不動産投資が注目されるなか、競売物件に目をつけて検討している人も多いのではないでしょうか。たしかに、競売物件には大きなメリットがあります。しかし、同じようにデメリットも存在するので、メリットだけに注目して取得に向かうのはおすすめできません。
競売物件には競売物件の注意点があることを十分に理解したうえで、競売に参加する必要があります。今回は競売物件の買い方・入札~落札までの流れについて解説していきます。
この記事の目次
競売物件とは?
競売物件とは、裁判所による「競売」の方法で売りに出される物件(不動産)のことです。一般的な中古不動産売買であれば、不動産仲介業者が間に入り、取り引きされることが多いため、競売というのは不動産の購入方法としては少々特殊だといえます。
そして、競売物件は取得手続きの特殊さゆえに、一般的な中古不動産とは異なるさまざまな特徴を有しているのです。競売物件のメリットやデメリットについてはのちほど詳しく見ていくので、まずは「競売物件」の基本的な知識からご紹介します。
競売にかけられる理由
そもそも、なぜ不動産は競売にいたるのでしょうか。この理由は、単純に「債務を返済できなかったから」と説明できます。
銀行などの金融機関に何らかの理由でお金を借りるときには、なんらかの担保を求められることがほとんどです。その担保の代表例が、土地や建物といった不動産だといえます。
たとえば、住宅購入時の住宅ローンを担保するために、購入した土地や建物に抵当権を設定した経験がある人には馴染み深い話かもしれません。
■抵当権 債権者である金融機関が、抵当権を設定した土地や建物を競売によってお金に変え、そのお金でローンを回収する権利 |
そして、返済が滞った債務者と債権者との間で一定額の債務を回収するために不動産をお金に変えるための手続きが「競売」なのです。抵当権が設定されている以上、ローンを返済する以外に競売を食い止める方法はありません。ローンの返済方法としては、所有者が不動産業者などに物件の売却を依頼して売ってもらう「任意売却」という手段もあります。
しかし、任意売却ができなかった場合は、競売によって強制的に不動産を手放さなければいけなくなる可能性は否定できません。
買い方・入札~落札までの流れについて
入札開始までの流れ
銀行などのお金の貸し手(以下、債権者とします)が、裁判所に申し立てをおこなうことで競売の手続きが始まります。
申し立てをおこなってからは、所有者に対して競売開始決定のお知らせや物件の調査などのさまざまな手続きを経て、初めて「開札」という入札のスタートがきられ、入札期間が始まります。
しかし、開札までに落札希望者に対してなんらの情報開示もなされないわけではありません。どういった物件が競売にかけられるかは、裁判所の掲示板や「BIT不動産競売物件情報サイト」などの競売情報サイトから確認することができます。
併せて「物件明細書」「現況調査報告書」「評価書」といった3点セットと呼ばれる資料から物件の現況などの詳細情報についてもチェックができるので、事前に隅々まで調査しておきましょう。
場合によっては、物件の所在地まで足を運んで実際に確認することも重要です。特に、現況が空室となっている不動産だったとしても、なぜか室内に人がいるなんてことも実際にあります。そのような人を法に則って自分自身で退去させないといけません。(裁判所は何もしてくれません。)
以上のことからきちんと現地で確認することをおすすめします。
入札手続きについて
目星をつけた競売物件を落札するには、入札期間中に、入札用紙に必要事項を記入して裁判所に提出する必要があります。
物件には売却基準価額と買受可能価額があり、これらは入札の目安価格と最低入札価格を表しています。よって買受可能価額以上を入札しなければいけません。
また、入札時には「保証金」を納付しなければなりません。この保証金というのは、競売物件の「売却基準価額」の2割と定められており、買受申出保証金という項目で3点セットにも金額が記載されています。
尚、競売というのはいわゆるオークション形式でおこなわれるため、入札したからといって必ずしも物件を取得できるわけではありません。入札者のなかでも一番高い入札価格を提示した人が、その物件を落札できるのです。
落札が決まったら?
競売物件の落札が決定したら、裁判所から代金納付期限通知書が送られてくるため、期間内に物件の残代金を納付します。残代金の支払いは原則一括払いとされているので、まとまったお金が手元にない場合は、銀行の個人融資などのローンを利用して用立てるなどする必要があるでしょう。住宅ローンは使えません。
ちなみに、取得した物件の登記簿上の名義を変更するための登記申請手続きは、裁判所がおこなってくれます。一般的な不動産売買とは異なり、競売で不動産を取得した場合は、個人が「所有権移転登記」などを法務局に申請する必要はありません。
しかし、所有権移転登記にかかる登録免許税については、代金と一緒に納付する必要があります。
落札後の手続きについて
競売物件にはいつから入居できる?
一般的には、残代金を納付した時点で競売物件の所有権は落札者に移転するとされています。しかし、実際の問題として「いつからその物件に入居できるのか」というのは多くの人が気になる点ではないでしょうか。実際のところ、競売物件に入居できるまでには、さらにいくつかのステップを踏まなければいけません。
裁判所が関与するのは、あくまで物件の「競売手続き」という代金が納付されて登記名義の書き換えを行うまでで、物件の「引渡し」からの手続きには基本的にノータッチです。つまり、入札した競売物件に入居できるようになるまでのあらゆる手続きは、落札者が全て行わなければならないのです。
落札後の手続きは、鍵の開錠とつけかえなどの細かな作業から居住者との立ち退き交渉などの大がかりな作業まで、物件の状態によってさまざまです。とくに、居住者との立ち退き交渉というのは、スムーズに進めることが難しいケースも多いでしょう。自宅を強制的に売却された所有者が、立ち退き交渉に対して好意的かつ前向きにのぞんでくれるとは考えにくいからです。
立ち退き交渉が進まない場合は
立ち退き交渉が進まず、居住者が出て行ってくれないような場合は、裁判所に対して「引き渡し命令」を申し立てることになります。引き渡し命令を申し立てることができるのは、代金納付日から6カ月(または9カ月)以内と定められているので、そのタイムリミットにも気を配りつつ交渉を進めましょう。
引き渡し命令の申し出から、およそ3日か4日で引き渡し命令の決定が下されます。この決定に対して居住者から不服申し出がなければ、引き渡し命令にもとづく強制執行が可能になるのです。引き渡し命令に対する不服申し立てがなされた場合は、その不服申し立てについての審査が終わらないうちは、引き渡し命令は確定しません。
一方、すでに居住者が立ち退いていて交渉を要しないケースでも、物件に残された荷物などの処理には気をつけなければいけません。残された荷物の所有権は依然として前居住者にあるので、落札者が勝手に処分することは許されないからです。
競売物件のメリット
安値で手に入りやすい
競売物件のメリットとして大きいのが、その「価格の安さ」ではないでしょうか。競売物件は、市場価格のおよそ70から80パーセントの金額で購入できるとされています。
たしかに、「競売にかけられた物件」というと、なんとなく良くない心象を持たれがちかもしれません。しかし、競売に出される物件そのものには問題がないことのほうが多いのです。
あくまでも、所有者がローンを払えなくなったために売りに出されたという事情以外は、一般的な中古物件と遜色ないと考えてよいでしょう。
さらに、競売に出される物件のなかには、市場価格の3割引ほどの安価で取得できることが信じられないほどの優良物件が混ざっていることがあります。そういった、いわゆる「掘り出し物」物件に出会える可能性も、競売物件のメリットなのではないでしょうか。
珍しい物件に出会える
競売にかけられる物件は、一般的な土地や住宅ばかりではありません。店舗や駐車場、マンションの一室にビル1棟まるごとなど、不動産屋ではなかなか目にすることのない物件が登場することがあるのです。
さらには、離島の土地や人里離れた山林、猫の額ほどの狭すぎる土地など、一般的な不動産取引には向かないような「レア」な物件が競売にかけられることもあります。一般的な物件ではなく、そういった珍しい物件を探しているのであれば、競売物件のなかから探してみてはいかがでしょうか。
特殊な物件は安く手に入れられるので、リフォームなどで価値を上げることができれば大きな収益が期待できます。
競売物件の情報を探すには?
バラエティ豊かな競売物件を探すためにおすすめなのが、競売物件情報サイトです。大手のサイトであれば、全国あらゆる地方の競売物件情報を取りそろえているので、競売物件の条件を指定して一括で探したい場合にはもってこいといえるでしょう。
競売物件のデメリット
優良物件の落札が困難
投資用の物件を探している個人にとっては、優良物件が安く手に入る可能性がある「競売」は非常に良い機会だといえます。取得にかかる費用が安ければ安いほど、賃貸収益などの利回りが高くなると考えられるからです。
しかし、そういった利回りの高い優良物件ほど、多くの人や業者が競売に参加します。つまり、ライバルが増えるため、落札が難しくなるということです。
また、競売に出せる金額、つまり資力の面では、個人よりも不動産業者や企業のほうが優位に立ってしまいます。
また、たとえ業者などと張り合えるだけの資力があったとしても、お金に糸目をつけずに落札金額をつりあげるわけにはいかないでしょう。優良物件を安く取得できるというのが競売のメリットであるところ、落札価格が高額になりすぎるのは本末転倒だからです。
この点、業者などは、競売による物件取得についてもある程度のノウハウを確立しています。
つまり、業者は、綿密な事前調査をもとに物件ごとに提示できる金額の上限について線引きしていることが多いのです。しかし、個人がそういった妥協点を見つけるのは簡単ではありません。
そういった意味でも、個人が競売で投資向きの優良物件を安価というメリットを保ったまま落札するのは難しいといえるでしょう。
物件に不具合があっても、保障がされない
不動産仲介業者が間に入るような個人間不動産売買では、原則、売主に民法で定めるところの契約不適合責任が認められます。契約不適合責任とは契約により引渡したものについて品質や種類、数量などが契約内容と異なった場合に売主が買主に対して責任を負うというものです。不動産売買においては主に「雨漏り」や「シロアリ被害」「家の傾き」等で契約内容と異なった場合売主が買主に対して責任を負うという内容です。
一般的な売買では、売主はそういった不具合の有無について事前に調査して買主に報告しなければいけません。そして売却後に契約内容と異なることが発覚した場合に、買主は売主に対して「損害賠償」や「契約の解除」を請求できる、というのが一般的な契約不適合責任の内容です。
しかし、競売物件には、この「契約不適合責任」の適用はありません。つまり、落札したあとに不具合を発見したとしても、損害賠償の請求などができないということです。
不具合の有無については、競売申し立て後におこなわれる調査などにもとづいた「物件明細書」「現況報告書」にも記載されます。
ただし、調査には限界があることから、それに載っていない不具合が存在することは十分に考えられるのです。
物件の中を見ることが難しい
住宅などの物件を購入する場合は、その内部までしっかりと見てから決断するのが一般的ではないでしょうか。しかし、競売物件の場合は、明け渡しまで内部を確認することができないと考えておいたほうがよいでしょう。なぜなら、競売にかけられた物件の内覧をおこなうには、居住者の許可が必要だからです。
そして、強制競売という不本意を強いられる居住者が、内覧をあえて許可することは考えにくいといえます。ですので、競売物件を購入した後にはじめてリフォームなどの必要性がわかるなど、内部を見学できないリスクも踏まえて検討しなければいけません。
物件の情報は競売情報サイトで公開されている内容のほか、前述の3点セットからも取得できますが、知りたい情報のすべてを知ることは難しいでしょう。そのため、どのくらいリフォームが必要であるか予想がつかず、費用が負担となる場合があります。
立ち退き交渉でトラブルになる可能性がある
落札した後のトラブルとして心配されるのは、さきほども触れたような「居住者との立ち退き交渉」においてです。
権利の手続きは裁判所が行ってくれますが、物件の引き渡しは落札者の責任となっています。交渉がスムーズに進めばよいのですが、そうはいかずに前の所有者が居座るケースも十分考えられます。立ち退き交渉が決裂し、裁判所に引き渡し命令を申し立てて強制執行のお墨付きをもらったとしても、手間や時間が余分にかかるのです。
さらには、強制執行を開始するために数十万の費用を予納しなければならないこともあります。
まとめ
競売物件の入札時には、慎重に検討をかさねよう
競売物件には「安価」という魅力的なメリットが目立ちます。しかし、その大きなメリットの裏には、無視できないリスクが潜んでいることも確かです。知識がないまま安易に落札すると、対処できないトラブルに巻き込まれてしまう可能性もあります。
競売物件の入札に参加する場合は、物件についての入念な調査はもちろん、落札後に想定されるトラブルの可能性についても検討を重ねることをおすすめします。
尚、居住用住宅としての競売物件の入札はおすすめできません。あくまでも投資用不動産としての購入を考え、且つあくまで余剰資金で購入するぐらい慎重さと余裕を持つことをお勧めます。
また、競売物件購入のサポートを行っている不動産業者もいるため、競売物件を検討されている方は一度相談してみることをおすすめします。
一括査定サイトを利用して効率的に不動産会社選びをしよう
不動産売買に関する知識がなく、所有している不動産をどのような方法で売却すればいいかわからないという方は一括査定サイト「イエイ」の利用をオススメします。
「イエイ」では、国内主要の不動産会社や地元に強い地域密着の不動産会社などとの取引があり、多様な不動産会社から自身に合う不動産会社を見つけやすいのが利点です。
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