不動産を売却する場合、不動産会社と媒介契約を結ぶ必要があります。もっとも、たくさんある不動産会社の中から誠実な対応をしてくれる会社を選ぶにはコツが必要です。そこで、今回はどの不動産仲介会社を選べばよいのか、それぞれの会社の特徴を解説していきます。

しっかりしている!大手の不動産仲介会社の特徴

仲介手数料は高めでも頼める安心感

仲介手数料が高めの大手は安心感が違う

テレビCMや広告でよく目にするような大手の不動産会社は規模が大きい分、取引も活発に行われています。会社に寄せられる売却依頼も多く、法令順守の意識が高いのが特徴です。会社が大規模になるほど扱う金額が増えるので、法律による規制も強くなります。

「中小の小さい企業ではきちんと仲介してもらえるか不安」という人は大手の不動産仲介会社がおすすめです。社員も宅建の資格を持っている人が多くいるので安心して相談できます。大手の仲介会社となると、建築に関する知識というより仲介業務に特化している会社がほとんどです。もっとも、会社での取り決めやルールが中小企業に比べて厳しくなるので、仲介手数料の値引きは難しいでしょう。

また、大手の仲介業者であれば自社内で契約を結び、売主と買主の双方から手数料をとる両手取引も多くなります。もし自分が売主となる場合に両手取引は避けたいのなら、大手との契約は結ばないでおくのが無難でしょう。もちろん、信用に足る会社や営業担当がいるのであれば、その会社や人に任せるのが一番良いです。
こういったツテやコネがない場合は、しっかりと物件情報が公開されているか、正当な値段で取引されているかに注意が必要です。

臨機応変な対応が良い!中小の不動産仲介会社の特徴

大手よりも柔軟な対応が可能

中小は臨機応変が利く

中小企業の特徴はそのフットワークの軽さです。従業員が数名しかいない会社から数百名程度まで、小さな地場企業も含めると日本全国に無数の仲介会社があります。こういった中小企業の特徴は、大手に比べて購入依頼が多いことです。物件を探している買主は、できるだけ安く物件を買いたいと考えています。この点、大手の不動産会社を仲介すると手数料が高くなってしまうので、その地域に根差した中小の中小企業を利用する傾向にあります。

中小の企業であれば、仲介手数料の割引交渉にも柔軟に対応してくれるのも理由の1つです。これは、規模が小さいからこそできるメリットともいえます。

また、仲介だけでなくリフォームも手掛けている業者の場合、建築の知識も持っています。購入した物件をリフォームしたり修繕することも合わせて依頼できるので非常に便利です。もっとも、大手と違い社員全員が宅建資格を持っているわけではありません。また、業者によっては法令順守の意識が甘いところもあります。契約に関して何らかのトラブルが発生した場合の対応も含めて、誠実に対応してもらえるかどうかはしっかりと確認しておきましょう。

不動産仲介会社の「両手」「片手」とは?

不動産会社との取引には大きく2つの取引があります。それが「両手取引」と「片手取引」です。

2人からもらうか1人からもらうか

両手取引とは、1つの仲介業者が売主と買主の両方と取引をしている場合になります。仲介業者は売主と買主の両方から仲介手数料をもらえます。一方、片手取引とは売主と買主の仲介業者が別の場合です。仲介業者は2社以上存在しており、売主の仲介業者は売主から、買主の仲介業者は買主から仲介手数料をもらいます。

両手取引は買主・売主双方の仲介不動産会社が同じ

売主・買主それぞれ別の仲介業者に依頼

自分が売主となる場合に注意したいのが両手取引を行う場合です。両手取引では仲介業者が売主と買主の双方を媒介しているので、どちらかの利益になるように話を誘導することができます。一般的に、これは「利益相反」といわれるもので、どちらかの利益になるようにすれば、その相手方が損をするという状態です。

もっとも、不動産の仲介はあくまでも「媒介」であって「代理」ではないので、民法上この両手取引は許されています。したがって、両手取引の場合、あくまでも不動産会社が誠実な売買の仲介を行ってくれると信じて取引をしなければいけません。この両手取引が誠実に行われない場合が囲い込みと呼ばれるものです。

囲い込みとは

囲い込みとは、売却依頼を受けた業者が同業他社に物件情報を流さず独占することをいいます。

売却物件の情報は不動産会社全体で共有することが義務付けられています。売却依頼を受けた業者は物件情報を不動産会社が共有しているデータベース(レインズ)に登録しなければいけません。この際に、不誠実な業者はレインズに登録せずに情報を囲い込んだり、登録してもすぐに削除したりします。また、悪質な業者は他業者からの買付があっても「他に申込が入っている」と伝え、他業者に紹介しない業者もいます。

この囲い込みは法律で禁じられている行為ですが、一部の業者で行われていることも事実なのです。

売却時期を逃す!囲い込みのデメリット

不動産会社にとってはメリット

不動産会社からすればメリットのある囲い込みは、売主にとってはデメリットになります。不動産会社は条件の良い売り物件を自社で買付が来るまで囲い込むことで、両手取引をさせて手数料を売主と買主の双方から得ることができます。しかし、売主の立場に立てば本来入るはずであった買付が成立せず販売機会を損失します。売却時期の遅れは早く現金が欲しい人にとっては経済破綻にも繋がる重要な問題です。

さらに、一定期間売れないことで業者から値引きを迫られ不当な値段で売却してしまう可能性もあります。こうした値引きによって赤字の原因となる場合もあるのが囲い込みのデメリットです。また、業者によっては囲い込んだ物件を「当て物件」として利用するケースもあります。

当て物件とは

当て物件とは、同じ立地や条件の物件を2つ用意し、囲い込んだ物件の値段を少し高く設定して販売機会を意図的に無くさせることです。内覧に来た購入希望者に値段の高い当て物件を見せてから、安い方の物件に購入を促します。こうして意図的に囲い込んでいる物件の販売機会を損失させ、売主に対して「なかなか売れないので値引きしましょう」と持ち掛けます。値引きに応じたところで、自社で紹介した購入希望者を仲介すれば両手契約となり双方から手数料を取れるという仕組みです。

こういったことを行う業者も中にはいるので、細心の注意を払って業者を選びましょう。

囲い込みは両手取引のときに発生しやすい

「囲い込み」や「当て物件」は、基本的に両手取引のときに発生します。もっというと、専任媒介契約を結んだ場合です。専任媒介契約とは売主の物件を扱えるのが1社のみとなる契約方法になります。なぜ、専任媒介契約で囲い込みが行われるのかというと、囲い込みを行うには業者が情報をコントロールする立場に立つ必要があるからです。

もし、専任媒介でなく一般媒介としてしまうと、売主の物件を他社も扱うことができるので買付が入った場合、他社に取られてしまいます。この点、専任媒介であれば買付の注文はすべて自社に届くので、どの買付と契約を成立させるかの決定権も持ちます。こうして情報をコントロールできる立場になってはじめて囲い込みを行うことができるのです。
そして、この囲い込みには手数料が通常の2倍になる両手取引であることが前提です。

不動産仲介会社にとって利益となるのは仲介手数料のみとなります。したがって、一度の取引で利益があげられる両手取引を確実に成功させるために囲い込みを行うのです。

もっとも、両手取引自体は違法でなく、あくまでも不動産会社の信義誠実な対応によってなされるべきものとされています。もし、不動産会社が専任媒介での契約を執拗に迫ってきた場合には注意しましょう。そして、取引が決まる場合には「この取引は片手取引ですか?」と確認することをおすすめします。

まとめ

不動産の売買は初心者には分かりにくい部分もたくさんあります。その際に、不動産仲介会社を利用するのは非常に便利です。しかし、不動産会社も利益をあげるのに必死になり不誠実な対応をする場合があるということを念頭に置いておきましょう。囲い込みや当て物件となることを防ぐためにも、不動産の売却はきちんとした売却実績のある会社を選びましょう。

取引を行う前にその会社が今までどれだけの実績があるのか、どんな会社なのか把握した上で契約を結ぶことが大切です。