不動産売買を考えるとき、用途地域やそれにともなう建築基準法を気にする人は多いかもしれません。しかし、土地の利用や制限は用途地域だけでなくさまざまなものがあります。そのひとつが「高度利用地区」です。

ここでは、高度利用地区について、いくつかの例をあげながら解説していきます。

高度利用地区とは?

都市計画法で定められている都市計画のひとつです。高度利用地区を簡単に説明すると

横の面積をできるだけ抑えて高層の建物を作周辺の土地を有効活用する

というものです。

高度利用地区は周辺の土地の広さを確保するために横の面積を抑え高層の建物を作る地区

高度利用地区に指定される条件
◇用途地域の中でも建物や人口が密集した場所が優先される傾向がある
◇人口や建物が密集している
◇低層の建物や面積の狭い建物が分散し効率の悪い土地の使われ方がされている

◇土地を細かく区切って小さな建物を個別に建設するより、それぞれの土地をつなげてひ とつの建物にするほうが有効的に使える
◇その建物を高層にすれば、それだけ多くの施設や住居数を確保することが可能

このように、土地をまとめることで、さらにその周辺の土地の利便化を図ることも目的としているのです。

高度利用地区の建築制限

高度利用地区は、都市計画法以外に建築基準法でも制限に関する内容がまとめられています。

建築法の59条
建築物の容積率及び建ぺい率並びに建築物の建築面積は、高度利用地区に関する都市計画において定められた内容に適合するものでなければならない

としています。しかし、同時にいくつかの例外も設けられています。

例外

構造上撤去や移転が容易なもの
◇木造や鉄骨造、またはコンクリートブロックなどを主な材料としている建物
◇地上2階以下であること
◇地下室がないこと
公益的に見て必要なもの
◇公衆トイレや巡査派出所
◇またはこの2つに匹敵する建物
重要性は地域によって異なるものの
公益上必要なものであることが条件とされている
構造の観点からやむを得ないもの
◇主に学校や駅舎、卸売市場などのような公益上必要な建物
◇さらに構造上やむを得ないと認められた建物
構造上仕方のないものかどうかの判断は、特定行政庁に委ねられている

高度利用地区と高度地区の違い

高度利用地区と混同されやすいものに、高度地区があります。この2つは、目的も規制も異なります。

高度利用地区
高さの他に建ぺい率や容積率などを規制し高層ビルを建設することを目的にしている

分散している低層の建物をまとめてビルやマンションの高層化を進める

◇防災などさまざまな機能の向上を図る
◇より多くの住居を確保したり施設をまとめたりという効果も担う

周辺の土地が利便化
高度地区
高さの限度や低さの限度を設定する地区

このように、どちらも高層の建物を建設するということでは同じですが、規制方法と目的には違いがあるのです。

高度利用されるケース

防災機能が著しく低いと判断された地域

密集地域でありながら、防災機能が著しく低いと判断された地域で高度利用されるケースがあります。

密集地域では防災や緊急事態の観点から建物を高層化するため高度利用される

高度利用によって実現できること
避難経路の確保と延焼の防止など

十分な道路幅をとるために建物を高層化しながら一体化を進める(道路を拡張)

■メリット
◇避難経路の確保
緊急車輌が侵入しやすいスペースを確保し消火と人命救助作業をスムーズにできる

建物の高層化と一体化による道路幅の拡張のほかに

建物の構造そのものにも防火上の制限を設けられる
◇建物の耐火や準耐火構造化といった規制を設ける

■建物の間口率についても規制が可能
(特定地区防災施設に接している部分に対する建物の長さの割合)
◇人口や建物が密集した地域の防災機能を向上させるのが目的

防災機能向上のための高度利用には、地区計画と同じく誘導容積型や用途別容積型・街並み誘導型といった特例措置があります。

密集地の防災機能向上に向けた高度利用地区には、ケースとして東京都の新宿区があげられます。

沿道地区計画として高度利用される

国土交通省が指定した、沿道整備道路に隣接した区域が対象になります。

沿道地区計画での主な目的
◇道路交通騒音による障害の緩和と防止
◇土地を合理的に活用すること

通常の地区計画で定められる項目のほかに、建物に対しても制限を設けることができます。

建物に対しての制限
■防音または遮音するために必要な構造の建物にする
◇防音や遮音を回避する対策として開口部の隙間を作らない
◇建物の間口率で、沿道整備道路に接する面の建物の部分の長さに対する割合を制限する
■沿道整備を図り、市街地を総合的に整備する

沿道地区計画では、沿道整備道路に面していない場所では高度利用はされないのが特徴です。

■沿道整備道路より奥に入った地域では、低層の建物があっても高度利用されないことが多い

沿道整備道路に面した部分だけを高度利用することで、ほかの場所への騒音の影響を軽減できる

公共施設が分散していることで、地区全体が未整備な状況にあり、土地が有効活用されていないときに高度利用されるケースがあります。

土地が有効活用されていないとき
公共施設の進捗状況を考慮しながら建物の容積率を決める

幹線道路に面した位置に高層ビルを建設して公共施設をまとめる
◇土地の有効利用が図られる
◇関連した業務の効率化が図れる
◇分散していた機能が一カ所に集約され暮らしの利便化も実現
◇人の流れを誘導でき街そのものの活性化につながる

公共施設が隣接する道路の種類に応じて行われるのが、道路から建物の間に適度な空き地を確保することを目的にした高度利用です。

道路から建物の壁面位置を制限 ・容積率を緩和

適度な空き地を確保

道路に面した空き地には街路樹を植えるなど、景観上の改善を図ることも同時に可能です。

高度利用地区が与える不動産価値への影響

近隣に高度利用地区がある場合、不動産に与える影響は様々です。

高度利用地区では眺望への影響や低層の建物は急な立ち退きが強いられることもある

眺望の問題
■沿道整備道路近くの地域では、その道路に面した建物は高度利用され高層ビルが建設されることになる

たとえば
売却したい不動産(土地)の位置が高層ビルの裏側にあった場合
◇高層ビルの前面にある景色が見られない
◇価格に影響するかもしれない

解決策
高層ビルやマンションを建設したい層をターゲットにする
低層の建物の立ち退きを迫られる
■所有している不動産の場所が高度利用地区に指定された場合、低層の建物の立ち退きを迫られる

解決策
(条件になるかは地域によって異なるが)
良い条件で買い取ってもらえる可能性がある
通常の売却をする場合近隣に高度利用地区があると価格の高騰につながる
■防災機能を増進するための高度利用がされていてさらに公共施設が集約されている
◇火災などのような緊急時の安心感が高まる
◇申請や書類の取得にかかる時間が短縮できる

結果
不動産の価値が高まる

このように利便性が図られるので、価格の高騰につながり良い条件での売却を見込めます。

高度利用地区は地域によって異なる

高度利用地区の地域や、建物の細かい制限に関してはそれぞれの地方公共団体によって決められるのが主です。そのため、用途地域内のどのような場所が高度利用地区になるかは、地域によって異なります。

所有している不動産に、どのような影響が出るのか把握するためには、近隣に高度利用地区の対象になっている地域があるかどうかを、各自治体で確認するしかありません。

高度利用地区を把握しておくことは、居住地や購入を検討している不動産の価値や利便性を左右するといっても過言ではありません。高度利用地区に該当しているか、または近隣に設定されることで不動産の価値が上がる可能性もあります。

いざ売却の段階になり慌てることのないよう、自身の所有する不動産の価値を調べておくといいかもしれません。

まだ本格的な売却の段階ではないため実際に不動産会社は赴くのが不安な方は一度、不動産売却査定サイト「イエイ」を利用してみてはいかがでしょうか。

上手な不動産活用のポイントは、都市計画にその場所がどのように関係しているか、事前に情報をキャッチしながら不動産売却のタイミングを図ることです。