不動産売却にはトラブルも多く、いくつか事例を知っておいた方が何かあった時に即時に対処できます。これから不動産売買を行う方のために、いくつか事例を挙げながら注意点をご説明しましょう。

不動産売却に関連するトラブルの事例

不動産売却の場合は

1.個人売却
2.仲介業者
3.業者売却

の3種類の売却方法があります。ここではその3種類について、それぞれのトラブル事例や注意点をお伝えします。

知人などに直接売却する場合

仲介業者を介さず、個人間で売買を成立させるやり方です。手数料などがかからないので、経費を節約できるメリットがあります。

売買成立の証しとして、登記を移転する必要があります。登記は、個人で手続きを行えない事はありません。ですがそれは、本当に単純な手続きで済む売買であることが前提です。

金融機関から借り入れがあり、その抵当権が残っている場合等は個人間手続きで全てを行う事が難しくなります。また、登記は単純なものばかりとは限りません。敷地権・地上権・その他にも一般に馴染みのない登記がなされている場合には、相手が安心して取引をするのは難しいと思います。

ですのでなるべく、登記は司法書士に依頼しましょう。

個人間取引のトラブル

個人売却のトラブル事例

個人間での取引後、売買が成立した物件に瑕疵(一般的には備わっているにもかかわらず、本来あるべき機能・品質・性能・状態が備わっていないこと)が発見され、その負担をどちらがいつまでどのように負うかの規定がされておらず、その負担について裁判で争うという事になった事例があります。

これは、仲介業者など不動産のプロを介していれば見抜けた若しくは瑕疵の負担について明文化されていれば、トラブルにならずに済んだ事なのです。

ここまで出てきた単語について、すべて明確に説明できる方は個人間売買を行う事も可能かと思いますが、個人間売買は売主・買主双方に【逃げ道】がないことが、一番の欠点ではないでしょうか。

仲介業者など不動産のプロを挟む事で、重要事項説明を行う仲介業者は一定の責任負担が生まれます。そうなれば、もしトラブルが起きたとしても仲介業者の責任が問えれば、業者の加入している保険対応で済む場合があるのです。

全て個人で行う場合、労力のわりに利益が少ないということが殆どなのです。

ですので、「絶対にトラブルはない」と言い切れる安全な取引以外、個人間取引はおすすめできません。

仲介業者に頼んで売却する場合

一般的には、不動産売買は仲介業者を通じて行う事が最も多いです。仲介業者に頼んだ場合、売買成立時には仲介手数料がかかります。しかし上限額が法定手数料として決まっており、それ以上請求することは出来ません。

多くの事例から、取引にかかる諸経費は想定可能ですので予算が不明瞭であることが無く、また法的に必要な手続きを専門家が責任をもち補完的役割を果たしてくれるので、基本的には「おまかせ」で手続きが進められることがメリットです。

しかし仲介業者を頼んだ場合でも、トラブルが全くないわけではありません。

仲介業者のトラブルで悩む男性

仲介業者のトラブル事例

仲介業者を通じて売買を行う際のトラブルには、【重要事項説明違反】が挙げられます。

業者は、売買の際に物件について重要事項説明を行う義務があります。そこには、建築に関する法令上の制限やその他必要な事項を説明しています。しかし周辺環境等で、絶対に必要と言えない内容が多々あるのが不動産というものなのです。

たとえば騒音等の人によって感じ方が違うものや、近隣にトラブルの多い人が住んでいたが知らなかった等ということもあります。ですが、売却の際は後々でトラブルにならない様、売却に不利に感じるようなことも全て仲介業者に伝えてください。そしてそれらのことを必ず、重要事項説明に盛り込んでもらう事が必要です。

このような場合も、個人間であれば売主・買主どちらの責任になるのかはっきりとしないためトラブルの元となりますが、仲介業者に依頼した場合は売主が自分に不利となる事実を業者に伝えておけば、あとは重要事項説明を行う業者の責任を問えるため個人に「逃げ道」があり、このことが大切なのです。

仲介業者は、国土交通省の管轄で免許を取得するにもさまざまな条件が付けられており、一般消費者保護を徹底された中で営業をしています。不動産においては、一般消費者は弱者で不動産業者は強者であることを前提とし様々な規制が用意され、一般消費者は保護されています。ですので、安心して仲介業者に売却依頼してください。

買取業者に直接買い取ってもらう

仲介業者を通じて個人の買主を見つけるまでに時間がかかる場合もありますし、買主が住宅ローン等の借入をする場合には契約から決済まで1ヶ月程度の時間を要することが一般的です。しかし不動産業者による直接買取の場合、基本的には即金で決済しますので売主はすぐに物件を処分でき、且つ現金がすぐに手元に来るというメリットがあります。

昨今、中古住宅をリフォーム・リノベーションなどで付加価値をつけ販売し、実績を伸ばしている企業が多々存在します。

では、買取業者に頼んだ場合にもトラブルはあるのでしょうか。

買取業者に直接買い取ってもらう

買取業者のトラブル事例

不動産買取業者は売主から物件を買い取った後、通常はリフォームして再販します。

売主自身がリフォームし、物件を印象良く仕上げて売りに出すということも可能ではありますが、一般の個人売主がリフォームにかかる費用の全てを負担し売却をする、というのはあまり現実的ではありません。そもそも不動産のプロでない方がほとんどなですので、かかったリフォーム費用以上の値で売れる可能性はとても低いです。

また、継続的にリフォームを発注している不動産業者よりも、単発でリフォーム会社に発注する個人の場合のほうが、リフォーム代が高くなるということは経済原則です。そのことからも、リスクかけた分を回収できる可能性の方が低いと言わざるを得ません。はっきりいって危険ですので、行わないほうが方が賢明だといえます。

このような事から、とにかく早く現金化したい場合には買取業者に購入してもらう事が最良ではないかと思います。その際に、仲介業者に対して窓口対応をお願いする事も可能です。有利な交渉をしてくれる仲介業者に依頼をする方が精神的にも安心でき、高い金額で買い取ってくれる業者を探してきてくれる可能性が高いのです。

買取業者にもいろいろ特色があり、得意な物件があります。売却される不動産の個性を正しく判断し、その個性を活かし生まれ変わらせることを得意としている買取業者にお願いをしなければないません。なぜなら、それだけで買取価格は大きく異なるからです。

不動産取得の際のトラブル事例

不動産の取得は、車やその他高額なものを買う時と違って登記をする事が必要です。法務局に一つ一つの不動産の所有者や、物件に関する権利関係を登録する事になります。もし登記に名前が無いと、その不動産の正式な所有者として認められません。

ここでは、不動産の取得に際してのトラブル事例や注意事項をいくつか説明したいとおもいます。

不動産相続の場合

昨今、相続税が増税され注目されているのが相続です。一般に、相続財産の内訳をみると一番大きなのが持家やその他不動産であることがよくあります。

相続による不動産の取得でトラブルになるのは、相続財産のうち不動産の比率が多すぎるために不動産を取得した相続人に対して、他の相続人から現金を求められることです。当然、多額の現金を持っている人というのは一部に限られますので、相続で取得した家を売らなければ現金を準備できずその結果、相続財産を手放さなければならないといった本末転倒な事になりかねません。

また、相続で不動産を【共有】した場合もトラブルの原因となります。実際に、相続で不動産が共有になってしまったばかりに、売りたい不動産が売れずに頭をかかえることになった事例があります。

妻・長男・長女・次女のいる父親が亡くなり、長男家族が残された母親と生活を共にするために父親から相続した一戸建てに住みました。そして生活費や戸建の維持費、痛んだ部分のリフォーム代等の費用は長男家族が負担をすることになりました。敷地が広かったので一部を売却し、その費用に充てたいと考えたところ、長女は結婚して家を出ており自身の子の教育費のためにも売却には賛成をしました。しかし次女は、既に家を出ていたのですが未婚で、交際している男性から何か口添えがあったのか持分以上の金銭を要求しその上で売却に反対しました。

不動産を売却するには共有者すべての同意が必要ですので、売買は成立せず長男家族は想定以上の負担を抱え、長女は見込んでいた娘の教育費を得られず非常に苦しい状況に置かれてしまいた。そして当然のことながら、親族間での関係は冷え切ってしまいた。

不動産を持つことは、そのようなリスクも抱えるという事なのです。

【どういう形で取得をするか】先を見据えて適切な取得をしなければ、かえって将来のトラブルを取得する事になりかねません。

不動産相続の場合

不動産購入の場合

不動産を購入する場合、先の売却時の事例と同様に仲介業者を介しての取引が中心となります。購入に関連してのトラブルも、売却時同様に【重要事項説明違反】が挙げられます。

例えば、一戸建てを建てるために購入した土地の南側にマンションが建ち、陽当りなどの面で環境が大幅に変化した場合、南側にビルが建つことを聞いてなかったと、仲介業者に賠償請求したとします。

契約時の重要事項説明で「本件敷地南側には駐車場があります。将来的に建物が建設される可能性があり、日照通風などの環境に変化がある場合があります」と記載されている場合、確かに「ビルが建つ」とは言っていませんが「建物が建設される可能性がある」という説明がされています。この場合は、仲介業者の責任は問えません。

また、土壌が汚染されていたり地中埋設物がある事実が後から発覚した場合等も、仲介業者がその事実を知り得る環境に無かったとなされた場合には、買主は売主に対して損害賠償請求をしなければなりません。

そのようなトラブルを、買主はどのようにして防ぐべきなのでしょうか。それは、買主が物件購入をする際に土地の履歴を調べ、近隣の人々に話を聞くという事が必要になってきます。しかし実際にそこまでやるのは難しい部分もありますので、調査に長けた仲介業者の手を借りて色々依頼した方が良いと考えます。そして、買主からの依頼を自分たちのことのように捉え勉強し、親身になって動いてくれる。そんな仲介業者を見つけることが最も大事です。

そしてそんな仲介業者の重要事項説明トラブルで最悪なのは「重要な事項について故意に事実を告げず」に契約がされた場合です。

たとえば、戸建てを建築するにあたり購入した土地で心理的瑕疵に該当する事故があった場合、その事実を仲介業者が知っていたにも関わらず説明されていない場合には、重要事項説明違反として損害賠償を請求することが出来ます。しかし、損害賠償請求ができたとしても契約を白紙に戻せるわけではないので、非常に精神的なストレスがかかるうえ、裁判等に時間も取られます。

トラブル回避のために

不動産購入を人生において複数回経験する人は少ないのです。そのことからも、一般消費者が不動産売買のプロになり得ることはありえません。ですのでトラブルが無い物件を確実に取得するためには、本当に信頼出来る不動産業者に依頼する事が何よりも大切なのです。できればこれまでの自身の人脈を駆使し、人生最大の買い物をサポートしてくれるパートナーを探しだしてください。

不動産の売却・購入それぞれには無限のパターンがあり、トラブルにおいてもたくさんの事例が報告されています。

ここでは様々なトラブルの事例について紹介しましたが、少しでも安全な取引を行って頂くためのヒントになればと思います。そしてより良い不動産のプロを選べるように意識し、不動産売買に臨んでください。