犬や猫などのペットを飼っていた人は、不動産を売却するときに気を付けなければなりません。何も対策をしないまま取引に臨むと、不利な条件で契約することなるおそれがあります。そこで今回は、ペットを飼っている人が不動産を売る際のポイントについて解説します。
この記事の目次
ペットを飼っていたら不利になるの?
住んでいたときにペットを飼っていたからといって、必ずしも不動産売却の価格が安くなるわけではありません。あくまでも重要なのは物件としての状態なので、悪影響がないことが明らかなら、特に気にしなくても大丈夫です。
また、多少の傷みや汚れであれば、ほとんど価格は変わらない場合もあります。ペットがいたことを告げただけで、価格を大きく下げようとする不動産会社は、売却の依頼先として信頼できる相手ではないかもしれません。
近年はペット対応も増えている
ペットと一緒に暮らすことを前提とした不動産を売る場合も、あまり不利にならないことが多いです。ペットを飼う世帯が増加するにつれて、ペット対応のマンションも増えてきました。
単純に飼っても良いというだけでなく、いろいろなサービスを提供しているところも少なくありません。
たとえば、都心部では近所迷惑にならないように、しつけの仕方を教えてくれるサービスなどがあります。散歩を終えたペットの足を洗う場所やエレベーターにペットが乗っていることを知らせるボタンなど、共有部に対する配慮も多いです。
各部屋のドア付近にリードをかけるフックを取り付けていたりするなど、従来のマンションとはさまざまな点で違います。
このように、悪影響がない不動産やペットを飼うことが前提の不動産なら価格は下がりにくいです。どちらにも当てはまらない場合は、売りに出す前に対策することを検討しましょう。
フローリングや柱に注目!爪や歯が付けた傷
価格の下落を防ぐ対策をするにあたって、どのような点が注目されやすいか把握しておいたほうが良いです。最初に目に付きやすいのはフローリングや柱などの傷です。そういう比較的硬い箇所は、ペットを飼っている場合とそうでない場合とで、傷の多さや深さに差が出やすいからです。
たとえば、猫は爪を研ぐためにフローリングをひっかくことがありますし、犬は歯がかゆくて柱を噛むことがあります。日常的に繰り返されていた場合、無数の傷ができていたり、表面が削れて奥が見えていたりするなど、ひどい状態になりがちです。
普通に生活していた場合に見られる劣化とは明らかに違うので、対策をしておかないと価格に大きく影響します。
もちろん、壁紙や畳のような軟らかい箇所も傷ついていることが多いです。しかし、そのような箇所は、人だけが暮らしていても劣化することがよくあります。たばこを吸って壁紙が黄ばんだり、飲み物をこぼして畳にしみができたりすることは珍しくありません。
また、湿気などの影響によっても変色しやすいため、経年劣化が目立ちやすいです。物件が古いという印象を与えてしまい、購入する意欲を阻害する要因になります。そのため、売りに出す前に新調することを勧める不動産会社が多いです。
つまり、ペットを飼っていた場合もそうでない場合も取り替える可能性が高いため、あまり深く対策を考えるポイントではないということです。
傷がある場合はどうするの?3つの選択肢
フローリングや柱などに傷がある場合の選択肢は、大きく3つに分けられます。
自ら補修
1つ目は自分で補修することです。浅い傷であれば、ワックスをかけるだけで見えなくなる場合もあります。ホームセンターには、フローリングの傷に塗り込むクレヨンなど、補修用の道具がたくさん売られています。それらを上手に使うと深い傷であっても目立ちにくくなるでしょう。
専門家へ依頼
2つ目の選択肢は、専門家に依頼して補修してもらうことです。やはり素人の技術では、きれいな仕上がりになるとは限りません。確実に直したい場合や傷がひどい場合は、自分で補修することは考えずに、最初から依頼したほうが時間とお金を節約できます。
工務店などに依頼しても良いですし、売却を任せる不動産会社に相談しても構いません。不動産会社の多くは、リフォームも手掛けていたりリフォーム会社と提携していたりします。そのため、手頃な費用で補修するプランを提案してくれる可能性があります。
あえて補修しない
相談したときに、あえて補修しないことを勧められるかもしれません。それに従うのが3つ目の選択肢です。立地などの要因によって売れ残りが予想される不動産は、補修せずにその分だけ安くして価格をアピールしたほうが良い場合があります。
また、買い手のなかには、ペットを飼うので多少の傷は気にしないという人もいます。そういう事情を考慮して補修しないケースもあるのです。
飼い主は匂いに気づきにくいので要注意
自分が気づいていない要因によって価格が下がることもあるので注意しましょう。その代表と言えるのは、不動産に染みついているペットの匂いです。飼っていたのがずいぶん前なら、もう消えている場合もあります。しかし、基本的には残っているものとして対策をしておいたほうが安心です。
長くペットと暮らしていると、匂いに慣れてしまいます。自分以外は強く感じることもあり、その場合は価格交渉のときに指摘されて、値下がりを招きかねません。そのため、たとえ匂いがしないと思っても、友人などに来てもらって、客観的な感想を聞いておくのが望ましいです。
嗅覚には個人差があるので、可能であれば数人を呼んで確認してもらいましょう。
匂いがした場合
匂いがするとわかった場合は、その程度に合わせた対策をすることが大切です。自分だけでなく、ほかの人もあまり感じないという程度であれば、消臭スプレーを使用するだけでも十分かもしれません。
ペット用のものがホームセンターやペットショップで売られており、何本か購入しても大した出費にはならないでしょう。特定の箇所の匂いが強い場合は、その源を取り除くために重点的に清掃をしてみましょう。それでも消えない場合は、壁紙を取り替える際に、消臭効果のあるものを選ぶという手もあります。
一般的な壁紙と比べると高いですが、少しの節約を考えるより、匂いによる価格の下落を抑えるほうが得策です。
しっかり内覧の対策をして良い印象を
購入検討者の内覧に備えることも非常に重要です。初めて不動産を見たときに印象が悪ければ、成約に至る可能性は低くなってしまいます。まだ自分が住んでいる場合は、内覧が始まる前に余裕を持ってペットを外に連れ出しておきましょう。
ペットがいると話が盛り上がる可能もありますが、それよりリスクのほうが大きいと考えられます。
たとえば、内覧に来た人が動物嫌いであった場合は、ペットを見ただけで購入を見送るかもしれません。動物嫌いでなくても、興奮してまとわりついたり吠えたりして迷惑をかけてしまうおそれがあります。ペットを任せられる家族や知人がいない場合は、預かるサービスをしている業者もあるので利用を検討しましょう。
連れ出したあとは、換気をしながら掃除をしてください。特に重要なのは、床に落ちている毛を取り除いておくことです。内覧に来る人は、できるだけ細かく不動産の状態をチェックしたいと考えています。床はよくチェックされるポイントのひとつなので、毛がたくさん落ちていると目につきやすいです。
自分にとっては清潔なペットであっても他人はそうは思ってくれません。不衛生に見えるため、不動産全体の印象のダウンにつながりやすいです。掃除機だけでなく、粘着性のローラータイプのクリーナーなども使って、入念にきれいにしておきましょう。
ペットを飼う予定の人が来たらチャンス
内覧では、ペットの影響をなるべく消すことが不動産を売れやすくする基本です。しかし、例外もあるので覚えておきましょう。
それは内覧に訪れた人が、ペットを飼いやすい不動産を求めている場合です。自分の対応次第で、早期成約を実現する大きなチャンスになります。これまで飼っていて便利に感じた点を伝えると、購入を決意してもらう後押しになるかもしれません。
犬を散歩するときのおすすめのコースや、ペット用品の豊富な店舗などを教えてあげると良いです。ペット関係のコミュニティや評判の良い動物病院が近場にあるなら、それも伝えると新生活をイメージしたときに感じる不安を和らげられでしょう。
近隣とのお付き合い
また、ペットを飼うにあたって、近隣住民とのトラブルが起こらないか気にする人も多いです。自分が気を付けていたことがあれば、どうしていたのかを具体的に教えてあげましょう。ただし、気苦労が多かったという印象を与える伝え方をするのではなく、あくまでも近所付き合いのコツとして話す必要があります。
さらに、近くでペットを飼っている人がいれば、それも教えてあげると良いでしょう。
たとえば、マンションの場合は隣もペットを飼っているとわかると安心しやすくなります。このように、ペットと一緒に暮らしたいと考えている人が内覧に来ることも想定して、対応をしっかり考えておくことも大事です。
主観で判断するのは禁物!ペットと暮らさない人の視点も持とう
ペットを飼っている人は、飼っていない人の気持ちがわかりにくいものです。そのため、不動産売却を検討するときは、主観に頼らないようにしましょう。自分にとっては問題なくても、購入検討者にとっては重大な問題である可能性があります。
たとえば、強い動物アレルギーを持っている人は、わずかにでもペットの痕跡が残っている不動産は敬遠する可能性が高いです。肌が弱い人や衛生面にこだわる人は、いくら見た目がきれいになっていても、ノミやダニの存在が気になる場合もあります。
そのため、ハウスクリーニングの業者に依頼して、徹底的に清掃してもらうことも視野に入れておいてください。
大切なのは、ペットを飼わない人が住む不動産として、問題がないか客観的に見ることです。そのうえで、補修の仕方や価格の調整について考えなければなりません。ペットと長く暮らしていて客観的に見る自信がない場合は、売却を依頼する不動産会社にチェックしてもらいましょう。
早い段階で確認してもらったほうが誤った対処をせずに済みます。ペットを飼っていた場合は、今回紹介したポイントに注意して、通常より慎重に不動産売却を進めましょう。