かぶり厚さという言葉を聞いたことがあるでしょうか。かぶり厚さとは、建物の基礎部分に関わるもので見た目にはわかりにくいものです。しかし、不足していると建物に悪い影響を起こしかねません。そこで、かぶり厚さの重要性と万が一問題が出たときの解決方法について解説していきます。
かぶり厚さとは?
かぶり厚さとは、簡単に言うと鉄筋を覆っているコンクリートの厚みのことです。かぶり厚は、鉄筋コンクリート造りの建物に対して使われる言葉で、内側にある鉄筋の表面部分から鉄筋を覆っているコンクリートの表面部分までで短い部分の距離をいいます。
鉄筋は、鉄筋コンクリート造りの建物を支えるための強度を維持するには欠かせないものですがその反面、錆びやすいのがデメリットです。鉄筋は錆びることで強度が下がってしまうため、強度の低下を防ぐためにコンクリートで覆う必要があります。
ただし、コンクリートにも弱点がないというわけではありません。コンクリートは初めはアルカリ性なので、建設したばかりの新しい建物のうちは、しっかりと鉄筋を守ってくれます。ところが、経年とともに少しずつ中性化するという性質を持っているのです。
コンクリートは中性化するともろくなりヒビ割れが出てきます。そして、そこから水分が浸透するという事態が起こります。そのことが、内側の鉄筋を錆びさせてしまう原因となり、鉄筋の強度を下げてしまう可能性が高まるのです。
その点、鉄筋を覆うコンクリートの厚みが十分にあればそれだけ内側の鉄筋を守ることができ、強度を維持できます。かぶり厚さが多いということは、中性化によるコンクリートの傷みが内部に浸透するまでに時間がかかり、建物の自体の寿命を伸ばすことにもつながります。また、かぶり厚さが多ければ、火災などが起こった場合にも鉄筋を高熱から守ってくれることも可能です。
「建築基準法・日本建築学会標準仕様書」を見ていくと、柱・梁耐力壁の場合の最小かぶり厚さは、屋内が30mm・屋外は40mmとしています。
かぶり厚さ不足で起こりやすい影響
かぶり厚さが不足していると、その分だけ建物自体の強度を下げることになります。
わかりやすいところでは、壁面にヒビが出やすくなるという現象が見られます。ただし、コンクリート自体が経年とともに中性化して弱くなるという性質を持っていることから、壁面のヒビのすべてがかぶり厚さ不足によるものとは限りません。
ヒビだけの場合は、コンクリートの中性化が進んでいるという見方ができます。しかし、かぶり厚さが少ないとコンクリートのヒビが到達する時間が早まるのは確かです。そのため、内側の鉄筋に水分が届いてしまい錆びる原因になります。鉄筋が錆びてくればコンクリートの剥離や浮きを加速させ、ひどい場合は壁が剥がれ落ち鉄筋がむき出しになってしまうでしょう。
そこまでの状態になると、内側にはかなりの水分が浸透していることが予想できます。建物自体の強度を下げるだけでなく、外壁の落下などがあれば大変危険です。外壁以外にも、壁面に付属しているものがあれば落下しやすい状況になり、危険度は増すでしょう。
不足していると不動産価値はどうなる?
コンクリートの中性化は、1年に1mm程度進むといわれています。たとえば、かぶり厚さが30mmの建物であれば単純に計算すると、コンクリートの中性化が内側の鉄筋に到達するまでに、30年ほどかかると考えることができます。
通常、マンションなどの寿命としていわれているのは、かぶり厚さが目安になっていることが多いのです。ただし、実際に建物が立っている立地や気候といった周囲の環境にも影響は受けますから、多少の前後はあるでしょう。しかし、かぶり厚さが建物に与える影響から、かぶり厚さがどれくらいあるかが不動産の価値を左右するといっても過言ではありません。
かぶり厚さが少ない、または標準値に対して不足が見られる場合は、それだけ不動産としての価値が下がってしまう可能性も出てきます。
鉄筋コンクリート造りの不動産売却を考えるなら、かぶり厚さの問題は外せないと言えるでしょう。かぶり厚さが不足してしまう原因は、建設中に起こるいくつかのケースを挙げることができます。
ひとつは、コンクリートの打設中にスペーサーがずれてしまうことです。スペーサーとは空間を確保する役割を持つ器具のことで、鉄筋を固定するために用います。他には、コンクリートを流す型枠が変形してしまうことによるかぶり厚さ不足です。
いずれにしても、かぶり厚さが十分に取れていない場合は建設段階で何らかの原因があったと言えます。
かぶり厚さをチェックするには?
分譲マンションの場合で言えば、構造部分から内装に関しての仕様書などが事前に確認できるのが一般的です。
建設会社や不動産会社によって、用意される仕様書のタイプや確認方法などは違いがあるものの、通常は建物の基礎や構造といった躯体部分に関わる情報をマンション購入者が確認できるようになっています。新しいマンションになると、建設を予定している段階で公式サイトでも閲覧できることも少なくありません。
マンションを所有している場合で、かぶり厚さがどれくらいで確保されているのか確認したいときには、購入時に支給されている仕様書で構造部分をチェックしてみましょう。しかし、築年数がかなり経っている場合には正確に構造の確認ができない場合もあるかもしれません。また、建設中にスペーサーなどのズレが生じていれば、仕様書とは異なることもあります。そのような場合に利用できる方法が、非破壊検査です。
非破壊検査とは、建物を壊すことなく内部の状況を調査できる技術のことをいいます。すでにヒビが入ってしまったコンクリートだけでなく、外壁や内壁などの内側の状況を把握できるのがメリットです。コンクリートの内部がどうなっているのかを確認でき、対策を打つべきかどうかの判断ができるでしょう。外壁だけでなく、雨漏りの状況など建物全体の調査も依頼できます。
また、結果を書類としてまとめてもらえれば不動産を売却する際、寿命を推測する参考になります。
かぶり厚さが不足していたときの対処方法・戸建ての場合
鉄筋コンクリート造りの戸建て住居は、木造建築に比べると柱を少なく設計でき、空間利用がしやすいというメリットがあります。しかし、かぶり厚さが不足していれば、それだけ劣化が速まり、せっかくの強度も弱まってしまうおそれが出てきます。かぶり厚さが十分ではなく、さらに外壁の剥離がみられたら、内部に水分が浸透しているとことが考えられ、良い状態とは言えません。早めに修繕工事を行っておきましょう。
また、かぶり厚さに関係なく築年数に応じてコンクリートの中性化が進めば、それだけ内部の劣化は早まる可能性が出てきます。外壁のヒビを目安に早めに対策をすることで、それだけ不動産としての価値を維持することにもつながります。
かぶり厚さの不足を補うには、コンクリート部分の打ち増しなどで対応するのが一般的です。同時に、鉄筋の防錆処理などを行うなどで修繕することが多くなります。
ただし、実際の建物の状況や見た目の問題を考慮した方法が優先されるでしょうから、実際に修繕工事を依頼する業者にまず建物の現状を調査してもらい、そのうえで相談して進めていくといいでしょう。
かぶり厚さが不足していたときの対処方法・マンションの場合
戸建て住宅の場合は、所有者の一存で修繕は可能ですし自由度は高いですが、分譲マンションの場合は事情が異なります。特に共用部分の壁面などに剥離が発見された場合でも、すぐに修繕を依頼できるということにはなりにくい部分があります。
しかし、だからといって専有部分であれば自由に補修できるというものでもありません。
専有部分の区分や共用部分の修繕に関する費用負担や進め方などは、マンションごとで規定が作られるのが一般的です。そのため、実際に住んでいるマンションの規定を確認し、それに沿って進めましょう。専有部分のように感じても、場所によっては共用部分として扱われる場合もあります。確認を怠ってトラブルにならないよう、配慮が必要です。
また、売却を視野に入れて購入したマンションなら構造上の問題に関係なく、不動産としての価値が十分な時期に考えるのもひとつの手段です。
中古物件を売却するときの注意点
中古物件を売却する場合は、立地など周辺環境を含む価値に加え、築年数によって価格には変動が出ます。構造上特に問題がみられない不動産であっても、経年劣化とともに価値が下がってしまうのは仕方のないことです。
しかし、価値をできるだけ下げずに済む方法もあります。
実際の建物の使い勝手も価値に含まれるひとつですが、建物の寿命をできるだけ長くなるような配慮をしておくことです。中古物件を売却するときには、改めて建物の状況を調査してもらいましょう。目に見えない内部の状況も含め、今まで使ってきた感覚から問題点などを考え、修繕やリフォームなど手を加えておくのも良い方法です。
または経年劣化や問題がある分だけ、売却価格を下げるのもいいかもしれません。
瑕疵として考えられる部分はできるだけ解決しておくか、きちんと買主に伝えることでトラブルは回避できます。
信頼できるプロに相談を
中古の不動産を売却するときは、さまざまな売り方があります。
まだ新しい建物なら、簡単なクリーニングやちょっとした修繕で十分価値が維持できることは少なくありません。さらに構造によっては長く使用でき、それだけ価値が上がるというメリットも出てきます。一方、築年数が経っている古い建物であれば、水廻りを中心に傷みやすい部分を修繕しておくという配慮も必要です。リフォームも不動産の価値を上げるひとつの対策でしょう。
しかし基礎的な部分は別として、かならずしもすべてに手を加えてしまうのが良いとは言いきれません。買主には買主の考え方や計画を持って不動産探しをしていることは多いものです。所有している不動産に手を加えておくべきか迷ったときには、自分で判断せずに不動産売却のプロに相談するのもいいでしょう。立地や建物のタイプに合わせた売り方について、適切なアドバイスを期待できるはずです。
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色々と面倒が多く大変な不動産売却ですが、「優良な不動産のプロ」を見つけ安心して任ることで、その負担を少しでも軽減できるのではないでしょうか。