公図は、土地と土地の関係について知りたいときに役立つものです。公図は、公の機関によって作成されたものです。古くから利用されていることなどが要因となり、その正確性には少し問題もあります。とはいえ、不動産売却など不動産の権利関係について変化が生じる際には、必ず目を通しておきたい資料です。今回は、公図の定義やその活用方法について説明します。
この記事の目次
公図とは
公図
◇土地の形状や地番について記載されている
◇道路や水路、隣接地との境界についてもまとめられている
公図には、大きく分けて2つの種類がある
◇旧不動産登記法17条に基づいて作成された公図
◇不動産登記法14条に基づき作成される地図のこと
前者よりも後者のほうがより精度が高い図面となっている
公図の歴史
公図は、日本の歴史とともに少しずつ変化してきました。より正確な内容を目指して法改正や測量などが進められてきましたが、そこには問題もあります。公図を取り巻く状況について、その流れを確認しましょう。
公図の起源
公図のもとになった測量は、明治初期に地租改正を目的として行われたものです。
ただし、当時の測量技術はそれほど精度が高かったわけではありません。また、測量を行ったのはその土地に住む住民でした。その上、測量結果は、住民による申告がそのまま採用されています。そして、これらの不正確な情報をつなぎ合わせることで公図は完成しました。実際には、つじつまを合わせるために、半ば無理矢理つなげた部分もあるようです。
そのため、明治中期には、公図の調整が行われました。とはいえ、ここでもすべての情報がきちんと訂正されたわけではなく、不正確さが残っています。この頃の公図は、和紙に黒や赤、青の墨でかかれています。この公図は、明治32年に制定された旧不動産登記法17条にも規定され、土地の関係性を示す法的根拠として利用されることとなりました。
この公図は、現在では「法17条地図」と呼ばれています。
昭和の法改正
法17条地図としての公図は、昭和35年の法改正により、法的根拠をもたなくなっています。この頃には、より正確な公図の作成を目指して、測量が進められました。しかし、この頃の測量も人の手によるものだったため、いまと比べるとかなり精度が低いと言わざるを得ません。たとえば、測量用の機械を合わせる位置やちょっとした角度のズレで誤差が発生しています。
なかには正確なものもありますが、その精度は公図によってばらつきがあります。
現在の公図とその現状
平成16年になると改正不動産登記法が制定され、この14条で新しい公の地図に関する規定がなされました。これは、法17条地図と区別するために、「法14条地図」とも呼ばれます。
法14条地図は、地籍調査によって作られた「地籍図」を法務局に備えなければならないとされています。地籍調査とは、国土調査法に基づいて測量が行われる、高精度な土地の調査のことです。ただし、この地籍図の一部には、測量技術が十分でなかった昭和30~40年代に作られた地図も含まれています。そのため、なかには問題のある地図もあるといれています。
また、地籍調査は、全国的にみると50%程度しか進んでいません。地図の重要性が高い大都市ほど地籍調査が遅れており、その完了の目途もたっていないのが現実です。そのため、古い公図しかない場合は、それが暫定的に使用されています。
そういった事情により、公の機関がもつ資料の中でも、土地に関する情報が正確でないことは珍しくありません。ただし、公図の内容がそのまま土地の所有権や境界に影響を与えることはないとされています。
公図は、あくまでも土地のおおよその状態を知るための資料として扱われています。
公図の使い方
不動産を売却する際は、土地の境界を把握して自分の所有権はどの範囲まで及ぶのかということをしっかり理解しておかなければなりません。
また、公図を確認すると、それまでの認識が誤りであったことに気が付く場合もあります。
たとえば1筆の土地だと思っていたところが、実は2筆に分割されていたというケースなどがあげられます。なお、「筆」とは土地を数えるための単位のことです。たとえば1筆の土地というのは、「登記簿上で1つとして数えられている土地」だという意味になります。
公図は、土地どうしの関係を示しただけのものなので、白地図に番号が振られたシンプルな作りとなっています。この番号は、地番のことです。これとブルーマップを比べると、公図では区切られた土地の中に正確に地番がふられていることが分かります。
ブルーマップとは、住所から地番が分かるようになっている地図帳のことです。住宅地図に青いインクで印刷されていることから、ブルーマップと呼ばれています。
公図の取得方法
公図は、手数料さえ納付すれば、誰でも取得することが可能です。公図の取得方法としては、主に以下の3つがあげられます。
1.窓口へ出向いて取得する
窓口で公図を取得したい場合は、法務局に依頼しましょう。具体的には、「地図証明申請書」に必要事項を記載して提出します。公図は、法務局であれば、どの地域のものでも取得できます。以前は、取得したい公図を管理している法務局からでなければ、それを取得することができませんでした。
また、公図は市役所等の税務課でも取得することができます。市役所のほうが、手数料が安い場合もあります。ただし、法務局へ登記関係の手続きをするなどの用事があれば、わざわざ市役所に立ち寄る必要はないでしょう。
登記に関わる内容は、法務局に依頼したほうがスムーズに進むことが多いです。市役所は、「公図を取得したいが、法務局は遠くて行きづらい」といった場合に利用すると便利です。
公図を役所の窓口で取得する場合は、法務局や役所が開いている時間を考慮しなければなりません。具体的には、平日の午前9時頃~午後5時頃までです。正確な受付時間は、各法務局や役所によって異なるため、実際に足を運ぶ前に必ず確認をとりましょう。
2.インターネット利用で取得する
公図は、法務省が運営するサービスを利用することで、インターネット上で取得することもできます。IDなどを取得し、手数料をATMやネットバンキングで支払うと、証明書が送られてきます。なお、公図のサイズはA3です。印刷して使用したい場合は、A3の印刷ができるプリンタを用意しなければなりません。
3.郵送で取得する
公図を郵送で取得したいときは、地図証明書申請書を入手して必要事項を記載する必要があります。そして、申請用紙には収入印紙を貼ることを忘れてはいけません。収入印紙は、登記所以外でも郵便局や金券ショップで購入することができます。
また、公図の返信に必要な分の切手を同封しましょう。これらを合わせて送付すると、数日で公図が郵送されてきます。書類の不備、収入印紙・切手の不足があると、スムーズに公図の郵送をしてもらうことができなくなるため、注意が必要です。不明な点がある場合は、窓口に出向いて取得するほうがよいでしょう。
どうしても窓口に出向くことができないときは、郵送前に電話で問い合わせをすることもできます。
公図取得の注意点
日常生活の中では、公図を取得する必要が出ることはほとんどありません。そのため、実際に公図を取得するとなると、戸惑うことも多いでしょう。公図を取得する際に、注意したいことについて説明します。
地番が分からないとき
公図を取得するには、地図証明書申請書に公図を取得したい不動産の地番を記載する必要があります。地番は、不動産の登記上に記載されている番号のことで、普段使用している住所の番地とは全く異なるものです。そのため、公図取得の手続きをしに行ったときに、その不動産の地番が分からないという事態におちいることは珍しくはありません。そういった場合はブルーマップを活用し、取得したい場所の地番を記載しましょう。
公図を取得すると、指定したあたりの位置関係が分かる図をもらうことができます。そのため、おおよその位置を把握してその周辺の公図を取得できれば問題ありません。公図を受け取ったら、実際の登記などをもとにして、自分の所有する不動産の位置関係を確かめましょう。
公図の種類
公図を取得する際は、地図証明書申請書の「地図・地図に準ずる図面」という欄にチェックをつけましょう。
「地図」は法14条地図、「地図に準ずる図面」は法17条地図のことをさしています。すでに触れたとおり、法14条地図と法17条地図を比べれば、法14条地図のほうが正確です。しかし、土地によっては、法14条地図がまだない場合があります。
そのため、地図証明書申請書では法14条地図と法17条地図を区別せず、「地図・地図に準ずる図面」としています。法14条地図がある場合は、自動的にそれが発行されるため、違いを気にする必要はありません。
より詳しい土地の状況について知りたいときは、別途地積測量図などを請求するのがよいです。
「証明書」の発行または「閲覧」のみ
地図証明書申請書には、「証明書」または「閲覧」という大きなチェック項目があります。「閲覧」にチェックを入れると、その場で見ることしかできなくなってしまいます。そのため、基本的には「証明書」にチェックを入れ、公的な書類として公図を発行してもらうほうがよいでしょう。
もちろん、書類自体を使用する目的がなく、不必要だという場合は、閲覧のみでも問題ありません。
公図のズレによるトラブルを回避するには
公図と実際の土地の状況にズレがあったとしても、基本的には問題はありません。公図はあくまでも土地の境目などを示すための資料であるため、ズレがある場合は実際の登記が正しいということになります。
とはいえ、公図と現況が異なる場合は近隣住人とのトラブルが生まれやすい状況となることは確かです。
不動産を売却する際に確認したことがきっかけでトラブルに発展してしまうと、そのトラブルがおさまるまでは不動産の売却をするのが困難になるでしょう。そのため、公図にズレがあった場合は、トラブルを未然に回避できるような対策を練る必要があります。
実測図を作成する
公図において、隣の土地のとの境界にズレがある場合は、隣の土地の所有者に立ち合いを依頼した上で、正確な土地の実測図を作成するとよいでしょう。法務省では、土地の筆界を特定する「筆界特定制度」を創設しています。
筆界
不動産の登記などに関して使用される用語です。この制度を利用すれば、測量費用は自己負担ではあるものの、登記の専門官によってきちんと土地の筆界特定を受けることができます。これは、法務局に相談することで実施が可能です。
地籍調査を依頼する
法14条地図としての地籍調査が行われていない場合は、それが実施されることにより正確な公図が作成されます。公に土地の現状が正確に把握されるため、できればこれを実現したいところです。
地籍調査は公共事業の一環として行われるため、個人的な費用がかからないというメリットもあります。とはいえ、地籍調査は、個人の希望に合わせて実施されるものではありません。しかしながら、地籍調査はその遅れが問題となっており、なるべく早く実施することが課題とされています。そのため、地域全体として地籍調査が進んでいないようであれば、町内会などを通して市役所に働きかけを行うことで、地籍調査が進むきっかけとなる可能性もあります。
もちろん、この方法では正確な調査までに少し時間がかかります。そのうち不動産の売却をしたいと考え始めた段階であれば、試してみる価値はあるでしょう。
公図を確認して不動産売却をスムーズに進めよう
不動産売却を行う際は、自分の所有権が及ぶ範囲をよく確認する必要があります。登記を確認することを忘れる人はほとんどいませんが、公図を確認しようとする人は意外と少ないのではないでしょうか。
公に示されている以上、近隣住人などが不正確な公図の内容を正しいと信じている可能性がないとはいえません。そういった認識の違いは、不動産売却による所有権移転の際にトラブルを生みやすくなります。不動産を売却するより前に、きちんとした調査で権利関係を明確にしておくことが理想です。
なお、公図にズレがあるということは、過去の測量が正確に行われなかったということを示しています。そのため、なかには、実際に登記されている土地の面積にも間違いがある場合もあるため注意が必要です。
そしてそれと同時に不動産業者選びもしっかり行ってください。もしもトラブルが起きた時でも、頼れる不動産業者であれば間に入り問題解決に動いてくれるからです。
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信頼できる不動産会社を見つけ早めに公図を確認し、トラブルなくスムーズに不動産売却を進めましょう。