土地には、商業地域や住居地域など目的に沿って分けられた地域があります。不動産の売買には、用途地域を考えるのも外せないポイントです。そこで、地域ごとの建設条件や居住地としての利用も可能な地域、それに伴うメリットやデメリットについて解説していきます。

商業地域に建てられるものとは

商業地域とは、主に商業とその他の業務の利便性を図ることを目的とした地域です。

商業地域の対象になるのは、駅の周辺などの繁華街が中心で、これらは都市計画法の9条によって定められています。商業地域の場合、一部の倉庫や工場などは建築できませんが、生活に必要な施設を建築できるというのが特徴でしょう。

駅に近い場所が中心ということもあり利便性の高く、売却の際は、居住にも向いていることをアピールできます。

一部の倉庫や工場などは建築できないが生活に必要な施設は建築できる

商業地域
◇店舗・事務所
◇ホテルなどの宿泊施設
◇ボーリング場・スケート場・カラオケボックス・映画館といった娯楽施設と飲食店
◇幼稚園・小学校・中学校・高校・大学・図書館などの教育機関
◇老人ホーム・病院 作業面積が150平方メートルを超えない小規模の工場
(※危険物を扱う場合は建築してはいけない)
◇一般住宅・共同住宅・下宿・寄宿舎などの居住施設も建築可能

建築する際は
■建ぺい率
80%
■容積率
200%~1300% と定められている

商業地域の住居はここがアピールポイント

商業地域には、ほかに近隣商業地域があります。

近隣商業地域の場合、近隣の住宅地の住民に対する日用品などの供給と、そのほかの業務の利便性を図ることが主な目的です。

商業地域と比べるとやや閑静な場所が多いので、該当地域の不動産を売却したいなら、利便性と閑静な環境をアピールできます。

近隣商業地域のアピールポイントは利便性と閑静な環境

近隣商業地域
◇危険を伴わない小規模な工場であれば建築できる
◇店舗や事務所、宿泊施設においては、3,000平方メートルを超えない規模であることが原則
◇一般の戸建て住宅からマンションまで建築可能

商業地域であるため、店舗や娯楽施設、遊技場などの割合は高くなるものの、駅前の繁華街の中に戸建て住居を建築するという例も少なくはありません。店舗を兼用した住居や、店舗兼事務所なども多い地域です。

実際に建築する場合は、商業地域や近隣商業地域の条件のほかに建築法が絡んではきますが、用途地域は変更されることもあります。将来的な都市計画に向けて調整を図ることも多いので、売却したい不動産のある地域の行政にこまめに確認するのもいいでしょう。大幅な開発などの計画があると、地価の高騰が期待できます。

商業地域のメリット・デメリット

商業地域は、駅に近い場所が中心になっています。鉄道のほかにも、路線バスなど公共交通機関が充実しているという利便性の高さは大きなメリットです。幼稚園から託児所なども建築の対象となっているので、働きながら育児をする世帯が暮らしやすいというメリットがあります。

商業地域は利便性がよく生活には適しているが静かに暮らしたい人には不向き

勤務先と住居のいずれも商業地域にある場合には、少ない移動距離で利便性の高い暮らしが可能です。さらに、病院や介護施設、金融機関といった施設も建築可能なため、高齢者にとっても暮らしやすい地域でしょう。駅に近いという立地上、商売はもちろん、生活するにも適しています。

一方、デメリットもあります。商業地域ではパチンコ屋やマージャン屋、キャバレーといった風俗業も許可されているため、治安の面で心配な面が出てくるかもしれません。近隣に学校がある場合には、風俗業の営業に規制があるものの、それでも生活圏内から大きく外れる可能性は低いと考えたほうがいいでしょう。住居を建築する場合でいえば、近隣の施設によっては騒音もデメリットです。また、娯楽施設やショッピングモールなど、外から人が集まりやすい条件がそろっているため、静かに暮らしたい人には向いていません。

商業地域に不動産を所有している場合、売却するターゲットは細かい立地で変わります。病院や学校がある地域なら子育て世帯向けとして、娯楽施設などがある地域なら事業用物件として考えたほうがいいでしょう。

用途地域が分かれているのはなぜ?

用途地域は、都市計画法で定められているもので、商業地域と近隣商業地域も含めて全部で12の用途地域に分かれています。

都市計画法の目的は「都市の健全な発展と秩序ある整備」そして、「国土の均衡な発展と公共福祉の増進」です。都市計画法は、それ以前の「旧都市型計画法」や「住宅地造成事業に関する法律」に代わるものとして施工されました。施工後は、何度も改正が行われています。

用途地域は、居住地域に商業地域、工業地域に分けることができます。それぞれの地域でさらに分散することは、利便性と発展への配慮であり、目的と考えられるでしょう。

居住地域は全部で7つ
■第一種低層住宅専用地域
コンビニもほとんどの店舗が建築できない

■第二種低層住居専用地域
小規模な店舗またはコンビニ程度なら建築可能

■第一種中高層住居専用地域
■第二種中高層住居専用地域
■第一種住居地域
■第二種住居地域
■準居住地域

それぞれに建ぺい率や商業施設、医療機関などの建築に対して細かい条件が設定されているのが特徴
工場の建築が中心の用途地域
■準工業地域
■工業地域
■工業専用地域

用途地域でありがちな失敗例

用途地域を考えずに建築する場合、失敗しがちなケースとして住居があげられます。

用途地域は、厳密にいえば「工業専用地域」以外であれば、基本的に住居の建築は可能です。もちろん、建ぺい率などの制限はそれぞれの用途地域で設けられていますし、建築法も考慮しなければなりませんが、都市計画法においては建築すること自体に問題はみられません。

その代わり、居住を主な目的としてない用途地域の場合は、思わぬ失敗も出てきます。失敗しやすいのが商業地域の場合です。住居を建築したときに隣が空き地であるような場合には、住んでから何ができるか予測することはできません。

あらかじめ都市計画が決まっている場所なら別ですし、計画されている施設によっては、その利便性を考えて引っ越すというケースもあるでしょう。しかし、そうでない場合には何が近隣にできるかは予想できないのが通常です。

初めは静かに暮らせていても、施設や店舗によっては騒音の問題が出てきたり、治安が悪くなったりすることも懸念されます。また、高層の建物が建築されれば、日照問題もありがちな失敗例です。所有している不動産が住居で、あとから建設された建物や施設で悪い影響を受けているなら、更地にしたほうが買い手は付きやすいかもしれません。

無指定区域では何ができる?

さまざまな用途地域があるなかで、ほかとは違う地域があるのを知っているでしょうか。それが「無指定区域」です。

「無指定区域」には、いくつかの考え方がされています。ひとつは、都市計画の区域内でありながら、まだ実際には用途地域の指定がない地域です。さらに、市街化調整区域に相当する場合と、市街化区域にも市街化調整区域のいずれにも指定されていない区域もあります。そして、もうひとつは都市計画区域外を指す区域です。このほかにも、さまざまな考え方がされています。

無指定区域の場合、注意したいのはどのような扱い方がされているかという点です。たとえば、都市計画区域内であれば、住居を目的にした建築物の建築自体には特に問題は出ません。ただし、建ぺい率や容積率については確認した方がいいでしょう。建築は可能とされていますが、実際には行政による部分が大きいのが特徴です。

無指定区域の土地を売却するなら、行政の関連部署で確認しておき、売るタイミングを考えてみましょう。

用途地域別の建築条件で売却を考える

不動産を売却する際は、それがどの用途地域であるかを考えることが重要です。そして、その用途地域ではどこまでの建築が可能か、どのような使い方ができるかを改めて確認しておきましょう。そうすれば、売却の方法やターゲットを絞りやすくなります。

もちろん、自然災害やその他の要因が絡んできた場合も不動産の価値に影響することはあります。しかし、近隣の環境に左右される可能性のほうが高いと言えるでしょう。たとえば、近隣に斎場がある場合や汚物処理施設などが建設されている場合には、不動産としての価値が下がらないとも言いきれません。

住居として売却するなら、風俗業などがある場合も同じです。こうした施設や店舗は、建築できる地域が限られています。不動産を購入した時点では建っていなかったものでも、後から建築されてしまったら売り方を工夫しましょう。一般の住居より住居兼事務所または住居兼店舗などのほうが売れる場合があります。

また、古くから住んでいる場合に多いのが、建築基準法に関わる問題です。ずいぶん昔に購入した不動産や、親から受け継いだ住居の場合、セットバックしなければならない場合もあります。厄介なのは、再建築不可物件です。セットバックは、隣接する道路を拡張することが目的で、決められた面積を空ければ特に問題はありません。しかし、建築不可物件に該当している場合には、建て替えができないなどの制限が出てきます。可能であれば、売却前にセットバックしておくのもひとつの方法です。

目的に合った用途地域を選ぶ

不動産は、どう使うかを考え、その目的に合った用途地域から選んでおくと、住み替えなどのときも売りやすくなります。

たとえば、事務所や店舗が兼用された住居であれば、商売に重点を置くのか、暮らしに重点を置くのかでは選ぶ条件が変わってきます。静かに暮らすなら、第一種低層住宅専用地域か第二種低層住宅用地域が向いていますし、買い手は付きやすいと言えます。商業地域や近隣商業地域の中に不動産があれば、収益が見込める事業用として売りやすいでしょう。

使い方に合った場所にある不動産であれば、手放す場合でも大きな値崩れや売れないという心配もありません。不動産は周囲の環境で価値が変わります。購入したときより、売却のデメリットが多くなっているような場合には、条件や環境に応じて更地にするなどの手段を考えるのもいいかもしれません。