不動産取引では、宅地建物取引業法の「35条書面」を買主に説明し、文書化して渡すことが義務付けられています。買主に物件が安全だということを証明するため宅地建物取引士から、条項の説明をしてもらいます。この記事では、宅地建物取引士と35条書面について解説していきます。

35条書面を説明してくれる「宅地建物取引士」とは?

個人が不動産物件を売買しようと考えたとき、直接取引相手を探すことは法的に認められています。しかし、理想的な取引相手をすぐに探すことは困難で、初対面の相手と「不動産」という高額な取引をしようと考えられる人も少数派でしょう。そのため「宅地取引業者」いわゆる「不動産会社」に依頼して取引を行うことが一般的です。

不動産と宅地建物取引士(宅建士)

宅地建物取引士(宅建士)とは不動産会社で働く際、顧客に「重要事項」の説明を行える資格です。この宅建士の資格がないと、重要事項を取り扱うことはできません。

不動産売買では「宅地建物取引業法」をはじめとして、トラブルを避けるための法律が数多く制定されています。これらの重要事項を理解しないまま不動産取引を行うと、後々トラブルになりかねません。万が一、取引相手が悪質で理不尽な契約内容を押しつけてきたとしても、抵抗する術を失ってしまいます。

重要事項の説明は不動産取引で欠かせないプロセスですので、宅建士が所属しているかどうかは不動産会社の信用度を見極める大きなポイントともいえます。

35条書面の内容は?どうして不動産取引で重要視されるのか

不動産取引では、宅地建物取引業法の「35条書面」を買主に説明し、文書化して渡すことが義務付けられています。35条書面は「重要事項」に含まれるほど、健全な取引を実現させるために外せない内容が書かれています。

「登記された権利」「法律上の制限」などが保障されている
■不動産を引渡す際には「登記」によって所有者を更新しなくてはいけない
■法律によって「建物の高さ」などが制限される場合もある

※これらの説明なく不動産を売却してしまうと揉め事の火種になりかねない
「私道」「電気・ガス」の状態を説明
■私道とは、不動産物件に接している道路のこと
◇不動産物件は、幅4メートルの私道に2メートル以上接しないと家を建設できない
◇電気やガスが通っているかについても、買主に説明責任がある

※もしも電気やガスが通っていない場合は、工事にかかる費用についても書面で概算を出さなくてはいけない
国土交通省が定める事項に従い近隣の環境について説明
たとえば
◇「土砂災害の恐れはないか」
◇「津波被害の心配はあるか」
といった天災についてのリスクは、必ず明記

家屋に使われた素材で、35条に抵触する危険があるのが「アスベスト」
※アスベストは発がん性物質なため、使用されている家屋では必ず買主に伝えなくてはいけない

これらの説明がひとつでも果たされていなかったとき、買主は「宅建士が説明責任を放棄した」と主張できます

35条書面でよく起こるトラブルとは?事実は必ず確認する

売主は「35条書面の説明は宅建士に任せておけば安心」と考えがちですが、35条書面にまつわるトラブルは少なくありません。

35条書面のトラブルは少なくない

たとえば、宅建士が不動産物件の調査を怠ってしまったときです。

通常、35条書面では買主に説明するべき「家の素材」「周辺環境」などを細かく記載します。しかし、物件を確認せず適当な情報を記してしまう宅建士もいるのです。さらに、たとえば「高度制限」などの法令が後から制定されたのにもかかわらず過去の情報をそのまま載せてしまう宅建士もいるでしょう。不動産取引の際に調べ直せば判明することなのですが、そのことを怠り古いデータを更新していないこともありえるのです。

そのことから、売主は35条書面に該当する情報を自ら宅建士に伝えておくのが無難です。

もちろん、売主が念入りに宅建士へと更新情報を説明し、35条書面を作成してもらったとしても「絶対」にトラブルが防げるとは限りません。35条書面の内容は複雑になりがちですし、説明には長い時間を要します。「聞き洩れ」や「伝え忘れ」も起こりえます。万一トラブルが起きたときでもしっかり対処してくれる宅建士と出会えるかどうかが不動産取引の鍵を握っています。

買主に「35条書面の重要性」をしっかり理解してもらおう

買主が35条書面を軽視していた結果トラブルが起こることもあります。宅建士がいる不動産仲介業者の場合、悪徳業者でもない限りは必ず「35条書面の説明」は行われているのです。売主は買主に「35条書面の重要性」を知ってもらいましょう。そもそも、「買主の利益を守るため」に35条書面が大切なのです。

買主に「35条書面の重要性」を理解するのは双方のため

もしも、法律上の制限があり購入した不動産を有効活用できないのであれば買主は取引で大損をしてしまいます。35条書面は、買主が納得できる契約にたどりつくために不可欠な説明なのです。また、「買主の安全を保障する」ためにも役立ちます。35条書面をしっかり読み込むと、周辺環境が深く理解でき、自然災害のリスクにそなえられます。環境汚染などの人災への対策も立てやすくなるでしょう。家の素材が気に入らないときは、契約が成立する前に回避できますし、35条書面によって買主が救われる可能性も非常に高いのです。

35条書面の説明は「形式的なやりとり」ではなく「買主のためを思っての行動」だと分かってもらえれば、真剣に耳を傾けてくれるでしょう。

35条書面を説明するときの注意点!どんなタイミングで伝えるべきか

35条書面の説明は宅建士が主導で行ってくれるため、基本的に売主から口を挟む余地はありません。しかし、宅建士に任せきりにはならずに交渉の内容に関心を持つように心がけましょう。

たとえば「35条書面を説明するタイミング」は非常に大切です。35条書面を伝える間が悪いと、買主は説明に集中してくれません。35条書面にはネガティブな内容が載っていることもあるので、場合によっては買主の購買意欲を削いでしまいます。ベストなタイミングで35条書面を切り出せるように考えましょう。

35条書面を持ち出すのは、交渉の初期段階や契約が成立してからは避けましょう。「買主が物件の内容を理解し、契約を結ぶ意志を固めた段階」で説明しましょう。そして、説明は時間を確保してもらったうえで、じっくりと進めます。買主の反応を見ながら、説明を流れ作業にしないのがコツです。

35条書面が気になったとしても虚偽報告をしないこと

多くの売主が犯しがちな過ちが「35条書面を懸念しての虚偽報告」です。35条書面を作成するため、宅建士は売主にヒアリングを行い物件の情報をリサーチしていきます。そのうえで直接物件を確かめて35条書面は完成します。

ところが、35条書面にマイナスな情報を載せて売れなくなることを懸念した売り主が、物件の瑕疵を隠したり周辺環境の嘘を伝えたりすることは珍しくありません。

しかし、宅建士や不動産仲介業者から派遣される鑑定士は、不動産物件を見極めるプロフェッショナルです。売主がその場限りの嘘をついたところで、すぐに見抜くでしょう。それに、業者には業界で共有しているデータベースがあるので、売主から聞いた情報の真偽は確認可能です。

嘘をつき続ける売主に対して業者は不信感を強めます。その結果、仲介を断られてしまうおそれも出てくるのです。

仮に宅建士をごまかせて買主がついたとしても根本的な解決にはなりません。買主がどこかのタイミングで売主の嘘に気づいてしまうと、クレームが返ってきます。売主の行為は「詐欺罪」に該当するため、裁判になれば非常に分が悪いでしょう。判決によって多額の補償金を支払わされると、あまりにも割に合いません。

売主は35条書面のために嘘をつかないようにして、物件の欠点よりも長所をアピールしながら不動産売買に挑みましょう。そして、スムーズな売買が行えるよう、安心して頼れる不動産会社選びも慎重に行いましょう。

虚偽報告はしないこと

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35書面の内容をしかり理解し、信頼できる不動産会社と一緒に賢い不動産売買に臨んでください。