2015年5月に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」によって、倒壊の危険性があるまたは衛生上問題があるような空き家は税金が軽減されなくなりました。また2021年6月の法改正では特定空家等の対象として「将来著しく保安上危険又は著しく衛生上有害な状態になることが予見される」空家等も含まれる旨記載されています。そのため、不要な空き家は放置せずに解体するのがおすすめです。

しかし、解体すると建物滅失登記が必要になります。

ここでは、建物滅失登記の内容や申請方法、怠ることのデメリットについて紹介します。

建物滅失登記とは?

建物を解体したら1カ月以内に行わなければならない

建物滅失登記建物の全部を解体したときや火災によって焼失したときに登記簿に反映させるために行うものです。そのほか、登記簿に記録されている建物が既に存在しない場合にも、建物滅失登記が必要です。

不動産登記法57条によって、建物を解体したら1カ月以内に建物滅失登記を行わなければならないと定められています。また建物滅失登記には申請義務が課せられており、怠った場合には10万円以下の過料に処される可能性があるので注意が必要です。さらに、取り壊したり焼失したりした建物が、建物の一部や付属建物である場合には、建物滅失登記ではなく、表題部変更の登記が必要です。

建物滅失登記を法務局に申請すると、法務局から市町村役場へ通知が行きます。そのため、役場で手続きをしなくても課税台帳からはずれることになります。

建物滅失登記が完了すると、その建物の登記簿は閉鎖され、表題部には抹消の表示がされます。その際、建物の所有権や抵当権などの権利に関する登記は残したまま閉鎖されます。

建物滅失登記は、建物における死亡届と例えられることもある登記です。

建物滅失登記に必要な書類

建物滅失登記を行うための必要書類には下記のような書類があげられます。

①建物滅失登記の登記申請書

登記申請書は必ず必要な書類になります。
法務局に取りに行くか、ホームページからダウンロードすることで入手でき、費用は無料です。
登記申請書には登記簿謄本に記載されている不動産番号や構造、床面積などを記入します。自分で記入する場合、黒のボールペンまたはインクなどで記入する必要があり、鉛筆での記入は不可です。
コピーし、控えをとっておくと良いでしょう。

②滅失した建物の登記簿謄本・公図・地積測量図・建物図面(各階平面図)

登記簿謄本や図面などは法務局で入手できます。またオンライン請求で取得することも可能です。建物の登記簿は、全部事項証明書を取得しましょう。図面は、公図、地積測量図、建物図面及び各階平面図を一括で請求できます。

登記簿謄本では記載されている所有者の住所と氏名を確認しましょう。

・住所が異なっていた場合
戸籍の附票や住民票の写しなど住所が変更された証明書が必要です。

・氏名が異なっていた場合
戸籍謄本や除籍謄本など、登記に記載された氏名と現在の氏名がつながる書類が必要です。抵当権がついていないことも確認しておきましょう。

③建物滅失証明書

解体業者などが間違いなく解体したことを証明する書類で、建物取毀(とりこわし)証明書とも呼ばれています。
自分でインターネットなどを参考に証明書を作成し、解体業者に印鑑だけ押してもらい、送り返してもらう方法も有効です。

④解体業者の代表者事項証明書と会社の印鑑証明書

建物滅失証明書の工事人を証明するための書類で、解体業者の代表者事項証明書と会社の印鑑証明書は、建物滅失証明書とセットで解体業者から送り返してもらいます。

⑤滅失した建物が存在したところの地図

住宅地図は新しい版のものを図書館などで借りるか、Googleマップを印刷して該当建物がわかるように印をつけます。
一般的には、インターネットで地図を入手する方法が手軽ですが、住宅地図は1500分の1もしくは3000分の1の縮尺で作成されているため、Googleマップを使用する際は縮尺に注意しましょう。手書きの地図でも構いません。

⑥委任状

申請者本人が法務局に行くことができず代理人に依頼する場合や土地家屋調査士などに申請を依頼する場合、委任状が必要です。

個人で代理人に依頼する場合はインターネット上のテンプレートを参考に作成しましょう。
登記の目的や原因、不動産の表示や指定した代理人の氏名・住所等を記載します。原則として実印を使用し、建物所有者の印鑑証明書を添付します。

⑦現地の写真

建物滅失登記に必須ではありませんが、解体した証明に現地の写真を撮っておきます。
現地の写真は、解体前の写真があると建物を解体した証明に利用できます。居住地域が離れている場合などは、無理に用意する必要はありません。
解体した業者が施工した証明として工事完了後に添付する場合もあります。

ここまで建物滅失登記に必要な書類について解説してきました。
書類に不備がある場合、補正が必要になり、余計な手間を生じる可能性があります。
そのため、書類に不備や不足がないかを十分確認し、余裕を持って準備することをおすすめします。

建物の所有者が亡くなっている際に必要なもの

解体した建物の所有者が亡くなっている場合は、亡くなっていることを証明する書類と申請人が相続人であることを証明する書類が必要です。
相続関係書類として、申請者の戸籍謄本と所有者の住民票の除票などが必要です。
遺産分割協議書のような遺産に関する書類や法定相続人全員の承諾書類は必要ありませんが、解体前に同意を得ておきましょう。

・所有者の戸籍謄本・除籍謄本

所有者が亡くなっていることの証明に、建物所有者の戸籍謄本または除籍謄本を用意します。
亡くなった方に配偶者や子供が同じ戸籍に残っていれば戸籍謄本を、戸籍に誰もいない場合は除籍謄本を取得します。
戸籍謄本や除籍謄本は管轄の役所で取り寄せるか郵送で取り寄せることもできます。自治体のホームページに取得方法や必要書類、費用が記載されているため、確認すると良いでしょう。
申請費用の他、申請者の本人確認書類の発行費用が必要になる自治体もあります。

・申請者の戸籍謄本

建物滅失登記では、申請者が所有者の相続人である証明に申請者の戸籍謄本が必要ですが、亡くなった人の戸籍謄本、または除籍謄本に申請者の記載があれば不要です。
戸籍謄本は戸籍がある市区町村(本籍地)の役所で取得でき、住民票のある自治体ではないため注意しましょう。
所有者の戸籍謄本や除籍謄本と同様の手順で用意します。

・所有者の住民票の除票または戸籍の附票

建物の所有者が亡くなった際の居住地の証明に、住民票の除票または戸籍の附票を用意します。
所有者の戸籍謄本や除籍謄本に加えて、住民票の除票または戸籍の附票を使って所有者の本人確認を行います。
亡くなった後、住民票は除票として記録が残ります。戸籍の附票には、戸籍を作成した時以降の住民票の移り変わりが記録されており、戸籍の附票は戸籍謄本などの取得と同時に申請すると手間を省くことができます。

建物滅失登記を自分で行う際の流れ

建物滅失登記の申請は法務局に

建物滅失登記の申請は、建物の所在地を管轄する法務局に郵送、または持参して申請します。
マイナンバーカードを持っている場合、オンラインで登記申請をすることができますが(ICカードリーダライタが必要)、持っていない場合、書面での届け出が必要となります。

法務局に出向いて申請する場合の申請方法と注意点

法務局に持参して申請する場合には、法務局が業務を行っている、平日の午前8時30分から午後5時15分までの時間に行かなければなりません。
また登記手続きには予約が必要な場合もあるため、書類を確認してもらいたい場合などは事前に管轄法務局のホームページ等で確認することをおすすめします。

書類を提出後、補正(軽微な不備を訂正すること)の連絡があれば申請に使用した印鑑を持って対応します。登記所から登記完了証が発行されれば、建物滅失登記は完了です。登記完了証を受け取る際にも申請した時と同じ印鑑が必要です。建物滅失登記の完了は、登記事項証明書を取得することでも確認が可能です。

郵送で申請する場合の申請方法と注意点

自分で申請を行う場合で、平日に法務局に行くことが難しいときなどには、郵送での申請も可能です。
郵送で申請する場合には、申請書の入った封筒の表面に「不動産登記申請書在中」と記載し、「登記完了証」を返送してもらうための返送用封筒を同封します。
郵送する際はできる限り書留郵便を使用しましょう。また返送用封筒についても書留郵便(簡易書留・レターパックプラス520を含む)を利用しましょう。

郵送で申請すれば、原則として法務局に出向く必要はありません。しかし、書類に不備があると補正が必要になり、余計な手間を生じることもあるので注意が必要です。

登記されていない建物を解体した場合

解体した建物が登記されていない場合には、建物滅失登記の必要はありません。その代わりとして、「家屋滅失届」を市区町村の税務課窓口に提出する必要があります。

建物が登記されているかどうかは、家屋番号の有無によって調べることができます。家屋番号の有無は、固定資産税の納税通知書で確認することが可能です。納税通知書で、対象となる建物の所在地番と一緒に家屋番号が記されていなければ、その建物は登記されていません。
登記されていないことが確認出来たら、その建物がある土地を管轄している市区町村の税務課窓口に「家屋滅失届」を提出します。

家屋滅失届を提出する際には、建物滅失登記と同様に、解体業者が発行する建物滅失証明書や印鑑証明書が必要です。
滅失証明書には、解体業者の証明書のほかに、焼失の場合には消防署による証明書などが代用されます。家屋滅失届の用紙は、それぞれの市区町村の役所にある固定資産税の係に備えられています。
また、提出された家屋滅失届に基づいて、役所の現地確認が行われる場合があるので注意が必要です。

なお、登記されている建物を解体して管轄法務局に建物滅失登記を行った場合には、法務局から建物を管轄する市区町村の役所に通知されるため、家屋滅失届の提出は必要ありません。

建物滅失登記を怠ることのデメリット

・土地の売却ができない

建物を解体したあとで土地を活用したい場合や購入希望者がいた場合、建物滅失登記が完了していないと更地であっても土地の売却ができません。

・解体した建物に固定資産税がかかり続ける

登記が残っている以上は、建物はあるものとして課税対象のままになってしまいます。
ただし、建物を解体して更地にすると、「住宅用地特例」による軽減税の対象外になり、固定資産税が高くなるため注意が必要です。
建物の劣化が進んでおり、売却を予定している場合、中古住宅として売り出すより、更地のほうが買主を見つけやすいでしょう。
よって売却の見込みが立つまでは更地にせず、引き渡し前に解体し、更地渡しとすれば、固定資産税を抑えることもできるでしょう。

・建て替えができない

解体した建物の代わりに新しい家やアパートを建築しようと思っても、登記上に以前の建物が残ったままになっていれば、建築許可がおりないため新たに建てることはできません。

・建物の所有者が亡くなった場合に建物滅失登記の手続きが煩雑になる

建物滅失登記をせずに長年放置されているうちに、所有者が亡くなってしまった場合、手続きが煩雑になってしまいます。後日何らかの理由で建物滅失登記が必要となったとき、亡くなった人の戸籍謄本か除籍謄本などの書類が余計に必要となるためです。

・申請義務がある

不動産登記法57条によって、建物を解体したら1カ月以内に建物滅失登記を行わなければならないと定められています。怠ると10万円以下の過料に処される場合があるため、早めに手続きを行いましょう。

このようなデメリットを受けないためにも、解体などで建物滅失登記が必要になった場合には、その日から1カ月以内に手続きを完了しておくべきでしょう。

建物滅失登記の代行依頼先

前述の通り建物滅失登記は建物を解体したら1カ月以内に行わなければならないという、時間の制約が存在します。

法務局での慣れない作業などを自分でできる自信がない、書類を揃える時間がないといった場合には、土地家屋調査士などの専門家に依頼するのがおすすめです。
費用はかかりますが、平日に時間を取ったり自分で書類を作成したりすることが難しい場合には、確実に登記申請を行ってくれる専門家に依頼をすることで安心できます。

建物滅失登記の費用相場

<自分で行う場合>

自分で建物滅失登記を行う場合、必要書類を揃えるために必要な費用は約1,100円です。
法務局の窓口で申請すると、登記事項証明書(建物の登記簿謄本)600円と地図等情報450円が必要です。費用は収入印紙で支払います。収入印紙は法務局の販売窓口もしくは郵便局で購入可能です。

さらに事前にオンライン請求を行い、窓口で交付を受けるとそれぞれ480円、430円の合計910円に費用を抑えることができます。
支払いについてはネットバンキングまたはペイジーに対応したATMで電子納付する必要があります。

<土地家屋調査士に依頼した場合>

建物滅失登記を土地家屋調査士に依頼した場合の費用の相場は、3~5万円程で、調査業務、書類作成及び申請手数料、報酬などが含まれています。

なお、登記というと司法書士のイメージがありますが、建物滅失登記は土地家屋調査士だけが対応可能な業務であり、司法書士には依頼できません。

まとめ

自分で登記申請してみよう

建物滅失登記は、登記簿を正確に保つための重要な手続きです。一方で、権利関係も絡まない比較的簡単な不動産登記となっているため、自分で行うことも可能です。

ただし法務局での慣れない作業などを自分でできる自信がない、書類を揃える時間がないといった場合には、土地家屋調査士などの専門家に依頼するのがおすすめです。
費用はかかりますが、平日に時間を取ったり自分で書類を作成したりすることが難しい場合には、確実に登記申請を行ってくれる専門家に依頼をすることで安心できます。

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