この記事でわかること ・家の名義変更が必要となるケース |
不動産の売却には、契約締結や売却費用の計算、不動産会社選びなど、さまざまなことに対応する必要があります。
これらの他に、「名義変更」も家を売却する際に必要なこととして挙げられます。
家の名義変更は、相続や贈与、売買などさまざまな場面で必要となる大切な手続きです。
また、2024年からは相続登記が義務化され、期間内までに登記手続きをおこなわないと罰金を支払わなければならない恐れがあります。
本記事では、名義変更が必要となる5つのケースや手続きの流れ、さらに必要書類の取得方法や具体的な費用の内訳までを分かりやすく解説します。
この記事を読んだうえで名義変更の手続きを進め、未然に将来のトラブルを防ぎましょう。
この記事の目次
家の売却には名義変更が必要
家の名義変更とは、売買などが行われて所有権が移転した場合に、不動産登記上の所有権についても元の持ち主から新しい持ち主に変更することです。
不動産についての所有権は、法務局で管理されている不動産登記簿によって管理されています。
そのため、不動産の名義変更を行う場合は法務局への申請が必要です。
相続登記義務化の重要ポイント
2024年から相続登記の義務化が始まり、家などの不動産を相続した場合は原則として3年以内に登記申請を行う必要があります。
この制度変更により、相続人には新たな法的義務が生じています。
もし期限内に相続登記を申請しない場合、正当な理由がないと10万円以下の罰金が科される可能性があります。
ただし、相続人全員の協議が整わないなど、以下のようなやむを得ない事情がある場合は、罰金の対象外です。
・相続人の人数が極端に多く、書類の収集や相続人の把握に時間がかかっている ・相続する不動産について、遺言書の有効性や遺産の範囲等で争っている ・相続登記の義務者が重病である ・相続登記の義務者が配偶者から暴力を受けている ・相続登記の義務者が登記申請にかかわる費用を用意できない |
また、相続登記の義務化に合わせて、「相続人申告登記制度」も新設されました。
この制度は、期限内の相続登記が難しい場合でも、簡単な手続きだけで申請義務を履行できる仕組みです。
これにより、相続発生時の手続きがスムーズになると期待されています。
【5つのケース別】家の名義変更が必要な場面と対応のポイント
家の名義変更は、主に5つの場面で必要となります。
・相続
・生前贈与
・不動産売買
・離婚による財産分与
・親の認知症に備える場合
それぞれのケースで手続きの流れや必要書類、費用が異なるため、状況に応じた適切な対応を行いましょう。
また、税金においても違いがあるため、自分で手続きをする場合の難易度も含めてその比較を表にまとめてみました。
ケース | 主な税金 | 登録免許税率 | 義務・期限 | 自分で手続きする難易度 |
---|---|---|---|---|
相続 | 相続税 | 0.4% | 有り(3年以内) | 中〜高 |
生前贈与 | 贈与税 | 2.0% | 基本的に無し | 中 |
不動産売買 | 譲渡所得税・贈与税 | 2.0% | 基本的に無し | 高 |
離婚による財産分与 | 譲渡所得税 | 2.0% | 基本的に無し | 専門家依頼が一般的 |
親の認知症に備える場合 | 贈与税(生前贈与の場合 | 2.0%(生前贈与の場合) | 有り(親の意思能力があるうち) | 高(専門家への相談を強く推奨) |
これらの場面における名義変更の具体的な進め方とポイントを以下で詳しく解説していきます。
1.相続による実家の名義変更
親の死亡などがきっかけで家を相続した場合は、相続人への名義変更を行う相続登記が必要です。
相続登記は2024年4月から義務化され、相続開始を知った日から3年以内に申請する必要があります。
これを怠ると、10万円以下の罰金が科される可能性があるため、必ず忘れずに行いましょう。
相続による名義変更の流れ・必要書類・費用
こちらでは、相続登記を進める流れや必要書類、費用についてご紹介していきます。
【手続きの流れ】
故人が遺言書を遺しているかどうかで、その後の手続きが大きく変わります。
公正証書遺言以外の場合は、家庭裁判所での「検認」という手続きが必要になることもあります。
「検認」はその遺言書が偽造・変造・隠匿されることを防ぐために行う手続きです。
遺言書がない場合、または遺言書で指定されていない財産がある場合は、相続人全員で「誰がどの財産をどれだけ相続するか」を話し合います。
これを遺産分割協議と呼びます。
家を特定の誰かが相続することで合意したら、その内容を「遺産分割協議書」という書面にまとめ、相続人全員が署名し、実印を押印します。
後述する「遺産分割協議書の作成方法」で詳しく説明していきますので、ぜひ参考にしてください。
登記申請書を作成したら、必要書類と一緒に不動産の所在地を管轄する法務局に提出します。
その際、ご自身の住所地の法務局ではないので注意が必要です。
申請方法は、窓口持参、郵送、オンライン申請があります。
【必要書類】
対象者 | 書類名 | 入手先 | ポイント・注意点 |
---|---|---|---|
被相続人 (親など亡くなられた方) |
・戸籍謄本 ・除籍謄本 ・改製原戸籍謄本 ・住民票(除票) |
・戸籍謄本等は本籍地の市区町村役場 ・住民票は最後の住所地の市区町村役場 |
転籍などで本籍地が変わっている場合、すべての役場に請求が必要です。 |
相続人 | ・戸籍謄本(法定相続人全員分) ・住民票(名義人になる人の分) |
・戸籍謄本は各相続人の本籍地の市区町村役場 ・住民票はその方の住所地の市区町村役場 |
戸籍謄本は、相続人が現在生存していることを証明するために必要で、住民票は新しい名義人として登記される方の住民票が必要です。 |
その他の書類 | ・固定資産評価証明書 ・相続関係説明図 ・遺産分割協議書 ・印鑑証明書 ・不在籍証明書(不在住証明書) ・登記識別情報(登記済権利証) ・上申書 |
・固定資産評価証明書は家が所在する市区町村役場、郵送 ※自治体によってはコンビニで取得することも可能 ・遺産分割協議書は相続人自身で作成 ・印鑑証明書は各相続人の住所地の市区町村役場、コンビニのマルチコピー機 ・登記識別情報(登記済権利証)は法務局の窓口、郵送、オンライン |
遺産分割協議書は、法定相続分と異なる割合で相続する場合に必要で、相続人全員の実印の押印が必要です。 印鑑証明書は、遺産分割協議書に押印した実印が本人のものであることを証明するために添付します。 |
【費用】
かかる費用 | 金額 |
---|---|
登録免許税 | 「不動産の固定資産評価額 × 0.4%」で計算 |
司法書士への報酬 | 5万円~15万円程度 |
必要書類の取得費用 | 戸籍謄本(1通450円)、除籍・改製原戸籍(1通750円)、住民票(1通300円程度)など |
以下の記事でも、相続登記にかかる費用や流れについてさらに詳しく紹介しているので、こちらもぜひ参考にしてみてくださいね。
2.生前贈与で子どもに家を譲渡する場合の名義変更
親が元気なうちに子供に家を譲るなど、生前に無償で不動産を譲渡することを「生前贈与」と言います。
生前贈与による家の名義変更は、将来の相続対策として活用できる方法です。
贈与契約を結ぶ際は、以下の手順を確認しましょう。
生前贈与による名義変更の流れ・必要書類・費用
【手続きの流れ】
【必要書類】
対象者 | 書類名 | 入手先 | ポイント・注意点 |
---|---|---|---|
贈与者 (家を譲り渡す人) |
・対象の不動産の登記識別情報通知または登記済権利証 |
・不動産の登記識別情報通知、登記済権利証は贈与者が保管 ・印鑑証明書は住所地の市区町村役場、コンビニのマルチコピー機 |
不動産の登記識別情報通知、登記済権利証は、いわゆる「権利証」です。再発行はできないため、紛失している場合は特別な手続きが必要になります。 |
受贈者 (家を譲り受ける人) |
・住民票 | 住所地の市区町村役場 | 新しい名義人として登記される方のものです。 |
その他 | ・固定資産評価証明書 ・贈与契約書や贈与証書 |
・固定資産評価証明書は不動産所在地の市区町村役場 ※自治体によってはコンビニで取得することも可能 ・贈与契約書や贈与証書は当事者間で作成 |
固定資産評価証明書は、登録免許税や不動産取得税の計算に必要です。最新年度のものを取得します。 贈与契約書や贈与証書は登記原因を証明する書類となります。 |
【費用】
生前贈与は、相続に比べて税金の負担が重くなる傾向があります。
以下の表を参考にしてください。
かかる費用 | 金額 |
---|---|
登録免許税 | 計算式は「不動産の固定資産評価額 × 2.0%」です 。相続(0.4%)の5倍の税率であり、大きな負担となります。 |
不動産取得税 | 不動産を取得した際に一度だけ課される都道府県税です。原則として相続ではかかりませんが、贈与では課税対象となります 。税率は原則として固定資産評価額の3%(土地・住宅の場合)です。 |
贈与税 | 1年間(1月1日〜12月31日)に贈与された財産の合計額から、基礎控除額の110万円を差し引いた金額に対して課税されます 。不動産は高額なため、贈与税も数百万円にのぼることがあります。 |
このように、相続に比べて生前贈与は税金の負担が重くなる傾向にありますが、贈与税には年間110万円の基礎控除額があり、特例を利用することで、より効率的な資産移転が可能です。
例えば、「住宅取得等資金の贈与税の特例」を利用する場合、贈与を受けた年の翌3月15日までに住宅取得資金等の金額を充て、家屋を新築し居住する必要があります。
非課税限度額は、省エネ等住宅で1,000万円、その他の住宅で500万円です。
こうした特例の適用を検討している場合は、手続きを進める前に税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
生前贈与を選ぶメリット・デメリット
「贈与と相続、結局どちらがお得なの?」という疑問は、多くの方が抱くものです。
相続を待たずに生前贈与を選ぶことには、メリットとデメリットの両方があります。
メリットとデメリットを以下の表にまとめたので、比較し参考にしてください。
メリット | デメリット |
---|---|
・確実に特定の相手に渡せる:自分の意思で、渡したい相手に、渡したいタイミングで財産を譲ることができます。 ・将来の相続トラブルを回避:相続財産を事前に減らしておくことで、将来の遺産分割協議での揉め事を避けられる可能性があります。 |
・税金が高額になりがち:先述したように、相続に比べて登録免許税や不動産取得税の負担が大きくなる傾向にあります。 ・一度贈与すると取り消せない:原則として、一度成立した贈与契約は一方的に取り消すことはできません。 |
3.不動産売買で所有者が変わる場合の名義変更
不動産売買をして、家の所有権が変わる場合も名義変更をします。
この場合、売買契約の締結後に法務局で「所有権移転登記」を行う必要があります。
この手続きには、以下の手順と書類が必要です。
不動産売買による名義変更の流れ・必要書類・費用
【手続きの流れ】
住宅ローンを利用している場合は、所有権移転登記と同時に「抵当権抹消登記」も行います。
この際は金融機関から交付される抵当権設定契約書と抵当権解除証書(登記原因証明情報)、金融機関からの委任状が追加で必要です。
また、これらの手続きは司法書士に依頼することで、確実かつスムーズに進めることができます。
所有権移転登記についてより詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。
【必要書類】
対象者 | 書類名 | 入手先 | ポイント・注意点 |
---|---|---|---|
売主 | ・登記識別情報通知または登記済権利証 ・印鑑証明書(3ヶ月以内に取得したもの) ・住民票 ・固定資産評価証明書 ・不動産売買契約書 ・身分証明書 ・委任状(司法書士に依頼する場合のみ) |
・登記識別情報通知、登記済権利証は売主が保管 ・印鑑証明書は住所地の市区町村役場、コンビニのマルチコピー機 ・固定資産評価証明書は不動産所在地の市区町村役場 ※自治体によってはコンビニで取得することも可能 ・不動産売買契約書は当事者間で作成 |
登記識別情報通知、登記済権利証はいわゆる「権利証」です。紛失している場合は特別な手続きが必要です。 固定資産評価証明書は登録免許税の計算に必要です。最新年度のものを取得します。 |
買主 | ・不動産登記申請書 ・住民票 ・印鑑証明書(3ヶ月以内に取得したもの) ・身分証明書 ・不動産売買契約書 ・委任状(司法書士に依頼する場合のみ) |
・住民票は住所地の市区町村役場 ・不動産売買契約書は当事者間で作成 |
住民票は新しい名義人として登記される方のものです。 不動産売買契約書は登記原因を証明する書類となります。 |
【費用】
かかる費用 | 金額 |
---|---|
登録免許税 | 税率は原則「不動産の固定資産評価額 × 2.0%」です。ただし、マイホームの購入など一定の要件を満たすと軽減措置が適用される場合があります。 |
印紙税 | 売買契約書には、契約金額に応じた印紙税がかかります。 |
書類取得費用 | 住民票や印鑑証明書などの取得に数千円程度の実費がかかります。 |
司法書士報酬 | 手続きを司法書士に依頼する場合、5万円〜10万円程度が報酬の相場です。 |
その他の税金 | 売主側には、売却で利益が出た場合に譲渡所得税がかかります。一方、買主側には不動産取得税が課税される点も覚えておきましょう。 |
4.離婚による財産分与が行われた場合の名義変更
離婚による財産分与で不動産を移転する場合、裁判所での調停や審判、和解などの手続きを経て、法務局で名義変更を行います。
不動産の財産分与が決定したら、速やかに不動産移転登記を申請しなければなりません。
財産分与による家の名義変更には、以下の手順と書類が必要です。
財産分与による名義変更の流れ・必要書類・費用
【手続きの流れ】
住宅ローンが残っている家の名義変更は、必ず事前に金融機関に相談してください。
多くの金融機関では、無断で家の名義を変更することを契約で禁止しています。
もし、無断で変更してしまうとローンの一括返済を求められるリスクが発生します。
家の名義をもらう側が、住宅ローンの債務を引き継ぐ(または債務者を変更する)必要があり、そのためには金融機関の審査を通過しなければなりません。
【必要書類】
対象者 | 書類名 | 入手先 | ポイント・注意点 |
---|---|---|---|
現在の名義人 | ・登記識別情報通知または登記済権利証 ・印鑑証明書(3ヶ月以内に取得したもの) |
登記識別情報通知、登記済権利証は財産を渡す人が保管 ・印鑑証明書は住所地の市区町村役場、コンビニのマルチコピー機 |
登記識別情報通知、登記済権利証を紛失している場合は特別な手続きが必要です。 |
新しい名義人 | ・住民票 | 住所地の市区町村役場 | 新しい名義人として登記される方のものです。 |
その他 | ・固定資産評価証明書 ・離婚協議書または財産分与契約書 ・戸籍謄本 |
・固定資産評価証明書は不動産所在地の市区町村役場 ※自治体によってはコンビニで取得することも可能 ・離婚協議書、財産分与契約書は当事者間で作成 ・戸籍謄本は本籍地の市区町村役場 |
固定資産評価証明書は登録免許税の計算に必要です。最新年度のものを取得します。 離婚協議書、財産分与契約書は登記原因を証明する書類となります。夫婦間の合意内容を記載します。 戸籍謄本は離婚した事実を確認するために必要です。 |
申請手続きは、ご自身で法務局に直接出向くか司法書士に依頼して行います。
また、財産分与によって所有権移転登記をする場合の登録免許税は、不動産の固定資産税評価額の2%です。
さらに、登記手続きを司法書士に依頼する場合は、報酬が必要となり、一般的に2万~9万円前後の費用がかかります。
5.親の認知症に備える場合の名義変更
親の認知症に備えた財産管理には、早期からの準備が重要です。
認知症が進行し、本人の意思能力がなくなってしまうと、家の名義変更をすることができなくなってしまう恐れがあるためです。
そのため親の意思能力が低下する前に、「任意後見制度」や「家族信託」などの制度の活用を検討することをおすすめします。
任意後見制度とは?
任意後見制度とは、将来の認知症に備え、意思能力が低下する前に信頼できる人を後見人として契約する制度のことです。
先述した通り、意思能力が著しく低下している状況では本人の財産を動かすことができません。
しかし、後見制度を利用することで、本人に代わって不動産の名義変更などの財産管理を行うことができるようになります。
任意後見制度の概要については、以下の通りです。
必要書類 | 契約時 | ・身分証明書(本人・任意後見受任者) ・住民票(本人・任意後見受任者) ・戸籍謄本(本人) |
---|---|---|
選任申立て時 | ・任意後見監督人選任申立書(※) ・申立事情説明書(※) ・親族関係図(※) ・財産目録(※) ・相続財産目録(※) ・収支予定表(※) ・任意後見受任者事情説明書(※) ・本人情報シート(※) ・診断書(※) ・戸籍個人事項証明書(本人) ・住民票(本人・任意後見受任者) ・任意後見契約の登記事項証明書 ・本人が成年被後見人等の登記がされてないことが確認できる書類 ・任意後見契約公正証書のコピー ・収入印紙・郵便切手 |
|
後見人の権限 | ・財産管理(不動産や預貯金などの管理) ・身上監護(治療のサポート、介護施設の契約など) |
(※マークがついている書類については、東京家庭裁判所ホームページにて取得が可能です。)
家族信託とは?
家族信託は、親が意思能力を有する間に、信頼できる家族に財産管理を委託できる仕組みです。
後見制度と比べて柔軟な運用が可能で、不動産の売却や建替えなどもスムーズに行えます。
制度を活用する際は、司法書士などの専門家への相談と適切な信託契約の設計が不可欠です。
家の名義変更から登記申請完了までにかかる期間
名義変更の登記申請から完了までの期間は、通常1~2週間程度です。
法務局での審査に特に問題がない場合は、この期間で手続きが完了します。
しかし、申請前の必要書類の収集や作成、書類への押印等の準備も含めると、通常は1ヶ月程度かかると考えておいたほうが良いでしょう。
特に、相続の場合は戸籍謄本の収集に時間がかかることも多く、事案によっては1ヶ月で終えるのは難しいこともあります。
また、申請書類に不備がある場合や、法務局から追加の確認事項が発生した際は、審査期間が延びることがあります。
そのため、余裕を持った申請スケジュールを立てることをおすすめします。
相続税の計算方法と節税のコツ
相続が理由で家の名義変更をする場合は、相続税が発生することもあります。
相続税は必ず発生するものではありませんが、基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人数)を超える部分に対して課税されます。
しかし、以下のような控除制度や特例を活用すれば、相続税の節税が期待できます。
【主な相続税の控除制度】
制度 | 制度の内容 | 適用条件 |
---|---|---|
配偶者居住権 | 夫もしくは妻の死亡後、遺された配偶者が引き続き家に住み続けることができる権利 | ・相続開始時に法定上の配偶者が被相続人所有の建物に居住している場合 ・被相続人と配偶者以外の第三者と建物を共有していない場合 ・配偶者が居住権を取得するという遺産分割がされた、もしくは居住権を目的とする遺贈・死因贈与がされた場合 |
相続時精算課税制度 (基礎控除) |
年間110万以下の贈与に関しては、贈与税と相続税がかからない制度 | ・60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への生前贈与した場合 |
小規模宅地等の特例 | 一定の要件を満たす土地の相続税評価額を最大80%削減できる制度 | ・亡くなった方の配偶者である場合 ・相続税の申告期限まで被相続人と同じ家に住み、その家を保有し続ける場合 ・被相続人と同居していない親族(家なき子)の場合は、以下の要件を満たす必要がある。 a:被相続人に配偶者がいない場合 b:被相続人と同居している法定相続人がいない場合 c:相続が始まる前の3年の間に、自分や自分の配偶者、自分の3親等以内の親族が所有する日本国内の家に住んだことがない場合 d:相続が始まる前にこの特例を受ける親族が住んでいた家を過去に所有していない場合 |
これらの制度を組み合わせることで、相続税の負担を軽減することができるでしょう。
自分で手続きする場合と司法書士に依頼する場合を比較
家の名義変更において「費用を少しでも抑えたいから、自分で手続きできないだろうか?」と考える方も多いと思います。
ここでは、自分で手続きする場合と、専門家である司法書士に依頼する場合のメリット・デメリットを比較し紹介します。
ぜひ、どちらを選ぶべきかの判断基準に役立ててくださいね。
それぞれのメリット・デメリット
自分で手続きする場合
【メリット】
- 費用の節約:最大のメリットは、司法書士に支払う報酬(5万円〜15万円程度)を節約できることです。
【デメリット】
- 膨大な時間と手間:必要書類の収集、特に相続時の戸籍集めは非常に手間がかかります。また、平日に何度も法務局や役所に足を運ぶ必要があります。
- 専門知識が必要で複雑:登記申請書や遺産分割協議書などの書類作成には、法的な正確性が求められます。少しの間違いで申請が受理されなかったり(「補正」というやり直しを求められる)、意図しない結果になったりするリスクがあります。
- 精神的な負担:慣れない手続きに対するストレスは想像以上に大きいものです。
司法書士に依頼する場合
【メリット】
- 正確・迅速・確実:専門家であるため、ミスなくスピーディーに手続きを完了させてくれます。複雑な事案でも安心して任せられます。
- 手間がかからない:面倒な書類収集から申請まで、すべてを代行してくれるため、こちらは必要な指示を出したり、書類に署名・押印したりするだけで済みます。
- 総合的なアドバイス:登記だけでなく、関連する税金の問題や、将来のトラブルを見越した最適な分割方法など、総合的なアドバイスを受けられることもあります。
【デメリット】
- 費用がかかる:報酬分の費用が発生するため負担となります。
このように、司法書士に依頼するメリットは、専門的な知識がなくても手続きが完了する点です。
自分で行う場合は費用を抑えられますが、書類の準備や手続きに時間がかかり、不備があると差し戻されるリスクがあります。
家の名義変更を司法書士に依頼した場合の費用
家の名義変更を司法書士に依頼する場合の報酬額は、名義変更の理由や司法書士事務所によって変動します。
司法書士報酬の目安をまとめましたので、依頼する際の参考にしてみてください。
名義変更の理由 | 報酬額の目安 |
---|---|
相続 | 5万~15万円程度 |
生前贈与 | 5万~12万円程度 |
売買 | 5万~12万円程度 |
財産分与 | 8万~20万円程度 |
自分で手続きするか司法書士に依頼するかの判断基準
最終的にどちらを選ぶかは、自身の状況によります。
以下の3つのポイントを参考に判断することをおすすめします。
-
自分のケースの複雑度
相続人が一人だけで、遺言書もあり、不動産も一つだけ、というようなシンプルなケースであれば、自分で挑戦する余地はあるかもしれません。しかし、相続人が複数いる、連絡が取りにくい相続人がいる、不動産が複数ある、権利証を紛失した、などの場合は、専門家に依頼するのがおすすめです。 -
時間の余裕はあるのか
名義変更は、1日で終わる手続きではありません。書類収集から申請、完了まで、スムーズにいっても1ヶ月以上かかる可能性もあります。また平日に役所や法務局に行く時間も確保しなければなりません。 -
書類作業や役所手続きは得意か
細かい文字を読み込み、正確に書類を作成し、役所の窓口で説明を求められても対応できるでしょうか。少しでも苦手意識があるなら、ストレスを溜め込むより専門家に任せた方が結果的に良い選択となることが多いです。
もし、上記のポイントに当てはまらない場合は、手続きの複雑さや時間的な余裕を考慮し、司法書士の無料相談などを利用してみることをおすすめします。
事前に準備をしたうえで家の名義変更を行おう
家の売却にあたっては、名義変更が完了していることが重要です。
登記簿上の所有者が売主になっていないと、売買契約の締結を行うことができない可能性が高いということを理解しておきましょう。
家の名義変更を行う際は、必要な書類や手順、費用を把握することで、スムーズに進めることができます。
また、家の名義変更は司法書士に依頼することも有効です。
複雑な手続きを自分で行わずに済むうえ、短期間で名義変更を完了することが期待できます。
これから家の名義変更をする際は、ご自身の状況に合わせた方法を選んで進めてみてくださいね。