「フラット35」という言葉を、CMなどで耳にしたことがあるかもしれません。これは民間の金融機関と住宅金融支援機構(以前の住宅金融公庫)が提携した、長期固定金利の住宅ローンの一つです。以前は、「証券化ローン・新型住宅ローン・ 公庫提携ローン」などのように、いくつかの名称がありました。

ここでは「フラット35」について、詳しく説明していきたいと思います。

フラット35とは?

「フラット35」は、申込者本人または親族が居住するための物件に利用できる住宅ローンです。返済期間の金利が変わらない「長期固定金利」であることが特徴で、借り入れの際に職業や勤務形態、勤続年数などの制限が少ないため、幅広い人が利用できます。

全国300以上の民間金融機関が扱っており、都市銀行や地方銀行、信用金庫、労働金庫などさまざまな窓口から申し込みが可能です。

提携している住宅金融支援機構は、国土交通省と財務省が所管していた住宅金融公庫を引き継いだ公的な機関です。住宅金融支援機構が住宅ローン債権を買い取り、証券化して投資家へ販売する仕組みになっているのですが、その信用力の高さから、債権を低い利回りで投資家に販売できるので、金利変動のリスクから民間では扱いにくい「長期固定金利の住宅ローン」が提供できるのです。

将来の金利上昇時のリスクをなるべく回避したい、金利の事で悩みたくないという方にオススメです。

フラット35の基礎知識

■投資用物件には利用できない

「フラット35」は申込者本人または親族が居住するための新築住宅の建築資金・購入資金・中古住宅の購入資金に利用できます。

機構では、実際に申込者本人または親族が住んでいるかを定期的に確認しているため、第三者に賃貸するなどの投資用物件としての利用や、店舗・事務所など目的外の利用が判明した場合は借入金額の全額を一括で返済することになります。注意しましょう。

■固定金利の住宅ローン

最長35年間(最短15年~35年間)の全期間固定金利型の住宅ローンのため、資金を受け取る際に返済終了までの借入金利と返済額が確定します。

「フラット35」のうち、15年以上20年以下の借入期間を選択した場合を「フラット20」と言い、より低い金利での借り入れが可能になります。ただし、20年以下の借入期間を選択した場合、原則として返済途中で借入期間を21年以上に変更はできません。

借入金利は申込時ではなく資金受取時の金利となり、取扱金融機関により異なります。

■最高で8,000万円までの借り入れが可能

借入限度額は100万円以上8,000万円以下(1万円単位)で、住宅の建設費(土地取得費を含む)または購入価格以内です。併用住宅の場合、非住宅部分は対象外のため除きます。

なお、借入額が「住宅の建設費または購入価格」の9割を超える融資率の場合と9割以下の場合で借入金利は異なります。

■団体信用生命保険制度に加入できなくてもローンが組める

万一のことがあった場合に備えて、団体信用生命保険(団信)が用意されていますが、健康上の理由から団信への加入ができない場合でも「フラット35」の利用は可能です。

団信の種類によって借入金利は異なり、団信に加入できない場合は「新機構団信付きフラット35」の借入金利から保険料分の0.2%が差し引かれます。

ただし、団信に加入していない申込者本人が万一死亡した場合、債務を相続した遺族が返済を引き継ぐことになるため、健康上の理由以外で加入しない選択をする場合は家族とよく検討してください。

◆「フラット35」での借入金利水準(2022年10月現在)

  融資率
9割以下 9割超
新機構団信(※)加入 あり なし あり なし
返済期間 21年以上 1.480~2.970% 1.280~2.770% 1.740~3.230% 1.540~3.030%
20年以下 1.320~2.810% 1.120~2.610% 1.580~3.070% 1.380~2.870%

※加入する団信の種類に応じて借入金利は異なります。

デュエット(夫婦連生団信)の場合 掲載している借入金利+0.18%
新3大疾病付機構団信の場合 掲載している借入金利+0.24%

■繰上げ返済手数料が無料

繰上げ返済の際の手数料は不要です。

金融機関窓口からの繰上げ返済は100万円以上からですが、インターネットサービス「住・My Note(すまいのーと)」利用の場合は10万円以上から繰上げ返済が可能です。

また、返済中に返済方法の変更を行う場合も手数料はかかりません。

■保証人や保証料が不要

フラット35では保証会社の保証を得るので、保証人は不要です。

保証料も必要ありません。

フラット35(保証型)

フラット35と同じく、民間金融機関と住宅金融支援機構が提携して提供する全期間固定金利の住宅ローンですが、住宅金融支援機構が民間金融機関からローン債権を買い取る仕組み(買取型)とは異なり、民間金融機関が提供する住宅ローンに住宅金融支援機構が保険(住宅融資保険(保証型))を付け、申込者が返済できなくなった場合、住宅金融支援機構が民間金融機関に保険金を支払う仕組みを利用したものです。

保証型では、借入金利や融資手数料、団体信用生命保険などが取扱金融機関によって異なるため、場合によっては「買取型」よりもお得になるケースもあります。取扱金融機関のホームページで確認してみましょう。

ただし取り扱っている金融機関が少なく、2022年3月1日現在、買取型では320機関あるのに対して保証型は11機関(そのうち新規受付を行っている金融機関は9機関)となっています。

低リスクで高利回りの投資ができる点というメリット

フラット35の利用条件

フラット35を利用できる人や住宅には条件があります。条件はどの金融機関でも同じなのでよく確認してください。

申込者の要件

次の①~③までの全ての要件を満たす必要があります。

①申込時の年齢が満70歳未満の方

申込者本人とその後継者が2世代で住宅ローンを返済していく「親子リレー返済」を利用する場合は、満70歳以上の方も申し込み可能です。ただし、後継者の申込時の年齢が満70歳未満であることが必要です。
※親子リレー返済は、借入当初から親子リレー返済の後継者が連帯債務者となります。

親子リレー返済で後継者がいる場合を除き、「フラット35」の利用は80歳までです。そのため、原則15年以上35年以内(1年単位)となっている返済期間についても、完済時の年齢が80歳となるまでの年数と比較していずれか短い年数となります。

最長返済期間=「80歳」-「申込者の申込時の年齢(1歳未満切り上げ)」

②日本国籍の方、永住許可を受けている方または特別永住者の方

外国籍の方でも「永住者」または「特別永住者」の資格がある方は申込み可能で、連帯債務者となることや住宅を共有することもできます。

ただし、万一その資格がなかったことが判明した場合は、借入金を一括して返済することになります。

③総返済負担率が基準値以下の方

年収に占める「フラット35」を含む全ての借入れ(他の住宅ローンや自動車ローン、教育ローン、カードローン等)の年間合計返済額の割合(総返済負担率)が次の基準を満たす必要があります。カードローンにはクレジットカードのキャッシングや商品の分割払い、リボ払いも含まれますので注意してください。

年収 400万円未満 400万円以上
総返済負担率 30%以下 35%以下

住宅の要件

次の①~④までの全ての要件を満たす必要があります。

①申込者本人または親族が自ら居住するための住宅

本人が居住する目的の場合、生活拠点以外に週末などに利用するセカンドハウスの建設や購入も対象です。一部分を店舗や事務所として利用するような併用住宅の場合、申込者本人または同居者が生計を営むために自己使用するものであり、住宅部分の床面積が全体の2分の1以上である等の要件を満たす場合は、住宅部分のみに限定して借り入れの対象となります。併用住宅の詳しい要件などは申込時に確認しましょう。

②耐久性など一定の技術基準を満たしている住宅

新築・中古住宅問わず、第三者である検査機関(適合証明検査機関)所属の建築士資格を持つ専門家が、住宅金融支援機構の定める技術基準に適合しているか検査を行います。あわせて建築基準法に基づく検査済証が交付されていることも確認されます。
※物件検査に当たっては物件検査手数料が必要となり、申込者が負担します。物件検査手数料は適合証明機関により異なります。

なお、長期優良住宅(国の定めた基準を満たし認定を受けた住宅)など省エネルギー性、耐震性などを備えた質の高い住宅を取得する場合には、借入金利を一定期間引き下げる制度「フラット35S」が利用できます。「フラット35S」には予算金額があるため、予算金額に達する見込みとなった際には受付終了となります。

③(中古住宅の場合)借入申込日において築後2年が超えている住宅または既に人が住んだことがある住宅

④(新築住宅の場合)借入申込日において竣工から2年以内の住宅で人が住んだことがない住宅

※2023年4月以降の新築住宅についての融資については以下の条件を満たすことが追加されることが報道されました。

  1. 断熱等性能等級4以上且つ一次エネルギー消費量等級4以上
  2. 建築物エネルギー消費性能基準

フラット35は家庭の消費エネルギーを実質0以下にする「ZEH」(ゼッチ)と呼ばれる省エネルギー性能の高い住宅については2022年10月から金利を下げることをはじめましたが、来年4月からは、断熱性能を高め国が定める一定の省エネ基準を満たすことが融資の条件となります。

中古住宅に関しては現在省エネ基準条件を設けていないですが、今後このような条件が付される可能性があります。

「フラット35」のメリット・デメリット

メリット

■幅広い方の利用が可能

一般的な金融機関の住宅ローンでは収入の安定度なども審査されるため、勤務形態や勤続年数などが条件とされることがあります。フラット35では年収基準(前年の収入)で判断されるため、自営業や転職して間もない方なども利用しやすい住宅ローンです。

また、住宅ローンの利用には「団信への加入が必須」となっていることが多いのですが、フラット35では、借入時に健康上の理由で団信に加入できない場合でも住宅ローンを利用することができます。

■返済期間中は金利が変わらない

固定金利のため、予期せぬ金利上昇で返済負担が増えてしまい家計を圧迫されるリスクがありません。借りた後に金利変動のチェックをする必要もなく、将来的に安定した生活設計が可能です。

■繰り上げ返済の手数料がかからない

資金に余裕ができた際、前倒しで返済する場合の手数料がかからず、インターネットサービス利用の場合は10万円から繰り上げ返済が可能です。小額からでも繰り上げ返済を利用できることで、少しずつ借入期間を短くすることができます。

デメリット

■変動金利型の住宅ローンと比較すると金利が高め

借入期間中に適用される金利(適用金利)が変動する「変動金利型の住宅ローン」は、一般的に金融機関が1年以内の融資を行う際の最優遇貸出金利である「短期プライムレート」を基準として決まります。一定期間ごとに金利と元金残高、残りの返済期間から再計算されて返済額の見直しが行われます。

同一時点で比較した場合、一般的に変動金利型の方が他の金利型よりも適用金利が低いことが多いです。

金利は変動するため、適用金利が上昇した場合は総返済額が増える可能性があるものの、完済時まで適用金利の変動がなかった場合や、適用金利が下がった場合、変動金利型の方が総返済額が少なくなることがあります。

■融資率が9割を超えると金利が高くなる

フラット35では住宅の建設費(土地取得費を含む)または購入価格まで融資を受けることが可能ですが、その融資率が9割を超える場合は金利が高くなります。購入価格の1割以上の頭金を用意できず、9割超えの金額を借り入れる場合は、総返済額が高くなることを想定して返済計画を立てる必要があります。

フラット35を利用する場合

メリット・デメリットを理解した上でフラット35の利用を検討する場合、購入する住宅・返済期間やライフプランによって選べる複数の商品やオプション・特約があります。

商品の一部では、

  • 中古住宅の購入とあわせて一定の要件を満たすリフォームを行う場合に「中古住宅購入費+リフォーム費」をセットで借り入れることで、借入金利を一定期間引き下げる「フラット35リノベ」
  • 地方公共団体と住宅金融支援機構が連携して、子育て世帯や地方移住者等への補助金交付や一定期間金利引き下げといった、住宅取得を応援する「フラット35地域連携型」

等があります。

プランによっては利用要件が異なり、予算金額に達した場合は受付終了する場合もあります。

なお、「フラット35」の多様な金利引き下げパターンをわかりやすくするため、2022年10月より金利引き下げ方法が「ポイント制」に変わります。

2022年10月以降借入申込受付分から、金利引き下げメニューごとにポイントを定め、合計ポイント数に応じて金利引き下げ内容(引き下げ期間および引き下げ幅)が決まる制度となっており、原則下記の4パターンとなっています。

  借入金利引き下げ期間 借入金利引き下げ幅
1ポイント 当初5年間 -0.25%
2ポイント 当初10年間 -0.25%
3ポイント 当初5年間 -0.50%
6年目から10年目まで -0.25%
4ポイント以上 当初10年間 -0.50%

長期優良住宅の認定を受けている場合等、住宅性能が高い物件はポイントが高くなっています。「フラット35」のHPをよく確認して、自身に合った商品を選びましょう。

フラット35ホームページ

まとめ

住宅ローンを選ぶ際に、金利が変わらないという理由だけで、「フラット35」を選ぶ人も多いかもしれません。ですが、人によっては向かない場合もありますので、「フラット35」の内容やメリット・デメリットについてしっかり理解を深め、民間の住宅ローンと比較しながら、どちらが自身の状況に合うのかしっかり見極めることが重要です。

月々の返済に無理がないよう、長期にわたる返済期間の生活設計を立ててマイホームの購入に役立ててください。