不動産売買においては複雑なルールがたくさん生じます。省略してしまうとトラブルを招くものも多いので、確実にこなすようにしましょう。たとえば「37条書面」は契約書と別に交付すべき書類です。この記事では、37条書面の重要性について詳しく説明していきます。
この記事の目次
37条書面にはどんな内容が書かれているのか?
不動産売買は「契約」によって取引が成立します。
不動産売買のルールは法律によって「指導」はなされているものの、大部分は当事者間の意思に委ねられています。つまり、売主と買主の合意さえあれば、法律の指導内容とは違うルールを新たに設定してもいいのです。
しかし、一方が勝手に決めたルールを押しつけてもトラブルを招いてしまいます。そこで、「この不動産売買におけるルールに双方は納得している」という証拠として、契約が求められるのです。
不動産仲介業者などの「宅建業者」を経て取引が行われた場合、契約書とは別に売主と買主に交付される文書が「37条書面」です。37条書面は宅建業者が作成し、宅建士の記名押印を得てから交付されます。そのかわり、押印さえあれば宅建士が書面の作成に関わる必要はありません。
主な内容としては「契約の詳細」です。
37条書面「契約の詳細」
◇支払日
◇支払い方法
◇物件の引渡し時期
などが37条書面には記載されています。そのほか「契約違反があったときの処分」などの、任意で特別な項目が設けられることも珍しくありません。
宅建業法では、37条書面を交付する条件として「遅滞なく」と定められています。宅建業者は契約内容が決まり次第、迅速に37条書面を作成して交付しなければいけません。37条書面の内容は契約書に基づいており「契約書の交付によっても満たせる」とされています。
37条書面は不動産取引の最後を締めくくるために欠かせない文書です。37条書面が交付されて、宅建業者は役割を果たせると言えます。
37条書面にはどんな意味がある?契約書とは別なのか
37条書面の文面は不動産売買の契約内容を踏まえて作成されます。37条書面を宅建業者が交付する目的は「当事者間の問題に対して、宅建業者の立場を明らかにするため」です。
宅建業者を介した不動産契約では往々にして、あとから「契約内容を知らなかった」「業者にだまされた」などのクレームが入ることがありますが、宅建業者が「説明責任を果たしていた」ことを証明できなければ、クレームを受け入れなくてはならなくなります。
特に、宅建業者が主導して契約を取り決めた場合には、「業者に都合よく契約を書きかえられた」と主張してくる当事者が出てくる可能性が高まります。
そのために宅建業者は「あらかじめ契約内容を当事者に伝えていた」と自己弁護ができるようにしておかなくてはいけません。そこで、37条書面が重要になってくるのです。
37条書面を売主と買主に交付しておけば、あとから「契約内容を知らなかった」「後から内容を変えられた」とは主張できなくなります。宅建業者の正当性を記録に残すため、37条書面は欠かせない文書だと言えます。
37条書面と契約書を統合してしまう不動産取引も珍しくありません。宅建業者が中心となり契約書を作成・取引成立へと導いたケースでは「売主と買主だけしか知らない契約内容」が存在しないため、37条書面と契約書を分ける必然性がなくなります。
ただし「37条書面とは契約書と同じ」ではないので注意しましょう。
37条書面と契約書を別々にする目的も知っておこう
37条書面と契約書を統合すると、売主も買主も管理が楽です。37条書面について説明を受ける時間もなくなるので、手間が省けます。
実際、多くの不動産取引では契約書が37条書面をかねて取り扱われていますが、取引内容によっては「37条書面と契約書を別々にしたい」と希望する当事者もいます。もしも買主から「書面を別にしたい」と言われても、その意図を汲み取れるようにしておきましょう。
そもそも何故、宅建業者が契約書を用意するケースが多いのかというと、ほとんどの一般人には契約書を作れるだけの知識とノウハウが備わっていため当事者の承諾を得て宅建業者が契約書を準備してくれる取引が一般化しました。ですが、本来は建業者が用意する義務はありません。宅建業者は自由に契約書を作成しているわけではなく、あくまでも当事者間で取り決められた内容を書面化しています。
そして、当事者間の交渉で「どうしても宅建業者に知られたくないプライバシー」が出てきたとします。そのほか、宅建業者相手であっても、すべての契約を公開したくないと考える当事者もいるでしょう。
そこで、宅建業者が用意してくれる37条書面とは別に、当事者だけで共有できる契約書を作成するケースが出てくるのです。契約書の作成は当事者が主体になって行われ、交付するのも当事者同士です。その場合、宅建業者は契約書の内容を知らないまま取引を終えることもあります。だとしても、特に法律には抵触しません。
37条書面と35条書面はどんなところが違うの?
37条書面と同じく、不動産取引で交付の義務がある文書に「35条書面」がありますが、呼称が似ているだけで内容は全く異なります。不動産取引に臨む場合は、両者の違いをはっきり把握しておきましょう。
37条書面
交付相手
交付人
内容
交付のタイミング
35条書面
交付相手
交付人
内容
交付のタイミング
※津波や土砂崩れなどのリスク、家屋に使われている素材の有毒性などは35条書面に明記されます。もしも35条書面でリスクが載っていなかった場合、買主は「契約条件に問題があった」と主張することができます。
売主や宅建業者との契約を解除できるほか、裁判などを経て損害賠償を請求することも可能です。35条書面を確認した後、買主が契約を見送ることもありえます。
なお、すべての不動産取引は37条、35条書面の両方が交付を義務付けられています。いずれか一方だけだと契約は成立しません。
37条書面は売主が自分自身で作成することができるのか?
37条書面は宅建士の押印さえあれば、誰が作成してもかまいません。そこで、自分で作成しようと考える売主もいます。
たしかに、自分で37条書面が作成できるなら不動産仲介業者を利用する必然性は非常に低くなります。悪徳業者と関わるリスクも減ります。また、内容をじっくりと確認しながら作っていけるのもメリットです。交渉内容を自分で文面に起こしていくため理解は深まり、契約を忘れにくくなります。ただし「売主に不動産の十分な知識が備わっていること」が大前提です。
不動産売買の契約は、自由交渉が認められているため当事者間のトラブルが絶えないのです。その時、拠りどころとなるのが契約書なのです。しかし、素人が作成した完成度の低い契約書は交渉で相手につけこむ余地を与えてしまいがちです。また、法律の誤解などのミスが起こりかねません。
法律を勉強しながら書き進めていくと、時間もかかります。37条書面は絶対条件として、遅滞なしに交付しなければなりません。仕事や家の用事をこなしながら37条書面を作成するのは至難の業なのです。そのことからも、プロフェッショナルに代行してもらうのが無難といえるでしょう。
ほかにもある!宅建業者に37条書面を作ってもらうメリット
不動産仲介業者などの宅建業者に37条書面を作ってもらえば、精度やスピード以外のメリットも得られます。それは、「公正な第三者に契約内容を把握してもらえる」という点です。
不動産取引におけるトラブルは発生率が高く、水掛け論になってしまうパターンも珍しくありません。そのようなときに、契約内容に詳しいプロフェッショナルがいれば、スムーズに仲裁してくれます。当事者間で言い争わずにすみます。
また、宅建業者は契約交渉の段階からさまざまなアドバイスをくれます。
売主が不利になりそうなときや、法律に違反する恐れがある場合など気づいた点を忠告してくれるため、売主が損をする確率を下げられます。また、売主では気が引ける買主との値上げ交渉などを代行してもらえるのも大きなメリットです。あいだに宅建業者が入ってくれれば、要望も通しやすくなります。
ただし、これらのメリットは「優良な宅建業者」と出会えた際に限ります。宅建業者のなかには、自らの利益を優先して横暴に振舞うところもあります。悪徳業者に困らされないためにも、業者のリサーチは気合を入れて挑みましょう。
インターネットの口コミを鵜呑みにするのではなく、スタッフと会って感触を確かめるのがおすすめです。そして、料金プランやサポート体制などを細かくチェックし、親身になってくれる業者を選びましょう。
ですが、この「優良な宅建業者」を自身で探し出すのはなかなか大変です。そこでおすすめなのが、一括査定サイトの「イエイ」です。これまでの不動産売却は、一社一社足を運び査定をしてもらう方法が主で、不動産売却の第一歩である査定の障壁が高くとても面倒なものでした。 またそのため、不動産会社へ対する不安も大きいものでした。しかし、「イエイ」では自宅にいながら思い立った時すぐに1000社以上の厳選会社から選んび最短60秒で一括査定していただけます。
自身に合う「宅建業者」と出会い、賢い不動産売買に臨みましょう。