家は適切な業者に売却を依頼することで、予想以上の価格で売却できる可能性もあります。大事なのは、業者の比較。少しでも好条件で空き家を手放すためにも、一括査定サービスを利用してより良い業者を見つけ出すことが大切です。