不動産取引は非常に大きなお金の動く取引であり、またその取引においては、売り主・買い主共に法律に沿った手続きを行わなくてはなりません。特に売り主は不動産売却するにあたって、様々な書類を作成・準備する必要があります。ここでは、それらの書類について解説します。
この記事の目次
不動産を売却するにあたって必要な書類
- 売買契約書
- 登記済権利証
- 身分証明書
- 実印
- 印鑑証明書
- 固定資産税納付書/固定資産税評価証明書
- 銀行口座書類
- ローン残高証明書
- 住民票
- 土地測量図面/境界確認書
- 建築確認通知書/検査済証
- 建築設計図/工事記録書
- 耐震診断報告書
- 管理規約書/使用細則
これらが一般的な必要書類です。ただし、不動産の種類・売り主の状態などによって異なってきますので、全てが必須というわけではありません。ここからは、個々の書類についての詳細を解説していきます。
1.売買契約書
売買契約は、不動産の売り主と買い主が、その取引に合意したことを記した書類です。多くの場合、不動産会社などが用意したものに、署名・捺印をすることになるでしょう。
また、売買契約書にはいくつかの必須事項がありますので、最低限それらの確認は行う必要があります。
売買契約書の必要事項
売り主と買い主が、その不動産の取引自体に合意した日付を記載
2.■売買代金
売り主と買い主が、その不動産の取引において合意した売買の代金を記載
3.■手付金
多くの場合、売買が合意された時点では、売買代金の全てを支払うことはできない
そのため、売買の合意時点で支払うのが手付け金
※手付け金の相場
一般的に5〜10%とされている
4.■取引期日 取引期日とは、実際に不動産を引き渡す時の日にちを記載したもの
不動産の取引は、売り主は引越し、買い主は支払残金調達などの時間が必要になる
そこで、売買契約の時点から一定の期間を、双方で合意することになる
5.■土地の所在、地番、地目、地積
売買する土地についての情報を記載
不動産登記簿謄本に従い、正確な記載が求められる
6.■建物の所在、家屋番号、種類、構造、床面積
売買する建物についての情報を記載
基本的に土地の場合と同じですが、建物特有の記載もあるので、充分に確認すること
また、マンションの場合、売買物件の表示が一戸建てと異なってきますので、記載には特に注意しなければらない
2.登記済権利証
よく「権利証」と呼ばれるもので、正確には登記済権利証と呼びます。これは、法務局から登記名義人(不動産を取得した人)に対して交付される書類で、登記名義人がその不動産の真正な所有者であることを証明するものです。
これがなければ不動産売買は決して成立しないので、最重要書類と言ってもよいでしょう。不動産を売却し、その代金を受け取る際に、この登記済権利証について所有権を移転することになります。
3.身分証明書
これは本人を確認するために必要な書類です。免許証などが適切でしょう。
4.実印
不動産を売却する当人(名義人)の実印が必要です。ちなみに、認め印は不動産売買の印としては使うことは出来ません。また、もし共有している不動産を売却する場合、その共有者全員の実印が必要になります。
5.印鑑証明書
印鑑証明書とは、その印鑑が「本人が登録した印鑑である」ということを証明した書類のことです。
この印鑑証明書は、売買によって登記申請を行う際に必要な書類となります。注意点は、印鑑証明書の有効期間が3ヶ月しかないという点です。必ず3ヶ月以内に発行されたものを用意するようにしましょう。
6.固定資産税納付書/固定資産税評価証明書
不動産を所有していると固定資産税という税金を払わなくてはなりません。固定資産税納付書/固定資産税評価証明書は、この固定資産税の確認をするために必要となる書類です。また、不動産の登記を行う際にかかる税金、「登録免許税」の計算において必要となる課税標準額を確認するためにも必要です。
7.銀行口座書類
銀行通帳などを指します。売買代金から手付け金を引いた残金を振り込むために必要となります。
8.ローン残高証明書
もし、売り主が不動産のローン返済中であった場合、ローン残高証明書(もしくは返済予定表)が必要になります。
9.住民票
万が一登記上の住所と売り主の現住所が異なる場合、住民票が必要になります。住民票の有効期間は3ヶ月なので、必ず3ヶ月以内に発行されたものを用意しましょう。
10.土地測量図面/境界確認書
一戸建てや土地の売買において必要となります。簡単に言えば「どの部分を売却するか」ということを明確にするための書類で、買い主が購入後に周囲のトラブルに巻き込まれないようにするためものと言えます。
そのため、境界がはっきりしていない場合は、その不動産に隣接した土地所有者全ての了解を得た測量図を作成することになるのです。
11.建築確認通知書/検査済証
一戸建てや土地の売買において必要となります。これらの書類は、その不動産が建築基準法に従って建築されているかどうかを証明するものです。
基本的に現地で行われる検査によって適合が確認された後、書類が作成されます。後のトラブルを避けるためにも、建物を売買する場合、売り主はこの書類を買い主に提供しなくてはいけません。
12.建築設計図/工事記録書
一戸建てや土地の売買において必要です。これらの書類は一見必要がないように見えますが、将来的にリフォーム・維持管理をしていく上で、どのように設計・工事されたかを確認する際に必要になってくるため、大変重要な書類になります。
13.耐震診断報告書
近年、大きな地震が相次いで起こっているということもあり、建物の耐震性については強い注目が集まっています。もし売買する不動産が古く、新しい耐震基準が導入する前に建築された場合、この書類が求められるケースがあります。
なければ売買できないというものではありませんが、やはり後のトラブルを避けるためにも、必要な書類になってくると考えるべきでしょう。
14.管理規約書/使用細則
マンションの売買において必要になります。これらの書類は取引においては必須ではありませんが、どういった管理をされているか、使用にあたってどのような決め事があるかを定めているので、買う側にとっては必須の情報と考えられます。
特にマンションは1つの建物に多くの世帯が住むことになるので、細かい規約などがあるケースがほとんどです。取引にあたっては、できるだけ早めに提示・提供することが必要です。
不動産売買契約の一般的な流れ
次に不動産売買を行う場合、契約をしたり、契約に付随する手続きをしたりします。その際、いろいろな書類を準備しなければなりません。書類の準備が不完全だと手続きが遅れたり、できなくなってしまったりすることもあります。
そのため、不動産売買の手続きをスムーズに行うには、必要となる書類の理解が不可欠です。そこで、不動産売買をする際、どのような書類が必要なのでしょうか。
書類の種別や不動産売買の時期ごとに場合分けをしてみていくことにしましょう。
不動産売買契約の流れを確認しておこう!
不動産売買は手続きが複雑で、法律や税務に関する知識も要求されます。したがって、不動産を売却する際、不動産会社へ仲介を依頼するのが一般的です。
売主が不動産会社へ売却手続きを依頼した後、不動産会社は販売活動を開始し、買主を探します。売却物件を購入したい人が現れて、不動産会社へ購入の申込を行った後、売主は買主と売却条件を詰めていくのです。
売主と買主の間で、お互い納得いく売却条件が決定した場合、不動産売買の契約日時を設定します。
不動産売買の契約をする前に、不動産会社は買主へ重要事項の説明を行わなければなりません。物件の内容を把握しないまま、不動産売買の契約をしてしまうと買主は大きな損害を被ってしまう可能性があるからです。
実務上では、契約当日、不動産売買の契約を締結する前に宅地建物取引士が買主に対して重要事項の説明を行います。その後、売主と買主で不動産売買の契約を締結し、買主は売主へ手付金を支払うのです。
そして、契約を締結してから、1カ月程度後に残代金の決済を行います。このときに物件の所有権が売主から買主に移転することになるのです。
残代金の決済当日、売主は物件の引渡しを行うと同時に買主から残代金を受領します。
売買契約の基本!売主の確認書類
不動産を売却する際、売主は用意しなければならない書類がいくつかあります。まずは身分証明書です。
不動産会社は法律上、仲介業務を行う際に売買当事者の本人確認を行う義務が課されています。そのため、不動産会社へ不動産の売却を依頼する際には必ず担当者から身分証明書の提示を求められます。身分証明書は運転免許証や保険証を用意すれば問題ないでしょう。
また、住民票も市区町村役場が発行する公的な書類なので、身分証明書として利用できます。
それから、不動産売買の契約書には実印で捺印しなければならないのが原則です。したがって、実印と印鑑証明書も用意しなければなりません。すぐに準備できるように、実印と印鑑カードの保管場所をあらかじめ確認しておくとよいでしょう。
権利書類も売買契約に重要な必要書類!
売主が売却物件の所有者であることを確認できなければ、真正な不動産売買の契約をすることができません。したがって、不動産売買をする際、不動産会社から物件の権利書類の準備も求められます。
物件の権利書類としてまずあげられるのが、登記済権利証です。登記済権利証とは、不動産の権利取得の登記手続きを行ったときに発行される書類です。
登記済権利証は、不動産の登記名義人になった人に交付されます。そのため、登記済権利証によって、物件の所有者であることの証明が可能となるのです。また、2005年より、インターネットを介して不動産登記の手続きが可能となりました。
それ以降、不動産の所有権を取得した人に対して、登記済権利証ではなく登記識別情報が発行されるようになっています。2005年以降に取得した物件を売却する場合、登記識別情報を準備することになるケースも多いです。
それから、固定資産税納税通知書や固定資産税評価証明書も物件の権利書類に該当します。固定資産税納税通知書や固定資産税評価証明書には、所有者の住所や氏名、物件の情報が記載されています。したがって、これらの書類によって売主が売却物件の所有者であることを確認できるのです。
建物に関する必要書類は何がある?
売却を予定する物件の中に建物が含まれている場合、建物に関する書類も準備することになります。戸建てとその敷地を売却する際に必要なのが、土地測量図や境界確認書です。
敷地の売買価格を平米単価で算出する際、正確な地積を確認しなければならないので、土地測量図の提出が求められます。また、買主が物件を購入した後、隣地トラブルを避けるために敷地の境界を明確にする必要があるので、境界確認書も用意しなければならないのです。
それから、建築確認済証、検査済証、建築設計図書、工事記録書も準備しておきましょう。これらの書類によって、法律上の規定に基づいて建物が建てられていることを証明できます。それにより、買主からの信頼も上がり、売買契約が成立しやすくなるからです。
さらに、耐震診断報告書やアスベスト使用調査報告書があると好ましいでしょう。これらの書類により地震の耐震性やアスベストの未使用を証明でき、買主の不安な気持ちを取り除けます。また、売却対象の建物がマンションのときは、マンションの管理規約の準備が必要です。
住宅の履歴がわかる!その他にもあるといい書類
不動産売却の仲介手続きを依頼すると、不動産会社から物件に関する書類の準備を指示されます。しかし、不動産会社から指示された以外にも物件に関する書類があれば、準備しておきましょう。
例えば、地盤調査報告書、住宅性能評価書、既存住宅性能評価書の3つです。
地盤調査報告書があると敷地の地盤の状態がわかります。また、住宅性能評価書、既存住宅性能評価書からは、建物の構造に関する性能を客観的に把握できるのです。これらの書類を見ると住宅の履歴がわかるので、事前に準備しておくと買主との契約に結び付きやすくなるでしょう。
売却依頼時に必要となるのはどんな書類?
不動産会社へ売却を依頼する時点では、登記済権利証と固定資産税納税通知書の用意が必須になります。不動産を売却するにあたっては、原則として売主が売却対象となる物件の所有権を有していなければなりません。
したがって、売却を依頼された不動産会社は、依頼者が売却物件の所有権を有しているか否かを確認するため、登記済権利証や固定資産税納税通知書の提示を求めるのです。
また、購入したときの売買契約書、重要事項説明書、図面や設備に関する仕様書も用意しておいたほうがよいでしょう。売却物件の購入に関する書類には、物件の情報がたくさん書かれています。 そのため、この書類があると不動産会社は販売活動をする際、購入希望者に効果的な情報提供ができます。
それにより、不動産売買の契約までスムーズに進む可能性が高くなるのです。
売買契約時に最低限必須となるものは何?
不動産売買の契約は、売主と買主が不動産売買契約書へ署名捺印をすることによって行います。不動産売買契約書への捺印は実印で行わなければなりません。したがって、実印を用意する必要があります。
また、実印の印影を確認するために印鑑証明書も必要です。印鑑証明書は登記手続きにも使用するので、発行から3カ月以内のものを用意します。また、売却物件の登記情報に記載されている売主の住所と現住所が違うときは、住所変更の登記が必要なので、住民票も取ります。
さらに、登記済権利証または登記識別情報、身分証明書も登記手続きや本人確認で必要なので、売買契約のときまでに準備しておきましょう。
その他、不動産の売却代金の振込先を把握しなければならないので、銀行口座の通帳が必要になります。それから売却物件にローン残高がある場合、残高証明書も取得しておかなければなりません。
ローン付きの不動産を売却する場合、完済しなければならないのが原則です。その金額を把握しなければならないので、不動産会社はローンの残高証明書の提出を求めます。
必要書類の準備の仕方!押さえるべきポイントは?
不動産売買を行う際、複数の書類が必要になります。これから不動産の売却を考えているならば必要書類の準備の仕方について知っておきましょう。
不動産売買の必要書類には、基本的に自分で作成しなければならない書類はありません。そのため、不動産売買に関する書類の作成はすべてお任せすることが可能です。売買契約書、重要事項説明書、清算金計算書は、不動産会社が作成します。売主は売買契約書や重要事項説明書に署名捺印をするだけです。
一方、売主が不動産を売却した後に確定申告をしなければならないとき、課税所得計算明細書を作成する必要があります。
確定申告をする際に申告書と一緒に提出しなければならないものです。この書類を作成する場合、売却物件の取得費を明確にすることが大切です。売却物件の取得費が不明確であると、概算の取得費を記載しなければなりません。
それにより、譲渡損失の繰越控除が受けられなくなってしまうので注意が必要です。課税所得計算明細書は、税理士にも作成してもらえます。自分で作成するのが難しいのであれば、この書類の作成は税理士に依頼してしまいましょう。
必要書類の準備を徹底して!依頼や契約をスムーズに
不動産を売却する際、売主の身分や物件の所有者を確認するための書類が必要です。また、建物が売却の対象となる場合、建物に関する書類も求められます。さらに、不動産の売却を依頼するときと契約をするときの必要書類も違うのです。
そのため、書類の種別や売買の時期ごとに場合分けしながら、必要書類を把握しておくことが大切です。それにより必要書類をスムーズに準備でき、不動産の売却を依頼するときや契約するときに困ることもなくなるでしょう。