不動産屋の店頭で不動産物件の広告チラシが貼り出されているのを目にしたことのある人は多いでしょう。普段何気なく見ている不動産の広告チラシですが、自分が不動産を売り出す際にも物件の広告チラシは使われます。 そこで、不動産の広告チラシはどのように作られているのか、魅力的な広告チラシを作ってくれる不動産会社の選び方はどうすればいいのかなどを解説します。
この記事の目次
不動産物件広告チラシには何が書かれているのか?
不動産物件の情報が掲載されている広告チラシにはいくつかの種類がありますが、その中心となるのがひとつの物件の情報をA4またはB4の用紙1枚に掲載して片面印刷したものです。
典型的なものは左上に最寄り駅と一戸建て・マンションなどの物件の種類が大きく表示され、間取り図と外観写真などが真ん中あたりに大きく表示されています。右側に詳細な物件の情報が書かれているため、この1枚を見れば物件の概略はほとんどわかります。
このような広告チラシは、不動産会社から収集した情報を配信する会社の名前から「マイソク」と呼ぶこともありますが、ほかの不動産ポータルサイトなどが使用している名称である「ファクトシート」などと呼ぶ場合もあります。不動産会社同士の物件概要のやりとりにもこのマイソクやファクトシートは使われており不動産の売却活動において必須アイテムとなっています。
この物件広告チラシに掲載される情報は、どの不動産会社の広告チラシを見てもほとんど共通のものになっています。「不動産の表示に関する公正競争規約」という業界の自主規制によって、不動産広告で表示することが必要な事項が定められているからです。
また「宅地建物取引業法」や「不当景品類及び不当表示防止法」によっても、広告チラシに掲載してはいけない情報や誇大広告の禁止なども決められています。
不動産売却の広告チラシに記載すべき内容とは
物件広告チラシに掲載されている情報には、大きく分けて「物件概要」「間取り図」「物件写真」「取扱業者の情報」があります。
物件概要は、物件の種類や価格、面積や交通アクセス、土地であれば建ぺい率や容積率など物件そのものに関する情報です。間取り図は図面で表示され、部屋の方角を含め、建物内の間取りが把握できるようになっています。
物件写真は建物の外観や内部の写真、主な設備の写真などが掲載されますが、紙面の都合上物件広告チラシでは1点~2点程度だけしか掲載されないことがほとんどです。取扱い業者の情報は、物件を取り使っている不動産会社の商号や宅地建物取引業の免許番号、電話番号やメールアドレスなどの連絡先情報が掲載されます。
ここに取引態様として「仲介」「代理」などの情報も掲載されるのが通常です。
不動産売却のチラシを利用するメリット
物件広告チラシは紙1枚で片面印刷の簡単なものに見えますが、不動産売却の現場ではさまざまなメリットがあります。
最初の資料が広告チラシ
まず、不動産売却の依頼を受けた不動産会社が、購入希望者に物件情報として渡す最初の資料が物件の広告チラシです。購入希望者はこの広告チラシを見て検討候補に入れるのかどうかを判断するので、物件が売れるかどうかに大きな影響力があります。
また、不動産売却の依頼を受けた不動産会社は自社だけで購入希望者を探すわけではありません。他の不動産会社にも広告チラシを使って物件情報を共有し、他の不動産会社にも購入希望者を探してもらうのです。
依頼された不動産会社が真剣に客を探す気になるかどうか、また自社の客に積極的に勧めたいと考えるかどうかも、物件広告チラシによって左右されるわけです。
他の不動産会社でも使われる
不動産会社が購入希望者に物件を紹介する際には、売主から依頼を受けた不動産会社の作成した物件広告チラシをそのまま使います。チラシの一番下の帯に掲載されている取扱業者の情報だけを自社のものに差し替えて顧客に渡すのです。このような広告チラシの使い方は不動産業者の間では許されています。
したがって、最初に作成された物件広告チラシが、他の不動産会社でもそのまま使われることがよくあるのです。
実際に購入希望者が購入を決めるときには、必ず物件を見学しますし、物件広告チラシだけではわからない情報は売却を依頼されている不動産会社に確認します。
不動産の売買は数千万円単位のお金が動く非常に大きな買い物ですが、各物件について詳細なカタログなどはありません。よって物件を選定する際、多くの人々が最初に目にする物件広告チラシを1つの判断材料として、このまま購入を検討するのか判断しています。物件広告チラシの役割が非常に大きいのも理解できるでしょう。
不動産売却のチラシを作成する際のポイント
不動産売却の広告チラシを作成するのは、不動産売却の依頼を受けた不動産会社ですが、売り主が、不動産会社宛に作成依頼する際、より効果的な広告チラシを作成する上でのポイントをご紹介します。
物件写真を大きく掲載する
チラシを見て真っ先に購入者の目に入るものが物件写真となります。
内装写真はもちろんですが、外観写真もその物件の第一印象となり得るので、重要となってきます。掲載写真は実物に近く、写りが良いものを選び、購入権当社の目を引きやすいように大きく掲載してもらえるように依頼しましょう。
購入希望者が知りたい情報を記載する
広告チラシの内容として、購入意欲を高めるために購入希望者がどのような情報を求めているのかを把握して、記載することが重要です。
知りたい情報が記載されていない場合、購入の選択肢から外れてしまうという可能性もあります。
物件の住所、駅からの距離、周辺の施設(学校、病院、スーパー等)・環境、間取り等の情報は最低限記載すること。また、購入希望者が日常生活をイメージできるように詳細な情報をできるだけ記すようにしましょう。
アピールポイントとなるキャッチコピーを考える
購入希望者が重要視している条件などをキャッチコピーに入れ込むと、購入希望者の目に留まりやすく、お問い合わせに繋がる可能性も高まります。
実際に住んでいた売り主の意見も反映した上で、購入希望者に興味を持ってもらえるアピールポイント・文言を組み込んだキャッチコピーを不動産会社と一緒に考えることをおすすめします。
最後にキャッチコピーを考える上で、後述する法律の規制に注意しましょう。
不動産売却のチラシ内容は法律で規制がある
不動産売却の広告を掲載する際、法律で定められているルールがあります。
主な3つの規則を確認しておきましょう。
誇大広告の禁止(宅建業法32条)
誇大広告とは、実物以上に良い表現で誤解させる表示をした広告です。
事実とは明らかに異なった内容を表示したり、実際のものよりも著しく優良もしくは有利だと、購入希望者に誤認させるような表現を禁止しています。
広告開始時期の制限(宅建業法33条)
不動産売却の広告を出せる時期に関しても物件の状況によって制限があります。
未完成の宅地は開発許可を受けた後、未完成の住宅は建築確認があった後でないと広告が出せないルールとなっています。
既存の住宅を売却する際はあまり関係のないルールとなっていますが、大規模なリフォームなどをしている場合は注意が必要です。
取引態様の明示(宅建業法34条)
広告には取引態様を明確に記載する必要があります。
「取引態様」とは宅地建物の取引の形式のことで
1.自己が契約の当事者となる「自己取引」
2.代理人として契約交渉等に当たる「代理取引」
3.媒介して契約を成立させる「媒介」
の3つに分かれます。
※不動産の広告作成の際は条文も参考の上、注意して作成してください。
建設産業・不動産業共通情報(国土交通省)
宅地建物取引業法の改正について(国土交通省)
不動産会社によって差が出るチラシ作成の実力
物件広告チラシには、それを作成する不動産会社の個性が表れます。デザインとして非常に優れたチラシを作る会社もあれば、デザインにはそれほど気を遣っていないシンプルな広告チラシを作る会社もあります。
その物件に見合ったデザインのチラシを
フルカラー印刷のチラシなのか、単色のチラシなのかだけでも印象は大きく変わります。ただ、色が多ければ物件が良く見えるとは限らず、築古物件などはモノクロで広告チラシを作ったほうが、印象が良く見える場合もあり一概にどちらが良いのかは言えません。
大切なことは物件に合わせたデザインを採用することです。
また、間取り図の作成も差が出るところです。多くの不動産会社は間取り図作成の専用ソフトウエアを使っていますが、手書きの間取り図を載せるような会社や、設計図面のコピーをそのまま掲載しているような会社、おしゃれな間取り図を作成する会社など不動産会社によって差が出るところです。。
ただ、カッコいい間取り図であれば売却がうまくいくとは限らないのも事実で、物件広告チラシの間取り図でイメージしたものと、実物に大きな差があると当然、購入意思がしぼんでしまうことも少なくないからです。
正確な間取り図情報
間取り図で最も大切なことは、間取りや設備の位置、部屋の向きなどが正確に表示されていることであり、購入希望者も正確な情報を入手したいと考えています。単にデザイン的に優れているかどうかではなく、情報の正確性こそが最も大切であることは覚えておきましょう。
物件写真も購入希望者などに与える影響の大きいものです。ピントが極端にぼけている場合や、極端に暗い写真を掲載した場合などは、物件自体が悪く見えてしまいます。一方で、室内を広くきれいに見せる工夫をして写真を撮影する会社もあり、実力の差が出やすい部分でしょう。
物件概要に関しても何よりも正確な情報の掲載が重要です。この情報が間違っていると売買契約の際や、決済引渡し後に買主とのトラブルに発展しかねません。物件に関する詳細な調査を背景に、正確な情報が掲載されることが大切です。
この物件に関する情報を言葉で伝える部分については、不動産会社によって個性が出やすい部分で、物件の「ウリ」を上手に表現する会社がある一方、ほとんどそのような「ウリ」の情報を出さない会社もあります。
物件広告チラシ作成や配布の費用を払う必要はない
不動産の売却を不動産会社に依頼した際に不動産会社に支払わなければならない費用は、基本的に仲介手数料のみです。仲介手数料の金額は宅地建物取引業法による規制があり、宅地建物取引業法を受けた国土交通省告示で具体的に上限が定められています。
不動産会社が受け取る報酬は、この上限の範囲内でなければならないのです。
ただ、稀に不動産会社が仲介手数料以外の報酬を要求してくることがあります。たとえば、物件を広く告知するために特別な広告を掲載した掲載料を求めてくるなどです。また、特別に物件広告チラシを外注して作成し印刷費用をかけて作成したのだと費用を要求してくることもあるかもしれません。
しかし、このような費用を支払う必要は基本的にありませんので注意が必要です。不動産会社が仲介手数料以外の費用を請求できるのは、顧客からの特別の申し出に従って不動産会社の業務にかかった費用だけだからです。
追加の費用がかかることを承知で自ら不動産会社に依頼したのでない限り、費用を支払う必要は一切ありません。不動産会社が仲介業務のために支出する通常の費用は仲介手数料を得るために支出される営業費用に過ぎないのであり、これをほかの名目で請求するとすれば上限規制に対する脱法行為です。
したがって、物件広告チラシの作成や配布について、売主が費用を支払う必要は一切ないと覚えておきましょう。
※不動産の仲介手数料に関する関連記事はこちら
不動産売却で仲介手数料無料の仕組みとは?デメリットや注意点はない?
魅力的なチラシを作成する不動産会社の見極め方
不動産会社の作成する物件広告チラシは、似たものが多く出回っています。それは不動産ポータルサイトや不動産管理システムなどの普及などに理由があります。今や不動産取引においてはインターネットを使った物件広告は必須であり、多くの不動産会社が不動産ポータルサイトの会員となりそのシステムを利用しています。
これらのシステムではインターネットに掲載する物件の情報を入力すると、インターネットに表示するだけでなく、物件広告チラシを出力できるようになっています。
この広告チラシのフォーマットはサイトごとに種類が決められているため、同じシステムを利用している不動産会社の物件広告チラシは、ほとんど同じデザインになります。
ただ、ポータルサイトを利用している不動産会社であっても、物件広告チラシにこだわりを持っている会社などは、自社で用意した独自のフォーマットを利用して広告チラシを作っていることもあります。
不動産の売却を依頼する際に、魅力的な物件広告チラシを作成してくれる会社を選びたいと考えるのであれば、各会社が実際に使っている物件広告チラシを入手して良く見てみることがおすすめです。
不動産物件広告チラシは不動産会社選びの参考程度に
不動産の物件広告チラシは、販売活動のさまざまな場面で利用される重要な販売促進ツールです。したがって、自分で納得できるレベルの物件広告チラシを作成してくれる不動産会社に売却は依頼したほうが良いでしょう。
ただ、物件広告チラシを上手に作る会社が、販売活動も必ず上手であるとは言えません。不動産の売却には、不動産市場の動向を把握し、適正な売り出し価格を設定し、適切な販売戦略をもって購入希望者を募ることが必要です。買主との契約条件に関する交渉でも不動産会社の実力は問われます。
したがって、不動産会社を選択する際には、基本的な仲介業務の実力がある不動産会社に絞り込み、そのうえで物件広告チラシのレベルで決めるなど、チラシは判断の参考程度として利用するのが良いでしょう。