土地の売却を行う場合は、採算を考慮した価格設定を行うことなど重要なポイントがいくつかあります。地目まで気にしない人もいますが、売却時には、登記上の地目がどうなっているかにも、気を配ることが大切です。そこで、地目の意味や種類、さらに主な地目に関する売却時のポイントなどについて解説します。
この記事の目次
土地売却と地目
地目とは、どのような目的で土地を使用するかを表すものです。土地の売却を検討している場合は、地目に関する基礎知識も理解しておく必要がります。その理由は、2つあります。
1.地目は登記上の重要な情報になる
■代表的な地目
宅地・田・畑・山林・雑種地
これら5つについては、比較的売買の対象になりやすいため理解しておくことが必要
■その他登記上の地目
◇家畜放牧のための「牧場」
◇雑草や灌木などが生育する「原野」
◇森林法に基づき指定された「保安林」
◇海水の塩を採取する「塩田」
◇鉱泉湧き出し口などの「鉱泉地」
◇貯留池などの「池沼」
など比較的自然のままの風景が見られる地目もある
また特定の構築物や建築物が特徴となる
さらに
など水に関係が深い地目も多いです。
2.地目が違うことにより売却時に関係する法律が変わってくる
地目が田や畑である場合は、農地法が関係してきます。農地の転用に関しては、許可や届出が必要になるケースがありますので、注意が必要です。また、宅地であれば所得税法の各種特例を利用できる場合があります。
特例の適用を受けて売却することによって、譲渡益に対する税負担を減らすことが可能です。また、地目は都市計画法や建築基準法で定める用途地域との関係もあります。
地目の注意点
地目に関して、注意すべき点があります。地目の変更があった場合は、不動産登記法で一定期間内に地目変更の登記を行う必要があります。土地の購入時には、登記簿上の地目と現況が一致していない場合があり、その状態で土地の売却を行うと、トラブルになる可能性があるので、注意が必要です。特に、相続で土地を承継した場合などは古くから存在している土地のことが多く、地目の変更登記が行われてないことも珍しくありません。
土地を購入する側も、登記上の地目と現況が異なっていないかどうか確認することは基本です。しかし、土地を売却する側も現況に合った地目で登記をしておくことで、購入者からの信頼を得られる可能性が高まります。
地目「宅地」の概要と売却時のポイント
土地売却においては、地目の「宅地」が関係してくることが多いです。そのため、宅地についてよく理解しておく必要があります。宅地の定義は
です。簡単に言えば、「住宅や店舗を建設して利用することに適した土地」です。
土地を購入しようと考えている人の多くは、宅地を探しています。そのため、不利になる特別な事情などがなければ、それほど売却で苦労することはない地目と言えます。
宅地は不動産登記法においてだけでなく、そのほかの法律でも定義されています。
現に建物の敷地になっている土地や建物を建てる目的で取引する土地などが宅地
■土地区画整理法
公共施設の用に供されている国または地方公共団体の所有する土地以外の土地を宅地
■更地
建物がないことはもちろん借地権など一切の権利がついていない状態の土地
■建付地
建物が建っている土地
■借地
土地を所有しているのではなく借りている場合
宅地売却の特徴
宅地売却の特徴は、節税余地が大きいことです。
宅地を売却した場合の譲渡益は、所得税や住民税、復興特別所得税の課税対象です。譲渡年の、1月1日時点で5年を超えて保有している場合は長期譲渡、5年未満であれば短期譲渡に該当します。
短期譲渡に該当した場合の税率は、約40%です。長期譲渡の場合は、原則として約20%の税率で課税されます。ただし、一定の宅地の場合は、さらに軽減税率が適用され税負担が減る可能性があります。
所有期間10年を超えての譲渡であれば、譲渡益6,000万円までの税率は約14%です。そのほかにも、自己の居住用の宅地を売却した場合は、一定の条件を満たすと譲渡益から3,000万円を控除できる特例などもあります。
また、相続において小規模宅地の特例の適用を受けて相続税評価額の評価減を行った場合は、相続税の申告時まで相続で承継した土地を継続して保有していることが条件となります。申告前に売却すると特例の適用を受けられなくなりますので注意しましょう。宅地の譲渡を行うにあたっては、税法をしっかり理解して積極的に節税することが大切です。
地目「田」の概要と売却時のポイント
不動産登記法上の地目である「田」は、「農耕地で用水を利用して耕作する土地」のことを指し、いわゆる田んぼのことです。日本中で見られる地目で、特に地方に行くと多くなる傾向があります。また、地目が田となっているにもかかわらず、住宅が建っていることもあります。このような状態になるのは、地目変更がされていないためです。
田んぼを売却する場合に注意すべき点は、農地法の規定を守ることです。許可なく、農地をやめて賃貸アパート建設などを行うと、その取引は無効とされ原状回復する義務も生じます。また、農地を第三者に売却する場合も許可が必要です。そのため、田んぼを売却する場合は事前に都道府県の許可を得るようにしましょう。
ただし、市街地の真ん中にある田んぼなどのように、市街化区域内の農地をほかのものに転用する場合は、市町村への届出を行うだけで転用可能です。なお、農地法で農地とされるものは、登記上の地目で判断するのではなく実態で判断されることになっています。
登記上の地目を変更
地目変更登記の申請書を作成し、土地を管轄する法務局に提出します。補正事項などがなければ1週間程度で変更登記は完了します。
地目「畑」の概要と売却時のポイント
登記上の地目の1つである「畑」とは
です。畑という言葉のイメージ通り、野菜などを栽培している土地のことを指す地目です。
畑を所有している人のなかには、手間がかかって大変で持て余しているという人もいます。その場合は、畑のまま売却するという選択肢があります。この場合も、田んぼと同様に農地法の手続きに従って、都道府県の許可を得るなどの対応をする必要があることを忘れてはいけません。
また、農業振興地域に指定されている土地の場合は、転用前に農業振興除外申請を行うことが必要となります。売却前に、市町村の農政課などで地域の境界線や、手続きの確認を行っておきましょう。
地目「山林」の概要と売却時のポイント
不動産登記法上では「山林」という地目も設定されています。山林とは
のことです。木が生えている山のことだと理解すればよいでしょう。山そのものを売買するときはもちろん、山際の土地の売買を行う場合に地目が山林になっているケースがあります。
山林を売却する場合は2つのポイントがあります。
1.使用収益に関する法的な制約の存在
たとえば、土砂災害警戒区域の指定を受けている場合や、一定の公園に指定されている場合などは、購入者が建築物を建てることができません。そのため、売却が困難になるケースもあります。売却を行う場合は、山林のまま土地を利用する目的を持っている購入者層にターゲットを絞ってアプローチすることが大切です。
2.山に生えている木の譲渡益の取り扱い
木が生えている山を売却した場合、土地の譲渡を行ったという意識だけしかないという人も多いでしょう。しかし、山肌までの土地部分を売却したことによる利益は不動産の譲渡所得に区分され、生えている木の譲渡による所得は、山林所得に区分されることになっています。
所得計算の方法も、譲渡所得と山林所得では異なりますので注意しましょう。
地目「雑種地」の概要と売却時のポイント
不動産登記法上の地目には
である「雑種地」もあります。ほとんどの土地に関しては、見た目と地目が一致しているのが一般的です。ただし、土地の見た目や利用形態からは種類がわかりにくい土地の場合は、雑種地として区分されている可能性が高いです。
また、見た目はただの野原なため地目も原野だと思っていたのに雑種地だったというケースも、比較的多いといわれています。
雑種地を売却する場合は、実態に合った別の地目に変更してから売却するという方法もあります。登記上で雑種地という表記になっていると、マイナスイメージを持つ購入者もいる可能性があります。その点を考慮して、売却を行う場合は実態に合わせた地目変更を行うと、売却しやすくなります。
地目の理解が土地売却成功につながる
地目は、土地売買において重要な情報源です。土地売却を検討の際は、売却する土地の地目の確認を忘れないようにしましょう。地目と現況が不一致であれば、地目変更を済ませ購入者希望者からの印象を良くしておき、地目によって課税方法や適用される特例が変わりますので、地目に合わせた節税検討も重要です。
このように、地目に関して理解を深めることは、土地売却の成功につながります。
そして、土地売却に強い不動産会社を見つけることも大切です。不動産会社が得意とすることも様々で、いざ売却となった際に、土地売却に詳しくない不動産会社に依頼して損をすることや、スムーズな売却に至れないこともあります。事前に、土地売却に強い不動産会社を見つけておきましょう。そして、その土地がある地元の不動産会社に依頼しましょう。
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