思い出の詰まった実家の処分に、気が進まない方もいることでしょう。
しかし、空き家となった建物をそのまま残しておくと、所有期間中に税金が発生したり、管理不足で隣家に迷惑がかかったりとリスクも多いです。
本記事では、実家の処分にかかる解体費用や節約方法、注意点などを解説します。
解体費用が捻出できないケースの対処法や、解体せずに活用する方法についてもまとめているので、実家の今後に悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
この記事の目次
実家の処分にかかる解体費用の相場とは
解体費用は建物の構造や規模によって、次の表の通り異なります。
構造別 |
30坪程度の解体費用の目安 |
50坪程度の解体費用の目安 |
---|---|---|
木造 |
3~5/坪 |
3~4/坪 |
鉄骨造 |
5~7/坪 |
4~6/坪 |
鉄筋コンクリート造(RC造) |
6~8/坪 |
6~7/坪 |
上記の価格を参考に「延べ床面積×解体費用の目安」にあてはめると、おおよその解体費用が算出できます。
戸建てであれば木造住宅が多くを占めていますが、建物の構造がわからない場合、次の特徴の違いで判断しましょう。
- 木造:2階建てで屋根に傾斜がある
- 鉄骨造:外壁のつなぎ目のスパンが60㎝ほどで屋根がフラット
- 鉄筋コンクリート造(RC造):曲線などを取り入れており、デザイン性が高い
見た目だけでは判断が難しい場合は、「登記簿謄本(建物)」など設計・購入時の資料で調べるとよいでしょう。
延べ床面積30坪の解体費用
延べ床面積が30坪の建物における、構造別の解体費用は次の表の通りです。
構造 |
延べ床面積30坪 |
---|---|
木造 |
90~150万円 |
鉄骨造 |
150~210万円 |
鉄筋コンクリート造(RC造) |
180~240万円 |
都心部をのぞいた首都圏では、延べ床面積30坪は一般的な戸建ての広さです。
木造住宅であれば、100万円ほどの解体費用がかかると予想しておきましょう。
延べ床面積50坪の解体費用
延べ床面積が50坪の建物における、構造別の解体費用は次の表の通りです。
構造 |
延べ床面積50坪 |
---|---|
木造 |
150~200万円 |
鉄骨造 |
200~300万円 |
鉄筋コンクリート造(RC造) |
300~350万円 |
延べ床面積50坪は、二世帯住宅やゆとりある土地で建てられた戸建ての広さです。
木造住宅であれば、200万円近くの解体費用がかかると予想しておきましょう。
実家の処分にかかる解体費用を左右する要因
実家の処分にかかる解体費用は、次の要因によって左右されます。
- 建物の構造
- 立地条件
- アスベストの有無
- 地中埋設物の量
- 廃棄物の量
- 付帯工事の有無 など
建物の構造だけではなく、立地によっても解体費用は異なります。
たとえば、隣家が近い、または道が狭いなどで重機が敷地内に入らない場合、手作業での解体が必要となりコストがかさみます。
2006年に使用が全面禁止されたアスベストですが、古い住宅では使用されている恐れがあり、解体前には専門業者による撤去作業が必要です。
建物の基礎であるコンクリートなどの地中埋設物や、解体後に出る廃棄物の量によっても費用は異なります。
付帯工事では、次の表の通りに別途費用が必要です。
付帯工事の内訳 |
付帯工事費用 |
---|---|
ブロック塀撤去 |
2,000~1万円/㎡ |
カーポート撤去 |
2~6万円/1台用 |
門扉の撤去 |
2万円ほど |
倉庫・納屋の撤去 | 2~3万円ほど |
古井戸の埋め戻し | 3~5万円 |
敷地が広いほど、倉庫撤去などの付帯工事費が多くかかると言えるでしょう。
実家の処分にかかる解体費用の節約方法4選
実家の処分にかかる解体費用の節約方法は、次の通りです。
- 自分でできることは積極的におこなう
- 解体業者の閑散期に依頼する
- 自治体の補助金制度を活用する
- 解体業者は自社施工・相見積もりで選定する
自分にできることはなにか、検討してみましょう。
①自分でできることは積極的におこなう
自分でも手軽にできる節約方法として、庭に生えている植木や雑草の処分をする方法があります。
家具や家電は回収業者に引き取ってもらうほか、使えるものがあれば買取業者に引き取ってもらうのもよいでしょう。
粗大ごみは行政サービスを使うと、処分費用を節約できます。
業者に頼むと費用がかかるものでも自分の時間と労力を使うと、解体費用を節約できます。
②解体業者の閑散期に依頼する
閑散期の解体工事で、解体費用を抑えられる可能性があります。
一般的には公共工事が集中する年度末を避けるのが賢明です。
地域や年度によって閑散期が異なるケースもあるため、解体を検討している段階で早めに業者に聞くと安心です。
③自治体の補助金制度を活用する
国土交通省では、「空き家対策総合支援事業」で、各自治体に支援をおこなっており、市町村が独自で補助金制度を設けているケースがあります。
解体費用を節約したいのなら、活用しない手はありません。
自治体の公式HPや窓口で、活用できる補助金制度がないか確認してみましょう。
参考:国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報」
④解体業者は自社施工・相見積もりで選定する
重機を所有しており自社施工が可能な解体業者であれば、解体費用を節約できる傾向が高いです。
また、同じ建物の解体を依頼したとしても業者によって見積もり料金が異なるため、複数社に査定を依頼し、相見積もりして比較するとよいでしょう。
業者選定時には、解体の実績があり、担当者との意思疎通がきちんとできるかも重要な確認ポイントです。
実家を処分するときの注意点
実家を処分するときの注意点は次の通りです。
- 更地のままにしておくと税金が最大6倍かかる
- 更地にすると再建築不可となるケースがある
- 建物消失登記の手続きをおこなう必要がある
思わぬトラブルを招かぬよう、あらかじめ確認しておきましょう。
更地のままにしておくと税金が最大6倍かかる
住宅を所有していると固定資産税と都市計画税がかかりますが、更地にすると住宅用地特例が適用されず、土地の固定資産税がこれまで比べて最大で6倍かかります。
住宅用地特例は、200㎡以下の土地であれば6分の1、200㎡以上の土地であれば3分の1と納税額が軽減されていますが、更地では適用されません。
毎年1月1日に資産価格が決定されるため、更地にしてから年を跨ぐ場合は納税負担が大きくなると覚えておきましょう。
参考:総務省「固定資産税」
更地にすると再建築不可となるケースがある
現在の建築基準法と異なる建築方法で建てられた住宅の場合、解体したあとに再び住宅を建てられない恐れがあります。
売却するときに不利な条件であり、売却自体が難しくなるでしょう。
再建築不可となる土地の条件は次の通りです。
- 都市計画区域、または準都市計画区域にある土地
- 接道義務を満たさない土地
上記2点に当てはまる住宅であっても、接道義務を満たせば再建築可能です。
接道義務とは、緊急車両が入れるように道幅を広くとる意味があり、土地の一部を道路としてセットバックするなどの策を講じる必要があります。
また、解体せずとも建築申請が不必要なリフォームをして住み続けられるのであれば、売却可能です。
現行の建築基準法ができた1950年以前に建てられた住宅の場合は、再建築不可でないかを調べておくとよいでしょう。
関連記事: 建築基準法の接道が丸わかり!条件と満たさない場合の対処法
建物消失登記の手続きをおこなう必要がある
住宅を解体したあとは、1ヶ月以内に建物消失登記の申請をしましょう。
手続きを忘れると、10万円以下の過料が課せられる恐れがあるほか、建物の固定資産税を支払い続ける必要があります。
売却時にも必要な手続きになるため、早めにすませておきましょう。
関連記事: 建物滅失登記とは?家の解体後に自分で手続きする流れを解説
実家を処分しない場合のリスク
実家を処分しない場合のリスクは次の通りです。
- 維持管理に手間暇がかかる
- 隣家に迷惑をかける恐れがある
- 特定空き家に指定される恐れがある
- 固定資産税を支払い続けなければならない
解体費用は高額であるものの放置しておくにもリスクが生じるため、空き家になった家を今後どう活用していくのかしっかりと計画しましょう。
維持管理に手間暇がかかる
空き家となった実家でも、建物をそのまま残しておく間には維持管理が必要となり、手間暇もかかります。
手をかけられない空き家は想像以上に劣化スピードが早く、通水をしないと水道管がサビるほか、換気をしないとカビの発生につながります。
実家の処分で解体費用の捻出に悩んで放置するよりは、売却するのか賃貸にするのかなど、活用方法を決めるほうが気持ちも楽になるでしょう。
隣家に迷惑をかける恐れがある
空き家にしたまま放置すると、隣家に迷惑をかける恐れがあります。
- 建物の劣化で外壁などが崩れ飛散する
- 庭の木が隣家に侵入する
- 野良猫などの住処になる
- 放火の対象になる
- 不法侵入者が滞在する
空き家は建物の老朽化による近隣住宅や住人への被害のほか、思いがけないトラブルへと発展する恐れがあり、放置しておくのは得策とは言えません。
近隣住民とのトラブルとならないよう、空き家の期間中はしっかりと管理していく必要があります。
特定空き家に指定される恐れがある
建物の劣化状態によっては特定空き家に指定され、自治体から助言・指導、勧告をされても放置し続ける場合、住宅用地特例から外れて固定資産税が高くなります。
命令に従わないと50万円以下の過料が課され、最終的には、強制代執行により強制的な解体工事がおこなわれるケースもあるでしょう。
特定空き家に指定されるのは、保安上危険な建物や著しく衛生環境の悪い建物などです。
特定空き家に指定されると多くのデメリットがあるため、売却予定があるのなら早めの処分が安心です。
固定資産税を支払い続けなければならない
空き家を所有している限り、固定資産税を支払い続けないといけません。
経年劣化がひどいと住宅用地特例における軽減税率が適用されず、支払う固定資産税の負担が増える恐れもあります。
実家を持て余しているのなら、今後の活用方法について真剣に考えたほうが経済的な負担も軽くなるでしょう。
実家の処分にかかる期間や流れ
実家の処分にかかる工事期間は、3~14日ほどです。
なお、建物の規模やブロック塀の撤去など、付帯工事の有無によっても作業期間は異なります。
解体までの流れは次の通りです。
- 見積もり
- 業者選定
- 解体準備
- 解体
- 廃棄物の処分
- 整地
見積もりは業者によって異なるため、相見積もりで選定するのがおすすめです。
解体準備では近隣住民へ配慮のためのあいさつ回りをするほか、電気などのライフラインの停止をおこないます。
隣家への粉塵、騒音トラブルを防止するための養生をおこなったあと、解体作業に入ります。
解体後に出た廃棄物は産業廃棄物として運搬・処分され、整地をして作業完了です。
関連記事: 空き家を売却する方法とは?流れや注意点をわかりやすく解説!
実家の処分にかかる解体費用が払えないときの対処法
実家を処分をしたくても解体費用が支払えないときの対処法は、次の通りです。
- 空き家解体ローンを活用する
- 売却してから解体する
- 住宅付きの土地として売却する
金融機関では空き家ローンを商品として扱っており、融資で解体費用を工面する方法があります。
ローンを活用する以外では、解体せずに売却し、売買契約成立後に受け取る手付金で解体費用を捻出する方法もあります。
解体せずとも、住宅付きの土地として売却計画を進めるのもひとつの手です。
空き家となった実家を解体せずに活用する方法
空き家となった実家を解体せずに活用する方法は次の通りです。
- 賃貸で貸し出す
- 解体せずに売却する
- 買取業者に売却する
解体にかかる費用面の問題などで自分で取り壊せない場合や、建物の状態がよくて取り壊すのが惜しいときに検討してみましょう。
賃貸で貸し出す
実家を処分せずとも、賃貸で貸し出す方法があります。
国では生産性の向上から、活用されていないストック不動産の新たな需要のために、自治体に働きかけて空き家バンクのサービスを推進しています。
空き家バンクは、貸したい人と借りたい人とをマッチングさせるサービスです。
民間企業とは異なるため、借り手にとっては安く住まえるメリットがあります。
参考:国土交通省「空き家・空き地バンク総合情報ページ」
解体せずに売却する
建物の劣化状況や立地によっては、解体せずとも売却しやすいケースがあります。
資産としての役割を果たす期間である耐用年数の観点から、一般的に、築20年を超える建物は価値がゼロになります。
しかし、駅に近くて便利な土地や建築としての価値や趣がある建物、リフォームがされており状態がよい建物にいたっては、必ずしも価値がゼロになるわけではありません。
管理状況にもよるため、解体を視野に入れて売却する際には、不動産会社に相談して最善の策を講じるとよいでしょう。
買取業者に売却する
買取業者に売却するのであれば、建物を解体しなくても早期に買い取ってもらえます。
買取り後、通常はリフォームや清掃をおこなったあとに売りに出されます。
立地条件や劣化状況によっては買取り不可な場合もあり、必ずしも売却できるわけではありません。
仲介業者を通じての売却価格の8割ほどと、安く売却しなければならないデメリットがあります。
関連記事:不動産売却の確定申告は必要?不要なケースと必要書類も解説!
実家の処分に悩んだら不動産会社に相談しよう
実家の処分にかかる解体費用は、建物の構造や広さ、立地条件などによって異なります。
30坪程度の木造であれば3~5万円/坪、鉄筋造は5~7万円/坪、鉄筋コンクリート造(RC造)は6~8万円/坪が解体費用の相場です。
不用品の処分はできるだけ自分でおこない、自治体の補助金などをかしこく活用するなどすれば、解体費用を節約可能です。
空き家をそのままにしておくと多くのリスクがあります。
費用を捻出できない場合は、不動産会社と相談しながら物件それぞれの条件に合った活用方法を見出すとよいでしょう。