この記事でわかること

・地積測量図とはどのようなものなのか?
・地積測量図に記載されている内容
・地積測量図とその他の測量図の違い

「土地を売りたいけれど、何から手をつけていいか分からない」「地積測量図って聞いたことはあるけど、何に使うの?」

もしあなたがそう思っているなら、この記事が役立ちます。

土地の売買や相続、建物の新築など、不動産に関わるさまざまな場面でその重要性が高まっているのが「地積測量図」です。

この図面は、単に土地の面積を示すだけでなく、トラブルを未然に防ぎ、土地の価値を明確にするための大切な書類となります。

この記事では、地積測量図の基本から、記載内容、他の測量図との違い、そして取得方法までを分かりやすく解説します。

読み終わる頃には、あなたの土地に必要な書類が何か、そしてなぜそれが重要なのかを理解し、安心して次のステップへ進めるはずです。

地積測量図とは? 

地積測量図に関するイメージ画像

地積とは「土地の面積」のことを指し、地積測量図とはその面積を測量した結果を示すために作成される法的な図面のことです。

不動産登記法では、地積測量図について

「一筆の土地の地積に関する測量結果を明らかにする図面で、法務省令で定めに基づき作成されるもの」

と規定されています。

この図面は公的に扱われるもので、図に引く線の太さまで細かく基準が定められています。

土地の正確な形状や隣地との位置関係、境界標の場所、地積の算出方法などを明示する役割を持っています。

地積測量図は作成時期により内容が異なる 

地積測量図は作成された時期によって内容が異なります。
すべての土地に必ずしも備わっているわけではなく、古い登記では図面自体が存在しないケースもあります。

その理由は、1960年(昭和35年)4月1日以降に行われた登記申請から、地積測量図の添付が義務となったためです。

つまり、それ以前に登記された土地については、図面が作成されていないことがあるのです。

また、作成年代ごとに図面へ記載される情報の詳しさや形式にも違いが見られます。

昭和30~40年

測量の精度が十分でなく、地積測量図が添付されていない場合も多い。

昭和45年以降

登記申請の際、地積測量図の提出が必須に。

昭和52年以降

図面に「境界標の種類」が記録されるようになる。

平成3年以降

官民境界を確定したうえで作成された図面の添付が始まる。

平成18年以降

座標(データ)値※1が記載され、残地計算※2による図面作成は認められなくなる。

平成20年以降

基準点を使い、世界共通の座標基準である「世界測地系データ」※3で図面が作製される。

 

※1座標値とは:土地の境界点の位置を「数字」で表したもの。

※2残地計算とは:土地の一部を測量して残りの部分の面積を差し引きで算出する方法。

※3世界測地系データとは:地球上の意位置を表すための「世界共通の座標の基準のこと
以前の日本では「日本測地系」という国内独自の基準を使っていたが、世界的な基準とは少しズレがあった(最大で数メートルほど)

地積測量図にはどんな内容が記載されている? 

地積測量図には、土地の位置や境界を明確にするためのさまざまな情報がまとめられています。

主な項目をわかりやすく整理すると、以下のとおりです。

地積測量図のイメージ画像

項目

内容

地番

・図面の上部に土地の地番が表示されます。
・分筆が行われた場合には、分筆前と分筆後の地番の両方が記されるケースもあります。

土地の所在地と方位

・地番のすぐ下に、その土地の所在地や方向が書かれています。

測量結果の図面

・測量で得られた数値をもとに、土地の形を示す図が描かれます。
・隣接する土地の地番、各辺の長さ、境界標の有無なども記載されます。

凡例

・図の下部には、境界標の種類や測量の基準点などを表す凡例が記号付きで示されています。

求積表

・土地の面積を計算した結果が、表形式で記されています。

基準点表
引照点表

・測量の際に利用した基準点や、万一境界が分からなくなった場合に参照するための「引照点」の情報が掲載されています。

縮尺

・図面の右下に縮尺が数値で記され、図が実際の大きさのどれくらいの割合で描かれているかが分かります。

申請人と作成者

・縮尺の左側には申請人の情報が、さらに左下には作成者(土地家屋調査士など)の氏名や住所、作成日が記されています。

地積測量図とその他の測量図の違い

地積測量図とその他の測量図との違いのイメージ画像 

測量図には「地積測量図」だけでなく、いくつかの種類が存在します。

ここでは、その中でも代表的な測量図を取り上げて地積測量図との違いを解説していきます。

公図とは? 

公図とは、法務局で保管されている土地に関する図面を指します。
土地の場所や形を示す役割がありますが、あくまで法的な資料であり、正確な測量図とは異なります。

地図に似た形式で描かれていますが、実際には土地のおおまかな形状や配置を示しているにとどまり、詳細な情報までは反映されていません。

とはいえ、土地のおおよその位置関係を確認する資料として、多くの場面で利用されています。

地積測量図との違い

・公図は土地の面積や境界線の距離を正確に示していない
・地積測量図のように面積の計算方法や根拠が記載されていない

関連記事:公図とは何か?不動産売却における活用方法

確定測量図とは? 

確定測量図とは、隣接するすべての土地や道路の所有者に立ち会ってもらい、境界を正式に確認したうえで作成される図面のことです。

境界線が明確に確定しているため、土地の売買や分筆など、不動産取引において安心して利用できる資料となります。

記載されている情報の内容は、基本的に地積測量図と大きな差はありません。

地積測量図との違い

・土地の所有者が土地家屋調査士に依頼して作成するため、原則として所有者本人しか保有していない
・紛失した場合は、改めて新しく測量を行い、再度作成する必要がある

現況測量図とは? 

境界について隣接地の所有者の了解を取らずに測量した図面のこと。

図面には、ブロック塀や水路の場所がどこにあるのかなどが記載されています。

地積測量図との違い

・隣接地との境界について、隣接地の所有者の了解を取っておらず推測をもとに作成した測量図。
・土地の売買には使えない

地積測量図はいつ必要になる?  

地積測量図が必要になるのはどのような場面があるのでしょうか?

ここからは、地積測量図が必要となる場面についてご紹介していきます。

【地積測量図が必要となる場面】
・土地の売買の時
・土地の分筆や合筆の時
・新たに建物を建てる時
・道路や水路の払下げをする場合

土地の売買の時 

土地を売却・購入する場面では、地積測量図の準備が欠かせません。

売買にあたっては、その土地の正確な面積を示すだけでなく、境界を明確にしておくことが重要だからです。

もし境界が曖昧なまま契約を進めてしまうと、売買成立後に隣地とのトラブルへ発展する可能性があります。

そのため、地積測量図を用いて境界を確認しておくことが大切です。

なお、地積測量図が存在しない場合は、売主の責任で新たに測量を行い、図面を作成しなければなりません。

また、境界を確定したうえで作られる「確定測量図」がある場合は、買主の同意を得られれば、地積測量図の代わりに利用することも可能です。

測量された時期が古い場合どうすればいい? 

地積測量図や確定測量図が古い年代に作成されたものである場合、買主から「新しい測量図を用意してほしい」と求められるケースがあります。

その理由は、過去に行われた測量の多くが現在ほど精度の高い方法ではなく、最新の技術で測り直すと数値に誤差が生じる可能性があるためです。

土地の分筆や合筆の時 

土地の分筆や合筆のイメージ画像

土地の分筆:一つの土地を2つや3つに分けること。
土地の合筆:二つ三つある土地を一つにまとめること。

相続などで土地の分筆や合筆を行う場合は、それぞれ「分筆登記」「合筆登記」を行う必要があります。

この登記の際に、地積測量図の作成が必要となります。

なぜなら、相続の場合、土地の境界が不明確なまま相続していることも多く、そのまま土地を分筆や合筆してしまうと、隣接地の所有者とトラブルになる可能性があるからです。

新たに建物を建てる時 

新たに建物を建てる場合は、建築確認申請を行う必要があります。

その際に提出する書類のひとつとして、地積測量図が必要となります。

これは、敷地の形状や面積、隣地との境界を正確に把握し、法律上の規制を守るとともに、将来的な近隣トラブルを防ぐためです。

なお、地積測量図がない場合は、確定測量図か現況測量図で代用することも可能です。

道路や水路の払下げをする場合 

市区町村が管理している道路や水路でも、すでに使われていない土地は、払下げを受けて自分の土地にできる場合があります。

その際は、その土地の境界や面積をはっきりさせるために「地積測量図」が必要です。

市区町村へ申請する際は、この図面を添付して提出します。

ただし、登記に使う図面を作成できるのは、土地家屋調査士だけとなります。

個人で勝手に用意することはできないため、払下げを受けたいときは、土地家屋調査士や司法書士に相談して、測量や登記の手続きを依頼するのが安心です。

地積測量図はどのように取得する?費用は? 

地積測量図の取得方法のイメージ画像

地積測量図はどのように取得すればいいのでしょうか?

ここからは、地積測量図の取得方法とその費用をご紹介していきますよ。

取得先

取得方法

費用

法務局(どこの法務局でも可)

請求書に記入を行い手数料分の収入印紙を貼り窓口に提出

450円の手数料

郵送

①法務局の各種証明書請求手続から請求書をダウンロード
②手数料分の収入印紙を貼り、返信用封筒を同封
③土地を管轄する法務局へ送る

・450円の手数料
・返信用切手110円

オンライン

①「登記・供託オンライン申請システム『登記ねっと 供託ねっと』」にアクセス
②ホームページ上で申請を行う
③インターネットバンキングで手数料を納める
④受け取りは最寄りの法務局か郵送

・361円の手数料

地積測量図がない土地はどうしたらいい? 

地積測量図は作成時期により内容が異なる】でご紹介したとおり、そもそも地積測量図がないという事もあります。

その場合、まずは最寄りの土地家屋調査士に依頼するのがおすすめです。

土地家屋調査士は、土地または家屋に関する調査や測量を行う専門家として、必要な調査や測量を行っています。

上記でもご紹介したとおり、土地の境界が正しく確定していないと、後々トラブルになる恐れもあるので、土地家屋調査士に依頼して地積測量図を作成しておきましょう。

地積測量図に関するQ&A 

地積測量図に関するQ&Aのイメージ画像

ここまで、地積測量図に関する基礎知識や取得方法などをご紹介してきました。

その他にも、地積測量図は土地の売買の際に必ず必要なのか、どんなメリットがあるのか気になる方もいるのではないでしょうか?

ここからは、地積測量図に関する疑問をQ&A形式でご紹介していきます。

【地積測量図に関するよくある疑問】
Q:土地売却の際に地積測量図は必ず必要ですか?
Q:地積測量図にはどんなメリットがあるの?

Q:土地売却の際に地積測量図は必ず必要ですか? 

A: 地積測量図の提出は、法律で義務付けられているものではありません。

しかし、境界や面積がはっきりしていない土地は、買主にとって不安材料となります。

そのため、スムーズで安心できる取引を進めるために、買主から「地積測量図を見せてほしい」と依頼されることも少なくありません。

Q:地積測量図にはどんなメリットがあるの? 

A: 地積測量図がある一番の利点は、土地の価格を決める根拠がはっきりすることです。

 売主が「この面積だから、この価格です」と説明できれば、買主も納得しやすく、取引がスムーズに進みます。

さらに、図面には隣地との境界線も示されているため、境界をめぐるトラブルを未然に防げるという安心感もあります。

土地売却では地積測量図の理解がポイント

土地の売却では地積測量図を正しく理解することが大事のイメージ画像

土地を売るときは、境界線トラブルを防ぎ、売買条件をはっきりさせることが非常に重要です。

境界や面積が明確な土地は、買主にとっても安心して購入できるため、複数の購入希望者が現れやすくなり、より高値で売れる可能性も高まります。

そのために役立つのが「地積測量図」です。

すべての土地に地積測量図があるわけではありませんが、存在する場合は、売却を有利に進めるために積極的に活用しましょう。

【地積測量図を活用するために必要なこと】

①読み方を理解する
地積測量図には、土地の面積や境界、隣地との関係などが記載されています。これを正しく読み解くことで、トラブルを未然に防ぎ、買主にも安心感を与えられます。

②地積測量図がない場合は測量する
図面がない土地は、測量を行ってから売却することが重要です。
測量結果をもとに地積測量図を作成すれば、土地の価値を明確に示せるため、売却をスムーズに進めることができます。

地積測量図やその他の関連図面を上手に活用すれば、安心・安全な取引と高額売却の両立が可能です。